報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 裏設定集

2017-10-31 19:18:39 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
 ・日蓮正宗正証寺は架空の寺院で、モデルの無いオリジナル設定である……というのはウソ!

 日蓮正宗信徒が謗法の寺院を参考にしましたなんて言えるわけがない。
 しかし今、既に私は無宗派と化している。
 そこで、あえて今言おう。
 稲生勇太と藤谷春人が所属している寺院のモデルは……曹洞宗福現山保寿寺。
 これは作者の母方の菩提寺で、子供の頃から法事などでよく参詣していた寺院である為、日蓮正宗寺院よりも思い出深い場所である。
 どうしても日蓮正宗末寺のイメージが思い浮かばない(都内にありながら静かな末寺という設定の為、常に賑やかな法道院はイメージと違った)こともあり、苦肉の策として保寿寺をモデルにしている。
 こういう長閑な所もいいもんだよ。
 でもまあ、千葉県の一月寺みたいに、元は全く別の宗派だった所が日蓮正宗の庇護を受ける形でそのまま編入したような所もあるから、そういう流れを期待するしか無いね。

 ・マリアの屋敷のモデルは“バイオハザードHDリマスター”のスペンサー邸

 ホラーチックな屋敷のイメージを持たせる為。
 但し、ゾンビは徘徊していません。

 ・マリアの屋敷の現在の立地条件のモデルは、“かまいたちの夜”のペンション・シュプール。

 クローズドサークルみたいな立地条件、これぞ魔女の棲む屋敷に相応しいと思ったから。
 因みに当初の設定も、“バイオハザード”の洋館みたいな感じではなく、ペンションのような設定だった。
 魔女の棲む屋敷なのに、温かみがあってどうする?と多摩準急名誉監督に突っ込まれてボツ。
 尚、さすがに“SIREN”みたいな日本家屋は最初から考えていなかった。
 それと、白馬村の元ペンションということで、ある河童さんのことを思い浮かべる人もいるだろうが、全くの偶然である。

 ・稲生勇太の母校、東京中央学園のモデルは……“学校であった怖い話”の鳴神学園。

 一部に作者の母校も入っているが、木造の旧校舎が残っていることや、怪奇現象多発校という所が。
 今後も霊現象の話絡みで登場するかも。
 因みに作者の母校は県立です。

 ・“大魔道師の弟子”は、本来“魔の者 北海道編”で終了する予定だった。

 ヘリでヤノフ城を脱出して、「僕達の戦いはまだ続くんだ!」という所で。
 オマケで書いた後日談(旭川市内の滞在や、新千歳空港温泉でのドタバタ劇)が盛り上がったので、何故か続くことに。

 ・雪女が消された理由。

 “魔の者 北海道編”でマリアよりも活躍した藤谷春人。
 本来は女嫌いの浄土真宗信者だったのだが、菩提寺に女性住職が就任。
 大いに異議ありと総本山に掛け合うくらいのことまでしたのだが、結局却下されたことで抗議の離檀。
 尼僧のいない宗派を探したところ、それが日蓮正宗だったという理由で移籍するくらいの男という設定だった。
 因みに日蓮正宗にも、歴史上の尼僧はいた。
 現時における最後の尼僧は、阿部日顕上人の御母堂である。
 尚、尼僧への敬称も上人とか御尊師で良いのかどうかは不明(宗派によって呼び方が違う為。日蓮正宗ではどう呼んでいたのか不明)。
 藤谷に付きまとっていた雪女がいたのだが、いつの間にか存在自体いなかったことになっている。
 藤谷が準レギュラー化し、実は女嫌いというよりは熟女好きという新設定ができた為である(よって、浄土真宗を離檀したのは、新住職に就任したのが若い尼僧だったことに異議を唱えた為ということになっている)。
 趣向が妖狐の威吹や鬼族の蓬莱山姉弟など、妖怪から魔道師へと移ったのも理由の1つである。

