報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原家の引っ越し」

2023-07-31 20:13:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月4日07時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川1丁目 愛原学探偵事務所(旧事務所)]

 枕元のスマホがアラームを鳴らす。
 それで私は目が覚めた。

 リサ「……はっ!」

 リサのスマホも鳴り出す。
 リサもそれで起きたようだが……。

 リサ「ゆ……夢……!?」

 リサはどうやら、悪い夢を見ていたらしい。

 愛原「どうした、リサ?悪い夢でも見てたのか?」
 リサ「……サイアク。あの鬼の男にレ○プされてる夢」
 愛原「マジか……。抵抗しても、ダメだったのか?」
 リサ「何故か電撃が効かない。力を振り絞っても振りほどけない、爪で引き裂いても効かない……」
 愛原「お前が押さえつけられるとは……」

 とんでもないヤツだな。
 こりゃいっそのこと、タイラントに護衛してもらった方がいいかもしれない。

 リサ「シャワー浴びて来る」
 愛原「あ、ああ。そうした方がいい」

 リサは悪夢を見たせいで、汗びっしょりだった。
 白い体操服が汗で透けて、その下の黒いスポプラがうっすら見えるほど。

 高橋「先生、おはざーっす」
 愛原「ああ、おはよう。シャワー室でセクロスしてんじゃねーよ、DQN共が」
 パール「ええっ!?」
 高橋「な、何故それを……!?」
 愛原「夜中にトイレに起きたら、お前らがベッドにいなくて、代わりにシャワー室から【イチャイチャ】【ラブラブ】の声がしたんだよ」
 高橋「さ、サーセン……」
 パール「あの、先生……是非とも、婚姻届の保証人にサインを……」
 愛原「いずれしてやる。もっと平和になったらな」
 パール「ありがとうございます」

 尚、婚姻届には2人の保証人が必要だが、そのうちの1つは、まだ容疑が発覚する前の斉藤元社長である。

 愛原「着替えと洗顔が終わったら、朝飯食いに行くぞ」
 高橋「うっス」

[同日08時00分 天候:晴 同地区内 ジョナサン菊川店]

 私達は駅前のファミレスに向かった。
 ここならモーニングをやっているし、目覚めのコーヒーも飲める。

 愛原「俺は目玉焼きモーニングだな」
 高橋「俺はスクランブルエッグで」
 リサ「和風ハンバーグ」
 愛原「朝からハンバーグか……」
 高橋「それ、本当にモーニングか?」
 リサ「うん。ちゃんとモーニングメニューに書いてある」
 愛原「でも、それだとドリンクバー付いてないぞ?」
 リサ「むふー!」

 リサは得意げに、スマホの画面を見せた。
 それは、ドリンクバー無料クーポンであった。
 そこは抜かりないようだ。

 愛原「スマホを使いこなす鬼型BOWか……」
 高橋「爪が伸びてる時は、音声入力しかできねぇくせに……」
 リサ「いいの!」
 愛原「パールは?」
 パール「ベーコンチーズサンドモーニングで」
 愛原「洋食メニューはスープバーとドリンクバー付きだ。じゃあ、注文するぞ」
 リサ「ちょっと待って!スープのクーポンを……」
 愛原「いや、お前、和食のセットだと味噌汁付いてるぞ?」
 リサ「……あ、そうか」

 私はタブレットを操作して注文した。

 愛原「それじゃ、ドリンクバーとスープバー行くか」
 高橋「俺が取って来ますよ。先生、何にします?」
 愛原「それじゃ、ホットコーヒーとスープ」
 高橋「了解っス」

 高橋達がドリンクバーやスープバーに向かう。
 リサは自分のクーポンを確認してから、ドリンクバーに向かった。
 私も自分のスマホを取り出す。
 善場主任から何か連絡が無いか気になったが、今のところは無かった。
 恐らく昨夜、新幹線に乗って京都に向かい、そこから福知山市に向かったのだろう。
 鬼の兄妹とは、一体何者なのだろうか?
 天長会にて、『鬼になる儀式』を受けたのだから、元人間だと思っていた。
 違うのだろうか?
 いやいや、元から鬼だなんて、今時いるわけがない。
 私が夢で見た鬼の男だって、夢の中では元々人間の少年が鬼化する瞬間だったのだから。
 それにしても、白井は何の目的だったのだろうか?
 高校時代、好きな人であった斉藤早苗と一緒になる為だとか、永遠の命とかが目的だと思ったのだが……。

