ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“戦う社長の物語” 「東京へ戻る」

2018-02-27 19:34:04 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月8日15:30.天候:晴 JR総武快速線1380F電車5号車内→JR東京駅]

〔まもなく終点、東京、東京。お出口は、左側です。新幹線、東海道線、横須賀線、上野東京ライン、中央線、山手線、京浜東北線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。電車とホームの間に広く空いている所がありますので、足元にご注意ください。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 敷島達を乗せた快速電車は、錦糸町駅を出ると黄色い緩行線と別れ、地下トンネルへと入って行く。
 この界隈は東京メトロや都営地下鉄も路線を張り巡らしており、如何に地上に鉄道を敷設できる土地が無いのかが理解できる。

 敷島:「そういえば学生の頃、“青春18きっぷ”で早朝の総武線地下ホームから電車に乗ったんだよ」
 シンディ:「そうですか。それで?」
 敷島:「まあ、当時は113系っていう古い電車が走っていたんだがな、そいつとマッチするかのように、ある者がホームの上を駆け回っていたんだよ」
 シンディ:「ある者?」
 敷島:「よく、電車ん中に入って来なかったな。数匹はいたぞ」
 シンディ:「ゴキブリか何かですか?」
 敷島:「『じょうじ、じょうじ』って言いながら乗り込んで来たら面白かったんだがな……って、違う違う。むしろ、『ピカチュー』って鳴く方だ」
 シンディ:「ああ!」

 電車がホームに停車し、ドアが開く。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点東京、終点東京です。横須賀線ご利用のお客様、向かい側1番線から発車致します、15時34分発の横須賀行きにお乗り換えください。……」〕

 シンディ:「こんなホームの真ん中にネズミがですか?」
 敷島:「いや、俺が見たのはホームの端っこさ。何しろその頃から鉄ヲタだったもんでな、乗った車両は15両編成の先頭車だよ。かなりデカくてさ、ちょっとした猫くらいの大きさだったぞ」
 シンディ:「そんなに!?」

 ※作者が約20年前に体験した実話です。あの頃はE217系よりも113系の方がまだ台数も多く、地下総武線ホームも今よりも薄暗く、薄汚い所でした。

 敷島とシンディは電車を降りた。
 今度は地上の改札口に向かう。

 敷島:「だからさ、平賀先生に提案してみたんだよ。『偵察用にネズミロボットなんて作ってみたらどうですか?』って」
 シンディ:「そしたら?」
 敷島:「『今の技術では、本物のネズミ並みに俊敏なロボットは造れません』だってさ」
 シンディ:「KR団最後の女性科学者、吉塚広美博士が萌を造ったくらいですから、可能のような気がしますけどね」

 南里の葬儀に参列しに来た時は一般人枠で来たものだから、敷島も平賀も単なる知り合いだと思っていた。
 何しろ、その時点で70代の年配者だったからだ。
 だが、しかして実はKR団の科学者だったのである。
 萌を開発した時の写真を見るに、30代の頃はアリスを日本人にしたような感じの女性だったらしい。

 敷島:「吉塚博士はファンシーキャラを造ってくれたからいいようなものの……」

 敷島はそこで萌が初登場した場所を思い出した。
 井辺がKR団の東北アジトに拉致された時のことだが……。

 敷島:「蜘蛛ロボットだのゴキブリロボットだの、害虫ロボばっかり造ってた所だぞ?」

 前者は不快害虫、後者は衛生害虫か。
 もっとも、KR団はちゃんと真面目に実用性を想定して造っていたらしいが……。
 蜘蛛ロボットは蜘蛛の巣に人間ごと引っ掛けて拉致に使ったり(北朝鮮に日本人拉致用として高く売りつけるつもりだったらしい)、網に高圧電流を流して拷問や処刑に使用したり(これも拷問が認められている国に売りつけるつもりだったらしい)、ゴキブリロボットは外国の諜報機関に売り付けるつもりだったらしい。

 敷島:「……まあ、考えようによっては、害虫だからこそ上手く行くのかもな」

 もしも害虫を発見し、殺虫剤を使っているにも関わらず、全く効いていない場合、それは実はロボットかもしれない。
 害虫を見つけてホイホイ近づく人間は……まあ、あまりいないだろう。
 その盲点を突いた商売を、KR団の一部組織は考えたというわけだ。
 もっとも、今その組織は団体ごと壊滅、その構成員は逮捕されたり、死亡したり、他のテロ組織に拾われたりしている。

