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瀬戸際の暇人

今年も休みがちな予定(汗)

『何度も廻り合う』その22

2006年01月23日 23時29分55秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです。】





順調に予定をオーバーしている。



ニュースタッドのアミューズメントを攻略し、駆け足で隣の地区『ミュージアムスタッド』へと向う。



辿り着いた時には15分のオーバー。



結局、次に予定してた『オルゴール・ファンタジア』の4時の回に間に合わず、仕方なくその前に在った『カロヨン・シンフォニカ』の方へ先に入る事にした。




『カロヨン・シンフォニカ』っつうのは鐘の博物館で、世界中から集めた約300の鐘を一堂に展示している所らしい。


で、館最大の目玉っつうのが、高さ9mも有る『カロヨン・タワー』っつうヤツらしく。

これがタイムリーにも俺達が入館した時に、物凄ェ大音量で演奏を始めた。


ぶっちゃけ煩ェの何の…3人揃って思わず唖然呆然、耳塞ぎながら聴いた。

や、塞がねェと鼓膜破れそうだって!


案内役が説明するには、17世紀のオランダ教会の鐘楼を再現した物だって事で、毎15分置きで自動演奏を行うらしい。


目の前で巨大な演奏装置が簾みたく張ったワイヤーを引張りベルを鳴らす、その度に床が振動で揺れる。


元は時報として造られた物らしい…こんだけでけェ音出しゃあ、そりゃ街中隈なく伝える事が出来んだろうよ。



演奏終了、ルフィなんかは気に入って拍手してアンコール希望したが、それは勘弁して欲しいと願った。


頭痛くなっちまう…終って暫くしても耳ん中でくわんくわん響いてた。



ナミ曰くスケジュール押している為、早々に2階まで廻って館を後にする。



出た丁度に前で、当初予定してた施設館、『オルゴール・ファンタジア』が入場始めてたんで、そのまま入口に並ぶ。



と後から「カーン!!」と鐘が鳴ったんで振り向く。


見るとさっき居た館の外壁に設置された4つの鐘が鳴っていた。


所謂からくり時計だったらしい。


オランダの鐘撞き職人男の人形が2体、カンカンカンカン交互に打ち鳴らす……時代がかってて趣き深い。




次に入館した『オルゴール・ファンタジア』っつうのはオルゴールの博物館だった。


オルゴールっつっても俺が知ってる様な、蓋開けたりネジ巻いたりして曲鳴らすっつうヤツじゃねェ。

17~20世紀の自動演奏楽器…オルゴールの御先祖様を集めて展示してある博物館っつうのだった。



入ると他の客と一緒に先ずホールの様な展示室に通されて、案内役がその中の1つを選び演奏を聴かせる。


この日聴いたのは、入って目の前の、1番ド派手で1番でっけェ『ダンスオルガン』っつう、100年前にダンスホールでの演奏用として造られた物だった。


バラの花彫ってある外観も凄ェが、内蔵した334本の笛使っての演奏が、さっき聴いたカロヨンにも負けねェくれェの大音量で驚いた。


当時は蒸気エンジンを動力に、『ブック』って言う穴だらけの本の様な物使って演奏してたらしい。

開いた穴に蒸気を吹き込み出る音で、曲を奏でるっつう仕組…だろう。



演奏が終って次は2階の展示室にゾロゾロと移動させられる。


今度は主にシリンダー使って演奏するタイプのオルゴールを集めた部屋だった。


シリンダーってのは筒型してサボテンの棘みてェなのが無数に埋め込まれた様な物で、これがブックに取って代り、次の時代に楽譜として使用されたっつう事だった。


この部屋でも展示された内の1つを選び目の前で演奏する。

1870年代にスイスで製作された物なんだそうな。

曲目は、ええと……


「ナミ、これ何て曲っつってたか?」

「賛美歌(ヒム)だって。多分、クリスマス・シーズンに合せての選曲ね。」


此処で、演奏中の回転しているシリンダーに、居る客全員、順繰りに触れさせてく時間が設けられた。


触れるとまるきしサボテンの棘みてェなチクチクした感触がする。


「すげェなー、本当にゾロの頭みたくチクチクしてやがる!」
「ってサボテンだろっつの!!!」


それにしても当時から色んな形したオルゴールが有ったもんだと感心して観回す。


一見額縁入りの絵にしか見えない物や、篭の中の鳥が囀るといった物まで…職人の腕ってのはまったく大したもんだ。



3つ目の最後の部屋では、席に座ってコンサートの様に演奏を聴く形となっていた。


今迄さんざっぱら走らされて来たもんで、席に座ってってのは非常に有難かった。

座り心地が良いもんでこのまま寝ちまいたいとも考えちまう。


客全員が席に着いた所で、案内役が舞台に立ち説明し始める。


舞台には様々な形したオルゴールが数台置かれていた。


「あの中央のピエロ人形、あれ演奏してくんねーかなー!!1番面白そーだ♪♪」


ルフィの指差す中央には、如何にもからくり人形と思しきピエロが、鉄棒でもするよなポーズで置いてあった。


…残念ながら選ばれたのはそれではなく、木造の比較的地味なデザインしたヤツだった。

ルフィが如何にも不服そうに口を尖らす。


演奏に使われたのは『ヴァイオラーノ』って言う、ヴァイオリンとピアノを同時に演奏する様な物で、80年前にアメリカで製作されたらしい。

仕組は電機モーターで楽譜である所のロールペーパーを巻き取りながらっつう事だそうだ。


案内役がコインを入れて演奏が始まった。


「所謂ジュークボックスね。」
「で、これは何て曲だ?ナミ?」
「『オー・ホーリー・ナイト』…やっぱりクリスマスソングよ。昨日お茶飲んでる時に、ホテルでも演奏されてたでしょ?」
「あー…そうだったか…?」
「あ!!俺、覚えてるぞ!!ケーキ食ってた時だろ!?」
「そうそvあの時ロビーで演奏してた内の1曲よv…ゾロも思い出した?」
「ああ……まァ……覚えてるような……ないような……だな。」
「……っとに甲斐の無い奴なんだから!」



演奏が終了し、これにて全てのプログラムも終了となった。


結構楽しめた……案内が付いて説明してくツアー形式ってのは珍しいし、新鮮に思える。



ホールを出て階段を下る、良く出来たもんで下はオルゴールの売店だ。


土産用の、見知った形したオルゴールが整然と陳列されている。


どれもこれも女の好みそうなファンシーなデザインだ。


ナミが目を輝かせて引っ掛かる、続いてルフィも。


あちこち置いてあるオルゴールのネジを回して遊び出す。



「……おい、この後にも予定有んじゃねェのかよ?」


夢中になってたナミに耳打ちする…したら漸く我に返ってルフィ引き摺り外に出た。



――が、通りに出た所で更なる障害に遭遇したっつうか。


『フィギュアヘッド』っつう、海と航海をテーマにした海外輸入雑貨店にぶち当たっちまった。


何となく薄暗い店内に所狭しと置かれた――実際店外まで溢れてやがったし――フィギュアヘッド型したお守り、サーベル、レプリカ火縄式銃、ボトルシップ、羅針盤……こんなルフィのツボをダイレクトに突く物堆く積み上げて有っちゃあ……。


予想通りルフィは瞬く間に店入ってそのまま金縛りの地蔵化しやがった。


ナミが何とか引き摺り出そうと、殴ったり蹴ったり宥めたり賺したりしてたが、終いには匙投げ怒って放っぽって外行っちまった……。


「……おい……ルフィ……ナミ、てめェ放っぽって先行っちまったぞ……!」

「んーー?あーーーー、うん……。」
「良いのかよ…?置いてかれたら帰れなくなるだろが。鍵はあいつが持ってんだし…。」

「あーーー……大丈夫じゃねェ?…すぐそこで待っててくれんだろーーーー。」


………………駄目だ……心此処に有らずになってやがる。


まるきし冒険少年の瞳だ……こりゃァ、長くかかるなァと溜息吐いて、諦めてナミの後を追った。


先ず動いてる方の行方確認しとかんと…。




とは言え案ずる事無く、ルフィの言った通りにナミは、店出て直ぐ左隣のバス停ベンチで座ってやがった。



背中向けて座ってるんで表情は解らない……が、恐らく予定が狂わされちまった事を相~~当~~怒ってるに違いねェ。



覚悟して近付く……夕暮れをバックに1人ブツブツブツブツ呟く声が聞えて来る……やっぱり、怒髪天を衝く勢いだな、こりゃあ。



さてどうする?傍寄るか止めとくか逡巡する……いや、恐れてる訳じゃあ無ェが。



意を決して肩叩こうとする間際、殊更甲高い声が上がった――



「そうなのよビビー!!!もうこれで10分!!あ、今1分また経ったから11分よ!?20分待って帰って来なかったら2人共置いて帰っちゃおうか思うけどどぉ思うーー!??」



――って携帯向って話してやがったのかよっっ!!!



