報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「フェリーでの一夜」

2017-03-09 21:06:08 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月6日18:45.天候:晴 商船三井フェリー“さんふらわあ さっぽろ”号船内Cデッキ]

 敷島達が入室したのは4人部屋のスタンダードルームである。
 洋室と和室タイプがあるのだが、敷島達が入ったのは洋室タイプ。
 これは2段ベッドが2つ、縦列に配置されていて、壁側にソファとテーブルと椅子、そしてテレビが置かれている。

 敷島:「これで落ち着いたな」
 シンディ:「社長、私達に構わず、2人部屋を予約されても良かったのですよ?」
 敷島:「スイートとデラックスのことか?試しに空室照会してみたが、しっかり塞がってたよ。ま、一塊になった方がお前達も護衛しやすいだろう?」
 シンディ:「それはそうですが……」
 エミリー:「それより、もう既にレストランでは夕食の営業時間のようです。お食事なさってきてはいかがでしょうか?」
 敷島:「それもそうだな。アリス、行こう」
 アリス:「ええ」
 萌:「ボクは留守番してます」
 敷島:「そうか?」
 萌:「はい」

 萌、室内にある洗面台にお湯を溜めている。
 どうやら、これから入浴するつもりらしい。

 敷島:「お前もよく頑張ったもんな。ま、ゆっくり浸かってくれ」

 敷島は萌の頭を指で撫でた。

 萌:「えへへへ……」
 敷島:「じゃ、行こうか。鍵、持ってってくれよ」
 エミリー:「ご安心ください」

 敷島達は部屋を出てレストランへ向かった。

[同日19:00.天候:晴 さんふらわあ さっぽろ号Aデッキ・レストラン]

 エレベーターを降りて展望スペースを通ると、レストランがある。
 尚、レストランでは全てビュッフェスタイルのバイキングである。

 アリス:「♪」
 敷島:「アリス、盛り過ぎ!予想してたけど!」

 アリスは皿に料理を山盛りにしていた。

 アリス:「ローストポーク、美味しそう!」
 敷島:「そりゃ良かったな。……酒、行くか?」
 アリス:「行く行く!」
 シンディ:「私がお持ちしますよ」
 敷島:「おっ、そうか。じゃ、俺はシーフードグラタン持ってきてくれ」
 エミリー:「シンディはアリス博士のをお持ちして」
 シンディ:「はいはい」

 で、アリスが頼んだのは……。

 敷島:「お前だけワインかよ。北海道なんだから、サッポロビールだろ」
 アリス:「いいじゃない、別に」
 エミリー:「シンディ、社長にご飯とお味噌汁を」
 シンディ:「はい」

 ここでのマルチタイプ姉妹は敷島夫妻のメイドロイドであるようだ。
 因みに本物のメイドロイドからは、どちらも『メイド長』と呼ばれる立場なのだが。

[同日20:00.天候:晴 同船内Aデッキレストラン→Cデッキ自室→Bデッキ大浴場]

 アリス:「あー、美味しかった。ごちそうさま!」
 シンディ:「マスター、食後のコーヒーです」
 アリス:「ありがとう」
 エミリー:「社長も」
 敷島:「ああ、悪いな。だけど、もう営業時間終了じゃないか?客がだいぶ捌けて来たぞ?」
 アリス:「タカオ、部屋にはシャワーが無かったけど、どこかにシャワールームでもあるの?」
 敷島:「ああ。この下のフロアに大浴場があるみたいだな。日本の船らしいだろ?外国船籍のヤツだとプールでもあるんだろうがな」
 アリス:「じゃあ、お風呂入りたい」
 敷島:「分かった。コーヒー飲んだら、部屋に戻ってタオル取ってこよう」

 敷島達は夕食を済ませると、部屋に戻った。

 萌:「あ、お帰りなさい」

 萌は既に洗面台のお湯に浸かって体の汚れを落としたようである。
 背中の大きく開いたタンクトップにショートパンツ姿である。
 背中が大きく開いているのは、そこから妖精の羽を出す為だ。

 敷島:「ああ、ただいま。今度は俺達が風呂入って来る」
 萌:「行ってらっしゃい」

 因みに個室には人数分の浴衣が備えてある。

 アリス:「おー、浴衣がある」
 敷島:「さっき見ただろ」
 アリス:「……着方が分からない」
 敷島:「ウソだろ?ホテルのヤツと同じだぞ?」
 アリス:「着替えさせて〜」

 アリスはそう言って敷島に抱きつく。

 敷島:「酔っぱらってんだろ、アリス?ワイン何杯飲んだ?」
 シンディ:「社長、着替えさせてあげてくださいよ」
 エミリー:「何日分もお預けのようで」
 敷島:「お前らなぁ……」