 高橋「お待たせしました」

 高橋がホットコーヒーとスープを持って来た。

 愛原「ありがとう」
 リサ「グリーンハーブティーとか、体力回復すると思うよ?」
 愛原「ファミレスのドリンクバーにあるグリーンハーブは紅茶の茶葉であって、回復アイテムではないと思う」

 霧生市にも結構あったけどな。
 霧生市では料理の材料に使ったり、漢方薬の材料にしたり、虫下しの薬の材料に使ったりするようだが。
 あと、タブレットにして回復アイテムとして使う場合もあったようだ。
 つまり、紅茶の材料には使わないと思う。

 リサ「レッドハーブとか、ブルーハーブもあったのに?」
 愛原「普通に紅茶の材料だろう」
 リサ「こっちは何の回復アイテムも無くて戦ってるのに、兵隊さんだけ回復アイテム使ってズルいと思ったっけなぁ……」
 愛原「お前は回復アイテムを使わなくても、傷がすぐに回復するからだよ」
 リサ「あっ、そうか」

 しばらくして、朝食が運ばれてくる。

 リサ「ハンバーグ、ハンバーグ」
 高橋「先生、目玉焼きモーニングっス」
 愛原「ありがとう」
 高橋「今日は洋食の気分っスね」
 愛原「そうだ」
 高橋「すると、明日は和食の気分っスね。了解です」
 愛原「そ、そうだな。冷蔵庫の中は空だから、家の引っ越しが終わったら、食料の買い出しに行かないと」
 高橋「幸いスーパーがすぐ近くですし、そこで買ってきますよ」
 愛原「よろしく頼む。今度からは、新しいスーパーを利用することになりそうかな?」
 高橋「まあ、値段次第っス」
 愛原「そうか。今夜は引っ越し祝いで、パーッとやりたいな」
 高橋「おっ、いいっスねぇ!」
 愛原「事務所の引っ越しまで、上手く行くといいんだがな……」
 高橋「あー、それ次第っスよねぇ……。まあ、俺達で頑張りますよ。先生はピッピッと笛だけ吹いててください」
 愛原「いや、そういうわけにはいかんよ」

 引っ越しの開始は9時から。
 まずは旧居のマンションから運び出し、運送会社の倉庫に預けてあった荷物が新居にやってくる。
 これの運び入れから開梱、設置までだ。
 それだけで昼までに済めば御の字である。
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“私立探偵 愛原学” 「深夜の帰京」 2

2023-07-30 20:21:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日23時24分 天候:晴 東京都墨田区江東橋 JR錦糸町駅]

〔まもなく錦糸町、錦糸町。お出口は、右側です。総武線各駅停車と地下鉄半蔵門線は、お乗り換えです。錦糸町から先は、各駅に止まります〕

 電車の中では何も起きなかった。
 リサは車内販売で購入したジュースやスナックを口にしたことで、ようやく安心したようである。

 愛原「よし、ここで降りるぞ」
 高橋「はい」

 車内はさすがに成田空港を出発した時よりは、客が増えたが、それでも混雑というには程遠い。
 2階席も、半分も埋まっていなかった。

〔きんしちょう、錦糸町。ご乗車、ありがとうございます。次は、馬喰町に、停車します〕

 錦糸町駅のホームは、意外と乗客が多かった。
 まあ、都内でも屈指の繁華街の駅であるから、例え三が日であっても人はそれなりにいるのだろう。

 リサ「ちょっとトイレ行ってくる」
 愛原「ああ。行ってこい」

 ホームから多くの人が賑わうコンコースに下りると、リサはトイレに行ってきた。
 因みにジュースやスナックの空き缶や空き箱は、デッキのゴミ箱に捨てている。

 高橋「ここから、タクシーっスか?」
 愛原「ああ、そうだな」

[同日23時45分 天候:晴 同区菊川1丁目 愛原学探偵事務所]

 錦糸町駅からタクシーに乗り、事務所まで戻る。

 愛原「何か、久しぶりの事務所だなぁ……」
 リサ「そして、今日最後の事務所だね」
 愛原「明日、引っ越しだからな。まあ、実質的にそうか」
 高橋「領収書、もらってきました」
 愛原「ありがとう」

 料金の支払いの為、最後に降りた高橋を待って、事務所の中に入った。
 一応、飲み物などはビルの入口にある自販機で購入しておく。
 事務所に入ると、一応、ある程度の物は梱包してある。
 明日は午前中はマンションの引っ越し。
 午後は事務所の引っ越しに充てるつもりである。