 敷島:「取りあえず、八重洲南口から都営バス……」
 シンディ:「社長なんだから、タクシー使ってください。被害状況の確認という業務で向かうんですから」
 敷島:「分かった分かった」

 敷島達は地上の改札口を出ると、八重洲中央口から外に出た。
 そしてそこからタクシーに乗り、会社へと向かった。

[同日16:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル]

 敷島とシンディを乗せたプリウスのタクシー。

 敷島:「そういえば平賀先生の車、あれ、電気系統とか大丈夫なのかな?雪に随分埋もれてたけど……」
 シンディ:「水が直接入り込まなければ大丈夫だと思いますが……」

 平賀の車もプリウス。
 それと同じ車種のタクシーに乗ったものだから、ついそれを思い出してしまったのである。

 敷島:「お前、雪からかき出しただろ?その時、どうだった?」
 シンディ:「大丈夫だったと思いますが……」
 敷島:「先生に返す前に、ちょっと試乗してみるんだったな。ややもすると、俺達が壊したみたいになりかねない」
 シンディ:「逆にそれは、ヘタにしない方がよろしいかと。むしろその方が、後になって調子が悪くなった時に責任を問われかねません」
 敷島:「そういうものかな。エミリーだったら、『返す前に乗った時は異常ありませんでしたので、こちらの責任ではありません』とか言いそうだ」
 シンディ:「まあ、姉さんならそう言うでしょうねぇ……」

 シンディは苦笑した。
 いかに覚醒したとはいえ、まだどことなく機械的な感じをさせるのがエミリー、人情的なのがシンディといった所だ。
 果たして、秘書としてはどちらが優秀なのか。
 一長一短であるが故、敷島は決めかねている。

 シンディ:「あっ、そうだ、社長。今日は祝日ですから、車寄せが閉まってますよ?」
 敷島:「おっ、そうだった」
 シンディ:「すみませんが、車は豊洲アルカディアビルの通用口に着けて頂けませんか?あの交差点を曲がった先です」
 運転手:「はい。次の交差点を左ですね」

 正面エントランスも土休日は終日閉鎖されているので、用のある関係者は防災センターの前を通らなくてはならない。
 敷島達は通用口(防災センター入口)と書かれた、地下へと下りる階段の前でタクシーを降りた。
 ビルそのものはオフィスビルなのだが、低層階には飲食店などのテナントが入居している為、そこだけは賑わっている。
 高層階のオフィスフロアにこのタイミングで行く場合は、防災センターで受付をしなければならない。

 敷島:「何だ。ちゃんとこのビルの周りも、除雪されてるじゃないか」
 シンディ:「井辺プロデューサーやボーカロイド達が頑張ったらしいですよ」
 敷島:「ふーん……」

 受付を済ませ、低層階はガン通過する高層用エレベーターで事務所まで向かった。

 シンディ:「ボカロ達も随分と社長を心配していましたし、被害状況確認だけでなく、あのコ達と少し話してあげてはどうでしょう?」
 敷島:「うん、それもそうだな」

 敷島とシンディ2人だけを乗せたエレベーターは、防災センターのある地下1階から18階へと一気に上昇した。
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“戦う社長の物語” 「快速“エアポート成田”号は成田空港行きのみ。逆方向は名無しの快速」

2018-02-26 21:02:29 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月8日14:00.天候:晴 JR成田駅]

 DCJの車で駅まで送ってもらった敷島とシンディ。

 敷島:「申し訳無いね。ヘリで迎えに来てもらった上、駅まで送ってもらえるなんて……」

 運転席でハンドルを握っていたのは鳥柴。

 鳥柴:「いいえ。困った時はお互い様と言いますから。アリス主任にもよろしくお伝えください」
 敷島:「営業畑と技術畑は、時折ケンカすることがあるんだろう?まあ、嫌味にならない程度に言っておくよ」
 鳥柴:「エミリーさんが直りましたら、すぐに御連絡致します」
 シンディ:「姉さんなら、トラックで運んでもいいんじゃない?」
 敷島:「そうだな。まあ、こらち着払いで運送会社に依頼してもいいか……」

 敷島は右手を顎にやって考えた。

 敷島:「ま、いいや。後で考えよう。それじゃ、あとはよろしく」
 鳥柴:「お気をつけて」
 シンディ:「失礼します」

 敷島とシンディは駅構内に入って行った。

 シンディ:「社長、グリーン券です」

 乗車券の購入と同時にシンディがグリーン券を購入してきた。

 敷島:「ああ。ちゃんとお前の分もあるんだろうな?」
 シンディ:「以前からの御命令ですので」
 敷島:「よし」

 敷島は乗車券を改札機に通した。

 敷島:「……って、Suicaあったんだぞ?」
 シンディ:「乗車券の方が領収証出せますから」
 敷島:「履歴出せばSuicaでも経費で落とせるだろ」
 シンディ:「私は紙の乗車券の方が良いと思いますけどね」
 敷島:「まあいいや。(そこはエミリーと考え方が違うな……)」