………どうやら店出てずっっと此処でビビ相手に話してやがったらしい。


たくっっ、ちっとでも心配して損したぜっっ。



声の調子聞く限り、考えてたよりかは怒ってねェな……ま、一先ず安堵した。



ベンチの隣に座る。

一瞬だけちらりと視線を向けたが、また喋りに没頭しちまった。




――それから約10分経過。




相も変らずペチャクチャペチャクチャペチャクチャペチャクチャ……まるでテープの早回しだ。

見ていて良く口が回るもんだと感心しちまう。



どんどん夕闇が濃くなる。


…………段々、苛付いて来た。



俺が座った時分に一瞬視線を送っただけで、後は殆ど顔も見ようとせずにひたすらビビと喋り捲りだぞこいつ。

まるで隣には誰も居ないってな風だ、頗る気分が悪ィ。


「……だからねそれでねビビ!!うんそうなのもう大変よォ!!だって○○が○○で○○○○じゃない!?冗談じゃないよねェ~~~vv」


「おい、ナミ……いいかげん、電話切れよ……。」


「え!?あ!!ううん!!あれは○○○○で○○○よォ!!そうそう!!それで○○○だからァうん!!うんうん!!」


「おい……おいって…!!こっち向けよおい…!!!」


「えええーー!!?うっそ嫌だもうもうも~~ォ!!!違うってばそんなんじゃないってばもうビビったら~~vvv」
「人が話し掛けてんだから電話切れっつってっだろおいっっ!!!!」



……我慢限界に達し、遂に耳元で叫んじまった。


目をキョトンとさせてナミが見詰て来る。


ビビに断り、漸く切って折畳んでウェストポーチに仕舞う。



…………辺りにしじまが訪れた。



「………で?何なの??」

「…………何がだ?」

「余程重要な話が有ったから、切れって言ったんじゃないワケ?」

「………いや…………特に重要な話は無いっつか……」
「何あんた!?話無いクセに人が話してるの邪魔して切らせたっつうの!!?」
「っつか行儀が悪いってか…!!人が隣座ってる時に他の奴とベラベラ話すのは止めろって…!!」
「行儀が悪いィィィ!!!?――何それお説教!!?何様よあんた!!!?」
「だから説教ってより一般常識としてだなァ…!!!」



…………やべェ……この展開はかなりやべェ。


正直人の事無視すんなって言いたかっただけっつか。


だから話題も特に思い浮かばねェ。


此処は1つ常套手段として「好い天気だな」とでも言おうとして空見たら、何時の間にかどんより曇ってやがるし。


ナミはすっかり怪訝な顔して俺の事見詰てやがる。


そりゃそうだ、楽しくダベってたトコ邪魔されて、「特に話は無ェ」っつったら……………………べらぼうに怒り狂うだろうなァ………。


話題話題話題話題話題話題話題話題話題話題……畜生、何か無ェか話題???


ルフィ~~~~~お前何やってんだよ!??


早く戻って来てこの雰囲気変えてくれよ!!!



店の方にちらりと視線向け、俺は中に居るであろうルフィにひたすら「早く帰れ」と念を送り続けた………。





その23に続】






写真の説明~、『オルゴールファンタジア』のからくり時計。

私の記憶が確かならば(BY.料理の鉄人)、15分毎に3人の妖精が建物から出て音楽が奏でられるっつう物。
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『何度も廻り合う』その21

2006年01月22日 23時14分15秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
――昨日はかつて無い程の大雪でした!!!!
…と、驚き叫び終わったところで、前回の続きです。






予定している次の時刻に近付いたんで席を立ち、テーブル噛付いて離れようとしねェルフィを引き摺って店を出た。


席を立つ時に目にした、ウェイターの安堵の表情が極めて心に痛かった…もうこの店の敷居は2度と跨げねェ。




「や~~~ひっじょお~~~に美味い肉であった♪♪」
「…でしょおね。あれだけの食い付きだもん…お陰であの店、恥しくて2度と行けないわ。」
「食い放題の店でいっぱい食わなきゃ損じゃねェか!!ゾロもナミもえんりょし過ぎだぞ!!あれじゃちっとも元取れてねェよ!!」
「………代りにあんたが10人分は元取ってくれたから充分よ。」
「あんだけ凄まじい食欲見せ付けられりゃあ萎えるよな。」




店を出た所で便所に寄ってくとルフィが言ったんで(←食い過ぎだ…)、その間ナミとホテル内に在る中庭で待つ事にした。


ナミが言うには『花のホテル』を謳ってるらしく、呼名の通り種々雑多の花咲乱れる見事な庭園だった。


花に詳しくねェんでポインセチアくれェしか見当付かなかったが、冬だってのに赤白黄色と此処だけ春爛漫だった。


「ただ、どぉぉんと大きな花壇を置くんじゃなくて、小さな花壇を幾つも鏤めて、隙間を縫って観回れる様なってるのが良い演出よねェv」

「ああ…まァ…そうなのか?」

「まるで花から花へと渡る蝶にでもなったような、そんな気持ちしない?」

「ああ…まァ…そうかもな。」


頗るこの中庭がお気に召したナミは、ビビにも観せたいからと俺に携帯渡して撮影を頼んで来た。


中央に配置された小さな噴水を前に、ホテル正面玄関をバックにして、シャッターを切る。

パシャリと、まるでカメラで撮ったみてェな音が響く。


穏やかな日差しの下、花に囲まれて笑うその顔には、日頃の凶暴性なぞ微塵も見えず、黙って笑ってりゃあこんなに可愛いのになァとしみじみ感じた。




中庭で待つ事10分後、漸くルフィが戻って来た。


大急ぎでクルーザーの乗船所に駆け付ける。


出航スレスレの所でパスポートを提示し、何とか飛び乗れた。


天気良く日差しがうららかだっつう事で船外のデッキに座る。



「おい、あの木…もしかして桜じゃねェか?」


迎賓館っつったか…象牙色した建物の横に在る並木を指差しナミに聞く。


「本当だ。あの木は……ヤマザクラじゃない?…春にはお花見クルーズなんて出来て良さそうねv」
「お花見かー♪桜は良いよな♪パーッと紙吹雪みてーに散ってきれいで、俺、大好きだ!!」


おめェの場合、どっちかっつうと『花より団子』だろうとツッコミ入れたかったが、野暮になるんで黙っておいた。


まァしかし、俺も桜は好きだ。

あの散り際の見事さは見習うべき生き方だろう。


また、桜降る下で呑む酒が格別で。

上等な酒に一片浸してぐいっと喉に流し込む…これぞ風雅の極み!


「…何よその高校生らしからぬオヤジセンスは?」


ナミが小馬鹿にしたよに一笑する……嫌だね、風雅を解さねェ人間は。




底が見えるくれェ水の澄んだ運河を、クルーザーがゆったりと進む。


片道12分……目指す風車の島、『キンデルダイク』に辿り着いた。




昨日程ではないが、此処の地区は今日観て来た中で1番の人通りが有った。


「風車にお花畑にと、如何にもオランダをモデルにして造ったハウステンボスらしい風景が撮れるって事で、撮影スポットとしては場内随一の人気だからね。」


成る程ナミの言う通り、3基並んだ風車に一面の花畑っつう長閑な田園風景。


決して広くはない道の至る所で撮影会が行われていて、カメラを掻い潜りながら通るのに結構苦労した。


「入国口側ってのも有ると思うわ。時刻的にも丁度観光バスが多く着く頃だし…最初に訪れたベストスポットって事で、どうしても撮影客で道ごった返しちゃうのよね~。」



風車を観たルフィがしきりに「でっけー、でっけー」と騒いでいる。


確かにでけェ、遠くからだとまるきし玩具だが、近くで見ると中々迫力だ。


濃茶の胴体に取り付けられた4本の羽根が唸りを上げて回っている。


元々干拓の為に設置されてたっつうのも頷ける程力強く感じられた。


3人で入国口手前の風車をバックに写真を撮る。


風車に縦縞模様した花畑に、遠景には赤煉瓦の城…これ観せてオランダ行って来たと言い張っても結構バレねェかもなっつう絵が撮れた。


「今は冬でパンジーが咲いてるけど、春はチューリップ、夏はペンタス、秋はマリーゴールド…季節が変われば違う花で埋まるわ。チューリップの頃に撮れば正にオランダの様な風景が撮れるでしょうね。」


「見渡す限りのチューリップ畑か~~~!!良いな♪『フランダースの犬』みてェだ♪♪」
「あの作品の舞台はベルギーよ、ルフィ。」



花畑に囲まれ1軒の家(?)が建っていたんで中に入ってみた。


17世紀のオランダ農家を再現したっつうそこはチーズの売店だった。


オランダから直輸入されたっつうチーズがずらり約30種類、早速ルフィが試食に手を出してく。


冷奴風に葱カツブシ醤油かけて和えたクリームチーズが有ったんで、また一口取って食った。

いやこれは確かに美味ェ、帰ったらこんなしてツマミに食おうと考え1つ買ってく。


売店横屋外には茶店も設えてあった。


主に女客が数人、パラソルの下で花を眺めつつ、茶を飲んでいる。


ルフィが自分達も寄ってこうと強請ったが、予定が遅れるからと素気無くナミに断られた。




3時までにニュースタッド地区に入らないとっつう事で、急いで近くに在るバス停へと向う。


……………………昨日と同じく忙しねェなァ、もう。


もっとも乗物で移動出来る分、昨日よか未だマシだが。




バス待ちしてる間、また近くに在る売店で時間潰しをした。


『リンダ』っつうテディベア専門店だ……って何で此処まで来て『テディベア』なんだよ!?


