報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「墨田中学校球技大会」

2018-11-30 19:25:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月2日21:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 いよいよ明日は、リサの中学校で球技大会が行われる。
 本当なら仕事の関係で行けない予定であったのだが……。

 愛原:「リサ、明日行くよ」

 私はリサの頭を撫でながら言った。

 リサ:「本当に!?」
 愛原:「うん、本当」
 リサ:「お仕事はいいの!?」
 愛原:「何とか調整した」

 するとリサは私に抱きついた。

 リサ:「愛原さん、大好き!」
 愛原:「おわっ、とととと!」

 リサの力が強くて、ソファの上に倒れ込む形となる。

 高橋:「クソガキが。……まあ、今回だけは譲ってやる」

 そう言いつつ、背中には右手で持ったマグナムを隠し、左手でそれを震えながら押さえていた。

 高橋:「アネゴに『JCに合法的に抱きつかれた役得』とか嫌味言われますから、この辺で」
 愛原:「おっ、そうだな。リサ、そろそろ放してくれないか」
 リサ:「やー
 高橋:「『やー』じゃねぇ!」

 少なくともリサに組み付かれたら、命は無いものとだけは分かった。
 人間態でこの力なんだから。

 愛原:「リサ、スカート捲れてる。みっともないから放れなさい!」
 リサ:「はーい」

 リサはようやく私から離れ、捲れたスカートを直した。

 愛原:「この状態でも身体能力は普通の女子中学生以上にある。1つ注意として、これ以上の力は出さないこと。特に斉藤さんはリサにベッタリだから、ふとしたことで正体がバレる恐れがある」
 高橋:「確かに、先生の仰る通りです」
 リサ:「分かった。気をつける」
 高橋:「正体がバレたら、便所か体育館裏に連れ込んで、忘れるまでボコせ」
 リサ:「うん、分かった。お兄ちゃん」
 愛原:「こら、高橋!変な事教えるな!」
 高橋:「え?ですが、俺が学生の時はそうしてましたけど?」
 愛原:「オマエの経験を幼気な少女に押し付けるな!」

 高橋、段々とボケ役になってきたな。
 仕事は一生懸命覚えようとしているから、根は真面目なんだろうがな。
 少年鑑別所と少年院と少年刑務所をコンプリートした彼には、私の想像を絶する10代があったのだろうが……。
 悪い仲間に根の真面目さを悪用されて、犯罪に誘われたか……。
 それとも……。

[11月3日08:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原家→台東区上野 東京中央学園上野高校]

 

 マンションの駐車場にロールスロイス風の車が止まる。
 実際は光岡自動車のガリューという車なのだが。
 ピカピカに洗車され、ワックスの効いた白いボディの目立つ高級車は私のマンションにはミスマッチだな。

 新庄:「おはようございます。愛原様」

 運転席からハイヤーのそれかといった感じの運転手が降りて来た。

 新庄:「絵恋御嬢様のお言い付けでお迎えに上がりました。私、専属ドライバーの新庄と申します」
 愛原:「ど、どうも……」
 新庄:「御嬢様は御親友のリサ様を大層気に入られ、リサ様の保護者でございます愛原様方が本日の大会に御臨席を賜るということで大変喜んでおられます。そこで不肖、私めが送迎役を仰せつかったのでございます」

 な、何だか話が大きくなってないか?

 新庄:「旦那様も1度、愛原様に御挨拶を申し上げたいと仰せでございまして……」
 愛原:「斉藤さんのお父さんが?」
 高橋:「ほお……」

 高橋はヤクザの組長みたいな人物を想像したらしい。

 新庄:「ではどうぞ。ご乗車ください」

 新庄運転手は助手席後ろのドアを開けた。

 愛原:「すいませんね」

 さすがは日産ティアナをベースにした車というだけのことはあるな。
 元々が手軽なハイヤーとしての用途もある車種だから、なかなか広い。

 高橋:「先生もナメられたものですね」
 愛原:「え?何で?」
 高橋:「先生は将来、一流の名探偵になられる御方です。だったら、こんなロールスロイスの紛い物じゃなく、本物のロールスロイスで来やがれって感じですよ」
 愛原:「……と言った所で、今現在はポンコツ探偵だ。今現在においては、身に余る高級車だな。本物のロールスロイスは、俺が名実共にその立場になってからだよ」
 高橋:「なるほど……」
 新庄:「それでは出発致します」
 愛原:「よろしくお願いします」