 敷島達は東京方面の快速がやってくる1番線で電車を待った。
 尚、JR成田駅にはこの時間、“成田エクスプレス”は停車しない為、快速か普通列車を待つことになる。

〔「1番線、ご注意ください。14時14分発、快速、東京行きが参ります。危ないですから黄色い線の内側まで、お下がりください。長い15両編成で到着致します」〕

 付属の4両編成を前に、その後ろにグリーン車の付いた基本編成の11両を繋いだ15両編成の電車がやってきた。
 湘南色の中距離電車と比べれば何だか数えにくい号車番号になっているが、どうしてこういう編成になったのだろうか。

 敷島:「おっ、平屋席空いてる」

 2階席は既に埋まっているように見えたが、平屋席には空席が見えた。
 そこにホイホイと乗り込む。

〔「総武快速線直通の東京行きです。14時14分の発車です。発車まで6分ほどお待ちください」〕

 平屋席からの車窓の高さは普通車と同じ。
 なので何の変哲も無いのだが、定員が少なく、個室感覚が好きなヘビーユーザーはむしろ好んで利用するという(上越新幹線E4系車両にも似たような箇所がある)。
 尚、台車の外側に位置しているので、重心の高い2階席よりも揺れは激しい。
 また、天井の高さの関係で1階席や2階席では無い荷棚も、平屋席には存在している。
 シンディは自分の部品などが入った鞄を荷棚の上に置いた。
 これはもし自分がストックしている部品で、エミリーに使えるものがあったら渡そうと持って来たものだ。
 エミリーとシンディは同型機。
 なので、部品も共通している。
 見た目の違いは髪の色と髪型、そして瞳の色(エミリーは緑、シンディは青。但し、エマージェンシーの時などは共通して赤く光る)。

 敷島:「まだ少し停車時間があるのか。アリスに電話でもしておくか」
 シンディ:「もう既に私から連絡してますよ?」
 敷島:「そ、そうか」
 シンディ:「私のカメラ(目)と耳(集音マイク)を通して、アリス博士の端末に、社長の行動と言動は筒抜けです」
 敷島:「〜〜〜っ!」

 時折、シンディがタメ口になることがある。
 これは、シンディの向こうにアリスがいると思ってもらえれば良い。
 ……のと、逆にアリスが通信を切っている時に(本人からしてみれば)フレンドリーな態度を取っているかのいずれかだ。

 シンディ:「くれぐれも、勝手な行動は慎んでくださいませ」
 敷島:「わ、分かったよ。取りあえず今日は一旦会社に戻って、大雪による被害状況を確認する。帰るのはそれからだ」
 シンディ:「かしこまりました」

 線路は除雪されていて、こちらの鉄道はちゃんとダイヤ通りに走れているらしい。
 あの後はウソみたいに雪は降らず、融ける一方だからだろう。
 だが、除雪してできた雪の壁を見るに、まるでここが北海道のように見えてしまうのだ。

 しばらくして発車時刻が迫り、ホームに発車メロディが鳴り出した。
 随分個性的なのは、オリジナルの『ご当地メロディ』だからだろう。
 ウィキペディアによれば、“うなりくん なう!”という曲名とのこと。
 まあ、何だ。地元のゆるキャラか何かのテーマソングなのだろう。
 電車は定刻通りに発車した。

〔この電車は成田線、総武本線直通、快速、東京行きです。停車駅は都賀(つが)までの各駅と千葉、稲毛、津田沼、船橋、市川、新小岩、錦糸町、馬喰町(ばくろちょう)、新日本橋、終点東京です。グリーン車は4号車と5号車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、酒々井(しすい)です〕

 敷島:「こっちは除雪は済んでるんだな……」
 シンディ:「今頃お気づきですか。でも、こっちはこっちで大変だったんですよ」
 敷島:「ああ。お前の活躍ぶりは聞いてる。よくやってくれたみたいだな」
 シンディ:「はい!」
 敷島:「成果報告は、帰ってから聞くよ」

 さすがに、いかに観測史上とてつもない積雪だったとはいえ、日本の心臓部をそのままにしておくわけにもいかない。
 特に動脈でもある鉄道に関しては、必死に除雪を行ったようだ。

