報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「鬼娘と2人旅」

2023-04-29 21:04:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月12日06時45分 天候:曇 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→新宿線661K電車先頭車内]

 高橋は拘置所に収監されたままなので、福島県への調査は私とリサだけで行くことにした。
 まずは東京駅に向かう為、最寄りの菊川駅に向かった。

〔まもなく1番線に、各駅停車、笹塚行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 愛原「高橋の新幹線チケット、無駄にしたよ」
 リサ「払い戻ししたんでしょ?」
 愛原「その手数料は取られたんだよ」
 リサ「あー……」
 愛原「その手数料は、さすがのデイライトさんも出してくれないし……」
 リサ「だよねぇ……」

 列車番号の末尾のアルファベットがKということもあり、京王線から乗り入れていた京王電車が入線してきた。
 旧型の車両である。

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕

 平日の同じ時間よりは空いているだろうが、ローズピンクの座席が空いているということはなく、私達は反対側のドアの前に立つ。
 恐らく、後ろの車両は空いているだろう。
 しかし、今回はあえて混んでいる先頭車に乗り込んだ。
 その理由は、東京駅への乗り換えが、この車両の方が便利だからである。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 ホームドアと共に、電車のドアも閉まる。
 2打点チャイムが2回鳴るタイプで、JR東海の普通列車と同じチャイムである。
 運転席から発車合図のブザーの音が聞こえると、ガチャッと運転士がハンドルを操作する音が聞こえた。
 そして、エアーの抜ける音がすると、電車が動き出した。
 明るいホームから、暗いトンネルの中へと入る。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 自動放送は都営の車両と共通。
 リサは制服ではなく、私服を着ていた。
 デニムのショートパンツに、上は黒いTシャツ。
 そして、その上からはグレーのフード付きパーカーを着ていた。
 今はそのフードを被っている。
 角や尖った耳を隠すのに、フードは打ってつけなのだ。
 さすがに真夏だとそういう上着は着れないので、代わりにキャップを被って角を隠している。
 意識して角を引っ込めることはできるのだが、ふとした拍子に戻ってしまう恐れがある為、常に被っておいた方が無難だということになった。
 デニムのショートパンツやミニスカートを穿くのは……太ももを見せたい年頃なのだろう。
 制服のスカートも短くなっているし。
 それと、もう1つ理由があった。
 それは、斉藤玲子のこと。
 平泉の食堂の大女将が、玲子が上野医師と共に出て行く最後の姿を見ていた。
 その時、斉藤玲子はデニムのパンツを穿いていたという。
 当時は『ジーパン』と言ったか。
 リサのように太ももが見えるほどのショートタイプではなかったようだが、それを聞いたことで、リサも真似したようである。

[同日07時32分 天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 都営新宿線は馬喰横山駅で降りた。
 そして、そのまま電車の進行方向に向かって歩くと、下に下りる階段がある。
 そこを下りると、JRとの乗換改札口があり、そこを通ると、すぐにJR総武快速線乗り場である。
 それで東京行きの電車に乗り換え、私達は東京駅に無事到着した。
 尚、キップは新幹線特急券と乗車券が1枚になったタイプではない。
 『東京都区内→郡山』の乗車券を先に使用することになる。
 東京都区内とは、東京23区内のJRの駅なら、どこからでも乗り降りして良いという乗車券だ。
 新幹線に乗るのは東京駅からだが、そこに向かうのに、馬喰町駅は堂々たる東京都区内なので、ここでその乗車券が使用できるというわけである。
 そして、東京駅地下総武線・横須賀線ホームに到着。
 京葉線ホームほどではないが、地下深い場所にあるということもあり、ここから新幹線ホームへ向かうのに、少し時間が掛かる。
 もちろん、余裕を持って家を出たので、特に慌てる必要は無い。
 それに……リサが駅弁を所望しているので。
 リサに限らないことだが、どうも鬼というのは、常に空腹でいるようだ。
 その極みが餓鬼なのだろう。

 リサ「先生、駅弁は?」
 愛原「新幹線ホームでも売ってるよ」
 リサ「やった!」

 在来線コンコースにも、大きな駅弁売り場はあるが、ホーム上の売店でも販売されている。
 リサが欲しがったのは、やはり肉系統であった。
 で、私は幕の内弁当にする。
 あとは、お茶とかジュースとか……。