 車が走り出した。

 愛原:「それにしても、大会の会場が中学校ではなく、高校とは……」
 新庄:「東京中央学園上野高校は、場所が都心にありながら、体育館が2つございます。2つ借り切ることにより、円滑な運営を図っているとのことです」
 愛原:「2つもあるのか!凄いな!」

 今日は文化の日だから、どちらというと文化祭が行われていそうなものだが、高校の文化祭は別の日に行われるらしい。
 因みに中学校では行われない。
 リサの学費については日本政府エージェントで面倒を見てもらえるから、こういうセレブリティな学園に通えるが、そうでなかったら絶対ムリだな。
 ましてや、寄付金も出さないといけない。

 愛原:「あ、そうだ。新庄さん」
 新庄:「何でございましょう?」
 愛原:「リサさんのお父さんも来られるんでしたよね?」
 新庄:「さようでございます」
 愛原:「私達の迎えなんかしてていいんですか?」
 新庄:「御心配には及びません。旦那様のお車は、旦那様の会社と契約している役員車のドライバーが担当しております」
 愛原:「あ、運転手さん、別にいるんだ」
 新庄:「はい。私は家事使用人としての運転手です。旦那様が通勤等に御使用になられておられる役員車におきましては、タクシー会社から派遣された専属ドライバーが担当してございます。もっとも、私も昔はそこにいたのですが」


 新庄運転手も、元をただせばタクシーの運転手だったか。
 車は一路、球技大会の行われる上野高校へと向かった。
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“愛原リサの日常” 「リサ、がんばる」

2018-11-27 19:15:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月10日22:00.天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原と高橋はまだ帰ってこない。
 リサは1人、部屋でゲームをやっていた。

〔「私は家族が欲しかったの……」〕

 “バイオハザード7”に興じるリサ。
 ついにゲームは終盤に差し掛かる。

 リサ:「私も欲しいよ」

 方や暴走して巨大な化け物と化したラスボス、方や今でも人間として暮らしているラスボス。
 方や世を忍ぶ仮の姿は10歳程度の少女、方や世を忍ぶ仮の姿は12〜13歳の中学生。
 BOW、ゲームの中のBOWを倒すの図。

 リサ:「こんなやり方、嫌われるに決まってる。私はこんなやり方はしない」

 と、その時、玄関のドアが開いた。

 愛原:「ただいまァ」
 高橋:「おーい、先生のお帰りだぞー!」

 リサ、瞬時に玄関へ移動する。

 リサ:「お帰りなさい!」
 愛原:「遅くなって悪かったなー!」
 高橋:「先生のお力で犯人逮捕です!さすがです!」
 愛原:「犯人が逃げた時、別に追わなくても良かったんだぞ?あとは警察に任せておけば……」
 高橋:「何言ってんスか!最後までやり切るのが名探偵ってモンでしょ?」
 愛原:「バカ!オマエが族車チャーターして追ったりするから、警察に疑われたんだろうが!」
 高橋:「たまたま俺の後輩がいたもんで……」
 愛原:「おかげで帰るのが遅くなったんだよ。リサ、夕飯は?」
 リサ:「高野お姉ちゃんが御馳走してくれた」
 愛原:「そうか。明日、高野君にお礼言っておこう」
 高橋:「えっ、アネゴを呼び出してボコすんスか?」
 愛原:「誰が『御礼参り』するっつったよ!?俺達が忙しい間、リサの面倒を見てくれてありがとうって礼を言うだけだ!」
 高橋:「そうでしたか」
 愛原:「さっさと風呂入ろう。高橋、風呂沸かしてくれ」
 高橋:「はい」
 リサ:「お風呂なら沸いてる。私、先に入ったから」
 愛原:「おっ、そうか。それはちょうど良かった」
 高橋:「先生、どうぞお先にお入りください。俺はその後で」
 愛原:「そうか。悪いな」
 高橋:「いえ。俺は先生の残り湯に浸かりたいのです」
 愛原:「オマエ、サラッと気持ち悪いこと言ってんじゃねーよ。てか、リサが先に入ったんだから、リサの残り湯でもあるぞ?」
 高橋:「! すぐに洗浄して消毒致します!少々お待ちを!」
 愛原:「別にいいよ!ゾンビが入ったわけじゃあるまいし!」
 高橋:「でもお湯は入れ替えておきます!」