「『テディ』の愛称の元、ルーズベルト大統領がオランダ系の人だったそうよ。」

へェそうかって……待て、今一納得しかねるぞ、その理由!



店ん中は兎に角縫ぐるみの山、山、山だった。

いや縫ぐるみ以外にも服やら菓子やらノートやら豊富に揃ってはいたが、それら全部が愛らしくも熊なんだ!

右向いても左向いても前向いても後向いても上下斜め向いても熊熊熊熊だらけなんだよ…!!


テディベア専門店なんだから当り前だ!?――そりゃ確かにな、悪ィとは言わねェさ。


だからってこんな女好みなファンシーショップに男がのこのこ入れるかっっ。



…しょうがねェから1人バス停に有るベンチで待つ事にした。



ルフィは結構嬉々として店中観て回ってるようだ。


店先にガキの身長程ビッグな縫ぐるみを見付け、大はしゃぎで写真を撮ったりしている。


何を見てもしても楽しめる、無敵の性分羨ましい限りだぜ。




「それがな!ゾロ!!ナイアンローデって城には、もっともっともぉぉっと世界一でっけェ~~熊が、赤マント着て座ってたんだぜ!!後な後な!!すんげェェかっけェェェかっちゅうや剣まで飾ってあったんだ!!!側に立ってた案内の女に聞いたら、本当に昔の物だっつうんだよ!!!他にも馬車乗った熊の人形だとかも置いてあったぞ!!ナミと一緒に写真とって来たから後で観せてやるな!!」


「……………いや……俺はいい。」


ぶすっと不機嫌を露にして応えてやる。


バスが来たんで店に居る筈の2人を呼んだら、何処行ったのか姿が見えねェ。

焦って大声出して探せば、どうやら入国口の方まで出てたらしく、揃って息せき切って戻って来やがった。


「ジャイアントベアは座高が3.6mも有るんだって!衣装がクリスマス限定のに変ってて可愛かったァvv」
「ああそいつは満足いくデカさで御2人様宜しかったですなァァァ~。」

「……って何乗ってからずぅっとカリカリしてんのあんた??」
「どうしたゾロ??腹減ってカルシウム足りてねェのか??」
「お前らが勝手に行方不明なりやがるから、俺は運転手や他の客待たせてまで呼びに行った事で、えらい肩身の狭い思いしたんだよっっ…!!!」


人を待たせた自覚無く、バスん中で2人呑気にケタケタと。


片や我儘キング、片や我儘クィーン…お守りする側の苦労もちったァ考えろってのっっ。



俺達以外にも数人の家族客乗せて、ガタガタ揺れながらバスは進む。


ナミの言った通り、確かに昼になって客が増えた。

やっぱり或る程度の客が入ってた方が活気付いて良いよな。




赤や黄色に紅葉した並木通りを抜け橋を渡り、秋桜に縁取られた運河の横でバスは停まった。


此処が『ニュースタッド』っつう訳か。




「ああもう予定より10分以上オーバーしてる!!…2人共!!一気に攻略目指すから!!行くわよ!!」
「おーー!!!」


ナミの勇ましい掛け声に続いてルフィが気勢を上げる。


俺は……………まァ………………適当に相槌を打っといた。




先ずはバス停から通りに入って直ぐの館、『ミステリアス・エッシャー』。


騙し絵で有名なオランダの版画家エッシャーの作品を、3D映画にして体感させる施設だそうだ。



感想は――


「何つうか………今一だったよな。」
「ってか正直物足んねェ。」
「エントランスは凝ってて期待が持てたんだけどな。」
「天井続いてる階段とか、あっち遊べたら良かったのにな。」
「映像も凝ってたとは思うぜ…ただ、3チャンネルの道徳ドラマでも観てる気分になったっつうか…。」
「すごく悪くもなく良くもなく、50点くれェだなーー。」




その次に隣の館の『天星館』に入った。


占星術をテーマにしたプラネタリウムショーをやる施設…だそうだ。



感想は――


「何つうか………これも今一だったよな。」
「ってか正直つまんねェ。」
「いや『つまんねェ』っつうのは言い過ぎだろルフィ。プラネタリウムは綺麗だったし、まァまァ良かった。」
「占いったってすぐ終っちまったし。」
「正直占いはどうでも良いと思うけどな。」
「20点だ20点。司会の女、俺じゃなくてとなり座ってたガキ指名したし。」
「そりゃおめェ、評価に私怨入ってんじゃねェか?」




次にそのまた隣の『フライト・オブ・ワンダー』に入った。


これは……何だろうな?電飾されたライド乗って、空飛ぶナミ…もとい魔女になった気分で冒険する施設……らしい。



感想は――


「何つうか………きっぱりガキ向きだよな。」
「ってか正直解んねェ。」
「小学3年生くれェまでのガキには丁度良いんじゃねェか?むしろ悪くねェと思う筈だ。」
「話全然見えねェよ。何言ってんだかちっとも解んなかった。」
「ライド乗ってっつうのは結構新鮮に思えたぜ。他に無ェからな。」
「35点くれェだなー。後300キロ速くしてツイスト回転も加えてくれりゃ完ぺきだ!」
「いや死ぬだろ、それじゃ。」
「…ってあんた達さっきから無礼な評論してんじゃないわよ!!!!」


「いや評論っつうか……正直な『感想』だ。」
「じゃあナミは楽しかったのかー!?」

「私も…………まァ…………何て言うか……。」

「「見ろ!あんま楽しくなかったんじゃねェか!!」」
「うっさい!!!それなりに楽しんでたわよ!!!」
「せめてもうちっと刺激が欲しいよなァ。」
「富○急くれェ頑張って欲しいよなァ~~。」
「良いのよ!!!此処は遊園地じゃないんだから!!!」
「じゃ、遊園地じゃなきゃ何なんだよ?」
「『』よ『』!!!――兎に角!!後1館残ってんだから、行くわよ!!!」




最後に俺達が入ったのは『ホライゾン・アドベンチャー』、大洪水を体感させるっつう施設だった。


今迄のがアレだったから、あんま期待せずに入る。


丁度開演時間に当ったらしく、殆ど待たずに済んで有難かった。


プレショールームで前説明のビデオを観せられる。

国土の1/4が海面下っつうオランダの水との戦いを纏めた映像だった。




妙に湿気の漂ったシアター席に案内される。

ってか席が水で濡れてるし…何だ?水掛かるショーなのか??


シアター中央にはオランダの街並みと運河のセット、結構凝った造りだ。



映像が始まる、木靴職人を通して語られる話が……これまたエッシャー館で観たのと一緒で、やけに説教臭くてまたかと頭を掻いた。



……何て考えてたら……その内、シアター全体が霧で覆われた。

続いて雷鳴、豪雨、荒狂う波、竜巻、嵐、天変地異のオンパレードが怒涛の勢いで襲い掛かる。

そしていきなりの振動――これにはちょっと驚いた。


シアター前面に滝の様な水が降り注ぎ、そしてまた元の静けさを取り戻してショーは終った。



感想は――


「中々迫力有ったよね!」
「まァ、面白かったな。」
「うん!面白かったな!!」
「『実際の水を800tも使って大洪水を再現』……成る程ねー、やっぱ金懸けた施設は違うわね!」
「ただ、梅雨時とか冬向きじゃあねェよな。」
「あれでもっと席ゆらしてくれたら楽しかったんだけどな~~!!ってか全部これくれェ激しくしてくれりゃあ良いのに!!」
「それは色々お金の問題とか有るし……第一、この街の雰囲気に合わなくなるから止めた方が良いと思うわ。」
「確かにジェットコースターなんかが似合う場所じゃねェよな。」
「まァでも面白かった♪80点くれェはやっても良いな!!うん!!」





――ルフィの、本日1番の高得点が出た所で、以下次回。






その22に続】





…いえ、私が言ってる訳じゃありません。(汗)

文句はルフィとゾロにどうぞ!!(←殴)


や、済みません、色々失礼言って済みません。(汗)

ただこれはやっぱりキャラ考えての、ルフィゾロナミが行ってアレ体験したら、そう言うんじゃないかな~~と想像したものです、あくまで。(汗)


…でもね正直思う事は有る。

あのアミューズメント施設が在るからこそ、ハウステンボスが遊園地だっつう誤解を更に生むんだよな~と…とは言え、来る取っ掛かりにはなるかもだし……過去、自分もエッシャー館に惹かれて来た事考えるとね。(汗)

乱暴な意見を承知で言うけど、もしも金銭的に苦しくて何か切捨てなきゃ~って時は、このアミューズメントから行って欲しいなぁと……店やホテルや庭園とかよりもね。(汗)

身勝手な意見、誠に失礼しました。(土下座)


写真の説明~、キンデルダイクの風車と花畑…ハウステンボスのシンボルとして、パレスと並び最も有名でしょうね。

これは一昨年のクリスマスシーズンに撮った物…なんだけど、11月上旬に行ったんで、未だ秋の花だったりします。(笑)





おまけのアニメワンピース感想――


本日のアニメワンピースは……


――面白かった…!!!!