〔まもなく22番線に、7時44分発、“やまびこ”205号、仙台行きが、17両編成で参ります。この電車は、各駅に停車します。グランクラスは、10号車。グリーン車は、9号車、11号車。自由席は1号車から3号車と、12号車から17号車です。尚、全車両禁煙です。……〕

 駅弁や飲み物を購入してホームに戻ると、ちょうど列車が入線してくるところだった。
 私達が持っているのは、自由席のキップ。
 だから、自由席まで行かないといけない。
 高橋がいる場合は、3人席狙いなので、必然的に東北新幹線の車両に乗ることになるが、今日はリサと2人なので、せっかくだから秋田新幹線の車両に乗ってみることにした。
 リサと一緒の場合、先頭の17号車に乗らなくてはならない。
 長大編成の先頭車両だから、新幹線ホームもかなり端の方であった。
 日本橋口が近いくらいだ。
 各駅停車の仙台止まりで、これだけの長大編成。
 そして、端の車両ともあれば、乗車口に並んでいる先客は、数えるほどしかいなかった。
 しかも、平日なら上り列車の折り返しなのであるが、土休日ダイヤにおいては、回送列車として入線する。
 その為、すぐに乗車することができた。
 山形新幹線の車両もそうだが、秋田新幹線の車両も在来線規格である為、車両の幅が狭い。
 その為、普通車でも2人席しかないのだが、車両とホームの間が広く空いてしまうことになる。
 そこで、ホームに停車中はドアの下から、ステップがせり上げる構造になっているのである。
 私とリサはそのステップを踏んで、車内に入った。
 そして、進行方向左側の座席に座る。
 併結相手の東北新幹線E5系同様、普通車にもピローが付いている座席だが、シートピッチはやや狭い。
 狭いといっても、旧型車両と同程度であるが。
 少なくとも、E5系や東海道新幹線の普通車よりは狭い。
 3人席を嫌がってこっちの車両を狙う乗客もいるようだが、しかしシートピッチの狭さを嫌う客は敬遠するらしく、結局は乗客の好みということになる。
 尚、グリーン車にあってはどちらも広さは変わらない。
 E5系がモケットシート、秋田新幹線のE6系が一部革製のモケットで、肘掛けが木製という違いである。

 リサ「よいっしょっと」

 窓側に座ったリサは、座席のテーブルを出すと、そこに駅弁と飲み物を置いた。

 リサ「いただきまーす!」

 そして、発車の時刻を待たずして、駅弁の蓋を開けたのだった。
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“私立探偵 愛原学” 「高橋への面会」

2023-04-28 20:24:59 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月11日11時00分 天候:晴 東京都葛飾区小菅 東京拘置所]

 高橋は警察署の留置場から東京拘置所へ移送され、そこで勾留されることとなった。
 そこでは警察ではなく、検察による取り調べが行われ、そこで起訴か不起訴かが決まるのである。
 取り調べ中以外は面会ができるので、差し入れ品と共に面会に行ってやった。

 高橋「ヘヘ……。先生、どうもすいません……」
 愛原「もういいよ。とにかく、弁護士の先生も頑張って下さっているから、オマエはもうキレ散らかしたりするなよ?」
 高橋「もちろんです。俺のような起訴前の被告人は、単独室に入れられますから、他の収容者とケンカになることはありませんし、お上に逆らったらアウトなくらいなことも知っています」

 高橋は横にいる刑務官をチラッと見ながら言った。
 刑務官は、「こっち見んな」とばかりに、目で叱って来た。

 愛原「全く。何であんなことしたんだ?」
 高橋「先生のことが心配で心配で、居ても立っても居られなくて……」
 愛原「二日酔いくらいで大騒ぎしすぎなんだよ、オマエは」
 高橋「さ、サーセン。いや、スイマセン……」
 愛原「で、次は来週面会に行ってやる。差し入れして欲しい物は?」
 高橋「はい。やっぱ、マンガは定番っス」
 愛原「だろうな。他には?」
 高橋「やっぱ地獄の沙汰も金次第なんで……」
 愛原「だろうな」

 拘置所内には収容者が利用できる売店があり、現金しか使えない為、現金の差し入れは喜ばれるという。
 但し、上限が決まっており、最高額3万円までと決まっているとのこと。

