ボランティアは金を払ってでもしろ(番外編)
(1)被災地ガイド?
私の活動の二週目のことだ。一台の車に私と運転手の男、若い女の人が三人乗り、豊間へ派遣される。痩せたさだまさし風の運転手の男は歳の頃30代前半といったところで、その足どりの軽さと口の軽さに私は気付いた。声もさださんに似てたぞ。
みなさん、現地にトイレはありませんよ。今ここでトイレはすませてくださいね(と親切である。あとで聞けば、この男は活動三日目。もっと前からボランティアをしていた人は私も含め、まだいた)。
ほら、ここにも地割れ、さあ揺れますよ(と言いながらアクセルを緩めない)。
津波はね、波と言ってもあれは砂なんです。だから力があるんですよ。あ、菜の花がきれいでしょ?
だって船が川の橋みたいに横に渡ってるんですよ。
あ、あの子、制服じゃないでしょ?(と下校中の中学生らしい女の子を指さす) つまり避難している子なんですよ。ここは通常、制服で登下校ですからね。
(前の車に)じいちゃん、もっと早く走ってよ。
ほら、津波の名残が残ってる(と田んぼの水を指す。私は思わず「いや、違いますよ。これ、先週にはなかった水で、きっと昨日の雨のせいですよ」と言ってしまう。車内に別な空気が流れ始める)。
(「柏でも震度6だったのに、いわき(市内)はどうしてこんなに被災してるんだろう」と私がつぶやいただけなのだが)
いわき市内はねえ、もともとが湖でね、それで地盤が弱いんですよ(「あれえ?知り合いは炭鉱の跡が地下にあって、それで地盤が安定しないと言ってたような気がする」と、私の方はもう意地悪モードになっていた。本当のところは両方が原因となっているらしい)。
(後ろの女の子たちが自分たちだけの会話を始める。エキストラかそれとも重要な役なのか、どうもひとりの子が映画に出たという話。でも自分の出た映画がどんな映画だったのか良く分からない…という話であった)
『リアルクローズ』? ああ、それね不良の映画ですよ。マンガが原作なんですよ(と言うさださんに瞬時私は反応してしまう。「違いますよ。『リアルクローズ』もマンガだったと思うけど、女の子のマンガだった気がする。不良の映画・マンガは『クローズ』。『zero』と『zeroⅡ』があったやつですよ」)。
でも、作者が…(見苦しく言い訳めくさだに、間をおかず私は言う。「高橋ツトムでしょ?」)あ、そう。その作者が会津出身で…(とまったく関係がないことを言う。でもまあ、私自身も年甲斐がないのです)
な具合で、車の中は前列が勝手に熱くなっていた。
(2)泥棒
震災翌日から泥棒は横行したらしい。伊達巻工場の泥の掻き出しをしていた時に社長が言う。流されずにすんだ家屋の、水の入らなかった二階に入るそうだ。目当ては貴金属と現金。もちろん、残っている家屋は運もあるというものの、頑丈な作りを持つことの出来る家だ。そして、自衛隊が瓦礫から道路を確保した夜からはもっとひどかった。二トントラックで横付けだ。それが深夜だよ。深夜にトラックで何をしてるんだ、ということだ。
そういうことをするのに日本人はいない、というボランティアの言葉がきっかけで少し論議になった。結局、悪いことをするのに外国人・日本人はない、という結論になってよかった。
また、これは別なところで聞いた話。「隣の家の親戚のもので、見舞いに来た。(隣に)入りますよ」という三人組がいたらしい。「隣の家って、名前は誰だっけ?」と聞くと「いいです」と言って退散したという。全員おばさんだった。
☆土、日曜はボランティアの人数がぐっと膨れ上がる。そんなわけで私はちょうどよく、いつも週末柏に戻る。ゴールデンウィークはさらにすごい数の人々が手伝いに訪れるそうだ。だから私はいつも通りのゴールデンウィークをすごそうと思う。来週は少し早めの帰柏となるので、その分いわきへの出発も早めて、明日出発。また何日かこの通信お休みします。
(1)被災地ガイド?
私の活動の二週目のことだ。一台の車に私と運転手の男、若い女の人が三人乗り、豊間へ派遣される。痩せたさだまさし風の運転手の男は歳の頃30代前半といったところで、その足どりの軽さと口の軽さに私は気付いた。声もさださんに似てたぞ。
みなさん、現地にトイレはありませんよ。今ここでトイレはすませてくださいね(と親切である。あとで聞けば、この男は活動三日目。もっと前からボランティアをしていた人は私も含め、まだいた)。
ほら、ここにも地割れ、さあ揺れますよ(と言いながらアクセルを緩めない)。
津波はね、波と言ってもあれは砂なんです。だから力があるんですよ。あ、菜の花がきれいでしょ?