 愛原「そっちの応接間、俺とリサで使うわ。高橋とパールは、折り畳みベッド使ってくれ」
 高橋「分かりました」

 寒くないよう、事務所内は暖房を入れておいた。

 愛原「シャワー室は使えるから。あと、窓のブラインドは全部閉めとけ」
 高橋「うっス」

 私は応接室に入ると、カウチソファの背もたれを倒して、その上に布団を引いた。

 愛原「明日は9時に荷物が新居に来るから、それまで向こうに行くようにしよう」
 高橋「はい」
 愛原「こっちは引っ越しで忙しいってのに、鬼の兄妹の対応がなぁ……」
 高橋「アネゴ達に任せるしかないっスね」
 愛原「全くだ」

 高橋達は折り畳みベッドを引っ張り出すと、事務所内にそれを展開した。

 愛原「リサ、先にシャワー浴びて来ていいぞ」
 リサ「分かった」

 リサは事務所内に置いていた荷物の中から着替えやら、タオルやらを取り出した。
 そして、シャワー室へと向かって行った。

 愛原「やれやれ……。とんでもないことになったな」

 私は自分の寝床を用意しながら呟いた。

 高橋「また、襲って来ますかね?」
 愛原「どうだろう?だが、鬼は執念深いというからな」
 高橋「京都の山奥から来たんですか?」
 愛原「リサの話では、鬼の女はそう言ったらしいな。えーと……名前が殺鬼か」

 5年前に天長会の『鬼になる儀式』だったかな?
 それで鬼化した女である。
 そういった意味では、兄妹で鬼になった時期が違うようだ。
 リサの話によれば、殺鬼は兄の鬼之助には逆らえないようだったという。

 高橋「鬼の男は、リサとヤりたいだけっスか」
 愛原「彼女にしたいんだろうが、鬼の感覚では、彼女もセフレも同じなのかもな」
 高橋「それじゃ、リサに1発ヤらさせれば解決っス!」
 愛原「アホ。本人は嫌がってるんだぞ」
 パール「それに、リサ様は先生一筋ですから、先生以外の男性とシたくないようですよ」
 愛原「そういうわけだ。それなら尚更、鬼の男にリサを渡すわけにはいかんな」
 高橋「はあ……」
 パール「明日の朝食は、どうされますか?」
 愛原「近くの店に、食べに行けばいいさ。明日は普通の平日だから、個人営業の店も開くだろうしな」
 パール「かしこまりました」

 しばらくして、リサがシャワー室から戻って来た。
 夜間、共用部は空調が入らない。
 また、昼間であっても、土日祝日においては、管理会社に申請しないと空調を入れてもらえないシステムになっている。
 なので、共用部である廊下は寒かった。
 それでもリサは、昨夜着ていた体操服に紺色のブルマという恰好であった。
 鬼型のBOWは、特にそこまで寒いとは思わないらしい。

 愛原「次はパールが入ってきていいよ」
 パール「いいえ。次は、愛原先生がどうぞ」
 高橋「そうっスよ。で、その次に俺が入るっス!」
 愛原「いいのかい?」

 すると、2人の元ヤンは同時に頷いた。

 愛原「まあ、キミ達がそう言うのなら……」

 私も着替えと洗面道具を手に、寒い廊下へと出た。
 専有部である事務所内は、先ほど手動で暖房を入れたから温かいのだが……。
 こりゃ、ヒートショック注意だな。
 何しろ、シャワー室手前の脱衣所にも暖房器具は無いのだから。
 それともあれかな?
 熱い湯舟に浸かるからヒートショックが起きるんであって、シャワーくらいなら大丈夫かな?
 今度、あれだな。
 小型の暖房器具、購入して設置するか。

[1月4日00時30分 天候:晴 同事務所]

 事務所内でお湯が出る水回りは4つ。
 1つはシャワー室のシャワー。
 もう1つは、脱衣所内にある洗面台。
 更に1つはトイレ内の洗面台。
 最後の1つは、給湯室のシンクである。
 私はトイレの洗面所で、歯を磨いていた。
 すると、鏡の向こう側から水の流れる音がする。
 間取り図によれば、この向こう側は女子トイレの洗面台があるようなので、リサが歯磨きをしているのだろう。
 トイレを出ると、案の定、リサも女子トイレから出て来た。

 リサ「先生、もう寝るの?」
 愛原「ああ。さすがに疲れたからな」
 リサ「わたしも。色々あって疲れた。本当は、先生にマッサージしてあげたいのに……」
 愛原「今夜は仕方が無い。明日……ああっと!もう日付が変わったか。今日は引っ越しだし、もう寝るとしよう」
 リサ「えへへ……。先生と一緒の部屋ぁ~!」
 愛原「いや、安全の為、応接室のドアは開けておくよ」
 リサ「えー!」