 高橋はこれだけは譲れないとばかり、浴室にダッシュして行ってしまった。

 愛原:「全く。気にし過ぎだっつーに。悪いな、リサ?後でよく言っておくから」
 リサ:「ううん、しょうがないよ。私も化け物だし……」
 愛原:「いや、リサはそんなことないって。ああさえならなければな」

 愛原はテレビ画面を指さした。
 リサがゲームをクリアした為、今はスタッフロールが流れている。
 ラスボスであるエヴリンが画面に現れた。
 世を忍ぶ仮の姿である10歳の少女をしている。

 リサ:「私が化け物になったら、退治されちゃう?」
 愛原:「皆に迷惑を掛けたらな。或いは、明らかに掛けると分かった時か……」
 リサ:「…………」
 愛原:「あのゲームのラスボスは、『完全体』と言っておきながら、結局は定期的に薬を投与しなければならなかったそうじゃないか。それに対して、リサは何にもしなくていいんだから、キミの方がよっぽど『完全体』だ」
 リサ:「……ありがとう」

 愛原はリサの頭を撫でた。
 今は角を2本生やし、耳を長く尖らせ、牙も生やしている。
 こうやって少し力を解放させ、人間か化け物かギリギリの姿でいる方が却って安定することが最近分かって来た。
 目安は『鬼娘』。
 今の説明で鬼の姿を日本人なら思い浮かべるだろうが、正にその姿だ。
 もちろん、このことを知っている者以外には絶対に見せない。
 従って、学校に行く時などは絶対にこの姿ですらしない。

 高橋:「先生!リサが『完全体』なら俺は『完璧体』です!だから俺も撫でてください!!」(;゚∀゚)=3ハァハァ
 リサ:「リサ、いくら君が『完全体』だとしても、まだまだ未知のウィルスを使ってそうなったことに変わりは無い。だから『絶対大丈夫』なんて思ってはいけない。少なくとも、そこの見習みたいに変な自信を持ってはいけないよ?」
 リサ:「はーい」
 高橋:「せ、先生!そんな御無体な!」
 愛原:「オマエ、いつまでお湯入れてんだよ!?マーライオンか!」
 高橋:「すいません!今、『草津の湯』入れてましたんで!」
 愛原:「意外だね!?意外なの入れてたね!そういう温泉の素入れてたんだ!?」
 高橋:「そうなんですよ。どうぞ、お入りください」
 愛原:「どれどれ?……“きき湯”じゃねぇかよ!なに嘘ついてんだ!」
 高橋:「こういうのは気持ちが大事だと思いまして」
 愛原:「だからそういうのが余計なんだっつの!」

 愛原は自分のタオルを持って来た。
 それで入ろうとすると、リサが呼び止めた。

 リサ:「愛原さん」
 愛原:「ん?」
 リサ:「球技大会、愛原さん来なくても大丈夫」
 愛原:「えっ?」
 リサ:「私は私で大会頑張る。だから、愛原さんもお仕事頑張って」
 愛原:「あ、ああ……」
 リサ:「じゃ、おやすみなさい」
 愛原:「お、おやすみ」

 リサはゲーム機を片付けると、自分の部屋に入った。
 そして、自分のスマホで斉藤に掛けた。

 斉藤:「リサさん!?電話してくれたの!?ありがとう!」
 リサ:「うん。明日学校で話そうと思ってたけど、今話したくて……」
 斉藤:「なになに!?」
 リサ:「今日は心配かけてゴメン。もう大丈夫だから」
 斉藤:「それって、球技大会にリサさんのお父……おじさんが来てくれないって話?」
 リサ:「うん。お仕事、一生懸命なの分かったから」
 斉藤:「それはきっと、おじさん達がリサさんのことを信じてくれてるんじゃないかな?」
 リサ:「私を信じてる?」
 斉藤:「私の場合、こういう行事には必ずお父さんかお母さんが来てくれるの」
 リサ:「羨ましい」
 斉藤:「と、思うでしょ?でも聞いてみたら、私のこと信用してないだけみたいなの!私がこんな性格だから、学校でトラブル起こしてないかって!」
 リサ:(サイトーのお父さんとお母さん、正論)
 斉藤:「だから逆にリサさんを信用してくれてる、おじさん達の方が偉いって思うな」
 リサ:「なるほど。分かった。明日、どの大会に出るか選考でしょ?私もバレーに出る」
 斉藤:「リサさんの跳躍力と腕力なら、絶対優勝できるよ!」