 ・イリーナはマリアンナに体罰を加えたことがある。

 いつもはのほほんとしながらも、掴みどころの無い大魔道師のイリーナ。
 弟子に対する育成も適当な感じで、他の師匠クラスからも呆れられているほど。
 そんなイリーナが、マリアンナに体罰を加えたことがある。
 鬼族の蓬莱山鬼之助に対する復讐の為、イリーナから使用を禁止された呪いの魔法を使ったことがバレた為。
 往復ビンタを食らわし、マスターの資格を剥奪した。
 いつもは目を細めているイリーナも、この時ばかりは大きく目を見開いてマリアンナを睨みつけていたという。
 陰ではBBAと悪口言っているマリアも、それ以上は逆らわないのはこの時の恐怖によるものと思われる。

 ・マリアンナは1度便失禁したことがある。

 権兵衛さん、すいませんでしたw

 ・マリアンナを「マリア」と愛称で呼ぶのは……日本人的感覚。

 特に門内でキリスト教が禁教になっているダンテ一門において、聖母マリアに通じる名前はあまり良くない。
 入門の際、キリスト教の聖人に通じる名前は改名するほどの者もいるという。
 イリーナがマリアンナを「マリア」と呼ぶのは、“魔の者”から逃れる為、日本に入国した際、日本人からそう呼ばれたことがきっかけであるという。
 それをイリーナが使い、後ほど出会った稲生がそれを聞いてマネして呼ぶようになった。
 当のマリアンナ本人もそう呼ばれることを気にしていない為、嫌がることはない。
 尚、実際のキリスト教におけるマリアという名前の人物は、聖母以外にもそれだけでアイドルユニットが結成できるほどの人数存在する。
 どんだけ名前のネタが少ないんだ、キリスト教。

 ・エレーナは「魔女」ではない。

 ダンテ一門に所属する魔道師の9割が女性。
 しかも残りの1割の男性魔道師は稲生を除いて、ほぼイギリスに集中しているという。
 「魔女」だの「魔道師」だのゴチャゴチャ出てくるが、結局何がどうなのかというと、まあこんな感じだ。
 人間時代、レイプ被害による処女喪失の経験者が「魔女」となり、そうでない者は「魔道師」ということになるという規定がある。
 エレーナは自分で、「処女だ」と言っているので、エレーナは魔女ではないことになる。
 姿形から、ホウキに乗って空を飛んでいる時点で、どこからどう見ても魔女なのだが。
 「魔女」から脱却する為には、そのトラウマを克服しなければならないという課題がある為、多くの「魔女」が乗り越えられずにいるらしい。
 そんな中、マリアだけ稲生との関係で乗り越えられそうになっている為、大きく注目されているとのこと。
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“大魔道師の弟子” 「登山前夜の魔の嵐」

2017-10-31 10:10:45 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[10月28日06:30.天候:晴 長野県北部山中 マリアの屋敷2F東側ゲストルーム]

 藤谷:「……不失心者 見此良薬 色香倶好 卽便服之……」
 稲生:「……不失心者 見此良薬 色香倶好 卽便服之……」

 朝の勤行の2人。
 どうせ2階東側にいるのは稲生と藤谷だけだから、特に気にせず大きな声で勤行をしても問題はあるまい。
 そう思っていた信徒2人であったが……。

 藤谷:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」
 稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」

 五座の御観念文まで終了し、最後に題目三唱で終了する。

 藤谷:「ご苦労さま」
 稲生:「いえいえ。何だか、久しぶりの勤行でした」
 藤谷:「その割にはいい声出てたよ」
 稲生:「ははは……。あ、そろそろ朝ご飯の時間なので、食堂に行ってみましょうか」
 藤谷:「分かった」

 部屋の外に出た稲生達。

 稲生:「んっ!?」
 藤谷:「こ、これは……!?」

 部屋の外、稲生達の勤行の声を聞いたトラップが全て破壊され、近くにいたメイド人形達まで被害が及ぶという惨事が起きていた。

[同日07:00.天候:晴 マリアの屋敷1F西側 大食堂]