 それを聞いたリサは、少々ガッカリした様子であった。
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“私立探偵 愛原学” 「深夜の帰京」

2023-07-30 15:04:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日22時00分 天候:晴 千葉県成田市三里塚御料牧場 JR成田空港駅→JR成田線2254F列車5号車内]

〔「2番線に停車中の電車は、22時10分発、総武快速線、横須賀線直通の快速、逗子行きです。横須賀線に直通する最終電車です。お乗り遅れの無いよう、ご注意ください」〕

 あの後は色々あった。
 ひったくり犯の事に対して、警察から事情聴取と実況検分を受けた。
 鬼の女が氷の妖術?みたいなものを使ったことに関して、どのように説明したら良いか分からなかったが、多数の目撃者の証言と、監視カメラの映像から、私の頭がおかしくなったわけではないことを警察に証明することができた。
 何より、氷がまだ残っていたので、これも証拠になった。
 それよりは、リサのこと。
 外国では一部の国や地域では合法組織ではあるが、日本ではまだ非合法組織である。
 その組織が堂々と国内で活動し、むしろBSAAという国連機関よりも素晴らしい働きをしたことについて。
 まあ、BSAAの窓口になっているデイライトが面白いわけがない。
 都内にいたはずの善場主任まで飛んできて、根掘り葉掘り聞かれた。
 で、帰りは終電と……。

 愛原「グリーン車で帰ろう。はい、グリーン券」
 高橋「あざーっス」

 帰りは京成ではなく、JRで帰ることにした。
 これで錦糸町まで行き、そこからタクシーで事務所に戻ることにする。
 マンションの荷物は既に運び出してしまったので、一晩泊まる所は事務所しか無い。
 幸い事務所には仮眠設備を用意してあるので、一晩泊まるくらいなら問題無いはずだ。
 ホームに行くと、15両編成の電車が停車していた。
 特急“成田エクスプレス”が発車し、それはもう今日は運転されない。
 それに対して京成スカイライナーは23時まで運転されるので、駅の利用者はJRより京成の方が多かった。
 2階建てのグリーン車に乗り込んでみたが、ガラガラであった。
 まだ発車の10分前ということで、これから乗って来るのだろうし、隣の空港第2ビル駅からも乗り込んでくるかもしれない。
 何しろ、“青いアンブレラ”の出動によって、航空機の離着陸が一時的に止められたこともあって、その混乱もあるだろう。

〔この電車は、成田線、総武線、横須賀線直通、快速、逗子行きです。停車駅は都賀までの各駅と、千葉、稲毛、津田沼、船橋、市川、新小岩、錦糸町、錦糸町から先の各駅です。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕

 私とリサが隣に座った。
 その後ろに高橋とパールが座る。
 グリーン車といっても、新幹線や特急のそれと比べて広いわけではない。
 普通車のロングシートやボックスシートと比べれば広めのリクライニングシートって感じだ。
 2階席に座ってみたが、地下ということもあり、まだ眺望が良い感じはしない。

 高橋「リサを窓側に座らせて、大丈夫っスか?」
 愛原「逃してしまったとはいえ、“青いアンブレラ”が総攻撃を仕掛けて来たんだ。そうおいそれとはもう手出しできんだろうさ」

 リサは着ていた服がボロボロになってしまった為、買い直した。
 幸い第1ターミナルにも、テナントでユニクロが入っていたのである。

 リサ「でも、鬼の男は諦めないって言ってた」
 愛原「もしまた来たら、“青いアンブレラ”のことだ。どんな武器を持ち出すか分からんぞ」

 BSAAでも躊躇するような攻撃法を行うことだろう。
 噂では、栗原家に代々伝わる鬼斬りの刀の複製に成功したとか、その成分を銃弾に転用したとか聞いたことがある。
 その技術は、BSAAには伝わっていない。
 民間軍事会社ならではの手法だろう。
 それと、善場主任からの話で、新たに分かったことがある。
 鬼の兄妹の名前。
 人間だった時の名前と共に分かった。
 名字は大江山。
 正に、京都府福知山市の郊外にある山の名前。
 そして、あることで有名な山でもある。
 下の名前。
 鬼の名前、男の方は鬼之助(きのすけ)、女の方は殺鬼(さつき)。
 人間名は男の方は右京、女の方は左京。
 善場主任は、明日からそこへ向かうという。
 そこにかつて、白井伝三郎が現れたという目撃証言があったからだ。