いや、アクアラグナの迫力有る映像がねー、後細かい話だけど、原作ではナミが軽く屋根渡って行ったのが、如何にも勇気振り絞って…っつう感情が伝わって来たのが良かったと思いましたv
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『何度も廻り合う』その20

2006年01月20日 22時38分16秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです。】




陶磁器の博物館だという『ポルセレイン・ミュージアム』は、昨日俺が焼酎を買った店の横に在った。


17~19世紀に、オランダの貿易会社を通じてヨーロッパへ輸出された陶磁器を展示しているっつう事で、所蔵品の質と規模は日本でも有数らしい。

まァ焼物に興味の有る人間が観んなら楽しいんじゃねェかっつうのが正直な感想だ。


4つに分れた展示室には、どう見ても実用的じゃねェだろうっつうサイズの、皿や壺や花瓶なんかが整然と並んでいて、それなりに感心したっつうか勉強になったっつうか。


しかし高さ2mも有るっていう巨大花瓶には度肝を抜かれた。

何活けるってんだ?ラフレシアか??




もっと度肝を抜かれたのが、ベルリンの何とか言う宮殿内に在る1室を再現したっつう『磁器の間』だ。


鏡張り総天然黄金色した壁に、約3,000点もの皿・壺・丼・徳利なんかが隙間無くびっしり飾られてんだぜ。


それが鏡張りの効果で、合せ鏡になって映って無限皿地獄っつか…観ててちょっと眩暈がした。


天井には宗教画めいた絵まで描かれて、さながら大聖堂でも居る気分…いや、金閣寺か秀吉の黄金茶室か?千利休が見たら泣いて怒りそうだ。


金ぴか好きのナミと派手好きデカイ物好きのルフィは、案外気に入って写真を撮ろうとまで言った。

博物館で撮影は拙いだろうと思ったが、案内の女に聞いたら意外にもOKを貰えた――寛容なトコだなァ…。


「すげーよなァ~~~!!!俺んちもラーメンどんぶりや皿なんかで、カベ飾るかな!!」
「止めとけって。地震が来たら目も当てられねェ。おちおち安眠も出来なくなるぞ。」
「大航海時代当時のヨーロッパでは空前の日本ブームが起きてて、輸入された日本の陶磁器は実用品としてより美術品として珍重されてたのね。」


実用品でない器ねェ……俺には解らねェ感覚だなと思った。




昼近くなったんで、バスで昼食予定のレストランに向う事にした。



待ってる間、隣に在った『キューケンホフ』って名前の花屋を覗く。


店の前にずらっと植木鉢が並んでて興味を引かれた。

ぽかぽか暖かそうに、日向で日光浴させられている。

どうやらチューリップの球根が植えてあるらしい。

今から春に咲かせる用意してるって訳か。


「此処にはね、オリジナルのチューリップなんてのも有るのよ。」

「オリジナルのチューリップ??」

「植木鉢に写真が付いてるでしょ?花弁の先がフリンジみたくなってて、結構可愛いのよ。」


屈んでナミが示す写真を見る。


白に淡いピンクの花弁…確かに可憐に思えた。


花の良し悪しは俺にはよく解んねェけどな。


「23年の歳月をかけて開発したんだって。その名も『ハウステンボス』。春になったらそこかしこで沢山咲き出すわ。」


うっとりと植木鉢を見詰てナミが言う。

もう早こいつの目には、春風吹かれて揺れる花が見えてるんだろう。


女ってェのは本当、花が好きな生物だよな。




「ナミナミ!!こっち来てみろ!!面白ェーぞ!!」


1人店ん中入って観てたルフィが叫ぶ。


「なァにルフィ?何か有ったの?」
「ゾロコーナーだ!!ゾロコーナーが有ったんだ!!」

「……ゾロの?」
「……俺の??」


嫌な予感しつつ店内に入る。

ルフィが指で示したそこには、ビー玉くれェのサイズした毬藻が、小瓶やグラスに入れられぎっちりと陳列されていた。


「本当だ~~vプチゾロ101匹大集合ねvv」
「な!?な!?ゾロづくし、ゾロまみれ、ゾロゾロ大行進だろ♪♪」
「誰が毬藻だよ!!!?」
「『ゾロのある暮らし始めませんか?』、1匹630円だってよー。」
「『ゾロは水草の仲間です。日光はあまり好みません。室内で楽しみましょう。』…ああだから室内でゴロ寝したがったのねー。インドア派な生物って言うかー。」
「だから勝手に人の名前に置換えてんじゃねェっつのてめェら!!!!」

ったくこいつら、人見る度に毬藻毬藻サボテンサボテン、失礼極まりねェ。

元はと言えばあの渦潮眉が呼びやがるから…野郎、受験落ちろ、ついでに地獄落ちちまえ。




そうこう騒いでる内に、バスの来る気配がしたんで、停留所へ戻った。


『クラシックバス』の名の通り、茶色の懐かしボンネットバスだ。


クリスマスシーズンに合せて、車体にリースが飾ってあった。


運転手にパスポートを提示する。


俺達3人しか乗って来なかったので、広々とした車内を独占出来た。


ルフィは1番前に、俺とナミは後部の座席に座る。


バスがゆっくりと走り出す、道が石畳のせいかかなりガタガタ振動した。


これはこれで楽しい、ルフィなんか愉快そうに声を上げている。


「…それにしても、もう昼になるってのに、客が少なくねェか?昨日と較べてやけに寂しいっつか…。」


車窓から観る港街には、人影が疎らだ。

なまじっか海に面して広々と開放的なだけに、余計閑散として見えてしまう。

昨日はツリーや帆船をバックに、写真を撮ろうっていう客で人集りが出来てたが、今日は無い。

だからって肩ぶつかるくれェ混み合ってるのは御免だけどな。


「遠方から来るお客さんのが多いみたいだからね。どうしても平日は来る人少ないのよ。…午後過ぎたら観光バス到着するだろから、少しは増えて賑やかなると思うわよ。」

「近くに大都市が無ェってのは苦しいなァ…。」

「それに広大な敷地だから…入ってても散っちゃって、目立たないってのも有るかもね。」


苦笑いながらナミが言った。


確かに広大では有るな、街っつうより『国』だ。




港街を過ぎ、バスは教会の在る広場前のバス停に停まった。


パークの中心って事で、港街よりは比較的人が多く賑やかだった。



未だ昼食を予約した時間まで間が有るって事で、12時から近くでやるっつうショーを観て待つ事にした。


……………予約……??


「…っておい、昼予約してたなんて聞いてねェぞ?」
「そりゃそうよ。言ってないんだから。」
「だからどうしててめェは毎回断り無く…!!!」
「賭けに負けたらコースに文句を付けない約束だったわよねェェェ??」
「――ぐっっ………幾らだよ??」
「安心してvネット予約で割引価格になってるからv2,625円、但しサービス料は別。」
「だから高ェって!!!せめて1,000円台なトコにしてくれよ!!!」
「また貸しにしといてあげるわよ!3倍返しでねv――ルフィーー!!お昼はバイキングで肉食い放題よォーーー!!」


息せき切って先にショーステージ向ってたルフィに、後ろからナミが言葉を投げる。

遠くから「本当かーー!!?」と嬉々として聞き直すルフィの声が響いて来た。


知らぬが仏っつうか……賭け事なんてするもんじゃねェよな…。




テント市場の『ワールドバザール』内に在るステージで、外国人のパフォーマーがヴァイオリンや帽子なんかを使って芸を披露していた。


所謂『大道芸』、素朴だが結構楽しかった。


ルフィに至っちゃ、やんややんやの拍手喝采。

ステージ上ってゲスト出演までしやがった。

ああいうノリの良い馬鹿は、ショーをやる方にとっちゃ有難ェだろうがな。


一輪車に乗ってヴァイオリンを弾いてみせたり、風船使って動物作ってみせたり、中々大した腕前だと感心した。


最初はポツポツとだけしか居なかった観客も、開始後には席をぎっしり埋める程だった。


「芸人さんって凄いわよね!芸だけで世界中回っちゃうんだから!」
「『芸は身を助く』って言うしな。」
「…それは『一芸に秀でている』ケースで言う事だから、今この場で使うのは失礼よ、ゾロ。」
「んあ?そうなのか??」


ショーは20分、昼食までの時間潰しにぴったりだった。




予約した12:30になったんで、その『ア・クールヴェール』って言うレストランに向った。


ナミ曰く、『ホテル・アムステルダム』のメインレストランだそうだ。


世界各地の美味い料理を取り揃えたバイキング、という触込み通り、メニューは豊富でインターナショナルだった。


クリスマスツリーやリースで飾られたスペースには、おでんにサラダにマリネにハンバーグにビビンバにスープにフライにピザにパンにフルーツにデザートにジュースに紅茶に珈琲に…ステーキも有って、注文する度に焼いて、皿に盛って出してくれるらしい。