 高橋「あと、着替えとかもオナシャス」
 愛原「分かってるよ。……まだ時間があるが、他に何かあるか?」
 高橋「先生、明日は福島に行かれるんですよね?」
 愛原「そうだ。斉藤玲子の実家を訪ねる。そこにまだ、実家があればの話だが……」
 高橋「因みに、何時の新幹線で行くおつもりですか?」
 愛原「ん?“やまびこ”205号だな。確か、郡山着が9時半頃だ。まあ、あんまり朝早く訪ねるのも失礼だし、世間一般の感覚で、9時台に訪ねるくらいならいいんじゃないかと思ってな」

 すると高橋、何故か顔を青ざめた。

 高橋「せ、先生……」
 愛原「何だ?」
 高橋「も、もう1本後の新幹線にしませんか?あ、いや、できれば10時台くらいの方が……」
 愛原「なに?どういうことだ?」
 高橋「え、えーと……」
 刑務官「……?」

 立ち会っている刑務官も、高橋の挙動に不審な点を感じたようだ。
 もしも疑われた場合、面会の一時中断や強制終了を言い渡されてしまう。

 高橋「や、“やまびこ”じゃ混んでるから、“こだま”にしませんか?」
 愛原「バカ。東北新幹線に“こだま”は走ってねーよ。“やまびこ”っつっても、各駅停車タイプで、それこそ東海道新幹線の“こだま”と同じタイプだから、混んじゃいねーよ」
 高橋「えーと……9時台でも早いような気がしますが……」
 愛原「あんまり遅いと、実家の人が出掛けてしまうかもしれんしな」
 高橋「そ、そんなこと言わずに……」
 愛原「何だ?何が言いたい?はっきりいえ!」
 高橋「あ、いや、その……ハッキリ言うとマズいんで……」
 刑務官「!?」

 刑務官の目が光る。

 愛原「新幹線に乗るとマズいのか?」
 高橋「いや、新幹線は全然オッケーっス。ただ、その……向こうの家に着くのが、9時くらいじゃマズいかと……」
 愛原「だから、何で?」

 高橋は何を言っている?
 幸い、面会中止が言い渡されることはなかったが、善場主任には報告しておこうと思った。
 面会が終了し、拘置所を出て、私は善場主任にに電話を掛けた。
 そして、高橋が言っていたことを伝えた。

 愛原「あいつ、何か知ってるんですかね?」
 善場「恐らく、何か知っているのでしょう。それも、高橋助手が勾留されている暴走行為とは全く別のことです。それがバレると、高橋助手は実刑を受ける恐れがあるので、喋りたくないのでしょう」
 愛原「だったら、私にも内緒にすればいいのに……」
 善場「明日の午前9時頃、福島県郡山市内で何かが起きる。そして、その『何か』に愛原所長が巻き込まれる恐れがある。だから、その時間帯をずらしてほしいと、高橋助手は言いたかったのでしょうね」
 愛原「あいつ、何でそんなことを知ってるんでしょう?」
 善場「……高橋助手は、クルド人の暴走族を教唆して、暴走行為を行ったわけですよね?」
 愛原「そうらしいですな」

 クルド人達に取っては、『強要』されたと思っているだろう。
 だが、警察や検察は、あくまでも高橋を『教唆犯』と見ているようだ。

 善場「……ヴェルトロには、クルド人も多く含まれていたと言います」
 愛原「は?」
 善場「これは内密にして頂きたいのですが、高橋助手が『教唆』したクルド人達、どうもBSAAが引き渡しを要求しているようです」
 愛原「ええっ!?」
 善場「もちろんBSAAから、詳しい情報がこちらにもたらされたわけではありません。ただ私は、立場上、ヴェルトロにはクルド人も多く含まれていたことは知っていましたので、BSAAが動いたという話を聞いた時、何故かヴェルトロの文字が頭に浮かびました」

 そ、そういえば、2005年頃に崩壊した宗教テロ組織、ヴェルトロの残党が日本国内に潜伏しているという話もあるんだっけ。
 日本アンブレラの社長、五十嵐が埼玉県川口市に住居を構えていたのも、ヴェルトロの残党であるクルド人を受け入れる為であったと言われている。

 愛原「高橋がそんなクルド人達の車に乗り込んだのは、偶然だったのでしょうか?」
 善場「分かりませんが、少なくとも高橋助手にとっては、警察や検察に知られたくない内容なのかもしれませんね?」

 高橋、オマエ、一体……?

