報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「秩父へ向かう」

2017-03-16 22:46:18 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月11日08:21.天候:晴 JR大宮駅・埼京線ホーム]

〔おはようございます。22番線に停車中の電車は、8時21分発、りんかい線直通、各駅停車、新木場行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 祝日の埼京線電車で発車を待つ敷島達。
 ドア横の席に敷島は座るが、ロイド姉妹は着席せず、敷島の横に立っている。

〔「お待たせ致しました。8時21分発、埼京線、りんかい線直通の新木場行き、まもなく発車致します」〕

 地下ホームに発車メロディが鳴り響く。

〔22番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 ドアチャイムが3回鳴り、バン!とドアが閉まる。
 昔の電車は圧縮空気を使ったドアエンジンを使用していた為か、ドアごとに閉まる速度が微妙に違ったりしていた。
 埼京線だと旧型の205系辺りまでである。
 E233系などの最新式は完全に電気式のドアになった為、ほぼ全てのドアが寸分違わず開閉している。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は埼京線、りんかい線直通各駅停車、新木場行きです。次は北与野、北与野。お出口は、右側です〕

 尚、この場にはアリスがいない。
 実は昨夜、単身赴任から帰った際、最高顧問が今日、製作状況を見に行くとアリスに話したら、どこかへ電話していた。
 恐らく、DCJの関係者で間違い無いだろう。
 そして今朝早く、迎えの車に飛び乗って行ってしまったのである。
 もちろん、行き先は科学館ではなく、秩父営業所(兼研究所)だ。
 シンディが再起動する間もなく行ってしまったから、シンディが置いてけぼり状態になったわけである。
 幼子に関してはいつもの通り、メイドロイドの二海に頼めば良いのだが、それにしてもどうして慌てて出て行ったのかが気になった。
 尚、アリスの護衛については、アリスが製作した最新型のバージョン5.0、マリオとルイージが一緒にいるから大丈夫とのこと。
 一応、全車指定席のレッドアローの乗車券については4人分取ってはいるのだが……。

 シンディ:「マリオとルイージが役に立つか分かりません。私、ジェットエンジンですぐにでも後を追いたいです」
 敷島:「まあ、確かに気持ちはよく分かる。だがシンディに関しては、特別だからな。最高顧問はお前がお気に入りなんだ。そのお前が一緒に来なくてどうする?」
 シンディ:「それはそうですが、マスターの護衛も私にとっては大事な使命の1つですので……」
 エミリー:「いいからシンディ、社長の仰る通りにするんだ」
 シンディ:「姉さん」
 エミリー:「確かにマリオとルイージのAI性能については、私も疑問が82.52%ほどある。しかし、お前はアリス博士をマスターとしているのと同時に、敷島社長からのユーザー登録もされているのだ。そのユーザーの御希望に沿うのも使命だと思うが?」
 シンディ:「そこは姉さんの仰る通り。だけど、物事には優先順位がある。オーナーとユーザー、優先されるのはオーナーの方よ?」
 エミリー:「関係無い」
 シンディ:「は?」
 エミリー:「どちらも優先されるべきもの。臨機応変な対応が求められる。杓子定規に捕らわれていては、それはロボットと同じ。私達は自分で考えて行動できるロイドなのだから、それではいけない」
 シンディ:「……そのロボットのフリして皆を騙していたのはどこの誰だっけ?」

 シンディの言動に、エミリーの眉間にシワが寄せられた。

 敷島:「おい、もうやめとけ。アリスだって想定済みさ。マリオとルイージについては、あくまでお前達と比べれば性能が劣るというだけであって、ロボットとしてはかなり優秀な部類に入るぞ。普通の護衛ロボットとしてなら十分さ。シンディ、今日は最高顧問に可愛がってもらうのが使命だ。25億円もポーンと出して、お前達の妹が欲しいということになったのも、シンディを気に入ったからなんだからな」
 シンディ:「はあ……それは光栄ですけどね」
 敷島:「お前がエミリーより勝った点じゃないか、そこは」
 シンディ:「そうですかねぇ……」
 エミリー:「DCJ様の売り上げだけでなく、敷島エージェンシーの株も上がったのだ。シンディの功績だぞ」
 シンディ:「そ、そうかしら?私の知らない形でお役に立てるなんて光栄ですわ」

 エミリーは敷島にウインクをした。

 敷島:(やっと機嫌が直ったな)

[同日08:55.天候:晴 JR池袋駅→西武鉄道池袋駅]

 各駅停車ながら快速の通過待ちなどは無かった為、比較的早く池袋駅に接近する。

〔「池袋でお降りのお客様、ご乗車ありがとうございました。まもなく池袋、池袋です。お出口は、右側です。池袋を出ますと、新宿、渋谷、恵比寿、大崎の順に止まります」〕

 池袋駅の北側は線形が悪い為、減速してホームに入線する形になる。

〔いけぶくろ〜、池袋〜。ご乗車、ありがとうございます。次は、新宿に止まります〕

 ドア開扉の際もチャイムが3回鳴る。
 平日は朝ラッシュの時間帯で押し合いへし合いの状態なのだろうが、祝日の今日はそこまでではない。
 だがターミナル駅の1つである為か、多くの乗降客があるという事実は覆らない。
 敷島達は電車を降りた。

 敷島:「四季エンタープライズに行く時でも、JRは使わないからなぁ……」

 と、敷島。
 敷島エージェンシーのある豊洲からなら、東京メトロ有楽町線で行ける為である。

 エミリー:「御心配いりません。私達で待ち合わせ場所まで先導致します」
 敷島:「よろしく頼むぞ」

 エミリーやシンディのナビのおかげで、迷わずに西武鉄道の地上改札口まで行くことができた。

 孝之亟:「おっ、やっと来たか」
 敷島:「最高顧問」
 エミリー:「おはようございます」
 シンディ:「おはようございます」

 ロイド姉妹は寸分たがわぬタイミングで孝之亟に挨拶した。

 孝之亟:「うむ。今日はよろしく。……キミ、ちゃんと合流できたので、もう良いぞ」
 運転手:「はい。お気をつけて。失礼致します」

 孝之亟はお抱え運転手に言った。

 敷島:「それでは、こちらがキップです。まだ少し時間がありますが……」
 孝之亟:「構わんよ。ベンチくらいあるじゃろう。そこで少し休んでいることにしよう」
 敷島:「はい」

 敷島達は改札口を通ってホームの中に入った。
 特急専用ホームがあって、昔はそこに入るのに、もう1つ改札口を通らなくてはならなかったのだが、今はそれが無くなっている。
 チケットレスサービスが充実したからだろう。
 もっとも、敷島達は相変わらずの紙のキップだが。

 シンディ:「最高顧問、こちらでしばしお待ちを」
 孝之亟:「うむ、すまんの、デイジー」
 シンディ:「デイジー?」
 孝之亟:「はっ!おっと、いかん!……えーと……」
 シンディ:「私はシンディです」
 孝之亟:「おっ、そうじゃった。シンディじゃったな」
 敷島:「やだなぁ、最高顧問。シンディの名前を忘れるなんて、大丈夫ですか?」
 孝之亟:「う、うるさいのぅ。ちと、ど忘れしただけじゃ。まだ、耄碌はしとらんぞ」
 敷島:「それならいいんですがね……」

 特急レッドアローを待っている間にも、他のホームでは電車が到着する度に、多くの乗客がぞろぞろと吐き出されていた。
コメント (2)
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