こんなん見せたらルフィは止っちゃいねェ。


席に案内される前に、即刻スタートしちまった。


「おい……良いのかよ?またピサの斜塔盛りすっぜ?」


窓際の席真向いに座ったナミに耳打ちする。


「体裁悪いからそれは止めろって釘刺しといた。1品取ったらそれ食べ終わってから取りに行けって言っといたわ。」
「…大丈夫なのかよそれでェ??」


ナミとの約束通り、先ずおでんを皿に山盛して持って来た奴は、高速でそれを食い切り、そしてまた席を立ち、新しく料理を取りに行った。


今度はハンバーグを皿に山盛して持って来る、またそれを高速で食う。


そしてまた新しく料理を取りに行く。


今度はビビンバだ、細切りされた肉を飯にたっぷりかけて持って来た、またまたそれを高速で食う。


その間に注文して焼いて貰ったステーキが来たんで、これも高速で食った。


またまた新たな料理求めて旅立つ。


今度はカレーを山盛で、そして高速で食う。


間に再度注文したステーキが出る、これも高速で食う。


またまたまた旅立つ。


今度はピザ、高速で食う。


間に再々度注文したステーキが…高速で食う。


またまたまたまた旅立つ。


今度はフライを……………


…………………………切りが無ェな。



奴が皿によそって去って行く度、大急ぎで料理が追加されてく。


ステーキを注文する度、ウェイターの笑みの引き攣り具合が増す。


ちらりとナミの顔盗み見ると、意外にも涼しい表情をしている。


何処まで我慢するかと、つい緊張しながら見守っちまう。



奴にドクターストップならぬオーダーストップがかけられたのは、デザート系に手を出した時だ――いいかげんにしろとナミの雷が遂に奴の頭上へ落とされた。


…………………………やれやれだ。


「ナミの嘘吐き~~~~!!!食い放題って言ったじゃねェかァ~~~~!!!」
「そりゃ1人3,000円近く払うんだし、元は取らなきゃなと思って或る程度までは黙ってたけど……あんた食い過ぎのやり過ぎ!!!何度も言うけど『加減』を知りなさい!!!」


ポカリと頭を叩かれ、またルフィが不平を言う。


ステーキ10枚…途中で止めてなきゃ、未来永劫前人未踏となる記録を打ち立てていただろう。


周囲に座ってた客達も、こいつの鬼神の如くの食いっぷりに、目を見張って驚いていた。


こういった特殊能力は、是非『大食い選手権』なんかに出て、平和的に利用して貰いたいもんだ。





その21に続】




…『ポルセレイン・ミュージアム』、私は好きですよ。(汗)

焼物で造形したシャンデリアが綺麗だと思いました。

『磁器の間』…あれは、器に興味薄い方でも1回は観た方が良いです。(ちなみにベルリンのシャルロッテンブルグ宮殿の磁器の間を再現した物です)

観る価値有りです。(笑)


写真の説明~、『ア・クールヴェール』のランチバイキングでの写真。

あんま綺麗に撮れてなくて済みません。(汗)

特にデザート系が美味しかったv

キャラメルアイスとかチョコレートケーキとかプリンとか、姫林檎が出たのが面白い。
コメント (3)
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『何度も廻り合う』その19

2006年01月19日 22時40分13秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです】




迷路を脱出した頃には、午前10時を回っていた。


ナミから先の予定が狂うじゃないかと小言を食らう。


……ならもっと早くに迎えに来てくれりゃあ良かったじゃねェか。




急いで庭を突っ切り、宮殿入口へと駆け込む。

その頃には俺達以外の観光客の姿も有り、受付で数人がパスポートを提示し入館していた。



「美術館って、何を展示してんだ?」
「今年はオランダの名画家、レンブラントの生誕400年を記念して、『オランダ文化の400年展』を開催してるんだって。ハウステンボスが所蔵するオランダ関連の貴重な資料や絵画を何回かに分けて公開するってポスターに書いてあったわ。」
「貴重な資料ねェェ…。」
「良いじゃない。普段は中々行かない美術館。この機会に行くのも良い思い出になるでしょ?ルフィも観たいって行った事だしv」
「それが不可解でしょうがねェ。ルフィ、何でお前、美術館なんて行きたいっつったんだ?」
「あの貯金箱に付いてた絵を描いた奴…エッシャーっつったか??そいつの絵も有るってナミに聞いたからだ。俺、あいつの絵、面白くて好きだ♪」


…やれやれ…俺と同じくれェ絵心無ェ奴だと思ってたんだがなァ。




美術館に入館するには、パスポート以外にも観覧料200円取られるらしい。

これも今一気の進まねェ理由の1つだ。

自分の興味無ェ事に金使うのは、どうにも理不尽に感じるもんだ。


「何ケチな事言ってんの!?たかだか200円位で!!他んトコ行ったらもっとボッタクラレるんだから!!」


こいつに「ケチ」って言われると、妙に傷付くのは何故だろう?


大体美術館なんて、美術の校外授業でくれェしか行った事無ェんだ。

他と比較出来るかっつの!!……と返そうと思ったが、賭けに負けての約束だから仕方ねェと諦める。



券売機で券買ってパスポートと合せて受付に提示する。


受付の女から右に在る扉から入るよう案内されて中へと入った。




照明を落としたフロア内は、外観を裏切らない優雅な内装だった。


「うっひゃ~~~~~~~~!!!すっげーゴージャスなシャンデリア!!!」
「騒がないのルフィ!!てゆーか注目するヵ所が違うでしょ!?」(小声)


展示フロアは1階だけでなく、2階まで続いていた。


『オランダ文化』っつう謳い文句通りに、展示品は絵や工芸品、民族・海事資料と範囲が広い。

これ全部此処で所蔵してるっつうのか?そりゃ凄ェよな。


「ポスターによると、ハウステンボスが所蔵する美術コレクションは9,000点にも上るんですって。」
「へェ、9,000点もか?」


確かに世間的な意味での『テーマパーク』とは、ちょっと違ってるよな。



フロアを示されてる順路通りに廻ってく。


…まァ、色々展示されてて、それなりに面白い、大したもんだと感じはするが、正直芸術については良く解らねェっつか、ぶっちゃけ興味が薄い。

一々解説読みながら感心して観廻ってるナミを残し、早々に2階へと進む。


それはルフィも同じだったらしく、階段上った所で如何にも退屈だって風な奴と顔を合した。


「だってほとんど知らない絵ばっかだしよ~~。正直あきちまったからもう出たいんだよなァ~~~。」
「っておめェが観たいっつって来たんだろがっっ!!」(小声)
「俺が観たかったのはエッシャーだけだ。全部観終ったからもう満足だ。」
「……ったくきっぱりと…なら最初から来ようとすんな。専門の売店が在るんだから、そこで画集でも観とけば良いだろが。」
「もっと沢山エッシャーが飾ってあると思ったんだけどな~。どうせだったら全部エッシャーだけにしてくれりゃあ良かったのに。」
「………それじゃ『オランダ文化展』じゃなくて、唯の『エッシャー展』だろうよ。」


階段手摺から下を覗いてみる。


未だナミは、入って4枚目の絵の前で止ってた。


こりゃ全部観るまで長くかかるな…。

どうする?置いてって先出ちまったらえらい怒るだろうし…。



「なァゾロ、ちょっとこの絵観てみろよ。」

「んあ?」


ルフィが指差した絵を観る。

それは男女が裸で絡み合ってる様な物だった。


解説を読むと『パリスとオエノネ』…宗教画か何かか??


「何でげーじつってはだかばっかなんだろなー??」
「そりゃお前………本当の美とは『自然のままの姿に有る』っつう意味からじゃねェか?」
「すっぽんぽんが1番きれいっつう事か?」
「まァ……そうなんじゃねェの…?ほら、『有りの侭の君が美しい』とか言うだろ?」
「そうか、『ありのまま』がきれいなのか。服着てんのはげーじつじゃないんだなー。」
「その割にはAVやストリップショーなんかに対して世間の目は厳しいけどな。」
「露出狂にも厳しいよな。」
「ありゃお前、放っといちゃ拙いだろ?社会の迷惑だ。」
「皆はだかになりゃ良いんじゃねーかな?そうすりゃ、露出しても目立たねェ。」
「って何でおめェは露出狂の肩持つんだよ??露出してェのかよ??」
「男のそれは厳しくても良いけどよォ、女のそれは許してくんねーかなと。目の保養じゃん。」
「いや、女にも許し難いのが居るだろう?腹が出てる女、あれは悪ィが御遠慮願いてェ。」
「そういやあ、この絵の女も腹出てんなー。」
「ああこりゃ妊婦だからだろう。解説に有んだろ?『ニンフ』って。」
「お?本当だ!…そうか、妊婦だからかー。」
「…って勝手にいいかげんな解釈してんじゃないっっ!!!」
「「げっっ!?ナミ!!」」