 マリア:「半端無いなー、あんた達の勤行とやらは……」

 呆れるマリア。

 稲生:「ここが“魔”の巣窟であることを忘れていました」
 藤谷:「“魔の者”とやらも、俺達の勤行で倒せるんじゃね?」
 稲生:「いや、それは多分ムリです」
 マリア:「絶対ムリ」
 藤谷:「そ、そうスか……。それであの、イリーナ先生は?」
 マリア:「何か知らんが、藤谷さんの部屋を水晶球で覗こうとしてた」
 藤谷:「えっ!?」
 マリア:「キモいムフフ顔で」
 藤谷:「何ですと!?」
 マリア:「覗きなんて趣味悪いし、BBAのムフフ顔はキモいから止めたんだけど、振り切られちゃってね……」
 稲生:「そ、それで?」
 マリア:「藤谷さん達の勤行が始まった途端、水晶球が爆発してそのままKOだよ。今、寝込んでる」
 藤谷:「ええっ、マジっすか!?」
 稲生:「Oh!Jesus!」
 藤谷:「俺達、そんな凄いことやっちゃった???」
 稲生:「普通に日蓮正宗式の朝勤行やっただけですよね???」
 マリア:「コホン。とにかく、このままでは屋敷が崩壊しかねないので、勤行は禁止だ」
 稲生:「思い出した。それもあって、『日蓮正宗は離檀した方がいい』ってことになったんだっけ」
 マリア:「そう」
 藤谷:「しかし作者と違って稲生君自体、信仰心が失せたわけでもないし、『魔道師になるから信心活動できません』なんて、下手すりゃ黄色い救急車呼ばれるレベルだから、誰も信じてくれなくてね。離檀願は今でも俺が預かってるよ」
 稲生:「そういうもんですか」
 藤谷:「とにかく、イリーナ先生に申し訳無いことをしました。お見舞いさせてください」
 マリア:「朝食が終わったら案内するよ。勝手に男の部屋を覗いた仏罰とやらだろう。盛りのついたBBAにはいい薬だ」

 本人がいないとはいえ、かなりストレートな物言いをするのは欧米人ならではか。

[同日08:00.天候:晴 マリアの屋敷2F西側 オーナーズルーム]

 真下の1階はマリアが使用している。
 2階の主人の部屋は、やはり豪勢な造りだ。

 イリーナ:「うーん……うーん……腰が……腰がぁ……!ダルい……死ぬ〜……!」

 Ω\ζ°)チーン

 マリア:「別に、元気みたいだから見舞はいいみたいだ」
 藤谷:「ええっ!?」
 稲生:「水晶球の爆発で、どうして腰痛とダルさが???」
 藤谷:「せ、先生!水晶球は弁償しますんで、どうか1つ、お慈悲を!」
 イリーナ:「あ〜、そうだねぇ……。大魔道師の大事な水晶球を破壊するなんて、大したタマだねぇ……」
 藤谷:「何でしたら今、ここに小切手がありますんで!」

 藤谷は黒いスーツのジャケットから長財布を出した。
 財布だけで数万円しそうな感じだが、その中には如何にも札束が入っていそうな感じでもある。

 イリーナ:「いやいや。そんなものは必要無いよ」
 藤谷:「で、では!?」
 イリーナ:「この屋敷のエントランスに鍵を掛けた……!あと、屋敷の全トラップを作動させたから、永遠にこの屋敷で一緒に暮らしましょう……!フフフフフ……!」
 藤谷:(゚Д゚;)
 稲生:( ゚д゚)
 マリア:「……私の部屋にマスターキーがあるし、トラップを全て止める装置もあるから、それで帰ってくれ」

 マリアも一応、この屋敷においては管理権限のある住み込みの管理人である。

 藤谷:「へ、へい」
 稲生:「それじゃ先生、お大事に」
 イリーナ:「あっ、待って待って!さっきの全部、ウソよ、ウソ!見捨てちゃイヤーン!

 魔法使いの師弟関係も上下関係は厳しいものがあるのだが、その弟子がマスター認定されるとその距離は一気に縮まるということか。

[同日09:00.天候:晴 マリアの屋敷 エントランス]

 稲生:「忘れ物は無いですか、班長?」
 藤谷:「おう、バッチリ!」

 藤谷は車に乗り込んでエンジンを掛けた。

 稲生:「昨日来た道を真っ直ぐ戻れば、あの県道の峠道に出れますから」
 藤谷:「了解。それじゃ、今度は……」
 稲生:「正証寺でお会いしましょう」
 藤谷:「おっ、そっか。1度上京するって言ってたもんな。それじゃ、正証寺で会おう」
 稲生:「よろしくお願いします」
 藤谷:「それじゃマリアさ……あ、いや、先生。イリーナ先生によろしくお願いします」
 マリア:「ああ。藤谷さんも、変なBBAに目を付けられないように」
 稲生:「ええっ?」