 で、何とかアリスを浴衣に着替えさせる。

 敷島:「さっさと行くぞ」
 アリス:「あン、待って〜」
 シンディ:「マスターが心配なので、私も御一緒しますね」
 敷島:「そうしてくれ。男湯までは来なくていいから。エミリーもアリス達と一緒に入ってこい」
 エミリー:「社長がそう仰るのでしたら……」

 敷島は1人で男湯に向かった。

 敷島:「お、サウナまであるのか。いいねぇ、いいねぇ」

 敷島は大浴場に入った。
 そしてサッと体を洗った後、向かうはサウナ。

 敷島:「くーっ!この暑さだな、やっぱ!」
 乗客:「全くですな」
 敷島:「おっ、こりゃ失礼。ちょっと独り言を……」
 乗客:「いえいえ。それよりあなた、どこかで見たことがあると思ったら、敷島孝夫さんじゃありませんか?あのボーカロイド専門の芸能プロダクションを経営なさっておられる……」
 敷島:「ええ、まあ、そうです」
 乗客:「私は日本未来科学研究財団に所属している研究者で、秋葉と申します」
 敷島:「日本未来科学財団。JARA財団が崩壊して、しばらく経ってから設立された新団体ですね」
 秋葉:「そうなんです。まだまだ新しい団体で、そんなに名前は知られてませんけどね」
 敷島:「どこかの大学で教鞭を取られているんですか?」
 秋葉:「東京都心大学です」
 敷島:「平賀先生が客員教授として所属している所ですね」
 秋葉:「敷島さんは平賀先生と旧知の仲でいらっしゃるそうで」
 敷島:「南里研究所時代からの知り合いです。私はその時から、専ら営業関係の仕事でしたからね。平賀先生が研究・開発者で」
 秋葉:「素晴らしいことです」
 敷島:「秋葉先生も、何かロボットかロイドでも?」
 秋葉:「いや、大したものはまだ造れていません。できれば鉄腕アトムみたいなものを造りたいのですが……」
 敷島:「おおっ、日本のロボット研究者の最終目的の1つですね。こっちは女性版ロックマンみたいなのしかいなくて、扱いに苦労してますよ」
 秋葉:「ヘタに自我を持たせると、人間以上に躾が大変ですもんねぇ……」

 尚、この時、女湯にいるエミリーとシンディが何故かくしゃみしていたという。
 アリスは笑いながら、設計外の行動をしていると言っていた。
 設計外の行動をするということは、それは大騒ぎするほどのものであるはずなのだが……。
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“Gynoid Multitype Cindy” 「千歳から苫小牧へ」

2017-03-09 09:29:00 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月6日17:00.天候:晴 新千歳空港国内線ターミナルビル]

 もうすっかり日が暮れた頃、1台のワンボックスが新千歳空港に到着する。

 所員:「着きました」
 敷島:「おっ、ありがとうございます」

 苫小牧行きのバスの時間まで、DCJ千歳営業所でマルチタイプや妖精型を職員のみに公表していた。
 その礼ということで、ここまで送ってもらった由。
 駐車場からだと歩くのだが、大きな荷物はマルチタイプ達が軽々と持ってくれている。

 シンディ:「社長、バスの乗車券購入してきますね」
 敷島:「おっ、頼む。バスなら、お前達も乗れるからな」

 敷島は財布の中から3000円出してシンディに渡した(2017年3月9日現在、新千歳空港〜苫小牧西港フェリーターミナル間の運賃は大人670円)。

 アリス:「それにしても、飛行機には乗らないのに空港に2度も来るなんてね、不思議な気持ちだわ」
 敷島:「日本の空港はそれ自体が交通ターミナルになっている場合があるからな、しょうがないよ」

 敷島はそう言って、ターミナル内の椅子に腰かけた。
 ここはANAの到着口から程近い。

 敷島:「科学館の人達は簡単に騙されたのか?」
 アリス:「そうなのよ。到着ロビーに着いたでしょ?そしたら、『DCJロボット未来科学館職員ご一行様』って書かれたペナントを持ったガイドがいるでしょう。しかも、ホテルマンの恰好をした状態で。最初は皆不思議がってたんだけど、迎えが来るなんて聞いてないから」

 しかし、出迎え役の男が言葉巧みに科学館職員達を丸め込んだという。
 実際連れて行かれた場所に止まっていたバスも、大きく宿泊先のホテルの名前が書かれていて、それで皆騙されたということらしい。
 バスに乗ってしばらくは空港の周りを走っていたのだが、古びたドライブインに入った途端、運転手と案内役がガスマスクを着けたかと思うと、車内に催眠ガスが充満したという。