何時の間に来てたのか、振り向けばそこにナミが居た。


「『ニンフ』ってのは、ギリシャ神話に出て来る精霊よ。トロイア戦争の発端となった王子『パリス』と、その妻でニンフの『オエノネ』を主題にした作品なの、これは!」

「へー、『ニンフ』って精霊の事か~~ちっとも知らなかったぜ!!」
「妊婦を題材にするなんて、おかしいとは思ったけどな。」

「2人共さっさか進んじゃうんだもん…連れて来た甲斐が無いったら。」

落胆の溜息吐いてナミが言う…悪かったなァ、甲斐無くて。


取敢えずは全ての作品を観終わり、そこそこの満足を得たんで先へ進む事にした。




美術館を出て館内を巡る。


途中、『17世紀オランダの時代部屋』ってのを見学したり、窓から庭園を眺めたり。




芸術は解らねェが…圧巻だと感じたのは『壁画の間』だ。


広いドーム状のホールの壁一面に絵が描かれていた。

1つの物語がどんどんと繋がって行き、最後また振り出しに戻るといった構成。

天井まで隙間無く、床はモザイクで模様が造られている。


360°壮観なその眺めには、3人揃って感嘆するばかりだった。


説明を聞けば、4年の歳月をかけて、観光客の前で、直に描上げた作品らしい。

中心となって描いてた画家は、製作途中でオランダの爆弾テロに遭い、両足を失くしたんだそうだ。

それでも絵筆を置かず描き切った…見上げた心意気だと思う。




館内巡った最後に売店に出た。


絵画をモチーフにした土産品が主流で、エッシャーのポストカードなんかが置いてある。


ルフィがその内の何枚かを選んで買った。

絵の好きなウソップへの土産にするんだそうな。

木と水面浮ぶ木の葉と水中の魚でもって、1枚の絵に3つの世界を描いたっつうそれは、中々シュールで面白い絵だなと自分も感心した。




退館して、昨夜行った庭園に出てみる。


昼って事でライティングはされてなかったが、噴水を中心に配置して、植込みで文様の描かれたそこは、明るい日の下で観ても見事な造形美だった。


「18世紀の造園家、ダニエル・マローが設計した図面を元にして造った庭園なんだって、ガイドに書いてあるわ。」
「アチコチ立ってるあの像は、誰をモデルにしたもんなんだー??」
「あれはギリシャ神話の神々の彫像だって。ポセイドン、アポロン、ヘルメス、ヘラ、アテナ、アルテミス、デメテル、アフロディーテ、ゼウス、ヘラクレス、全部で10体建てられてるみたい。」



昨夜の様に緑のアーチを潜って庭園を1周する。

所々開けられた窓から宮殿を覗き観るのが結構楽しかった。




急がないと、どんどん予定が狂うとナミに急かされ、次の目的地に向う。


戻りは来る時通った並木道の方でなく、庭園脇を抜けて海沿いの道を選んだ。



潮風吹かれて、紺碧の海を眺めつつ歩くのも、気持ち良いもんだ。


休憩用のベンチが並べてあんのも気が利いてるっつか。



「…良い天気だ。雨降るとはとても思えねェけどなァ。」
「何よゾロ?私の見立てが信用出来ないっての?」
「そうは言わねェけどよ…今一ピンと来ねェっつか…どう見たって澄み切った青空じゃねェか。」
「んでもナミの読みは当るかんな~~。」

「ちょっと空見て。……あそこ、飛行機雲が出てるでしょ?」


ナミの指差した上空を見る、確かに晴れた空、白墨で弧を描いた様な雲が出ていた。


「…飛行機雲が中々消えない時は、天気が悪くなる証拠なの。」


「「へーー。」」


……いやだから、そんな説明だけじゃ、常人にゃ理解出来ねえってっっ。




坂道を下りてった先に、日の出を拝んだ桟橋と、ルフィお気に入りの帆船が見えた。


…なんて視認した途端、ルフィは眼を輝かせて走ってく。


「…まるで猫にカツブシね!」

「正に猫まっしぐらだよな。」



ナミと顔を見合わせ笑った。





その20に続】




…ゾロ、ひょっとしなくてもルフィ以上にガイド向きキャラじゃないと見た。(汗)

や、私は『オランダ文化展』、楽しめましたよ?(汗)

写真の説明~、パレスから続く海沿いの道。

見渡す限りの大海原、絶景ですv観賞用にベンチも置いてありましたが、3月に行った時は片付けられてました。(涙)


長く伸びた桟橋の先には灯台が在りまする。
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『何度も廻り合う』その18

2006年01月18日 20時16分14秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです】




ナミが朝市で買った荷物を置いてきたいっつう事で、一旦コテージに戻る。




朝食会場だって言うレストラン『トロティネ』は、俺達の居るコテージの直ぐ側、同じ並びに在った。


これはかなり有難ェと思った。


窓から見えてた硝子張りの建物の中に入ると、もう早大勢の客が飯を食っている所だった。

朝食はバイキング形式、料理に群がってる客を見て、ルフィが不安そうな表情を浮かべる。

自分の分まで食われちまってねェか、気が気じゃねェんだろう。


朝食券を渡して席まで案内して貰う。

湖畔を眺める良い席だった。


着いたと同時に早速ルフィが飛び出してく。

入口横にずらり並んだ料理目にして、「すげー!!」とか「うひょー!!」とか奇声上げてのはしゃぎっぷりだ。



「…私達の分まで残しといてくれるかしら?」
「愚問だろ。あいつが食った跡はペンペン草1本残っちゃいねェって知ってるだろが。」
「………ちょっと釘刺しとく!」


ルフィを追って、ナミも飛び出してった。

早速ペカンと奴の頭を叩いてる。

店の人まで慌てて飛んで来た。


まったく、営業妨害甚だしいコンビだぜ。


今側行ったら間違い無く巻き込まれるな…。

そう考えた俺は、2人が戻るまで、我関せずの姿勢で居る事にした。




「やっぱバイキングは良いよなァ~♪好きなだけ食いもん取って食えるなんて天国みてェだぜ♪」
「だからって、ほぼ全種類のおかず攫って来てんじゃない!!…少しは私達や他のお客さんの事も考えて加減しなさいよ!!」
「ひゃんほはへんひへよほっひゃひゃほ~~!?」


口いっぱいに飯頬張ってルフィが返す。


…まァ、確かに、こいつにしては加減した方なんだろう、これでも。


ナミから1メニューにつき2掬いまでとか決められたらしく、しかもテーブルに乗り切れる様工夫してなのか、1枚の皿に全品少しづつ盛って重ねてある。


白飯近海産カマスの塩焼き南瓜のそぼろ煮込みおでんにキンピラ漬物有明産の焼海苔ヒジキの握り飯マカロニサラダ山芋とカイワレのサラダ海藻サラダ胡瓜レタストマトスクランブルエッグゆで卵ウィンナーフライドポテトクロワッサンホットサンド蒸しパンバナナマフィンその他諸々全部一緒に重ねて……てっきりピサの斜塔でも皿に盛って来たのかと思ったぜっつか、味全部混ざっちまうだろそれじゃ!??


「…料理人が見たら泣く食べ方よね。」

「クソコックが見たら蹴ってるな。」


「ひょうひゃ?へっほうひへふへほほっひゃへほは!!はひゃひほあはひひょひょっひゃひふっひゃひはほんへんひっひゃいほはっへあははひいあひひょへはいひゃひほはっへひ…!!」
「幾ら何でも混然一体カオスにし過ぎよ!!!」
「流石に汁物まで一緒くたにしなかったのは、ほんの少しだけでもこいつに残ってた良識からなんだろな。」
「ひふほほは………後にすんだ!今飲んじまうとすぐ腹いっぱいなっちまうからな!スープに味噌汁おかゆにヨーグルトにジュース牛乳そんで果物なんかも全部、後でちゃんと食うからな!!」

「普通、スープはコースの前の方で戴く物なんだけどね…。」
「ってか、飯食った後でそんだけ汁物腹に流し込んだら死ぬな、普通は。」
「まァ、良いわ……喜んで貰えてるみたいだし。」


溜息1つ吐いて、ナミが言った。

そりゃ食い放題っつったら、ルフィの為に在るもんだろうよ。




「じゃ、食べながら聞いててくれる?本日のスケジュール話すから。」

「スケジュール?」
「ふへふうふ??」


「昨日聞いた要望元に、予定組んでみたのよ。

 先ず9:30、パレスに入り『パレス美術館』を見学。

 11:00、陶磁器の美術館『ポルセレインミュージアム』を見学。

 見学後、クラシックバスでビネンスタッド地区へ移動し、12:00、『ア・クール・ヴェール』にて昼食。

 2:00、カナルクルーザーに乗船、ユトレヒト地区~キンデルダイク地区へと移動。

 2:20、チーズ農家を見学。

 2:40、クラシックバスで、ブルーケレン地区~ニュースタッド地区へと移動。

 3:00より、『ミステリアスエッシャー』、『天星館』、『フライト・オブ・ワンダー』、『ホライゾンアドベンチャー』といったアミューズメント施設を順繰りに体験。

 4:00、ミュージアムスタッド地区まで徒歩にて移動。オルゴールの博物館『オルゴールファンタジア』を見学。

 4:30、鐘の博物館『カロヨン・シンフォニカ』を見学。

 5:00、硝子の美術館『ギヤマンミュージアム』を見学。

 5:50、ユトレヒト地区、カナルステーションよりカナルクルーザーに乗船し、場内1周の船旅。

 6:10、『桜蘭』にて夕食。

 夜間、天候が荒れる可能性から、これ以降は未定。

 …と、この様なスケジュールとなっております。」
「って秘書かてめェはっっ!!?何だその大統領並に緻密で多忙なスケジュールはっっ!!?」

「しょうがないでしょお~?ルフィの要望全部入れてくようにしたら、こんなんなっちゃったんだもん…これでも余裕持ったスケジュールにしたつもりなのよ?」
「律儀に聞くなよそんな無茶!!!!」