 敷島:「それにしても、もう大雪はお腹一杯だな。年に1回で十分だよ」
 シンディ:「そうですね。私の場合は火炎放射器を装備していないので、尚更この力に頼る他はありません」

 シンディは右手の袖を捲った。
 いつもの衣装の上にグレーのコートを羽織っているが、別に着なくてもどうってことはない。
 ただ、周りの人間が着ぶくれするほど着込んでいるのに、シンディだけノースリーブの衣装のままというのも不自然なので着ているだけだ。
 車内や家においては、その恰好でいるわけだが……。

 敷島:「期待しているよ」
 シンディ:「お任せください」
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“戦う社長の物語” 「雪からの脱出」

2018-02-25 19:03:25 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月8日10:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町]

 敷島:「えっ、いいの?延泊代半額で?」
 従業員:「今回の場合は止むに止まれぬ事情でしたので、本社からの通達です」
 敷島:「そりゃありがたい。……支払い、カードでいい?」
 従業員:「はい、ありがとうございます。それでは、こちらに暗証番号を……」

 敷島がチェックアウトすると、未だに除雪の進んでいない公道の上にシンディが待っていた。

 シンディ:「社長、おはようございます」
 敷島:「シンディ!お前、どうやって来たんだ?」
 シンディ:「DCJのヘリコプターに乗せてもらったのです。ヘリコプターは東北工科大学に着陸しましたので、そちらまでお連れします」
 敷島:「そうか。あっ、そうだ」
 シンディ:「?」

 敷島、ホテル近くのコインパーキングへ向かう。
 まだまだ雪に阻まれている箇所が多々あるが、そこはシンディが除雪して行く。

 敷島:「いやあ、悪いね」
 シンディ:「いえ。何でもお申し付けください」

 コインパーキングに行くと、未だに車が雪に埋もれていた。

 敷島:「平賀先生の車はあれだ」
 シンディ:「かしこまりました」

 シンディは雪をかき分け、平賀のプリウスをそこから掘り出した。

 敷島:「うわ……精算機、ブッ壊れてやがる。これじゃ、料金ナンボか分からんよ」
 シンディ:「いいんじゃないんですか。そのまま持って行けば……」
 敷島:「そういうわけには行かんよ。取りあえず1日2000円分置いて行こう。東京より高くは無いだろう」
 シンディ:「はあ……」
 敷島:「シンディ、俺とこの車抱えて飛べるか?」
 シンディ:「お任せください。1番いいのは、社長が車の中に乗ってくださると助かるのですが……」
 敷島:「分かった」

 敷島、ポケットの中からキーを出してロックを解除した。

 シンディ:「……平賀博士の車だから、社長がキーをお持ちであるはすがありませんねと言いたかったのですが?」
 敷島:「いや、もし車が動かせたら動かしておいてくれって頼まれてたの」

 キーはその時に借りた。
 敷島は車に乗り込んだ。
 シンディは車を持ち上げ、エミリーと同じく超小型ジェットエンジンを起動させて上空に飛び上がった。
 あとは車の下に潜り込み、そのまま両手に抱えて飛ぶ。

 敷島:「うっひゃあーっ!絶景ーっ!」
 シンディ:「寒くないですか?」
 敷島:「いや、大丈夫!ってか、クソ速ぇーっ!!」
 シンディ:「あっという間に着いてしまいますよ!」

[同日10:20.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 東北工科大学]

 大学構内は街中と打って変わって、除雪が進んでいた。

 敷島:「車は職員駐車場に置いておこう」
 シンディ:「はい」

 敷島が車から降りると、ヘリから鳥柴が降りて来た。

 鳥柴:「お迎えに参りました。すぐに参りましょう」
 敷島:「ああ。ちょっと待って」

 敷島はシンディに、南里志郎記念館の警備ロボット達を呼ぶように言った。
 ぞろぞろとやってきたのは、エミリーを救助したバージョン4.0達。

 敷島:「シンディ、こいつらはお前の姉を救助した立役者達だ。アルエットの通信性能が良かったとはいえ、それを上手く受信し、命令を忠実にこなしたことをどう思う?」
 シンディ:「素晴らしいことだと思います」
 敷島:「それではシンディ、こいつらに『大慈大悲』を」
 シンディ:「かしこまりました」

 シンディ、整列するバージョン4.0達の頭部にキスをした。

 シンディ:「エミリーを助けてくれてありがとう」
 バージョン4.0-4:プシューッ
 バージョン4.0-48:
 バージョン4.0-108:「ナ、何ト恐レ多イ……!」
 バージョン4.0-398:「シ、幸セデス……
 バージョン4.0-457:「アッシハムシロ、鞭デ引ッ叩イテクレル方ガ御褒美デス」
 シンディ:「調子に乗んなっ!」