 愛原「私は、どうしましょう?」
 善場「高橋助手は、新幹線は大丈夫だと言ったのですよね?」
 愛原「ええ、まあ……」
 善場「取りあえずは、予定通りの新幹線をご利用ください。そして、斉藤玲子の実家には、少し時間をずらして向かってください。それで何も無ければ、それで良しということにしましょう」
 愛原「分かりました」

 本当に大丈夫なのだろうか?
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“私立探偵 愛原学” 「高橋正義の暴走」

2023-04-28 16:54:50 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月8日15時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 夢だ。
 あれはきっと悪い夢だ。
 二日酔いだったものだから、きっと頭がおかしくなってしまったんだ。
 こういう時は、さっさと寝るに限る。
 そして次に目が覚めた時、私は現実に引き戻された。
 枕元に置いたスマホが着信音を鳴らす。
 目覚ましのアラームではない。
 電話着信だ。
 私がスマホを手に取り、画面を見ると、見たことの無い番号だった。
 が、しかし、末尾4桁の数字が『0110』になっている。
 これは警察署の番号である。
 私は急いで、電話に出た。

 愛原「も、もしもし?」
 警察官「もしもし。愛原さんのケータイでよろしいですか?」
 愛原「あ、はい。そうですが……」
 警察官「愛原学さんですね?」
 愛原「あ、はい。そうです……」

 私は上半身を起こした。
 中途半端に眠っていたせいか、まだ頭はボーッとしているが、しかし完全に酒は抜けたらしく、二日酔いの症状は無い。

 警察官「警視庁本所警察署交通課の白石と申します。こんにちは」
 愛原「あ、はい。どうも……こんにちは……」
 警察官「確認したいことがあるのですが、今お電話宜しいでしょうか?」
 愛原「あ、はい。大丈夫です……」
 警察官改め白石「被疑者の高橋正義を逮捕して取り調べをしておりまして、愛原学さんの所の事務所に雇用されていると証言しましたので、その確認のお電話です」
 愛原「あ、はい。確かに、高橋正義はうちの従業員です。あの……どんな容疑なのでしょうか?」
 白石「埼玉県からクルド人の運転する暴走車に乗り込み、菊川1丁目の自宅マンションまで暴走運転をさせた、要は教唆犯ですね」
 愛原「主犯ではないのですか?」
 白石「今のところ、車は本人のものではありませんし、本人が運転していた事実も今のところ確認できておりません。ただ、後部座席に同乗していたというところまでは確認しています」
 愛原「何で彼はそんなことを?ていうか、何で埼玉???」
 白石「それを今、取り調べしている最中です。愛原さんに心当たりはありますか?」
 愛原「いや、全くありません。彼は今日は、仙台から新幹線で東京まで戻って来るはずでした。それがどうして埼玉なのか、さっぱり分かりません」
 白石「もし良かったら、署まで来て頂いてもよろしいですか?」
 愛原「あ、はい。分かりました。すぐに伺います。はい」

 高橋!?
 やっぱり夢じゃなかったーっ!
 私は電話を切ると、急いで出発の準備をした。
 そして、リサにもLINEを送った。
 本所警察署の最寄り駅である錦糸町駅まで来てほしいと。
 そして、更に善場主任にもメールを送った。

[同日17時00分 天候:曇 東京都墨田区横川 警視庁本所警察署]

 私は警察署に行って、担当警察官と話した。
 どうやら高橋が乗った新幹線が、大宮駅で車両故障の為、運転見合わせをしてしまったらしい。
 そこで今度は、宇都宮線に乗り換えたわけだが、今度はその電車が浦和駅で人身事故を起こしてしまった。
 ブチギレた高橋は、駅の外に出ると、たまたま川口だか蕨だかから遊びに来ていた暴走族の車を見つけた。
 元暴走族の高橋は、昔取った杵柄とやらで、その暴走族車をヒッチハイクしようとしたが、今や川口や蕨の暴走族の殆どは不良外国人である。
 特に、クルド人が多い。
 日本語が通じないことに完全にブチギレた高橋は、そのクルド人をボコボコにした上、無理やり都内まで運転させたという。
 高橋も身長180cmある高身長だが、クルド人達も概して大柄だ。
 2人乗っていたらしいのだが、それを1人でボコした高橋も大概だ。
 とにかく、元々暴走族みたいな連中に、超特急で東京まで運転させたらどうなるか?
 火を見るより明らかだろう。
 信号無視は元より、スピード違反やら何やらで累積が【お察しください】。
 不幸中の幸いは、人身事故も物損事故も起こしていないことであるが……。
 逮捕されたクルド人達は、殆ど顔中血だらけだったという。
 よくそんな状態で運転できたものだと、警察官達も呆れていた。
 クルド人達は病院送り。
 今現在取り調べを受けているのは、高橋だけだということだ。