「ま~~良~いじゃね~~か~~♪せっかく来たんだから目いっぱい遊ぼ~ぜ~~~♪」
「おめェは良いよな~~ルフィ~~要望ぜェ~んぶ呑んで貰えてよォ~~~!!」
「何よ、ゾロにもちゃんと要望聞いたでしょ?あんたが言わないから悪いんじゃない。」
「言ったけど聞き入れてくんなかったんだろてめェが!!!」
「コテージで1日ゴロゴロなんて……そんなの聞き入れられる訳無いでしょお!!?」

「…ああ、もういい!解った!!…その予定で行きゃいいだろが。」


何か言い合いしてて阿呆らしくなって来たぜ。

要望出した当の本人は、気にせず呑気にまた飯取りに行っちまったし…。



「高校最後の3人旅…無茶付き合ってよ、ゾロv」


こいつはこいつで、やたらルフィに甘ェし。

手を合わせてお願いぶりっこ、気に喰わねェ事この上無ェ。


何となく理由が察せるからこそ、余計イライラしてくる。




無事馬鹿が全メニュー完食、取敢えずの満足を得た所でコテージに戻った。


そしてまた準備整え、パレスに向かって出発進行。



昨夜辿った電飾並木通りは、昼も紅葉が見事で、結構な風情が有った。


枯葉舞う中なだらかな坂を上ると、昨夜は黄金色に輝いてた宮殿が姿を現した。




ライトアップされてないそれは、中世の宮殿そのままの、瀟洒な煉瓦の建物だった。


庭に敷き詰められた緑の芝生は、寝っ転がれたらさぞかし気持ち良かろうと思う。


「未だ俺達以外の観光客、殆ど来てねェな。」
「開園時間から間も無いもの。後30分位したら来出すわよ。」
「昼でもきれいなトコだよなァ~~、しばふなんかじゅうたんみてーだ…日がポカポカ当ってて……寝っ転がったら気持ち良いだろうな~~~♪」


…やれやれ、どうやらこいつと俺は発想レベルが似てるらしい。

どうにも苦笑しちまう。



「右の方行くとローズガーデンも在るんだって。行ってみる?」




誘われて入ってみたそこは、見頃は過ぎたとはいえ、未だ様々な色したバラが咲揃う、小さな花園だった。

中心には噴水に彫像、休憩者用にベンチまで置いてある。

後半月早く来てれば、正に少女漫画の世界そのものだったろう。


「秘密の花園をイメージして造ったんだって…綺麗よね~~vv」

「きれーだな~~!!すんげーでっかいバラも有るぞ!!赤・白・ピンク・紫・黄色…バラって色んな色が有るんだな~~♪」


記念に写真を撮ってく事になったが、俺は遠慮した。

男がバラをバックに撮ったって似合わねェよ。



「反対の左側行くと迷路が在るんだけど……そっちも行ってみる?」

「「迷路??」」




左に行くと、確かに生垣で造った様な迷路が在った。

迷路ったって、さっきのバラ園と同じくれェの広さだ…どう見たって子供騙しだけどな。



「どう?何なら挑戦してみる?」
「よぉし!!俺挑戦すっぞ!!」
「ゾロは?」
「…するかよ。恥かしい。」
「あら、自信無いの?」
「んなわきゃ有るか!!こんな子供騙し!!!」
「じゃ一緒に行ってみて来れば?中心まで行って、首尾良く抜けられたら、要望何でも聞いてあげるって事で!」
「面白ェ!!…じゃ、無事俺が抜けられたら、今日は全員コテージでゴロ寝な!!」
「んじゃ俺はナミのおごりで肉食い放題!!!」
「良いわ、賭け成立ねv…もしも2人が自力で脱出出来なかった場合は、今後私の組んだ予定に、文句を付けず従うって事で――用意…スタート!!




掛け声と同時に、ルフィと俺は中に入ってった。

そのまま奥まで一息に行く。

小さい迷路だ、程無く中心と思しき円の部分まで到達した――楽勝だぜ!!



それじゃあって事で来た道を戻る。


右折れて左折れて後ろ戻って前進んで………




………………んあ!!?




「…ゾロ、ここ、元居た中心だぞ?」
「おおおおっかしいな…よし!じゃ、今度はその反対に行ってみるぞ!!」




左折れて右折れて前進んで後ろ戻って………





………………おおぅ!!??




「………ゾロ……また、元のトコ戻って来たみてェだぞ…?」




――ば…馬鹿なァァ…!!!??




「よしルフィ!!!今度は目を閉じて進むぞ!!!見える景色に惑わされず、心の眼で見るんだ!!!!」
「大丈夫なのかァァァァ~~~~~????」
「煩ェ!!俺を信じろ!!!」





…………………………40分、経過。





「そろそろ降参するゥ~~!?そしたら迎えに行ってあげるわよォ~~~♪」



「「……………………。」」



「…じゃあ、置いてっちゃうからねェ~~~~!?」



「「……降参します。」」


「宜しいv」





……1分後、俺とルフィは、無事ナミの手により、迷路から救出された。





その19に続】





…そんな大した迷路じゃないんですがね。(笑)


私の友人は本気で出られなくなりました。(苦笑)

方向感覚に自信無い方は、入る時は目印道に落としながら入った方が良いですよ、念の為。(笑)


写真の説明~、パレスハウステンボスへ続く『レンブラント通り』、早朝の風景。


これは一昨年の冬写した物です。(汗)

毎秋~冬、紅葉が綺麗な場所で御座います。
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『何度も廻り合う』その17

2006年01月17日 23時16分02秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです】




遠くに見える稜線から太陽が顔を出す。


それと同時に空と海が、一瞬にして朱に染まる。


波に反射した光が1本に繋がり、海上に道が続いてるかの様に見えた。




「2人に、どうしてもこの、素晴しい風景を観せたかったんだ…どう?感想は?」


「寒ィ。」

「眠ィ。」


「……あんた達ねェ………日本人なら風雅を解する心を持ちなさいよォォーーー!!!!!




午前7:20――旅行2日目の朝は、日の出と、ナミのこの絶叫からスタートした。





11月28日    書いた人:ゾロ





「だぁっでよォ~~!!寒ィぼんば寒ィんだがらじょうがね~だろ~~!?もう1時間ばづっ立っでで…ふっっ…へ…へーーくっしょん!!!……俺どう死じぢまうよう~~~!!」


ガチガチ歯を鳴らしながらルフィが零す。

口から白い息立て続けに出して、鼻水垂らして時折くしゃみまでして。



然もありなん、ベッドで爆睡してた俺とルフィは、往復ビンタで言葉通り叩起された。

時刻にして午前6時、未だ空が群青色してた頃に、だ。


寝惚けた頭で今一反撃の台詞が思い付けず、訳解んねェままに着替えさせられ、ルフィと2人、引き摺られる様にして海の前まで連れて来られた。



漸く状況が解って来て理由を問えば、「海に日の出る瞬間を2人にも観せたかったから」なんてほざきやがった。



それからナミの言うベストスポットの、この灯台の在る桟橋の上で、冷たい海風まともにくらいながら待つ事約1時間………漸く拝めた時の感想は「美しい」とか「素晴しい」とかよりも、敢えて言うなら「ほっとした」だ。



「こんな光景、内地に住んでる人間にとっては、中々お目にかかれないんだから、ちゃんと目の中焼き付けておかないと!……そだ!ルフィ、カメラは!?」

「お、悪ィ!忘れたv」
「馬鹿ーーー!!!!あんた一体何しに此処まで来たワケーーー!!!?」

「いやだから俺達、自分の意志で此処まで来たんじゃなくて、てめェに拉致られて居るんだろが。」
「何よゾロ、その如何にも迷惑そうな口振は??」
「事実、迷惑だっつってんだ。昨夜は10:30まで散々引き回された挙句、寝たのは0時近く。そして今朝6時に叩起されたんだぞ?お前の辞書に『労り』って言葉は載ってねェのかよ?」
「載ってるわよ。ただ、あんた達相手にそれ出すと、付上るだろうから見せない様にしてるだけ。」
「毎回付上ってんのはてめェの方だろ冷血魔女!!!」
「寝たのが0時で起きたのが6時なら、成人の平均睡眠時間にちゃんと達してるんじゃない。あんた、普段寝貯めしてんだから、ちょっと位削っても差し障り無いわよ、きっと。」
「金と違って睡眠は貯めらんねェだろがバカヤロウ!!!」
「よー、ぞろぞろ戻らねェ??ごのままづっ立っでだら、全員札幌雪祭の氷像みだぐなっぢまうっで!!」


腕を擦って足を踏み鳴らしながらルフィが言う。

身に沁みて寒いんだろう。



そりゃそうだ、こいつが着てんのはどう見ても秋物の、丈の短い赤ジャケット。


長崎は東京より南に在るって聞いて、「じゃあ、あったけェ所だな♪」っつって上着それしか持って来てねェんだから…まったく馬鹿っつうか阿呆っつうか。



「そうだな。目的も果した事だし、帰って寝直そう。」
「俺は寝ながらTVを観よう!」
「寝直してどうすんのよ!?これから朝食でしょ!?」

「そうか朝食!!!よし直行だ!!1分で現場に急行するぞ!!!」
「あ!ちょっとルフィ!!…行っても朝食券持ってかなきゃ駄目だってばァーーー!!!」
「言っても無駄だ。あいつが走り出したら誰にも止められねェ。」



…と思ったが、桟橋途中で足を止めちまった。

ああ、成る程、橋に繋留されてる船観てんのか。


珍しい大型の木造帆船、ガキみてェに目をキラキラさせて眺めてる。


先刻、ナミとしてた会話を思い出した……




――ナミ!!ナミ!!このでっけー船は何だ!?海賊船か!!?