〔「お待たせ致しました。22時10分発、横須賀線直通の快速、逗子行き、発車致します」〕

 電車はガラガラの状態のまま、発車時間を迎えた。
 15両編成が勿体ないような気がするが、総武快速線、横須賀線に入ったら、その本領を発揮するのだろう。
 ホームからは、発車メロディが聞こえて来る。

〔「2番線から22時10分発、総武快速線、横須賀線直通の快速、逗子行きが発車致します。本日、横須賀線に直通する最終電車です。ご利用のお客様は、お急ぎください」〕
〔逗子行き、快速電車が発車致します。ドアが閉まりますから、ご注意ください〕
〔「逗子行き、ドアが閉まります」〕

 発車の時間になり、ドアが閉まる。
 東京止まりの電車なら、この後にも1本あるのだが、それで東京駅に着いても、もう横須賀線の運転は終了している。
 その為、どうしても横須賀線に乗りたければ、この電車に乗るしかないのだ。
 もっとも、私達は錦糸町で降りるから、どちらでも良いのだが。

〔この電車は、総武線、横須賀線直通、快速、逗子行きです。次は空港第2ビル、空港第2ビル。お出口は、右側です〕

 リサ「わたしも……人を食べないとダメなのかな?」
 愛原「おい、何言ってるんだ」
 リサ「わたしは弱い。あの2人に、いいようにやられて……」
 愛原「だからって、人を食う必要は無いさ。お前まで、向こう側に行く必要はない」
 リサ「うん……」

 まだ、分からないことがある。
 埼玉の家との関係だ。
 鬼の男……鬼之助は埼玉の家には、人間の家族と住んでいたという。
 その人間達は、どこへ行ったのか。
 そして、鬼の女……殺鬼とはどうして別々に暮らしていたのか。
 それはまだ分かっていない。
 いずれにせよ、善場主任が京都の大江山に行けば分かるのだろうか?
 私達は私達で、明日は引っ越しがある。

 愛原「明日は引っ越しだから、そっちに集中しよう」
 リサ「うん、分かった」
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“愛原リサの日常” 「成田空港の戦い」

2023-07-30 11:43:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日15時30分 天候:晴 千葉県成田市三里塚字御料牧場 成田空港第1ターミナル]

 ひったくり犯「へっ、ここまで来れば……」

 ひったくり犯の前に、ピンク色のパーカーにフードを被り、デニムのジーンズを穿いた者がいる。

 リサ「そいつを止めてーっ!」
 鬼の女(あれは……?まだ、ここにいたんだ)
 ひったくり犯「どけや!邪魔だ!!」

 鬼の女はパーカーのポケットから水の入ったペットボトルを出すと、それを床にぶちまけた。
 そして、マスクを外すと、大きく息を吹く。

 ひったくり犯「邪魔だ、コラ!!」

 ひったくり犯は鬼の女を突き飛ばした。

 ひったくり犯「うわっ!」

 鬼の女を突き飛ばしたことで、自分も僅かに体勢が崩れる。
 だが、本来ならその程度の崩れ、すぐに整えることができるはずだった。
 床が乾いていれば!

 ひったくり犯「いでっ!?」

 凍結した床に足を滑らせ、そのまま転がった。
 持っていたバッグも落とす。

 鬼の女「あのコには悪いけど、これ以上、お兄ちゃんが悪さしない為だものね……」

 鬼の女はその場を立ち去ろうとした。
 ひったくり犯は転倒した際に頭を打った為、昏倒してしまっている。

 愛原「高橋、パール!この犯人を頼む!」
 高橋「了解です!ボコしておきます!」
 愛原「いや、ボコさんでいい!警察に引き渡してくれればいいんだ!」

 これだけ騒ぎになれば、警察も来るだろう。
 それよりも……。

 愛原「リサ!あれを追うぞ!」
 リサ「分かった!鬼の臭いがする!」
 愛原「やっぱりか!」

 鬼の女は、まるでスピードスケートをするかのような動きで、床を滑るように移動している。
 そして、チラッとリサ達を振り向いた。

 鬼の女「このまま連れて行くのは難しいか……。ならば、いっそ……」

 鬼の女は立ち止まって振り向いた。

 愛原「おっ、立ち止まったぞ!?」

 鬼の女は、もう片方のポケットに入れていた水のペットボトルを床に投げ捨てた。
 そして、そのペットボトルを踏みつける。
 踏みつけられたことで破裂したペットボトルは、中身の水を床に撒き散らした。
 再び息を吹くと、その水が見る見るうちに凍り付く。