 白石「そのクルド人達も不法滞在の疑いがあるので、埼玉県警とも連携を取ることになりそうです」

 とのことだった。

 愛原「不良外国人達を捕まえたということで、表彰は……?」
 白石「されるわけないでしょ!」

 ついでに私も怒られた。
 因みに取り調べ中は、面会はできないという。
 とにかく、弁護士に相談しないと……。
 全くもう!

 リサ「あ、先生。どうだった?」
 愛原「高橋らしいことをしてくれたもんだ」

 リサは1階のロビーで待っていた。

 リサ「どうするの?」
 愛原「当番弁護士に依頼するしかないだろう。もっとも高橋のヤツ、既に頼んでいたそうだけどな」
 リサ「そうなの!」
 愛原「あいつの逮捕歴は1回や2回じゃないから、当番弁護士制度のことは知っているみたいだ」

 逮捕されてから警察官に依頼すると、警察官は当番弁護士を呼んでくれる。

 リサ「ふーん……」
 愛原「但し、接見は1回だけだから、あとは国選弁護人か私選弁護人かにしないと……」
 リサ「弁護士さんに頼むと、料金高いんだってね」
 愛原「そうなんだよ」

 国選弁護人であれば原則無料、或いは低額で済む。
 が、自分で弁護士は選べない。
 一方、私選弁護人であれば、いつでも弁護士に頼めるが、その代わり料金が高くなりがちだという。
 もっとも、当番弁護士が信頼できそうであれば、そのままその当番弁護士に依頼しても良いようだ(私選弁護人として)。
 高橋は、どのようにしたのやら……。

 愛原「とにかく、飯食ってから帰ろう。今日のところは、ここまでだ」
 リサ「分かった」

 何とか不起訴に持っていけないかなぁ……。
 幸い、暴走行為による被害者はいないようだから……。
 となると、やっぱり弁護士に依頼しないといけないわけだ。
 幸い弁護士事務所によっては、24時間相談を受け付けている所もある。
 夕食を取ってから、改めて考えることにしよう。
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“私立探偵 愛原学” 「愛原の二日酔い」

2023-04-27 20:28:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月8日06時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原「ガビーン……」

 久しぶりに強い日本酒……且つ、安酒を飲んだものだから、夜のうちに抜けなくなっていた。

 リサ「先生……お酒臭い……」
 愛原「スマン……」

 鬼の姿になっているリサが、鼻をつまんでいる。

 愛原「午前中の仕事は休みだな……こりゃ……」
 リサ「元々依頼なんて無いでしょ?」
 愛原「うるせーな……」
 リサ「朝ごはんは?」

 実は今朝の朝食はリサが起きて作ってくれた。
 もっとも、まともに料理をしたのはベーコンエッグくらいだが。
 高橋に教わった作り方である。

 愛原「悪い……今、それどころじゃない……」

 私は偏頭痛のように痛む頭を押さえた。

 リサ「全くもう……。じゃあ、わたしが夜中に忍んで行ったのも全然覚えてないの?」
 愛原「えっ!?」

 たまにムラムラしたリサが、夜這いに来ようとすることがある。
 だから私は、自分の部屋のドアに鍵を3つ付けている。
 もっとも、リサが本気を出せば、あんな木製のドア、簡単に壊せるだろうし、いざとなったら、壁をブチ破ったり、天井裏から侵入しようとするだろう。
 但し、そこまでしたら、リサが暴走したと自動的に判断され、BSAA極東支部日本地区本部に自動通報されるシステムが構築されている。
 リサのメッセージとして、ドアを長い爪でカリカリと引っ掻くことがある。
 その為、私の部屋のドアは傷だらけだ。
 これは退去の時に、敷金が引かれるパターンだろう。
 また、部屋の外に、濡れたショーツを脱ぎ捨てて行くこともあった。
 愛液でグッショリと濡れたショーツだ。
 結局私がドアを開けないものだから、仕方なく自室に戻って、電マやピンクローターを使って何度もオナニーして発散するのが常だった。
 鬼型のBOW(生物兵器)だからか、食欲がとても旺盛で、性欲もとても旺盛である。