 もちろんそれは、BOWとしての身体能力の賜物なのだが。
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“愛原リサの日常” 「今日は雨」

2018-11-27 10:21:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月10日08:00.天候:雨 東京都墨田区内某所 東京中央学園墨田中学校]

 リサ:「ぶー……」

 学校でも拗ねてるリサ。
 と、そこへ……。

 斉藤:「おはよう、リサさん。……どうしたの?」
 リサ:「球技大会、おじさん来てくれない……」
 斉藤:「そう……。(ってか、お父さんじゃなくて、親戚のオジさんか何かだったの!?失礼なこと言っちゃったわ!)」
 リサ:「つまんない……。球技大会、出たくない……」
 斉藤:「そ、そんなことないよ!皆で一緒に頑張って、クラスで優勝目指すのも楽しいんだから!」

 斉藤が慌てた様子でフォローすると……。

 男子生徒A:「斉藤が『皆で一緒に頑張る』とか、すっげー嘘臭ェんだけど……」
 斉藤:「うるっさいわね!何か文句ある!?
 男子生徒A:「いや、文句っつーか……その……斉藤が言うと、何か信じらんないっつーか……」
 斉藤:「それ、ほとんど文句じゃないのよ!!

 どれだけ信用の無いコだったのだろうか、斉藤絵恋は……。
 そして、朝のホームルームが始まる。

 担任教師:「……それでは来月行われる球技大会についてですが、今週中に誰がどの競技に参加するかを決めたいと思います。プリントにも書いてあった通り、元々部活動としてその競技をやっている人は同じ種目に出ることはできません。例えばバスケ部員の人は、バスケの競技には参加できませんのでご注意ください。これは公平性を保つ為です」
 斉藤:「リサさん、私達はバレー部員じゃないから大丈夫だね!」
 リサ:「うん……」

[同日15:30.天候:雨 東京中央学園墨田中学校→同区内菊川 愛原学探偵事務所]

 斉藤:「リサさーん、一緒に帰りましょう〜
 リサ:「うん……」

 2人して一緒に下校する。
 今日は1日中雨のようだ。
 まるで、リサの心の中のようである。
 最初は2人して傘を差して歩いていたのだが、最初の赤信号に引っ掛かると斉藤は傘を閉じた。
 そして、リサの傘に入って来る。

 リサ:「な、なに?」
 斉藤:「リサさん、知らないのー?相合傘って言うのよ?」
 リサ:「いや、知ってるけど、何でわざわざ……」
 斉藤:「いいの!リサさんを元気付けてあげる!」
 リサ:「いいよ。気を使わないで……」
 斉藤:「え?」

 そして、信号が青に変わる。

 斉藤:「リサさん!そっちは違う方向よ!?」
 リサ:「いい。今日は事務所に寄って行く。それじゃ」

 リサは斉藤と別れると、足早に愛原の事務所に向かった。

〔上に参ります〕

 昨年完成したばかりだという新しい雑居ビルの中に入り、エレベーターに乗り込む。

〔ドアが閉まります〕

 マンションのエレベーターよりも新しい。
 古いエレベーターだと、そこにリサというBOWが乗るというだけでバイオハザード的ホラー展開が【お察しください】。

〔5階です〕

 エレベーターを降りると、すぐ目の前に事務所の入口がある。
 中に入ると、事務員の高野芽衣子がいた。

 高野:「あら、リサちゃん。いらっしゃい。どうしたの?」
 リサ:「愛原さんは?」
 高野:「応接室でクライアントさんと話をしているよ。終わるまで、そこで待ってて」

 事務室内には机が4つある。
 事務所には愛原と高橋、そして高野しかいないから1つ余っている形になっているわけだ。
 その余っている机の前に座る。
 高野が給湯室に行って、リサにお茶を入れようとしていると、リサは応接室の前に行った。
 そしてBOWならではの身体能力で、聴力と視力を強化する。
 透視能力でドアの向こう側も見え、ドアの向こうの話し声も聞こえる。