 リサ「それがどうした!」

 リサは両手の爪を長く鋭く尖らせて、鬼の女に飛び掛かった。

 鬼の女「鬼同士の戦いなんて不毛だからやめない?」
 リサ「うるさい!」

 だが、鬼の女が右手を挙げると、氷が起き上がった。
 それがまるで、上級BOWタイラントのような姿の巨漢に変わる。
 リサがその氷の巨人に向かって爪を振り下ろすと、リサの爪の方が折れた。

 リサ「いってーっ!?」

 指先から血が出るが、そこは鬼型BOW。
 すぐに血は止まり、再び爪が生える。

 鬼の女「私はあなたに来てもらいたいだけよ」
 リサ「なにぃ!?」

 鬼の女のフードが取れる。
 その下は白に近い青い髪をしており、顔色も青に近い白だった。
 それだけだと本当に雪女のように見えるが、頭には鬼の男のように1本角が生えていることから、鬼だと分かる。

 愛原「大人しくしろ!」

 愛原はいつの間にかショットガンを組み立て、それを鬼の女に向けた。

 鬼の女「プッw」
 リサ「先生!こいつはヤバいヤツだと思うから、ショットガンは……ああっ!?」

 リサは後ろから、鬼の女に氷の塊を口に詰め込まれた。

 リサ「んーっ!んーっ!」

 そして、鬼の女に掴まれる。

 鬼の女「お兄ちゃんを紹介したいだけだから、こっちに来てもらうよ?」

 リサは放電しようとしたが、何故かできない。
 口に詰め込まれた氷のせいだろうろか?

 鬼の女はリサをガッチリ掴むと、ターミナルの窓をブチ破って外に出た。

 愛原「リサっ!リサーッ!!」

 下では愛原の叫び声が響いていた。

[同日16時00分 天候:晴 千葉県成田市某所 空港周辺の空き地]

 鬼の男「おお……!さすがは殺鬼(さつき)!俺の妹!」

 リサは鬼の女に後ろ手を組まれ、鬼の男の前に差し出された。

 鬼の男「この匂い……。やっぱり女だぁ!」
 鬼の女「だから女だって。どうする?山に連れて行くの?」
 リサ(山……?)
 鬼の男「もちろん!今日から俺の女だぜ!」
 リサ(はあーっ!?なに勝手に決めてんの!?山ってなに!?)
 鬼の女「私達はね、大江山の……」
 鬼の男「んなこと、どうだっていいんだよ!それより、軽く『味見』させてもらうぜ!きっと『美味い』ぞ!」
 鬼の女「それより、早く逃げた方がいいと思うけど……」
 鬼の男「先に1発ヤらせろよ。そこの車ん中に連れ込め」

 鬼の男は1台のハイエースを指さした。
 窓ガラスはフルスモークになっており、外からは見えない。

 リサ「嫌だ!」

 リサは口の中に詰め込まれた氷の塊を嚙み砕いた。
 そして、体中から放電する。

 鬼の女「きゃっ!!」

 直接、リサを掴んでいた鬼の女が感電した。
 それで、女はリサを放してしまう。
 だが……。

 鬼の女「このクソガキ!!」

 鬼の女は右手から鬼の金棒の形をした氷を棒を出すと、それでリサの頭を殴り付けた。

 リサ「ぎゃっ!」

 物凄い衝撃である。
 リサは意識が朦朧となった。

 鬼の男「おいおい、これからヤるんだから、手加減してやれよ」
 鬼の女「だーって!」

 鬼の男は無抵抗となったリサを抱き上げると、ハイエースのスライドドアを開けた。
 車内は既にフルフラットシートになっている。

 鬼の男「ヤり終えるまで、外で見張ってろよ?」
 鬼の女「ほんっと、妹使いが荒いんだから!」

 鬼の男がリサを連れ込み、スライドドアを閉めた時だった。

 鬼の女「ん?」

 さっきからヘリコプターの音が聞こえている。
 もちろん、空港の近くなのだから、それくらいは不思議でも何でもない。
 しかし、何故かどんどん音が大きくなってきているのだ。

 鬼の女「え……?」

 ヘリコプターは鬼達の上空でホバリングした。
 そのボディには、こう書かれていた。
 『Umbrella Corporation』と。
 ロゴマークは開いた傘を上から見た様子を図案化したもの。
 しかし、かつての悪徳製薬会社の物と違い、色合いが異なっていた。
 白に青である。
 いわゆる、『青いアンブレラ』であった。