 リサ「わたしが何度も呼び掛けたのに……」
 愛原「悪い……。酒にやられて、完全に爆睡してた」
 リサ「もーっ!はい、薬!」

 リサは乱暴に薬箱を私の前に置いた。
 この中には、二日酔いの薬が入っている。
 高橋の場合は胃腸に症状が出やすいので、胃腸薬が入っているが、私の場合は頭痛。
 単なる頭痛薬ではなく、二日酔いの症状としての頭痛に効く薬が市販されているので、それを購入して保管していた。
 ぶっちゃけ、アンブレラも、生物兵器なんて造れる技術を持っていたくらいだから、そういった薬もお茶の子さいさいで製造して売っていたくらいなんだがな。

 愛原「ありがとう……」

 リサが乱暴にドンッと置いたものだから、その響きで余計に頭痛が酷くなった。
 私はそれを飲んだ。

 リサ「二日酔いなんて、わたしのウィルスでも治せないよ!」

 リサは学校の制服姿のまま、両手を腰にやって、不機嫌に言った。

 愛原「そういうものなんだな……」

 まあ、二日酔いは病気ではないからな。
 酒が抜けるのを待つしかない。
 普段はビールやサワーなど、アルコール度数の低い酒しか飲まないものだから、さすがにその3倍もの度数を持つ日本酒に、肝臓が耐えられなかったらしい。
 我にながら、情けない。

 リサ「先生のベーコンエッグ、冷蔵庫に入れておくからね?ちゃんと食べてよね」
 愛原「分かってる。二日酔いが治ったら、頂くよ」

 惜しむらくは、高橋を迎えに行けないことだ。
 高橋のヤツ、なるべく早く帰りたがっていたかからな……。
 学校へ行く時間になり、リサは学校へと向かって行った。
 一方、私は再び自室に戻り、酒が抜けるまで寝ていることにした。
 薬は飲んだから、恐らく効いてくれるだろう。
 その前に一応、高橋と善場主任にはLINEやメールで連絡しておいた。
 案の定、高橋からは……。

 高橋「マジっスか、先生?!すぐに帰って看病させて頂きゃす!」

 という返信が来た。
 どうやら今は熱も平熱まで下がり、私の実家を出る準備をしているところらしい。

 高橋「金が勿体ないので、高速バスで帰ります!」

 なんて言っていた高橋だったが、これで高速バスではなく、新幹線で帰ろうとするだろう。
 元より、私は新幹線で帰京することを想定して、高橋に帰りの旅費を渡しておいたのだ。
 あと、まだ朝早いせいか、善場主任からの返信は無かった。

[同日12時00分 天候:晴 愛原のマンション]

 愛原「うーん……」

 外の騒がしさで目が覚めた。
 何台ものパトカーのサイレンが鳴り響き、時折、マイクで何かを叫ぶ怒号。
 そして、暴走族の車のような爆音まで聞こえる。

〔「止まれぇーっ!ナンバー分かってんだぞーっ!」〕

 愛原「うるさいなぁ……」

 薬が効いたのか、或いは酒がようやく抜けたのか、今朝よりはスッキリした感じである。
 ようやく起きれるかなと思い、私はベッドから出た。
 トイレに向かう。
 まだ高橋は帰ってきていないのか、室内に人の気配は無い。
 因みにマンションのドアはカードキー式で、高橋もそれを持っているので、部屋のドアはそれで開けられるようになっている(もちろん、リサもそれを持っている)。

 愛原「ん?」

 トイレで用を足す。
 マンションのトイレには窓が無いが、その代わり、換気扇は付いている。
 ダクト越しに外に繋がっているせいか、そこからパトカーのサイレンだの、暴走車の爆音だのが聞こえていたのだが、それがマンションの前でピタッと止まった。

