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左利きから哲学する

2007-09-14 | 左利き
最近、哲学の本を読み始めています。

まだまだ初歩の初歩といった、初心者向けの入門書ばかり、せいぜい百ページや二百ページといった本を読みかけているところです。

今までにも東洋思想の本や、ちょっとした哲学っぽい本は読んだことがありました。
しかし、本格的に哲学の本を読もうとするのは初めての経験です。


『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第87号(No.87) 2007/6/23「<左利きプチ・アンケート>第42回」の編集後記でもちょっと書きましたように、モンテーニュの『エセー』の三巻本の選集を読み終えてから、ボチボチと哲学の入門書を読み始めるようになりました。

モンテーニュの『エセー』そのものは、<哲学書>というよりは、<思索の書>であります。
しかし、この本により、同じくフランスの近代哲学の祖ともいわれるデカルトや、パスカルといった哲学者が影響を受けているように思われます。

思索の書から哲学へ、と、これはまさに私が今たどっている道のようです。


私が哲学に興味を持つようになったのは、先に挙げた編集後記にも書いていますように、左利きについて考える過程で出会った諸問題―礼儀・作法とは、社会のあり方とは、個人の生き方とは、何が正しいのか、善悪・正誤・正邪とは、正常・異常とは、普通・特殊(特別)とは、などなど…といったことについて考えてゆくうちに、こういう思考はひょっとしたら<哲学>とやらいうものと関係があるのでないか、と気付いたからです。

また私は、本を読むときでも何事でも、ついつい自分自身の中にある左利きや利き手の問題に引き付けて考えてしまいます。
こういう考え方というのも、案外、哲学の考え方ではないのか?

このように、これは哲学的な考え方に近いのではないか、という疑問を解決する意味でも、またこれから更に左利きについて考えを深めてゆく上でも、一度<哲学>なるものがどういうものか見ておくべきではないかと思い立ったわけです。

竹田青嗣(たけだ・せいじ)さんという哲学者の書いた初心者向けの入門書『自分を知るための哲学入門』(ちくま学芸文庫 1993年刊)の「まえがき」のなかで、職業に関連してではなく、日常生活の中で人間が哲学する根本的な動機について書いています。
自分の(=世間から受けとった)習慣的な考え方でものごとを考えると、どうしても自分が苦しく、行き詰ってしまうときがある。そういう場合にはじめて、人間はこの習慣的な考え方に逆らい、それに<抗って>ものごとを根本的に考え直そうとする動機を与えられる。まさしく哲学は、そういう場合にわたしたちにとって“役に立つ”。そういうときこそ哲学は、その“何のためにあるか”という意味をはっきりとわたしたちに告げるのである。(11p)

私が左利きについて考えるとき、というのはまさにこういうときに当たるのではないか…。

竹田さんは在日朝鮮人で、全共闘世代でもあったといいます。
そういう自分が行き詰った/生き詰まった?経験が、自分を哲学に押し進めたのではないか、といった内容のお話をされています。

私の場合は、左利きという問題が哲学へと押し進めているのかもしれません。
少なくとも私にとって左利きは哲学する動機として十分成り立つような気がします。

さて、どのような世界が私の前に開けるのかはまだ不明です。
しかし、とてつもなく広い世界が目の前に広がってきたように思います。

終着点ははるか遠くです。

いつたどり着けるのか、たどり着く地がどのような場所なのかはわかりませんが、やりがいのある旅が始まったように思います。


*
竹田青嗣先生の本では、下の記事で、『哲学ってなんだ 自分と社会を知る』岩波ジュニア新書415(2002刊)の中の「差別の本質観取」の項を参考に話を進めています。

今回、哲学および竹田先生の本に興味を持たれた方で、私のように哲学の基礎知識をお持ちでない方は、中高生以上向けに書かれたこちらの本から先にお読みになられるほうが、哲学とは何か、哲学することの本質とは何かが、わかりやすいかもしれません。

*
2007.07.05 横澤氏「太一くん…」発言に見る左手、利き手差別の構造
お茶でっせ版新生活版

※本稿は、ココログ版『レフティやすおのお茶でっせ』より「左利きから哲学する」を転載したものです。

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