 鬼の女「ちょ、ちょっと!?」

 ヘリコプターは軍事用の物で、鬼の女を捕捉すると、装備していた機銃を掃射してきた。

 鬼の女「何すんのよ!」

 鬼の女は右手から氷の槍をヘリコプターに向かって突き飛ばすが、今度はヘリコプターから火炎放射器が現れて、氷の槍を融かしてしまった。
 更にヘリコプターは低空まで降下すると、再び機銃掃射。
 今度はハイエースにも容赦無く当たる。

 鬼の男「おい!一体、何だってんだよ!?」

 さすがに鬼の男も、気になって降りて来たようだ。

 鬼の女「お兄ちゃん!さすがにマズいよ!逃げよう!」
 鬼の男「何なんだ、あれは!?」

 “青いアンブレラ”の攻撃ヘリは2機、3機と増えて、鬼の兄妹に集中砲火を浴びせた。

 鬼の男「ちくしょうっ!絶対に諦めねぇからなぁーっ!」

 鬼の兄妹は這う這うの体で逃げ出して行った。

 高野芽衣子「降下するわ。準備して」
 パイロット「はっ!」

 3機のヘリのうち、1機に乗っていた高野芽衣子はヘリから垂らされたロープを伝って地面を降りた。

 高野「リサちゃん、助けに来たよー」
 リサ「高野お姉ちゃん……。随分、派手だねぇ……」

 リサも何発か被弾していたが、そこは鬼型BOW。
 この程度では死にはしない。

 高野「あー、服がボロボロだねぇ……」
 リサ「半分以上は、お姉ちゃん達のヘリのせいだよ」
 高野「メンゴメンゴw」

 上着は鬼の男に引き裂かれたが、それ以外はヘリの機銃掃射によって開いた穴である。
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“愛原リサの日常” 「鬼の兄妹」

2023-07-28 20:53:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日13時30分 天候:晴 千葉県成田市某所 成田国際空港付近]

 鬼の男「ぐわあっ!」

 鬼の男は突然、顔を押さえて苦しみ出した。
 その手の中にある顔、目があるはずの2つの穴には目玉は無い。
 目玉が入っているはずの2つの穴からは、ドバッと血が噴き出した。

 鬼の男「ぎゃあっ!……あ、あの人間の女……ブッ殺してやる……!よくも俺の目玉を……!」

 膝立ち状態になって悶え苦しむが、吹き出していた血は水道の蛇口を締めるかのように止まる。
 そして、窪みとなっている所にグググと新しい目玉が生えた。

 鬼の男「ふーっ!ふーっ!ふーっ!……くっ……!」

 目玉が新しく生えても、すぐには視力は回復しない。
 冬の日差しは人間にとっては弱く暖かいものであるが、鬼の男にとっては、夏の直射日光のようであった。
 暗い所から、いきなり夏の直射日光が目の中に飛び込んできた感じ。

 鬼の男「こ、こうなったら、あそこにいる人間共を全員ブッ殺して……」
 鬼の女「もうやめようよ、お兄ちゃん!」
 鬼の男「あぁ!?……あー、殺鬼(さつき)か。うるせーよ、邪魔すんじゃねぇ」
 鬼の女「あのね、お兄ちゃんが探してる女の子、私が乗った電車の中にいたよ」
 鬼の男「なにっ!?男じゃなかったのか!?」
 鬼の女「女の子だよ。女の子の匂いがしたからね、間違いない」

 鬼の女は、生理中の時に女が放つ匂いを感じ取っていた。
 それは人間の女も同じであろうが、鬼ならもっと強い。
 例えリサは人間を食べていないとはいえ、鬼型のBOWである以上、独特の強い匂いは誤魔化せなかった。

 鬼の男「そいつは今、どこにいる?」
 鬼の女「空港の中。何しに行ったのかは知らないよ。ただ、空港って飛行機に乗る所だからね」
 鬼の男「何でついてねぇんだよ!?」
 鬼の女「何でアタシがついてなきゃいけないの!お兄ちゃんが惚れた女の子でしょ!?」
 鬼の男「ちっ……」
 鬼の女「ボヤボヤしてると、飛行機に乗っちゃうよ?」
 鬼の男「待て。本当にあいつは、これから飛行機に乗るつもりなのか?」
 鬼の女「そんなの知らないよ」
 鬼の男「ちっ……。じゃあさ、あいつを探して、何しに行ったのか調べて来てくれよ」

 鬼の女は大きく溜め息をついた。
 目の前の地面がカチカチに凍ってしまう。

 鬼の女「私達、こんなところでボヤボヤしてるヒマは無いんだよ?お兄ちゃんが色々やってくれたせいで……」
 鬼の男「分かった分かった。あいつのことが何とかなったら、山に帰るからよ。な?頼むよ」
 鬼の女「……今回だけだからね。私が帰ってくるまで、勝手なことしちゃダメだよ?」
 鬼の男「分かってるって」