 愛原「な、何だ?」

 トイレから出た私は、急いでベランダに出てみた。

 愛原「おわっ!?」

 マンションの前の新大橋通には、パトカーが何台も止まっていた。
 それが1台の車を取り囲むようにして止まっている。
 大捕り物だな。
 全く、こんなマンションの前で捕まらなくたっていいだろうに……。
 今朝と比べて、だいぶ頭がスッキリした私は、リサが作り置きしてくれたベーコンエッグのことを思い出し、それを昼食にしようと思った。
 食パンは余っているから、それを2枚で挟んで、ベーコンエッグサンドにしよう。
 私がそれで昼食を取っていると、再び外から怒号が聞こえてきた。

 高橋「放せ!俺は先生に会いてぇーんだよっ!」
 警察官「何をバカなことを言ってるんだ!さっさとパトカーに乗れっ!」
 愛原「ブッ!?」

 外から高橋の声がしたような気がした。
 私が再びベランダから外を見ると……。

 愛原「高橋ーっ!?」

 手錠を掛けられ、他に暴走族らしき若者と共に、パトカーに乗せられようとしている高橋の姿があった。
 ……きっと、まだ二日酔いの酒が抜けていないのだろう。
 午後からは仕事が再開できそうな気がしていたのだが、やはり大事を取って、今日1日は臨時休業とした方が良さそうだ……。
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“私立探偵 愛原学” 「2人きりの夜」

2023-04-25 21:01:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月7日19時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 

 ピザが届くまでの間、私はリサの服などを洗濯した。
 夜から雨が降るというので、洗濯物は部屋干しにする。
 リサは先に風呂に入っていた。

 愛原「どうもお世話さま」
 配達員「ありがとうございましたー!」

 ピザは時間通りに届いた。
 玄関を開けると、湿った空気を感じたので、雨が降り出してくるのも時間の問題らしい。

 リサ「おーっ!ピザ届いた!」

 全裸にバスタオルだけ巻いたリサが、脱衣所から湯気を立てて顔を出した。
 そのまま出てきそうだったので……。

 愛原「テーブルの上に用意しておくから、ちゃんと服着てこい!」
 リサ「本日ネイキッド・デー」
 愛原「アホか!」
 リサ「ラスボスクラスのBOWは、服着てないよ?」
 愛原「それはBSAAやテラセイブに射殺される前提だからな?それに、オリジナルのリサ・トレヴァーは最期まで服着ていたそうじゃないか」
 リサ「それもそうだね」

 リサは納得して、再び脱衣所に入っていった。
 アメリカのオリジナルのリサ・トレヴァーを引き合いに出すと、体内のGウィルスが反応するのか、素直に言う事を聞く。
 Gウィルスの始祖を作り出したのは、リサ・トレヴァーだからだ。

 リサ「お待たせ」

 リサは服を着てきたが、体操服にブルマだった。
 緑と紺のブルマは洗濯中な上、準学校指定体操着としての緑ブルマはもう1着あるのだが、明日も体育があるということで、さすがに今は穿かないようだ。
 よって、今はエンジ色のブルマを穿いている。
 白いTシャツ型の体操服には、大きく『リサ・トレヴァー』と書かれたゼッケンが付いていた。

 愛原「オマエなぁ……。まあ、いいや」
 リサ「ちゃんと服着たからいいでしょ?それも、先生の好きなヤツ」
 愛原「読者が誤解するからやめなさい」
 リサ「ジュース出すねー?先生は『鬼ころし』?」
 愛原「ああ」

 私はコンビニで買った、学校給食の牛乳パックのような形の日本酒を飲むことにした。
 リサが以前誤飲したものとは違う銘柄であり、リサも酒には懲りたはずなのだが、何故かこの『鬼ころし』だけは関心を寄せていた。
 私がまるで本当に牛乳を飲むかのように、ストローを突き刺す。

 リサ「本当に牛乳みたい」
 愛原「なあ?」

 しかし飲んでみると、間違いなく日本酒だった。
 アルコール度数15度の辛口。
 違う酒造メーカーとはいえ、恐らく似たような味であろう同じ名前の酒を、実家の父親は美味そうに飲んでいた。

 愛原「うわっ!これ、効くなぁ……!」
 リサ「……『鬼の力は封じ、人間の力は増大する、正に鬼退治の妙酒』」
 愛原「どこのマンガだ?“鬼滅の刃”か?“うる星やつら”か?」
 リサ「演劇部の台本。この前の文化祭でやってた」
 愛原「演劇部か。あれは観に行かなかったなぁ……」
 リサ「わたしも出演を求められたけど、練習とかメンド臭そうだから断った」
 愛原「いいラスボスの役だろうなぁ……」
 リサ「『桃太郎と夜叉姫』。わたしに、『是非とも夜叉姫の役を!』なんて言われたけど……」
 愛原「いいじゃん!イメージと合ってそうだよ!」