 藤谷は車を走らせて、屋敷をあとにした。
 未舗装の砂利道とはいえ、そんなに走りづらくは無い。
 まるで林道を走っているかのようだ。
 そしてしばらく進むと、例のトンネルが見えて来た。
 トンネルはそんなに長くなく、入るとすぐに出口が見えて来るほどだ。
 但し、照明は無い。
 そこをヘッドライトを照らして進み、何の問題も無く反対側に抜けた。

 藤谷:「おや?」

 藤谷はミラーでさっきのトンネルを見た。
 トンネルの坑口の周りは、白いコンクリートになっていた。
 まるで、最近の鉄道トンネルのようである。
 確か来た時は、赤いレンガ造りだったはずだが……。

 藤谷:「ヘタに調べない方がいいな。要するに、あれが魔法使いの家に出入りする為のゲートなんだろう」

 藤谷は無事に県道に出ると、そのまま白馬村の中心街へ車を走らせた。

[同日同時刻 天候:晴 マリアの屋敷2F西側 オーナーズルーム]

 イリーナ:「…………」

 イリーナは机の前にタロットを並べていた。
 そして、その占いで出た結果に対して眉を潜めていた。

 マリア:「師匠、入ります」
 イリーナ:「いいよ」
 マリア:「まだ具合が悪いんですか?前にエレーナが押し売りしてきた薬がありますけど、使います?」
 イリーナ:「いや、大丈夫大丈夫。ハーブティーでも入れてくれれば」
 マリア:「分かりました。……何かあったんですか?」
 イリーナ:「うん、今度の稲生君の大石寺参詣なんだけどね……」
 マリア:「何か変なことが?」
 イリーナ:「特に無いわ。ユウタ君と、それと私達はね。ああ、もちろん藤谷さんも」
 マリア:「?」
 イリーナ:「でも一応、大石寺には私達も行きましょう。本当はユウタ君達が参詣している間、私達は街中で観光でもしたいところだけど」
 マリア:「はあ……」

 イリーナは何も無いとは言うが、そこは長年師事してきたマリア。
 やはり、イリーナが何か企んでいると踏んだのである。
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先日の雑感

2017-10-31 00:03:01 | 日記
 実はこの前の日曜日、知り合いから4つ年下の女性を紹介されて会っていた。
 土地勘の無い横浜市まで上野東京ラインで行ったのだが、何しろ横浜駅は大宮駅よりもデカい。
 間違い無く仙台駅よりもデカいだろう。
 思いっ切り迷子になった。
 西口へ出れば良いと言われ、西口に出たのだが、西口も1つだけではなかったらしい。
 駅前ロータリーに行くように言われたのだが、そもそも西口と言われた場所の前にロータリーが無い。
 どうも知らず知らずのうちに、相鉄線の方に行っていたらしい。
 はてさてどうしようか迷っていたところ、私は道路に注目した。
 もっと具体的に言えば、道路を走る路線バス。
 私の目の前を、色々な行き先のバスが通過して行く。
 しかも、同じ方向から。
 ピンと来た私は、バスが来る方向に向かって歩いた。
 するとビンゴ!バスプールがあった。
 大きな駅の東西または南北の出入口の前は、必ずと言って良いほどバスプールがある。
 そして、そこがロータリーなのである。
 何とか無事に待ち合わせ場所に着いた私だが、その後である失敗をしでかした。

 それはここ最近の趣向を暴露してしまったこと。

 ここ最近、つぶやいているだろう?

「仕事帰りの一杯は最高だぜ、ヒャッハー!」
 である。

 私がビールのジョッキ一杯やらグラスカクテル数杯やら飲めるようになったのは、ここ最近のことで、それまでは乾杯の一杯ですらままならない下戸であった。
 私が調子に乗って最近それにハマっていることを話したら、何故かドン引きされた。
 どうも女性は私の古い情報、下戸であることに安心して会うことにしてくれたらしいのだが、実は違っていたことに幻滅。
 今日、お断わりの連絡があった。

 信仰を辞めてからどんどん体質が変わっている。
 いや、別に体重はあまり増減は無いし、持病の潰瘍性大腸炎も相変わらず寛解状態のままだ(そうでないと、そもそも飲めるわけがない)。
 普通は歳を取っていく度に下戸になっていくものというイメージがあったのだが、私の場合は何故かその逆。
 そのうち、イリーナみたいにウォッカまで行くようになるかもしれない。