 ガンッ!(457号機に顔面パンチ食らわせるシンディ)

 敷島:「あ゛!別の意味で煙が……」
 鳥柴:(本当に『女王様』だぁ……)

 敷島達がヘリに乗り込むと、すぐに離陸した。

 敷島:「どこもかしこも雪景色だな」
 鳥柴:「首都圏の方はまだ積雪量も少なく、除雪も進んでいます」
 敷島:「つっても、1メートルは積もったんだろ?東京でそれくらいだと……」
 鳥柴:「東京は2メートル、埼玉が3メートルですね」
 敷島:「今年は暖冬で雪が少ないとか言ったヤツ、後でシンディに狙撃させていいですか?」
 鳥柴:「ダメです!」

[同日13:00.天候:晴 千葉県成田市 DCJ成田営業所]

 敷島:「ここに来るのも久しぶりだなぁ……」
 鳥柴:「是非ゆっくりして行ってください」
 敷島:「いやいや、会社が心配だから、エミリーの様子を見たら帰るよ」

 ヘリが営業所敷地内のヘリポートに着陸する。
 敷島達はヘリから降りた。
 よく見るとエントランスの看板に、来年度から成田支社へと格上げされることが書かれている。

 敷島:「売り上げいいの?」
 鳥柴:「おかげさまで」
 敷島:「うちも実質的には四季エンタープライズの豊洲支社みたいなものだから、うかうかしてはいられないな」
 鳥柴:「業種が違いますよ」

 地下にある技術開発室に入ると、そこに平賀がいた。

 敷島:「平賀先生!」
 平賀:「おー、敷島さん。雪から脱出できましたか」
 敷島:「おかげさまで」
 平賀:「カプセルホテルやサウナの料金、後でお支払いします」
 敷島:「車の方も回収して、大学の駐車場に移動させておきましたから」
 平賀:「ええっ?それじゃ、後で駐車場代の立替分も払いますよ」
 敷島:「それより、エミリーはどのくらいで直りますか?」
 平賀:「約1週間です」
 敷島:「1週間!そんなに?」
 平賀:「頭部以外の損傷が結構大きかったものでね。難しい所は自分がやりまして、後はDCJの社員がやれば修理費用も安く済みますよ」
 敷島:「先生が全て直すんじゃないんですか?」
 平賀:「大丈夫ですよ。難しい所は自分がやりますから。あとは任せてください」

 敷島は部屋の外に出た。

 シンディ:「姉さん、あんなになってかわいそう……」
 敷島:「だが、あの雪の中から回収できただけでも奇跡だ。お前もバージョン達に鞭振るってばっかりいないで、たまには役に立てたら褒めてやれよ」
 シンディ:「はあ……」
 敷島:「とにかく、エミリーが直るまで、しばらくまた俺の秘書をやってもらうことになるな」
 シンディ:「はい、お任せください」
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“戦う社長の物語” 「デイライト・コーポレーション」

2018-02-25 10:21:55 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月7日15:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町]

 敷島:「んん……」

 敷島はサウナが併設されているカプセルホテルに平賀と泊っている。
 サウナの仮眠室で寝ていたのだが、やっと目が覚めた。

 敷島:「体が痛ェ……」

 午前中、ずっと雪のトンネルを掘っていたからだろう。
 その痛む体に鞭打って起き上がり、暗い仮眠室を出た。

 敷島:「ん?」

 外が何やら騒がしい。
 敷島はエレベーターに乗って1階に下りた。

 従業員:「あ、お客様!」
 敷島:「何かあったんですか?」
 従業員:「救助隊が来たんですよ!」
 敷島:「今頃ですか」

 敷島はついそれが自衛隊だと思っていた。
 だが、どうやら違った。
 着ている服装が自衛隊のそれとは違う。
 かといって、米軍のそれとも思えなかった。
 だが、見覚えはある。
 1人が気づいて、敷島の所にやってきた。
 そして、被っていたフルフェイスのヘルメットを取る。

 鳥柴:「DCJ成田営業所の鳥柴です」

 アメリカ編ではさんざんっぱらDCJがアドバイザーになったが、ピンチの時には駆け付ける体制になっているというのが何ともニクい。
 鳥柴優菜は表向きは成田営業所の営業主任。
 だが、裏の顔は御覧の通りである。