だって船が川の橋みたいに横に渡ってるんですよ。
あ、あの子、制服じゃないでしょ?(と下校中の中学生らしい女の子を指さす) つまり避難している子なんですよ。ここは通常、制服で登下校ですからね。
(前の車に)じいちゃん、もっと早く走ってよ。
ほら、津波の名残が残ってる(と田んぼの水を指す。私は思わず「いや、違いますよ。これ、先週にはなかった水で、きっと昨日の雨のせいですよ」と言ってしまう。車内に別な空気が流れ始める)。
(「柏でも震度6だったのに、いわき(市内)はどうしてこんなに被災してるんだろう」と私がつぶやいただけなのだが)
いわき市内はねえ、もともとが湖でね、それで地盤が弱いんですよ(「あれえ?知り合いは炭鉱の跡が地下にあって、それで地盤が安定しないと言ってたような気がする」と、私の方はもう意地悪モードになっていた。本当のところは両方が原因となっているらしい)。
(後ろの女の子たちが自分たちだけの会話を始める。エキストラかそれとも重要な役なのか、どうもひとりの子が映画に出たという話。でも自分の出た映画がどんな映画だったのか良く分からない…という話であった)
『リアルクローズ』? ああ、それね不良の映画ですよ。マンガが原作なんですよ(と言うさださんに瞬時私は反応してしまう。「違いますよ。『リアルクローズ』もマンガだったと思うけど、女の子のマンガだった気がする。不良の映画・マンガは『クローズ』。『zero』と『zeroⅡ』があったやつですよ」)。
でも、作者が…(見苦しく言い訳めくさだに、間をおかず私は言う。「高橋ツトムでしょ?」)あ、そう。その作者が会津出身で…(とまったく関係がないことを言う。でもまあ、私自身も年甲斐がないのです)
な具合で、車の中は前列が勝手に熱くなっていた。
(2)泥棒
震災翌日から泥棒は横行したらしい。伊達巻工場の泥の掻き出しをしていた時に社長が言う。流されずにすんだ家屋の、水の入らなかった二階に入るそうだ。目当ては貴金属と現金。もちろん、残っている家屋は運もあるというものの、頑丈な作りを持つことの出来る家だ。そして、自衛隊が瓦礫から道路を確保した夜からはもっとひどかった。二トントラックで横付けだ。それが深夜だよ。深夜にトラックで何をしてるんだ、ということだ。
そういうことをするのに日本人はいない、というボランティアの言葉がきっかけで少し論議になった。結局、悪いことをするのに外国人・日本人はない、という結論になってよかった。
また、これは別なところで聞いた話。「隣の家の親戚のもので、見舞いに来た。(隣に)入りますよ」という三人組がいたらしい。「隣の家って、名前は誰だっけ?」と聞くと「いいです」と言って退散したという。全員おばさんだった。
☆土、日曜はボランティアの人数がぐっと膨れ上がる。そんなわけで私はちょうどよく、いつも週末柏に戻る。ゴールデンウィークはさらにすごい数の人々が手伝いに訪れるそうだ。だから私はいつも通りのゴールデンウィークをすごそうと思う。来週は少し早めの帰柏となるので、その分いわきへの出発も早めて、明日出発。また何日かこの通信お休みします。
ブログのリンクをはらせていただき、ツイッターで紹介させていただいています。
琴寄さんがブログ発信をされるとは、正直思っていませんでした。驚きました。各記事、私なりに丁寧に読ませていただいています。
もう10数年、同じ中学校教師として、先生の発言にずうっと注目してきました。
なんとか公教育の場から発信し続けようと願っている私にとって、琴寄さんの不思議なバランス感覚が、一貫して憧れでもありました(今も)。
今年は中3担任です。「教えやすさ」優先ではなく「学びやすさ」優先の現場に、中学校を変えていくためにどうしたらいいのだろうと、毎日考えています。
さださん元気ですか?
なんか、ホッとするはなしのはずから、意地悪キャラへと、転身して泥棒へと発展。
最後のおばさん三人組、一体何者なんですかね。
トラック横付けして、夜中になにをしておられるのか。全国から支援や、ボランティアと被災地、被災者の為に、駆けつけている方々がおられる中で、
それとは、裏腹に、全国から、犯罪者のスペシャリストたちも集まって来ているんですかね。
遅かれ早かれその道を極めたスペシャリストの方々たちと出会いその方たちは、更正の道を選択せざる終えない、現実へようこそ、welcomeおばさん。
(^^)人(^^)一緒にせんたくしようね!