 リサ:「…………」

 愛原とクライアントのやり取りが聞こえる。
 しばらくそのやり取りを聞いていると……。

 高野:「こーら。盗み聞きと覗き見はダメよ」
 リサ:「! ……ごめんなさい」

 リサは身体能力を元に戻した。

 高野:「お茶とお菓子、ここに置いておくから」
 リサ:「ありがとう」

 リサはさっきの空いている机に戻った。
 と、そこへ電話が掛かって来る。

 高野:「愛原学探偵事務所、高野です」
 ボス:「私だ」
 高野:「ああ、ボス。お疲れさまです。今、先生はクライアント様と対応中でして……」
 ボス:「それなら後で伝言しておいてもらいたいのだが……」
 高野:「はい、承ります。どうぞ」
 ボス:「ああ、その前に……。どこでテロ組織が盗聴しているか分からんから、伝言は全て暗号で行う。いいね?」
 高野:「了解しました。お願いします」
 ボス:「それでは……。『実は今度の新作バイオシリーズは、“バイオハザード ダッシュターボ!!”4ギガ拡張パックでゾンビも超早っやー!』だ」
 高野:「すいません、もう1度お願いします。One more.
 ボス:「キミねぇ、このくらいの暗号、ちゃんと聴き取れないとキツいよ?」
 高野:「そんな頼りがいのあるゾンビがいたら、無理ゲーですね」
 ボス:「あくまでも暗号だ。しょうがない。それではもう1度言おう。ちゃんと聞くように」
 高野:「了解です」

 高野がボスとの電話を切ると同時に、応接室から愛原とクライアントが出て来た。

 愛原:「今日は雨の中、ありがとうございました」
 クライアント:「いえ……。それじゃ、さっきの件よろしくお願いします」
 愛原:「かしこまりました。後はこちらにお任せください」
 高野:「ありがとうございました。どうぞ、お気をつけて」

 高野も一緒に見送りをする。
 クライアントがエレベーターに乗り込むと同時に、横の階段を駆け登って来る者がいた。
 ずぶ濡れの高橋だった。

 高橋:「先生!分かりましたよ!やっぱ犯人アイツです!錦糸町のクソ野郎もう1度ボコしたらゲロりました!!」
 愛原:「やっぱりそうか!よーし、でかした!すぐに証拠を押さえに行くぞ!」
 高野:「その前に体拭いて行って。風邪引くよ」
 愛原:「あれ、どうしたんだ、リサ?俺に何か用か?」
 リサ:「う、うん……ううん……。何でもない。ちょっと寄ってみただけ……」
 高橋:「オマエなぁ、こっちはクソ忙しいんだから、冷やかしなら帰れ!」
 高野:「いいじゃないのよ、別に。どうせ机余ってるんだから……」
 愛原:「『ジャポネットやすだ』で頼んだら、オマケで一組付いてきたからなぁ」
 高橋:「だから先生、そんなインチキ臭ェ所に頼むのはちょっと……って言ったんですよ!」
 愛原:「今度から気を付けるよ。それじゃ高野君、すぐに行くからまた留守番頼む!」
 高野:「はいはい。カメラ持ちました?」
 愛原:「持った持った!」
 高野:「ICレコーダー持った?」
 高橋:「持った持った!」

 そして、バタバタと事務所を出て行く愛原と高橋。
 が、すぐに戻って来た。

 高野:「どうしたの?」
 愛原:「車の免許証忘れた!」
 高橋:「車のキー忘れた!」
 高野:「
 リサ:「…………」
 
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“愛原リサの日常” 「斉藤絵恋、L説」

2018-11-25 10:08:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月9日07:50.天候:晴 東京都墨田区某所 東京中央学園墨田中学校]