 アリス:「気がついたら、アタシはあのボロ家に閉じ込められてたってわけ」
 敷島:「そして、他の職員さん達は札幌市郊外の廃墟に監禁されていたということか。やっぱりアリスを狙った犯行だったのかねぇ……」
 アリス:「どうして今頃?」
 敷島:「そりゃやっぱり、アリスが北海道に来ることを知ってチャンスだと思ったんだよ、きっと」
 アリス:「だったら尚更、ここから早いとこ離れないとね」
 敷島:「マーク達はさすがに死んだだろうし、他のテロリスト達も今、警察がガサ入れしている最中に行動しないだろう」

 そんなことを話している間に、シンディが戻ってきた。

 シンディ:「お待たせしました。大人4枚分です」
 敷島:「おっ、ありがとう」
 萌:「ボクの分は無いの?」
 エミリー:「お前は棚の上だ」
 敷島:「はっはっはー」

[同日17:20.天候:晴 新千歳空港国内線ターミナル→北都交通バス車内]

 外のバスプールでバスを待っていると、バスが入線してきた。
 高速バスタイプのボディだが、4列シートでトイレは付いていない。
 近距離を走るのだから、当たり前か。
 それでも荷物室はあるので、そこに荷物を預ける。
 バスに乗り込むと、敷島とアリスは真ん中の席に座った。
 通路を挟んで隣にエミリーとシンディ。
 萌は敷島達の真上の棚に乗った。
 乗客はあまり乗っておらず、定員の半分以下ってところか。
 発車時間になり、バスは折り戸式の扉を閉めて出発した。

〔「お待たせ致しました。苫小牧西港フェリーターミナル行き、発車致します」〕

 バスプールを出て少し開けた場所に出ると、離着陸する飛行機の姿が見える。
 外はすっかり日が暮れているので、ターミナルの夜景が結構きれいである。
 空港連絡バスなので、車内自動放送は日本語だけでなく、英語も流れる。
 その後で運転手が改めて肉声放送を行う。

〔「……終点、苫小牧西港フェリーターミナルには18時ちょうどの到着予定です。……」〕

 大洗行きのフェリーが18時45分に出航するので、なかなかちょうど良い時間帯であろう。
 萌は荷棚の上に横になって寝ているフリをしながら車内の様子を見ていたし、マルチタイプ姉妹は外を警戒していた。
 取りあえず、道内を出るまでは警戒態勢ということだ。

[同日18:00.天候:晴 苫小牧西港フェリーターミナル]

 バスは途中、高速道路を通って苫小牧市内に入った。
 所要時間40分くらいの近距離であっても、高速道路は通るわけである。
 バスはターミナルビルの前にあるバス停に停車した。
 他にもポールが立っているところを見ると、地元の路線バスもやってくるわけだ。

 運転手:「はい、ありがとうございましたー」

 ドアが開くと乗車券は運賃箱の中に放り込む。
 これは札幌都心行きと同じ方式だ。
 乗客を全員降ろしてから、運転手が降りてきて荷物室のハッチを開けた。
 マルチタイプ姉妹で、大きなキャリーケースを降ろす。

 敷島:「こういう時、力持ちがいると安心だな」
 エミリー:「お任せください」
 シンディ:「こんなの片手で持ち上がりますよ」

 シンディが調子に乗ってそれをやろうとしたが、エミリーに止められた。

 エミリー:「目立つからやめなさい」
 アリス:「どうやってフェリーに乗るの?」
 敷島:「乗船手続きをしなきゃいけない。ちょっと待て。俺が行ってくる」

 このターミナルにはフェリー会社が3社ほど入居している。
 そのうちの1つ、敷島は商船三井フェリーのカウンターに向かった。

 敷島:「もう既に支払は済ませてるからなぁ……」

 敷島の場合は電話予約である為、記帳台に行って乗船名簿を記入する必要がある。

 敷島:(今日の日付、行き先は大洗、支払方法は現金、住所、連絡先、予約番号、等級はスタンダード、あと乗船者氏名……シキシマ・タカオ、シキシマ・アリス……ファースト・エミリー、サード・シンディにしておくか。……で、車両は無しで、荒天時の同意はOKっと)

 敷島は記入が終わると、これで窓口に向かった。
 ふとロビーの方を見ると、アリスの横をシンディが立って周囲を警戒していた。

 敷島:「ん?エミリーはどこ行った?」
 エミリー:「はっ、ここに」
 敷島:「いつの間に!?」
 エミリー:「さっきからいましたが?」
 敷島:「まあいい。書類の記入は終わったから、ちょっと窓口行ってくる」
 エミリー:「はい」

 敷島達が車利用者以外での最後の乗客か。
 すぐに乗船券を手に船内へと向かって行った。
コメント (4)
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