 私自身はマリアンナみたいに飲み過ぎて、ハイになってくれたりしてもOKなんだけどね。
 いや、別に後でお持ち帰りできるからとか、そんなんじゃなくて。
 だって、私もジョッキ一杯くらいまでしか飲めないわけだから、お持ち帰りできるわけないじゃない。
 お互い一緒に酔い潰れるのがオチだ。
 そう。一緒に酔い潰れてくれる人とか、そんなのがいいなと思っている。
 ま、“大魔道師の弟子”では酔い潰れたマリアを稲生がちゃんと紳士的に介抱しているし、“アンドロイドマスター”シリーズでは敷島とアリスが夫婦でロイド談義を熱くやっている(それに振り回されるのは大抵シンディ、その次にエミリー)。

 顕正会ではもちろんそんな人間は御法度とされているし、法華講でもそういう人と巡り会うことは無かった。
 もし出会えていたのなら、また違った人生になっていただろう。
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“大魔道師の弟子” 「意外な訪問者」 2

2017-10-29 19:17:26 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[10月27日19:00.天候:曇 長野県北部山中 マリアの屋敷]

 県道からはマリアの屋敷に通じる道は見えない。
 だが、稲生が同乗していることにより、藤谷の車のライトには道が映し出されていた。

 稲生:「この道を進んでください」
 藤谷:「こりゃとんでもねぇ。道を塞いでいる土砂が勝手に消えて行くじゃないか。そういう風にしてカモフラージュしていたのか」

 舗装はされていないものの、車1台なら十分に通れる道を進む。
 そして、赤いレンガ造りのトンネルがあった。

 稲生:「よし、赤くなってる。あのトンネルを潜ってください」
 藤谷:「お、おう。……赤くなってる?」
 稲生:「いえ、何でもありません」

 トンネルを抜けると、マリアの屋敷が浮かび上がった。

 稲生:「あれです」
 藤谷:「こりゃあ、ホラー映画に出てくる洋館そのものだな」

 藤谷は正面玄関の前に車を止めた。

 藤谷:「車はどこに駐車すればいいんだい?」
 稲生:「このまま、ここでいいですよ。どうせ、他に誰も来ませんし」
 藤谷:「随分フランクだなー」

 車から降りて、玄関から中に入る。

 イリーナ:「やあやあ。よく来てくれたねぇ」
 藤谷:「イリーナ先生!我が社が、いつもお世話になっております」
 イリーナ:「いいよいいよ。藤谷さんも、命拾いしたねぇ」
 藤谷:「は?」
 イリーナ:「夕食の用意ができてるよ。ユウタ君、先に部屋に案内してあげて。ユウタ君の隣の部屋、空いてるでしょ?」
 稲生:「分かりました。それじゃ班長、こちらへ」
 藤谷:「あ、ああ」

 稲生は先にエントランスホールの吹き抜け階段を上がって、右に曲がった。
 藤谷も後から付いてくる。

 稲生:「長野へは仕事で?」
 藤谷:「そうなんだ。大町市のスキー場建設でね。せっかく近くまで来たんだから、ついでに寄って行こうと思ったんだ」
 稲生:「いや多分、大町市と白馬村はそんなに近いとは思えないです」
 藤谷:「村で聞いたら、山の中に『魔女の住む屋敷がある』だとか、『キリスト教会が魔女狩りに向かったが、誰一人帰って来なかった』とか、色々な噂があったね」
 稲生:「良かったですねぇ、僕達仏教徒で……。あっと!そこ、気をつけて」
 藤谷:「なに?」
 稲生:「即死トラップがあるんで。上から落ちてきます」
 藤谷:「金ダライが?」
 稲生:「違います!槍です!」
 藤谷:「ええっ?」
 稲生:「おっと!その壁の絵に近づかないで!描かれている死神、本当に出て来て鎌で襲って来るんで」
 藤谷:「ええっ!?」
 稲生:「ダメです!こっちを歩かないと!レーザートラップがありますよ!」
 藤谷:「な、何ちゅう厳戒さだ……」