 1人で登校したリサ。
 昇降口の下駄箱で靴を履き替えていると、斉藤絵恋が話し掛けて来た。

 斉藤:「お、おはよう。リサさん」
 リサ:「サイトー、おはよう」
 斉藤:「きょ、今日は……いい天気ね」
 リサ:「ん!」
 斉藤:「り、リサさんは昨日どこかに行った?」
 リサ:「横浜!横浜で豪華客船乗った!」
 斉藤:「ご、豪華客船!?……ぐ、偶然ね。私も横浜からディナークルーズ船に乗ったのよ」
 リサ:「サイトーもウーズやハンターと戦った!?」
 斉藤:「う、うーず?はんたー?た、多分きっとリサさんとは別の船ね。でも、おかしいな。昨日、横浜港を出港した船はディナークルーズだけって聞いたのに。それ以前の時間帯は都合により欠航だったっていうし……」
 リサ:「ディナー!?美味しい物食べた!?」
 斉藤:「もちろんよ。でも、やっぱりリサさんと一緒でないと美味しさ半減ってところかな……。あっ、そうそう!お土産もあるのよ!」
 リサ:「偶然!私もサイトーにお土産ある!」
 斉藤:「ええっ!?」
 リサ:「教室で交換しよう!」
 斉藤:「そうね!」

 リサは自分の下駄箱のドアを開けた。
 と、そこへ1通の手紙が入っていた。
 装飾からしてラブレターのようだ。

 リサ:「何だろう、これ?」
 斉藤:「そそそ、それはーっ!?」

 斉藤、頭から煙が立ち上るほど顔を真っ赤にした。

 リサ:「2年5組、山田……」

 パシッとリサからラブレターを引っ手繰る斉藤。

 斉藤:「何てこと……!リサさんは私のものなのに……!!」
 リサ:「え?なに?何か言った?」
 斉藤:「許さないわ!」

 斉藤は制服のポケットの中からスマホを取り出した。

 斉藤:「……というわけで、すぐにこいつを何とかしなさい!」
 リサ:「サイトー……何の電話してる?」
 斉藤:「あっ、ゴメンナサイね!ちょっと家に電話を……」
 リサ:「?」

 その後、2年5組の山田という男子生徒を見た者は誰もいないという。

 斉藤:「私んち、寄付金タップリ出してるから〜w」
 リサ:「詳しいことは聞かないことにする」

 そして教室に入り、互いにプレゼント交換した。

 斉藤:「ぐ、偶然ね!お互い、髪に関係する物をプレゼントするなんて!」
 リサ:「うん。サイトーにはシュシュ。サイトー、ポニーテールだからきっと似合う」
 斉藤:「も、萌ぇぇぇぇぇっ!……あ、ありがとう!私からは髪留めを……。リサさん、ショートだから似合うと思って」
 リサ:「ありがとう。ここに来る前はロクにセットする機会も無かったし、仮面くらいしか着けられなかったから」
 斉藤:「か、仮面?(仮面女子!?……そ、それはちょっと見てみたいかも……)」
 リサ:「サイトーはどうして昨日、横浜に?」
 斉藤:「それはリサさんが横浜に……じゃなかった。お父さんがたまには、そういう船でディナーでもしようかって」
 リサ:「さすがサイトー。お金持ち」
 斉藤:「へ、へへへ……まあね」
 リサ:「サイトーのお父さん、何の仕事してるの?」
 斉藤:「会社の経営よ。製薬会社の」
 リサ:「製薬会社?」
 斉藤:「お陰様で、今では有名企業にまで成長したのよ」
 男子生徒A:「あのアンブレラに協力して、そのおこぼれもらってただけだろー?」
 斉藤:「うるっさいわね!会社が小さいうちは、大会社に協力するのも1つの手なのよ!」
 リサ:「アンブレラ……。サイトーのお父さん、アンブレラと関係あるの?」
 斉藤:「今は関係無いよ。アンブレラも潰れちゃったし、ウィルファーマもトライセルも潰れちゃったからね」

 いずれも“バイオハザード”シリーズでは悪の製薬企業として登場した所である。

 リサ:「そう。それは良かった」

 リサの右手が少し疼いた。
 もし斉藤の家がそれら悪の製薬企業と関係があるのだとしたら……この右手が変形したかもしれない。

[同日08:30.天候:晴 東京中央学園墨田中学校 1年3組]