 敷島:「よくここが分かったな?」
 鳥柴:「はいっ!平賀執行役員の連絡で飛んで来ました!」
 敷島:「平賀先生が?」

 平賀はDCJの外部執行役員という顔も持つ。

 敷島:「救助に来てくれたのはありがたいが、まだエミリーが見つかってないんだ」
 鳥柴:「そうなんですか?でも、さっきヘリの中に運びましたよ?」
 敷島:「な、何だって!?」
 鳥柴:「執行役員の話ですと、バージョン4.0の小集団が現れて、エミリーを発見したということです」
 敷島:「何だ、バージョン達、結構役に立つじゃないか。随分贅沢なことを言う『女王様』方だ」
 鳥柴:「どこの世界でも、『女王様』というのはワガママなものですから」
 敷島:「それもそうだな」
 鳥柴:「敷島社長も早くヘリコプターへ」
 敷島:「いや、俺は1番後でいい」
 鳥柴:「えっ?」
 敷島:「体が筋肉痛でしょうがないんだ。もう一っ風呂浴びてからにするよ」
 鳥柴:「でもそれですと、一旦燃料補給に戻らないといけないので、次の救助は翌日になってしまいますが……」
 敷島:「明日でいいよ。ホテルやサウナ代は俺が払っておく。……と、平賀先生に伝えておいてくれ」
 鳥柴:「分かりました」
 敷島:「エミリー、かなり損傷してたろ?」
 鳥柴:「人間だったら、絶対死亡しているレベルです」
 敷島:「だろうな。修理はどこでやる?東北工科大学?」
 鳥柴:「いえ、あそこはまだ雪深く、ヘリが離着陸できないので、成田営業所まで持って行きます」
 敷島:「成田は大丈夫だったのか?」
 鳥柴:「はい。成田の積雪は1メートルで済みました」
 敷島:「それでも1メートルか。改めて凄い雪だったんだな」
 鳥柴:「そうですね」
 DCJ社員:「鳥柴主任!そろそろ離陸したいのですが、よろしいですか!?」
 鳥柴:「あ、はい。それじゃ敷島社長、エミリーはお預かりして行きます」
 敷島:「ああ、頼むよ」
 鳥柴:「明日またお迎えに参ります」
 敷島:「わざわざ悪いな」

 こうしてエミリー達や要救助者を乗せたヘリは飛び去って行った。

 敷島:「何だ、ほとんどの客が出て行ったのか?」
 従業員:「特にカプセル利用者は出張のお客様が多いですから」
 敷島:「そう言われれば、俺もそうだ。会社が心配だから、ちょっと電話してこよう」

 こう楽観的なのは、雪に閉ざされてもインフラが止まらなかったからだろう。
 停電など1回も無かった。

[同日同時刻 天候:晴 宮城県仙台市青葉区上空 DCJヘリコプター機内]

 平賀:「なに?敷島さんはもう一泊して行くって?」
 鳥柴:「はい」
 平賀:「敷島さんらしいや。まあ、それに……」

 平賀はバラバラ死体のようになったエミリーを見た。

 平賀:「さすがに今の敷島さんに、これは見せられねぇ……」
 鳥柴:「これでも修理可能とは、さすがは執行役員です」
 平賀:「頭部が無事なら、あとはどうにもでもなるさ」

 平賀は肩を竦めた。

 平賀:「それより、一連の黒いロボットのことだが……。そっちの調査で何か分かったか?」
 鳥柴:「はい。色々と輸送ルートは細工されていましたが、やはり出所はアメリカの方ではないかと……」
 平賀:「それが日本に対して、どういう嫌がらせだ?」
 鳥柴:「それはまだ調査の段階です。ただ……ニューヨークでは関知していないようです」
 平賀:「どういうことだ?」
 鳥柴:「研究畑が勝手にやったことだ、ということでしょう」
 平賀:「とんでもないな。北海道の黒いロボット、そっちでサンプルで確保したんだろ?」
 鳥柴:「ええ。その資料はアメリカにも流しました」
 平賀:「それだよ、きっと。おおかた、日本法人が独立を企てているという噂を聞きつけて嫌がらせでもさせたんだろ」
 鳥柴:「そんな、『顕正会員のブログを発見次第、放火・炎上させる武闘派法華講員』みたいなマネをしますか?」
 平賀:「奴らなら平気でやりかねん!」

[同日17:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区国分町]