 そして、部屋に着く。

 稲生:「班長はこの部屋を使ってください」
 藤谷:「おっ、結構まともな造りだ。スキー場の近くにあるペンションの客室みたいだな。……部屋の中に仕掛けは無いだろうね?」
 稲生:「……。無いですよ」
 藤谷:「ちょちょっ……!今の間は何だ?今の間は?」
 稲生:「それより、荷物を置いたら夕食にしましょう」
 藤谷:「ん?……そうだな」

 再び廊下に出た。

 稲生:「あの部屋がバスルームです。トイレもあそこです」
 藤谷:「ああ、分かった」

 稲生が専用で使っている部屋にはシャワールームとトイレがあるのだが、他のゲストルームにはそれが無い。

 それから稲生達は、大食堂に到着した。

 イリーナ:「東側のトラップは解除しておいたから、心配しなくていいよ」
 稲生:「何だ、そうですか」
 イリーナ:「さすがにバスルームに行くのに、いちいちトラップを気にしてちゃ、ゲストもゆっくり過ごせないものねぇ……」
 稲生:「それもそうですね」
 藤谷:「あ、先生方。手ぶらで来るのも何だと思いましたので、お土産を持って参りました」

 藤谷が持って来たのは山梨県で製造されているワイン。

 イリーナ:「おやまあ、これはまだ飲んでなかったねぇ。よし、じゃあ秘密のトラップも解除しておこう」
 稲生:「まだあったんですか!」
 藤谷:「稲生君、ところで御登山のことなんだけど……」
 稲生:「ええ。参加しますよ。あれ?封筒に申し込み用紙が入って無かったんですけど、それってお寺に直接ってことですか?」
 藤谷:「そうなんだ。頑固な登山部長が、末寺でないと受け付けんと聞かなくてね」
 稲生:「それですよ!目標登山者数が減った理由!」
 藤谷:「表向きは、末寺に足を向かせようということなんだろうけどね」
 稲生:「半端無いですね、登山部長は」
 藤谷:「ところで稲生君は、どうやって大石寺まで行くの?」
 稲生:「東京駅から新幹線で行こうかと。末寺に行く為に、東京で一泊する必要があるので」
 藤谷:「なるほど、そうか」
 稲生:「班長はあのベンツで?」
 藤谷:「いや、ベンツはベンツなんだが……Vクラスに乗せられそうだ」
 稲生:「Vクラス?」
 イリーナ:「7人乗りのミニバンさね」
 藤谷:「そうです」
 稲生:「何でまた?誰のですか?」
 藤谷:「何でも、顕正会で組長やってた鈴木ってヤツの車なんだが……。ある宿坊に御受誡した徳森君って知ってるか?顕正会では、『特盛くん』と呼ばれていたそうなんだが……」
 稲生:「聞いたことあるなぁ……?」
 マリア:「! 新千歳空港で会ったことがある!」
 稲生:「そうなんですか?」
 マリア:「沢尻エリとかいう彼女がいたはずだ」
 藤谷:「あの人達も元顕正会員なんだが、鈴木君もまた同じ組織にいたらしいんだ」
 稲生:「それがどうして正証寺に?同じ宿坊に行けばいいのに」
 藤谷:「まあ、御受誡前に色々あったみたいだ。そんなわけで、大石寺にはそいつのベンツVクラスで行くことになったよ。元々金持ちのボンボンみたいだから」
 稲生:「へえ……」
 藤谷:「といっても同乗するのは、婦人部のお年寄りばっかよ」
 稲生:「いい功徳になりそうですね」
 藤谷:「色んな意味でな」

 尚、顕正会員にとって、特別布教区の法華講員はイコール妙観講というイメージが強い。
 その為、鈴木元組長は特盛くん達が妙観講に行ってしまったのではないかと誤解して、ひどく動揺したらしい。
 その後で特盛くん達から折伏があったそうなのだが、妙観講に対する敵対心の強さから、頑なに断っていたという。
 紆余曲折あった後、藤谷からの折伏を受ける。
 末寺なら妙観講の影響は無いだろうということで、正証寺にて御受誡を受けたとのこと。

 稲生:「班長、夕方の勤行は終わってるんですか?」
 藤谷:「県内の末寺で、参加させてもらったよ」
 稲生:「さすがは班長」

 稲生は大きく頷いた。
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“大魔道師の弟子” 「意外な訪問者」