 担任教師:「……はい、というわけで来月開催される球技大会の日程が決まりました。今渡したプリント、保護者の方に見せてください」

 朝のホームルームの際、プリントが配られる。
 最初の休み時間の時に、リサは斉藤に聞いた。

 リサ:「サイトー、球技大会って何?」
 斉藤:「小学校の時にあった運動会みたいなものよ」
 リサ:「ウンドーカイ?」
 斉藤:「うちの中学校だとそういう運動会じゃなくて、球技大会になるみたいね。因みに文化祭は高校の方でやるって」
 リサ:「文化祭?……よく分かんないけど、何だか面白そう」
 斉藤:「リサさん、運動が得意だから何だってできるよー。因みに私はバレーでもやろうかなぁって……」|д゚)
 リサ:「ん、私もバレーやる」
 斉藤:「も、萌ぇぇぇぇっ!……き、きっと、あのお父さんやお兄さんにも褒められるよ!?」
 リサ:「おー!」

[同日18:15.天候:雷 東京都墨田区菊川 愛原家]

 リサは鼻息を荒くし、勇んで愛原に球技大会のことを話した。

 愛原:「その日、仕事。ムリー」
 リサ:Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン

 次の瞬間、雷鳴と雷光が菊川地区を襲った。

 リサ:「おじさん、来るのー。仕事休んでー」

 2人称が『愛原さん』から『おじさん』に変わった!
 疲れてソファに横たわる愛原の脇腹を何度も揺さぶる。

 愛原:「お、お、お……」
 高橋:「コラ、リサ。わがまま言うんじゃねぇ。先生は久しぶりに入った仕事の依頼で張り切ってるんだ。だから諦めろ」
 リサ:「やー……」
 高橋:「何で先生も御一緒でないとダメだと?あぁっ!?」
 リサ:「サイトーはお父さん、お母さんと一緒だって言ってた。愛原さんはお父さんっぽい。高橋さんはお兄さんっぽい」
 愛原:「お父さんって、俺、そういう歳でも……。とにかくダメだよ。悪いけど高橋君か高野君に代役頼むから、それで我慢してくれ」
 高橋:「俺、先生に同行しますよ!?中坊の汗なんて見ても面白くも何とも無いですから!」
 愛原:「オマエ、どういう視点で言ってるんだよ」
 リサ:「もういい!」

 リサは拗ねて自分の部屋に閉じこもってしまった。
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“私立探偵 愛原学” 「連休最後の日」

2018-11-23 21:47:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月8日19:03.天候:晴 神奈川県横浜市中区 JR桜木町駅]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。3番線に停車中の電車は、19時3分発、各駅停車、南浦和行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は日本政府エージェントの善場さんや、BSAAの隊員さん達と共に豪華客船“正信”号の探索に同行した。
 同型の姉妹船である顕正号はバイオテロで沈没したものの、別のテロ組織において構造が全くそっくりな正信号を所有していることが分かり、BSAAがあっという間に接収した(もちろん、素人の私達には分からない、公式ゲーム並みの死闘が水面下であったのだろうが)。
 基本的にバイオハザードが発生していない船内での探索だったので、確かに顕正号よりは静かなものであったが、やはり所々にBOWや感染者が閉じ込められていた。
 その為、探索は比較的短時間に終わった。
 時間が余った為、せっかく横浜に来たのだから、少し遊んでから帰ることにした。

〔「お待たせ致しました。19時3分発、京浜東北線、横浜、川崎、蒲田方面、各駅停車の南浦和行き、まもなく発車致します」〕

 私や高橋はランドマークタワーの中で、もしもこういう所でバイオハザードが発生した場合の想定をしたイメージトレーニングを行ったが、高野君やリサは普通に観光やショッピングを楽しんでいた。

〔3番線の京浜東北線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 何度か駆け込み乗車があった為の再開閉を繰り返した後、ドアが閉まって電車が走り出した。
 私達が乗ったのは、桜木町駅始発の電車。
 その為、副線ホームに停車しており、発車の際は本線に入る為にポイントを渡り、電車がガクンと揺れた。

〔この電車は京浜東北線、各駅停車、南浦和行きです。次は、横浜です〕
〔This is the Keihin-Tohoku line train for Minami-Urawa.The next station is Yokohama.〕

 私達は先頭車の4人席に腰掛けている。
 ショッピングを楽しんだ女性陣の方が荷物が多いのは当たり前だ。
 その中において、リサは大事そうに小さなペーパーバッグを抱えていた。

