報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「秩父紀行」

2017-03-19 20:50:33 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月11日13:00.天候:晴 DCJ秩父営業所]

 デイジー:「オーナー様……私の……オーナー様……」
 アリス:「そう。オーナー様に対しては、基本的に『マスター』とお呼びすること。但し、オーナー様の御意向にもよるわ」

 アリスの仕事は基本的な『心得』を入力すること。
 率先してシンディもサポートに当たっている。
 シンディの妹として、8号機のアルエットもいるにはいるのだが、フルモデルチェンジの従妹という感じなのに対し、9号機は再び旧モデルで造られた実妹のようなものだ。
 シンディにとっては、7号機のレイチェル以来の実妹ということになる。
 尚、7号機のレイチェルの設計データもDCJで確保しているのだが、レイチェルがあんなに大暴れしてしまった以上、再製作はかなり不可能とされている。

 シンディ:「最高顧問、デイジーには何て呼ばれたいですか?」
 孝之亟:「そうじゃのう……。マスターで良い。うむ。実に懐かしい響きじゃ」
 シンディ:「懐かしい?」
 孝之亟:「まあ、ちと色々あってな……」
 シンディ:「? まあ、いいでしょう。デイジー、分かった?こちらのオーナー様はマスターとお呼びすること」
 デイジー:「はい、お姉様」

 デイジーはシンディをモデルにデザインされたということもあって、とてもよく似ている。
 違うのはシンディが金髪なのに対して、デイジーは黒髪であるという点、そしてやや肌が色黒になっているという点である。

 孝之亟:「ううーむ、素晴らしい。是非ともこのまま連れて帰りたいくらいじゃ」
 アリス:「お気に召して下さったようで何よりです。ただ、あいにくですが……」
 孝之亟:「うむ、分かっておる。テストがあるのじゃろう。楽しみにしておるでな」

[同日15:00.天候:晴 埼玉県秩父市・白久温泉]

 (BGM:がんばれゴエモン 〜ゆき姫救出絵巻〜より、ゴエモン音頭)

 敷島達の乗ったタクシーが旅館の前に到着する。
 尚、アリスも含めて5人となる為、タクシーはワゴンタイプのものを予約した。

 敷島:「こんな所まで来ちゃって……」
 孝之亟:「心配するでない。わしの奢りじゃ。わしの知り合いが経営している旅館でな、いつか来ようと思っていたのじゃ」

 その為か入店しようとした際、中居達がズラリと並んで出迎えし、そこから法被を着た老支配人が出て来た。
 歳の頃、孝之亟と同じくらいだ。

 支配人:「孝ちゃん、来てくれたんじゃな……」
 孝之亟:「梅ちゃんや、借りを返しに来たぞ……」

 この2人に何があったのかは知らないが、感動の再会であるらしい。

 孝之亟:「隠居しても尚、自由な行動が許されん。なかなか来れずに、悪かった……」
 支配人:「いいんじゃよ。孝ちゃんもこんなに偉くなって……」
 孝之亟:「いやいや、本来ならそこにいるのはわしで、梅ちゃんが社長をやるはずだったのじゃ」
 支配人:「……おっと。お客様もおるというに、立ち話はいかんな」
 孝之亟:「わしの遠い孫とその嫁、そして秘書達じゃ」
 支配人:「これは遠い所をようこそお越しくださいました。小さい旅館ですが、どうかごゆっくりお寛ぎください」
 敷島:「どうも、お世話になります」
 アリス:「確かに遠かったけど、でも同じ埼玉県……」
 敷島:「こらぁ!」

 そして部屋に入る。
 純和風の部屋であるが、孝之亟が予約しただけに、とても広い。
 二間続きの部屋である。

 孝之亟:「わしはこっちで寝るから、キミ達はそっちで休みなさい」
 孝夫:「いいんですか?」
 孝之亟:「その代わり、シンディを貸してくれ」
 孝夫:「夜伽の相手としてですか?」
 孝之亟:「いかんかの?」
 孝夫:「まあ、いいですけど……。いいよな、アリス?」
 アリス:「Yotogi?」
 孝夫:「シンディに添い寝を頼むってことだよ。色んな意味で」
 アリス:「Ah...」
 孝之亟:「何じゃい?色んな意味って」
 孝夫:「いや、何でも……」
 エミリー:「私は外で見張りをしていましょうか」
 孝夫:「いや、いいよ。お前も一緒に休んでくれ」

 そんなことを話していると、支配人が入って来た。

 支配人:「孝ちゃん、ちょっといいかね?」
 孝之亟:「何じゃい、梅ちゃん?」
 支配人:「今日の宿泊なんじゃけど、孝ちゃん入れて5名じゃよな?」
 孝之亟:「それがどうした?」
 支配人:「食事が3人分しか予約されとらんのじゃが、これは一体……」
 孝之亟:「ああ、それなんじゃが、事情があって、このコ達は食事をせんのじゃ。このコ達だけ素泊まりで頼む」
 支配人:「コンパニオンを連れて来たのかね?さすが孝ちゃんじゃ」
 孝之亟:「違う違う。秘書じゃと言ったじゃろう。コンパニオンを頼みたかったら、ちゃんと置き屋に頼むわい」
 支配人:「まあいいや。じゃ、食事は3人前でいいんじゃな?」
 孝之亟:「うむ。複雑な料金計算になって申し訳無いが、よろしく頼むぞ」
 支配人:「もちろん。それで夕食の時間は……」

 何十年もの付き合いである支配人と孝之亟の間ではざっくばらんな会話になっているが、それ以外の敷島達に対しては……。

 支配人:「4名様まででしたら、こちらのお部屋にお食事を運ばせて頂きます」
 敷島:「どうも。あ、それで食事の人数を確認したんですね」

 支配人はその後、大浴場の案内とか館内の案内とかをした。

 孝之亟:「なかなか立派な旅館じゃないか。全然小さくないぞ。さすがのわしも、こういう宿泊の経営はできんのぅ……」
 支配人:「それではどうぞごゆっくり」
 敷島:「どうも」
 エミリー:「お世話になります」
 シンディ:「お世話になります」
 アリス:「いいねぇ、これがKotatsu?うちにも欲しいわぁ」
 敷島:「俺らんとこのマンション、炬燵を設置できる和室が無いだろ」

 さすがに掘り炬燵ではないようだ。

 敷島:「では“ベタな温泉旅館の法則”と致しまして……」

 敷島は立ち上がると、クロゼットを開けた。
 その中には浴衣が入っている。

 敷島:「早速、温泉入ってきましょうか」
 孝之亟:「おお、そうじゃの」
 アリス:「もう入っていいんだ?」
 敷島:「もちろん」
 シンディ:「マスター、お隣の部屋で着付けを」
 敷島:「おいおい、浴衣くらい1人で着ろよ」
 アリス:「うるさいわね」
 孝之亟:「わしも手伝ってもらいたいのじゃが……?」
 シンディ:「あー、えっと……」
 エミリー:「僭越ながら、私でよろしければ……」
 孝之亟:「おっ、すまんの。孝夫は1人で着れるんじゃったな?」
 敷島:「当たり前じゃないっスか!」
コメント (11)
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