2017-10-28 20:00:43 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[10月21日18:00.天候:曇 長野県北部山中 マリアの屋敷1F西側 大食堂]

 稲生:「へえ……。アナスタシア組の皆さんが来ていたんですか」
 マリア:「そう。東アジア魔道団の動向について、師匠に情報提供しに来たみたい」
 稲生:「“魔の者”は最近気配を見せなくなって良かったと思っていたんですが、今度は同じ魔道師が敵対してくるなんてねぇ……」
 マリア:「実際にこの屋敷を壊されたんだ。あれが実質的な宣戦布告みたいなものさ」
 稲生:「うーむ……」
 イリーナ:「ごめんごめーん!遅くなったわ。さ、早いとこディナーにしましょ」

 マリアの屋敷と銘打ってはいるが、実際のオーナーはイリーナであり、マリアは住み込みの管理人といったのが実情だ。
 イリーナが席に着くと、料理を乗せたワゴンをミカエラとクラリスが持って来た。
 フランス人形形態の時はコミカルな動きを見せてくれるマリアの人形達だが、人間形態の時はこの屋敷のメイドとしてよく働く。
 但し、侵入者に対しては魔女の使役する人形として、サバイバルホラーのザコ敵並みの攻撃を仕掛けて来る。
 あまり酒を飲まない稲生は葡萄ジュースだが、イリーナとマリアはワインである。
 マリアはワインしか飲まないが、イリーナはロシア人らしく、ウォッカを飲むこともある。
 イギリスもビールが有名な国ではあるが、マリアは何故か弱い。
 これは多分、マリアは生粋のイギリス人ではないからだろう。
 元はハンガリー生まれの移民である。
 本人曰く、日本のビールが合わないだけらしいが……。

 イリーナ:「ユウタ君、チケットは取って来たの?」
 稲生:「はい。ホテルも都内に一泊取りました」
 イリーナ:「東京に一泊?」
 稲生:「はい。といっても、ワンスターホテルではありませんので」
 イリーナ:「別に、ワンスターホテルでもいいのよ」
 稲生:「それが、満室だったんです。エレーナに聞いたら、やっぱり3連休に掛かっているので混みやすいのと、あと団体の予約が入っちゃったとのことで」
 イリーナ:「団体の予約?」
 マリア:「嫌な予感がするけど、聞いてみよう」
 稲生:「はい、アナスタシア組です」
 イリーナ:「ハハ……(苦笑)」
 マリア:「日本を超エンジョイしてるじゃないか」
 稲生:「その為に少し高いホテルになっちゃいましたけど、その分、設備とかは充実してるはずなんで」
 イリーナ:「ああ。いいよいいよ。でも、どうしてわざわざ東京のホテルに一泊するんだい?」
 稲生:「御登山の参加費用を正証寺に納めなくてはならないので。それに、正式に離檀願が受理されていないということは、やっぱり参詣する必要があるだろうと思いまして」
 イリーナ:「いい心掛けだね」
 稲生:「……本当にいいんですか?魔道師の修行と仏法を併用しちゃって……」
 イリーナ:「日蓮正宗さんの内規に違反してなければいいよ。そちらの宗派に、『魔道師の修行と並行するべからず』ってあるの?」
 稲生:「無いと思います。ただ、占いとかは宗門の書籍で否定してるんですよね。“となりの沖田くん”とか……
 イリーナ:「日蓮さんも、蒙古襲来を自分で占って、『今年を過ぎることはないでしょう』とか時の権力者に言ってなかった?」
 稲生:「あれ、占ってたのかなぁ……?」
 イリーナ:「あ、因みにフビライ皇帝を唆したヤツが東アジア魔道団にいる可能性が出て来たから気をつけてね」
 稲生:「いきなり真相暴露!?」
 イリーナ:「まあ、確かに占い師にもインチキなヤツらは多いから、それに惑わされるなって意味だとは思うけど」
 稲生:「あ、きっとそうですよ」
 イリーナ:「そりゃ確かに、自分で信じる神様仏様がいるんだったら、そっちの教えを優先するべきよ」
 稲生:「……ですね」
 マリア:「因みにうちの門規では、キリスト教の信仰だけ禁止されてる。仏教は禁止されてないから、ユウタの信仰は問題無いはずだ」
 イリーナ:「ダンテ先生もユウタ君のことは知ってるわけだから、そこで注意しないということは、そういうことになるわね」
 稲生:「なるほど」
 イリーナ:「東京で一泊した後、富士山の麓に向かうのね?」
 稲生:「その予定です。高速バスだと作者みたいに往復ヒュンダイ・ユニバースに当たるというとんでもないことになる上、着山時間に間に合わなくなる恐れがありますので、新幹線にしました」
 イリーナ:「うん、分かった分かった。ついでだから、向こうの温泉にゆっくり浸かりたいんだけどぉ……?」
 稲生:「ええ、一泊して帰りましょうね」
 イリーナ:「良かったね、マリア!」
 マリア:「はい!」
 稲生:(温泉旅行がしたかったのかな?この女性達は……)