 愛原:「リサ、その紙袋の中は何だい?」
 リサ:「シュシュ」
 愛原:「しゅしゅ?」
 リサ:「サイトーにあげるの。サイトー、ポニーテールだから」
 愛原:「ああ!シュシュか!」

 リサの口からポニーテールという言葉が出た瞬間、私はAKB48の歌を思い出した。

 リサ:「サイトーに似合うの見つけた。きっと喜ぶ」
 愛原:「おー、そうだな。ちょうど明日から学校だし、そこで渡せるな」
 高橋:「今のうちに担任に連絡して、没収の準備してもらいましょう」
 愛原:「おい!」

 東京中央学園はそこまで校則に厳しい所じゃなかったはずで、シュシュくらい大丈夫のはずだがな。

 高野:「このアホは置いといて、リサちゃんはいいセンスしてるから、きっと喜ぶよー」
 リサ:「むふー」

 得意げになると鼻息が荒くなるリサ。
 私には、どうしても斉藤さんが悶絶する姿しか浮かばないのだが。

[同日19:46.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 電車が都内を走る頃には、リサもウトウトしていた。
 高野君に寄り掛かるようにしていたから、リサにとってはお姉さんなのだろう。
 私も白い仕切り板に寄り掛かってウトウトしていたし、高橋はスマホでゲームに興じていた。

〔次は東京、東京。お出口は、右側です。新幹線、中央線、上野東京ライン、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです〕

 高橋:「おっと。先生、そろそろ東京駅ですよ」
 愛原:「おっ、そうか」

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく東京、東京です。お降りの際はお忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

 有楽町駅から東京駅までの駅間距離は短い。
 発車して、ものの1分かそこらで着いてしまう。

 愛原:「リサ、起きろ。降りるぞ」
 リサ:「ん……」

〔とうきょう〜、東京〜。ご乗車、ありがとうございます。次は、神田に止まります〕

 私達は電車を降りた。
 寝ぼけ眼のリサを私は抱えるようにして降りる形になる。
 こういう駅では1分くらい停車していそうなものだが、ダイヤがギリギリなのか、すぐにアップテンポな発車メロディを鳴らし始めた。

〔「3番線から京浜東北線、各駅停車、南浦和行きの発車です」〕

 愛原:「よし。忘れ物は無いな」
 高橋:「大丈夫です」
 リサ:「ちゃんと持ってる」
 高野:「お友達へのお土産だからね、大事に持ってないとね」
 リサ:「うん」
 高橋:「ここからバスですか?」
 愛原:「そうなんだが、その前に何か腹に入れて行こう」
 高野:「そうですね。いくらお昼が遅かったからとはいえ、そろそろお腹の空く頃ですよ」
 愛原:「最後のバスまで、あと1時間くらいか。軽く食べれるものがいいな」

 まあ、東京駅構内なら色々あるだろう。
 私達は取りあえず、改札の外に出ることにした。
 先頭車に乗っていたということは、東京駅の北口ということになる。
 バス乗り場は丸の内北口だが、食べる所があるのは八重洲側というイメージがある。
 もっとも、実は自由通路くらいあるから、反対側に行っても大丈夫だ。

 愛原:「リサは何か食べたいものある?」
 リサ:「うーん……カレー」
 愛原:「カレーかぁ。それなら確かに手っ取り早いな」
 高橋:「そう簡単にあります?」
 高野:「あるよ。ググったら出て来た」
 愛原:「おー、さすがは高野君だ」
 高野:「八重洲北改札から比較的近いですよ」
 愛原:「それって丸の内側への連絡通路も近いってことだな。よし、そこにしよう」
 高橋:「カレーくらい俺が作りますよ」
 愛原:「それはまた後な」

 私達は高野君について行くことにした。

 高橋:「後ろ姿がエイダ・ウォン」
 高野:「あ?何だって?」
 愛原:「褒め言葉だろ?」
 高橋:「どうっスかね」

 高橋は肩を竦めた。
 エイダ・ウォンは“バイオハザード”シリーズの中でもプレイヤーキャラとして操作できる。
 つまり主人公側だから、けして悪役ではない。
 ただ、実年齢が【お察しください】。
 多分、高野君はそこがイラッと来た点だな。
コメント
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