 鬼の女はもう1度溜め息をつくと、空港ターミナルの方に向かって行った。

[同日14時55分 天候:晴 千葉県成田市三里塚字御料牧場 成田国際空港第1ターミナル]

 絵恋の乗る飛行機の1時間前になった。
 国内線であるから、遅くでも30分前にチェックインすればいいのだが、いかんせんUターンラッシュで混雑している空港だ。
 見ると保安検査場も混雑しているし、早めに行った方が良いかもしれない。
 ということで、1時間前にはチェックインしてもらうことにした。
 絵恋にとっては、とても名残惜しいことであろうが。

 絵恋「うう……帰りたくないよぉ……」
 リサ「3年生になったら、修学旅行でそっちに行くから」
 絵恋「ほんと……?」
 リサ「うんうん」

 東京中央学園中等部における国内旅行は、関西方面である。
 が、コロナ禍で中止になってしまった。
 そこで代わりに、高等部1年生の時に代替修学旅行として、南会津にスキー旅行に行ったわけであるが……。
 この分だと、今年中にはコロナも終息しそうだし、高等部の修学旅行は予定通り行われるだろう。
 尚、東京中央学園高等部だと、海外旅行もあるのだが、リサにはパスポートは発行されない。
 その為、国内一択になってしまう。
 国内における飛行機旅行は、年替わりで北海道と沖縄となっており、リサ達の年は沖縄になっている。
 尚、2泊3日である。

 絵恋「高校の修学旅行ってことは、自由行動もあるもんね!私が案内してあげるからね!」
 愛原「案内してあげるって、修学旅行は平日だろう?絵恋さんは絵恋さんで学校じゃないのか?」
 絵恋「愛原先生。一般的な公立高校とは違うのですよ」
 愛原「えっ、そうなの?どこが?」
 絵恋「東京中央学園の修学旅行は、姉妹校との交流会も兼ねているのです。行先が北海道の場合は、札幌の北海道中央学園との交流会があるんですよ」
 愛原「今回は沖縄中央学園ってことか」
 絵恋「そうです。そして、私達は私達で、沖縄中央学園は東京中央学園との交流で修学旅行に行くんです」
 愛原「ふーん……」
 高橋「何か、いかにも後付け設定っスね」
 愛原「まあまあ。それより、急がないと。保安検査場の列、伸びて来たぞ?」
 絵恋「そうでした」

 絵恋は自動チェックイン機でチェックインをすると、保安検査場に向かった。
 見送りのリサ達はここでお別れとなる。

 リサ「それじゃ、私はこれで」
 絵恋「リサさん、ありがとう。先生方も、ありがとうございました」
 愛原「いい思い出になったら、幸いだよ」
 パール「御嬢様、どうかお気をつけて」
 高橋「飛行機墜ちねーといいな?w」
 愛原「こーら」

 愛原は悪い冗談を言う高橋を窘めた。
 絵恋が保安検査場に入り、手荷物検査を終えて、出発ロビーの向こう側にいなくなるまで、リサは見送った。
 国際線ではないので、出国手続きが無い分、そこは簡素なものか。

 愛原「それじゃ、引き上げるか」
 高橋「何で帰るんスか?」
 愛原「そうだな……。京成にするか、それともJRにするか……」

 考える愛原の後ろを歩きながら、リサが成田空港駅の方に足を進めた時だった。

 中年女性「きゃーっ!引ったくりよ!誰か止めてーっ!!」
 愛原「ええっ!?」

 その時、地面に座り込んだ中年女性と、バッグを抱えて走り去って行く、ジャンパーにニット帽の男の姿が映った。

 愛原「マジかよ、こんな空港で!?」

 Uターンラッシュで警備が強化されているはずだが、テロ対策はしっかりしていたとしても、引ったくりまでは盲点だったか。

 ひったくり犯「へっ、ババァ!こいつに札束入れてるのは確認済みでいっ!ありたがたく頂くぜ!」

 リサは目を丸くしながら愛原に言った。

 リサ「どうする?追う?」
 愛原「そ、そうだな。BOWってバレないようにできるか?」
 リサ「任せて!」

 リサは先頭を切ってダッシュした。

 高橋「速ェ!」
 愛原「俺達も追うぞ!」

 この時、愛原は鬼の中にはすばしっこい足を持つ者がいて、上野凛はそれを利用して陸上部で活躍していることを思い出したという。
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