 マッサージ師:「少しずつ雪も融け始めてますし、少しは安心ですね」
 敷島:「いや、全く」

 サウナ内のマッサージコーナーで、ボディケアを受ける敷島。

 敷島:「うー……そこそこ……」
 マッサージ師:「この辺りですか?この筋ですか?」
 敷島:「そうそう」
 マッサージ師:「だいぶお疲れですねぇ」
 敷島:「雪掘り過ぎた……」
 マッサージ師:「さっきの救助隊が緊急物資を持って来てくれましたから、まだしばらくは持ちそうですよ」
 敷島:「それより早く、交通機関が復旧するといいねぇ……」

 休憩コーナーのテレビでは、天気はしばらく晴れが続くので雪は融ける一方だろうという天気予報が流れていた。
 また、市内各地でも、ようやく除雪作業が本格化してきたことがニュースで報じられていた。
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“戦う社長の物語” 黒いロボット編まとめ

2018-02-24 22:27:08 | アンドロイドマスターシリーズ
 黒いロボット:

 正式名称不明、製造元不明、開発者不明、開発目的不明と全く未知のロボット。
 全体的に黒い塗装をしている為、便宜的に「黒いロボット」と呼ばれている。
 初出は北海道。
 北海道の時はバージョンシリーズ以上に残忍で殺戮を旨とする描写であったが、今回のタイプは人間を1人も殺したことはない。
 その為、似て非なる別の種類ではないかとも見られている。
 ガイノイドに対してはセクハラを繰り返しており、その標的を恐れ多くも最上位機種のマルチタイプに向けた。
 2足歩行タイプしか今のところ確認されていない。
 背丈は普通の人間と同じ。高くも低くも無いが、筋骨隆々の見た目はしている。
 神出鬼没で、どこから現れるか分からない。
 マンホールの下などに潜んでいて、ターゲットの背後からいきなり現れて奇襲を仕掛ける。
 強力な自爆装置を備えており、自機が破壊されると判断された場合は自爆装置を起動させる。
 東日本一帯を暴れ回った南岸低気圧による大雪害では、雪に埋もれてモーターが凍結した。
 個体個体にメモリーは搭載されておらず、完全にサーバーからの遠隔操作であることが判明した。
 平賀の調査により、製造元はDCI(デイライト・コーポレーション・インターナショナル。本社はアメリカのニューヨーク、支社がテキサス州ヒューストンにあり、研究所がアーカンソー州にあった。日本法人にDCJ、デイライト・コーポレーション・ジャパンがある)である可能性が強まった。
 アメリカ本社ではアーカンソー州研究所の所長であったアルバートを始めとする一部役員達が、会社の経営権を乗っ取ろうと企てていたことが判明し、それに嫌気が差した日本法人が独立を企てているという噂も立ったが……。

 バージョン4.0:

 元は世界的に有名だったウィリアム・フォレスト博士(通称、ドクター・ウィリー)が開発したテロ用途ロボット。
 現時点におけるバージョンシリーズでは、最大個体数を誇る。
 ロボット喋りができるのだが、テロ用途を外された途端、コミカルな言動・行動をするようになった。
 もはや人間に危害を加える恐れは無くなったが、マルチタイプのエミリーやシンディを未だに「女王様」「女帝陛下」として崇め奉る行動や言動を取ることが多い。
 8号機のアルエットに関しては、「御嬢様」として、やはり卑屈なまでにへりくだっている。
 見た目は同じだが、初期型と後期型に分かれている。
 一部はバージョン5.0のボディに換装されたモドキが存在し、それが北海道では敷島の窮地を救った。
 ずんぐりむっくりした個体だが、それまでのタイプと比べれば、格段に素早く動けるようになっている。
 と、同時にその体型でおどけて見せれば、憎めないヤツというキャラ作りができる。
 テロ用途から外された際に銃火器も取り外されたが、エミリーと同様、火炎放射器はそのまま搭載されている個体も多い。
 火炎放射器はガスボンベを消火器に換装すると、あっという間に消火剤噴射機と化す。
 エミリーからは役立たずと苛立たれていたが、アルエットの心の叫びを見事に受信し、エミリーの救助に向かった。
 マルチタイプの命令は何でも聞くように設定されており、これが例え自爆命令であっても喜んで引き受ける。

 エミリー:

 マルチタイプ1号機。
 北海道では彼女によく似た試作機が発見されており、彼女に似せて1号機以降のマルチタイプが造られたことから、「マザー」と呼ばれた。
 自分に相応しいマスター(アンドロイドマスター)が見つかるまで、ロボットのフリをして稼働していた。
 敷島にそれを見出し、ついにマルチタイプとしての本性を曝け出す。
 シンディと比べればそれでもまだ物静かで、クールな方。
 敷島エージェンシーでは敷島の第一秘書を務める。
 自ら敷島に隷属を決めたことを試作機のマザーに指摘されていた(『結局ロボットと一緒ではないか!』と突っ込まれた)が、堂々と「自分で仕える人間を選べたことがマルチタイプとしての誇り」と言い切った。
 ピアノを得意としており、ピアノが自由に弾ける環境では毎日17時に数曲弾く。
 弾く曲はクラシックとオリジナル曲。
 かつては右手にマシンガン、ショットガンなどの銃火器を仕掛けていたが、今は火炎放射器のみ。
 左手には有線ロケットパンチと高圧電流を流して攻撃できるようになっている。
 但し、あまり高い電圧を放つと自分のバッテリーがオシャカになったり、最悪自家中毒の如く、自分も感電する恐れがある為、そこはセーブしている。
 強力な自爆装置が搭載されていたが、銃火器と同様に取り外された。
 取り外されたことで、自重が200キロから130キロにまで軽量化された。
 シンディが唯一頭が上がらない姉である。
 クールに見えて実は尻は軽いと言われ、シンディよりも他の男性ロイドに言い寄られることが多々ある。
 他のロボットと行動したことがあまり無いせいか、統率力はシンディよりも劣る(何でも1人でやろうとするタイプ)。
 敷島家ではメイドとして活動している(役割はシンディや二海とローテーションで変えている)。

 シンディ:

 マルチタイプ3号機。
 かつては2号機の兄と4号機から7号機までの弟妹がいたのだが、今はこの世に存在しない。
 マルチタイプの中では1番コミュ力が高く、口八丁手八丁が得意技。
 かつては敷島の専属秘書を務めていたが、今ではエミリーにその座を譲り、どうしてもエミリーが休まないといけない時だけ代理を務める第二秘書になっている。
 その為、現在ではアリスのボディガードや敷島家のメイドを務めることが多くなった。
 元々前期型の時からウィリーのロボットを率いてテロ活動をしていたからか、今でもバージョン達の集団を統率して行動することができる。
 大雪害の時は率先してバージョン達に除雪や孤立者の救助活動を命令していた。
 得意な楽器はフルートなどの管楽器。
 エミリーのピアノに合わせたり、悪堕ちする前の執事ロイド・キールのヴァイオリンと合わせて演奏を披露したりもした。
 狙撃が得意で、かつては右手に狙撃用のライフルを仕込んでいたほど。
 100メートルから500メートルまでの距離を狙い撃ちできる。
 近距離攻撃用としてナイフを使っていたこともあったが、エミリーからは使い方について嘲笑されていたという。
 基本的に他のマルチタイプ兄弟とは仲良くやっていたそうだが、1号機のエミリーには頭が上がらず、7号機のレイチェルにも恐れを抱いていたそうなので、どこまで本当なのかは分からない。
 ボーカロイド達にも慕われており、エミリーには突っかかるMEIKOもシンディの前では大人しくしている。
 作者が1番好きなロイドであり、知り合いの挿絵家に『東京決戦』の絵を描いてもらったほど。
 人間に対してはどんな者でも無礼な態度を取ることは無いが、ロボットに対してはどんな者でも尊大な態度で臨む。

 アルエット:

 マルチタイプ8号機。
 1号機や3号機が20代の女性として設計されているのに対し、こちらは12〜13歳の少女として設計された。
 7号機までのオリジナルタイプをフルモデルチェンジしたものとされているが、同列に扱う為か連番になっている。
 普段はDCJロボット未来科学館のマスコットとして活動している。
 何もかもが最新鋭として製造されたこともあってか、旧型のエミリーやシンディには無いものを持っている。
 エミリー達がリチウムバッテリーを3個搭載しているのに対し、こちらは燃料電池駆動。
 そのシステム上、廃水が発生するが、排水に関しては人間の排尿と同じ行動を取らせている(つまり、ロイドでありながらトイレに行って用を足す)。
 シンディ以上にフレンドリーな性格で人間の来館者に愛嬌を振り撒いてるが、自分を御嬢様扱いしてくるロボットに対しては(エミリーやシンディほどでないにせよ)厳しい態度で接する。
 巨大ロボ、バージョン400の頭部コクピットに搭乗して直接操縦できる。
 この時のアルエットは無敵状態で、エミリーやシンディでも手出しできない。
 従姉のような存在のエミリーとシンディとは、良好な関係を築いている。
 エミリーが黒いロボットの自爆に巻き込まれ、それで起きた雪のトンネルの崩壊に巻き込まれたと知った時は、仙台のバージョン達に救助命令を出した。
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