 リサは口を開いて、牙を剥き出しにした。
 それで、Lサイズのピザにガブリ付く。

 リサ「嫌だ。先生以外の男とイチャラブなんて」
 愛原「どうせ演技だろう?ていうか、そういうストーリーなんだ?」
 リサ「何でも、実際の桃太郎の続編がモチーフらしいよ?」
 愛原「桃太郎の続編……。『桃太郎元服絵巻』か。確か、桃太郎に退治された鬼達が、奪われた宝物とメンツを取り返す為に、ボスである赤鬼の娘を人間に化けさせ、桃太郎の所に送り込むという話だな」

 基本的には三人称視点での物語になっているが、桃太郎側の一人称視点、鬼側の一人称視点に変えてみると、だいぶイメージが変わるという。

 リサ「それが夜叉姫」
 愛原「桃鉄とかにもいたなぁ……。うん。桃鉄(桃太郎電鉄)だとよく分かんないけど、桃伝(桃太郎伝説)の方だと、夜叉姫は閻魔大王の娘という設定だったな」
 リサ「そう、それ!」
 愛原「何だ。どっちかっていうと、桃伝シリーズがモチーフか」
 リサ「イザとなったら、サイコロ振って決めるとか、移動が汽車とかっていうシーンもあったらしいよ」
 愛原「桃鉄も入ってんじゃん!」

 桃太郎『電鉄』なのに、移動の基本はSLという矛盾。

 リサ「ね?何か面白くなさそうでしょ?」
 愛原「う、うーん……。まあ、ちょっとカオスティックなストーリーになりそうだ」
 リサ「作者に脚本してもらえばいいんだよ」
 愛原「作者だと、列車のシーンだけで1話が終わるからダメだ」
 リサ「ねー、先生。それより、わたしにも一口ちょうだい」
 愛原「ダメだ。あと3年待て」

 リサは『鬼ころし』を所望した。

 愛原「ネーミングが鬼から見れば最悪なのに、よく飲む気になるな?」
 リサ「なんかね、こういうお酒は特別って感じがするんだよ」
 愛原「そうなのか?」
 リサ「というわけで、お願い!おねがーい!」

 リサが私の隣にやってきて、おねだりしてきた。
 これが普通の飲み物なら喜んであげるところだが、さすがは酒はダメだ。

 愛原「だから、酒はダメだって」
 リサ「えーっ!?」
 愛原「3年経ったら、飲ませてやるから」
 リサ「そんなぁ……!」

 それにしても、ビールも私と一緒に飲みたがるフシはあるが、すぐに諦めてしまう。
 しかし、この『鬼ころし』だけは、随分と食い下がってきた。

 愛原「どうして、そんなに飲みたいんだ?」
 リサ「『鬼ころし』は、特別なような気がするの」
 愛原「でも、普通の酒だって」
 リサ「この赤鬼さんが千鳥足になるくらいなんだよ?わたしを酔わせてヤるチャンスだよ?」

 リサはパックに描かれている赤鬼を指さした。
 リサの指先は鬼らしく、全ての爪が長く伸びている。
 こんなので思いっきり引っ掻かれたら、肉は裂け、血が噴き出すであろう。

 愛原「鬼にそんなことやったら、1発で衆合地獄行きだろうが」

 八大地獄の1つ。
 酒や女で悪さをした者が落ちる地獄。
 基本的にどの地獄も鬼達に責められることに変わりは無いのだが、衆合地獄においてのみ、美しい女の鬼が責めてくれるそうである。

 愛原「鬼は辛い物が好きで、酒も好きだそうだ。リサ、オマエ、本当に鬼に……」
 リサ「……うん。そうかもね」

 リサはピザには、タバスコソースを思いっきり掛けて食べている。
 しかし、全く動じることはない。
 いつの間にかリサの頭には2本の角が生え、両耳も長く尖っていた。

 リサ「……もう、人間には戻れないのかもしれない……」
 愛原「そ、そんなことはないさ。そんなことは……」

 とはいうものの、確信を持って答えることができない私だった。
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