 稲生はパクッとステーキ肉を頬張った。

[同日22:00.天候:曇 マリアの屋敷2F西側 主人の部屋]

 イリーナは机の上に自分の水晶球を置いている。
 その大きさは据置タイプの大きなもので、バレーボールくらいの大きさがある。

 イリーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。近日中に何か変わったことがある場合、この水晶球に映したまえ」

 イリーナが水晶球で未来を占っていた。
 これはいつものことである。
 マリアもタロットを使った占いの練習をしていた。

 イリーナ:「ありゃ?」
 マリア:「どうしました?」
 イリーナ:「噂をすれば何とやら……かねぇ」
 マリア:「何がです?まさか、東アジア魔道団の襲撃が?」
 イリーナ:「いや、そうじゃないんだよ。アタシ達的には、大勢に影響は無いの。ただ、ユウタ君が大変なことになりそうな……」
 マリア:「それのどこが大勢に影響が無いんですか!ユウタに何が起こるんです?私のタロットでは、別にユウタに何かあるような結果は出ていませんよ?」
 イリーナ:「うん。ユウタ君自身はね。ま、ユウタ君に当日の行動についてちゃんと指示してあげましょう」
 マリア:「???」

[10月27日17:00.天候:晴 マリアの屋敷に通じる隠れ道と公道の交差点]

 稲生:「うー……!日が暮れて来ると寒いぃぃ……!何で先生は、こんな所に立っていろって言うんだろう???僕の大事な人がここを通り掛かるから、ここで目印になってくれって言うんだけど……」

 滅多に車も通らない峠道。
 路線バスですら平日は1日に3本、土曜日は2本、休日は1本しか無いという有り様だ。
 この交差点のすぐ近くにはバス停があり、はっきり言って稲生くらいしか乗り降りしない他に誰得的なバス停だ。
 仙人峠なんて名前があるのだが、魔道師も仙人みたいなものだとすると、あながち嘘では無かったりする。

 稲生:「ん?車だ……」

 夕闇迫る峠道。
 オレンジ色のセンターラインが引かれている、辛うじて2車線ある県道。
 そこを1台の乗用車が走って来た。
 あまり前に出ると車に轢かれる恐れがあるが、かといって隠れては意味が無いだろう。
 稲生はバス停の前に立ち、いかにもバスを待っている者という体で車から見えるようにした。
 もっとも、もう既にバスの運行は終了しているのだが。
 車は急停止するようにして、バス停から10メートルほど行き過ぎて止まった。
 その車は見覚えのあるベンツEクラスだった。
 型落ちの古いタイプ。
 しかし、角ばったボディが現行モデルより威圧感を出している。
 左ハンドルの運転席から顔を出したのは……。

 藤谷:「稲生君!どうしてここに!?」
 稲生:「藤谷班長!?……こそ、どうしてここに?……あ、いや、僕はイリーナ先生に言われてここに来たんですけど……」

 イリーナの占いによれば、藤谷はこの先で東アジア魔道団の待ち伏せに遭い、崖から車ごと落とされて御陀仏になるという予知だったらしい。

 稲生:「マリアさんの屋敷に案内します。急いでください。こっちです!」
 藤谷:「あ、ああ!」

 稲生は助手席(左ハンドルなので、進行方向右側)に乗り込むと、すぐに藤谷のナビを行った。
 この為、藤谷は事無きを得たのである。
 これも仏法の功徳、御加護であろうか。
コメント
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