――それは『観光丸』って言う、江戸時代の長崎海軍伝習所の練習艦を、忠実に再現した物よ。……あんた帆船なら皆『海賊船』だって思い込んでんじゃないの?


――でっけェェなァァ~~~!!乗りてェェェ~~~~!!!


――乗れるわよ?しかもそれはパスポートで!


――本当か!!?じゃあ、そく乗ろうぜ!!!今日はパスポート使っても良いんだろ!!?


――悪いけど、今日の予定には組み込んでないの。明日、帰る前に乗ろ♪


――えええええ~~~~~~~~~~!!??




「……よっぽど好きだったんだな、船が。」

「前に海賊になって、乗ってた事有るんだって。」

「…………海賊???」

「夢の話よ!……まともに相手したら馬鹿見ちゃうわ。」



妙に険有る顔してナミが言った。


『海賊になって乗ってた』??……全然意味解んねェよ。



俺達が追いつくまで、ルフィはひたすら船を観ていた。


追着いた所で漸くゆっくりと先へ歩き出す。


歩き出してからも、何度も何度も振返って観る。



「…俺達が乗ってたのと違うな。あんなでっけーヤツじゃなかった。どっちかってーと、オレンジ広場の前に在るヤツのが似たタイプだ。」



独り言の様に言う……何のこっちゃ?


それ聞いてまたナミのヤツは、表情険しくしやがるし。



何だ何だ?俺が見てねェ内に何か有ったのか??




すっかり日が昇っちまって明るくなった海沿いを3人して歩く。


左側には城かと見紛う豪奢な建物――『ホテルデンハーグ』っつうらしい――が、在った。

大海原を目の前にして建つ赤煉瓦の城…中々高級そうだ。



朝日に照らされた静かの海。

鳥が囀る好天気。

…日頃の行いが物言ったか?



「残念だけど、多分夜には天気が崩れるわ。」
「え!??こんな晴れてんのにか!??」
「雲殆ど見えねェじゃねェか。」
「絹雲が出てる……『朝焼けの美しい日は雨、夕焼けの美しい日の次の日は晴』、あまり綺麗な朝焼けの見えた日には注意した方が良いのよ。」

「へ~~??成る程な~~~???」


ちっとも成る程な顔でなくルフィが感心する。

まァ、正直俺にも良く解んねェ。



ナミの天気を読む力は並じゃねェ。

天性の勘…最早超能力と呼んで良いんじゃねェかとすら思う。


お陰でガキん頃から俺やルフィは、殆ど雨雪に濡れる事無く育って来れた。

手の付けらんねェ暴力女だが、人間誰しも取り得は有る。




煉瓦と石畳に伸びた影を引連れ、閑散とした朝の港街を歩いてく。



宿に戻る途中で、間の悪い事に『朝市』にぶつかっちまった。

港街の1店舗裏に設えたそれは、小規模ながらもそれなりに賑っていた。


…って何でテーマパークで『朝市』開いてんだよ!?


蒲鉾すり身揚げ明太ちゃんぽん皿うどん中華街菓子に佃煮といった長崎の地の物が大集合といった体だ。

それ以外に此処の名物の焼き立てパンやチーズまで揃えてやがる。


これだけの豪華ラインナップ目にしたとあっちゃ、主にルフィが黙っちゃいねェだろう。

そう思った時には、既に試食求めて集ってやがった。


…ったく馬鹿食いチャンピオンがっっ。


気付けばナミまで行ってやがるし…まァ行くだろうとは思ってたけどな。


暫くかかりそうなんで、朝市開いてる店の後ろ…一際豪華絢爛、存在感出し捲りな建物の前の花壇座って待ってる事にした。

…って此処ひょっとして、昨日茶を飲んだホテルじゃねェか?

確か『ホテルヨーロッパ』っつったか…サンタクロースが窓貼り付いてる様な、派手なデコレーションしてたお陰で覚えてた。

ルフィの奴がこの貼り付いてるサンタ見て、袋持ってないからむしろ泥棒みたいに見えるよな、なんて笑ってたっけな…。



朝市は、獲れ立て生牡蠣をその場で焼いて食わせるコーナーも設けてたりして、それなりに『市』っぽく見えた。

っつかテーマパークで水産物売ってるって、凄ェギャップ感じねェか?


前に海が在るからか、ねェ~……そういや、日の出前から漁船が沢山海出てたな。



ルフィは嬉しそうだ、出てる端から端まで試食し捲ってる、よく追ん出されねェもんだ。


ナミはナミで外の市どころか、開いてる店ん中まで入って土産物色してやがる。



………おい……何時までかかるんだよ…?


頼むから早く帰らしてくれよ…。



いいかげん痺れ切らして、呼びに行こうか悩んでた所で、漸くナミが戻って来た。


「買っちゃったv甘鯛に鰯の蒲鉾、いか明太。長崎はやっぱり海産物の宝庫よねェ♪サンジ君が来てたら泣いて喜びそう♪」

「……楽しまれた様でよござんしたな。」

「本当!運が良かったわァ~~♪朝市って期間限定、それも日・月しかやってないんだって!しかもコテージに有ったサービス券持ってったら、ヒジキ只で貰っちゃったし♪」

「…おい、待てよ。サービス券持って来てたって事は……てめ!!最初から寄る予定で人此処まで誘導しやがったな!!!?
「あ、バレちゃった?ゴメンゴメンv怒んないで~~vv」


サービス品貰ったのが余程嬉しかったのか、マジ怒りしてる俺を気にもしねェで、機嫌良く頭イイコイイコして来やがる……っとに魔女めがっっ。



ルフィはルフィで未だ戻って来ねェ。生牡蠣焼いてるトコ、涎垂らして貼っ付いたままだ。

多分財布も持って来なかったな、貼っ付かれた奴も気の毒に…。



迷惑懸け続けるのも悪ィから引張って来るかとナミに聞いた。


したら「ルフィ!!早く行かないと、朝食全部、他のお客さんに食べられちゃうわよーーーー!!!」と怒鳴った。


その一言を聞き、即効ルフィが戻って来る。



天候だけでなく人心まで…まったく大した掌握術だよなと恐れ入った。





その18に続】





写真の説明~、スパーケンブルグ地区、『観光丸』船着場桟橋より写した、日の出の写真です。

晴女なのか、私が今迄撮った写真、殆ど晴ばっかなんですよね…。(良く一緒に行く友人は、雨女所か嵐女ですが…)


朝市、期間限定と出てましたが、ひょっとしたら大抵の土・日・月(期間によって曜日変更有、詳しくは泊ったホテルに置かれた『ハウステンボス・ステイ・ブック』参照の事)に出てるかも…スパーケンブルグ地区『シーブリーズ』裏で開いてます。
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『何度も廻り合う』その16

2006年01月16日 21時29分26秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです】




コテージに戻ったゾロは、有無を言わさず風呂へと直行した。


勝手に1番に入っちまって、ナミのヤツ怒るんじゃね~かな~と期待…もとい心配したけど、ナミはだまってゾロの分までむいたキウイを皿に盛り、冷蔵庫に冷やして置いといてやった。


そんでゾロが出て来たトコで、あっついお茶と良く冷えたキウイを出してやって、自分も一緒んなって食った。


なんとかそれを横から盗ってやろうと頑張ったけど、ナミのてっぺきのシールドにはばまれ手に入れる事は出来なかった…


ちくしょーナミのアホーケチー冷血女ーえこひいきーー。(←ってつい声に出しちまってなぐられた)


キウイを美味そうに食い終わるとゾロは、「ごちそう様」を言ってすぐに2階に上がり、そのまま部屋入ってねちまった。



残った俺とナミとで、次風呂入る順番をジャンケンで決める――またナミに負けちまった…。



1人残った俺は、ヒマんなったんで、TV観ながらイスをブランコみてーにゆらして遊んでた。


試しに思っ切し、勢い付けてゆらしてみたけど、全然たおれねェ。


見掛けより結構根性すわってるぞ、このイス。


気に入ったっつって土産にして持ち帰ったら、ホテルに怒られるだろうか…?


いや多分、ホテルに怒られるより先に、ナミにボコられる気がする………やっぱ止めとくか。




しばらくそやって遊んでたけど、さすがにあきたんで、今度は土産に買った貯金箱出して来て遊んだ。


ヨ……エッシャーか――の、『入れたお金が小っさく縮んじまう貯金箱』。


…何度観てためしても不思議だよなァ~~。


長方形の箱した上から、こやって唯の十円玉1枚入れてみっだろ?

で、そうすっと中に有る正方形した小っせェ箱ん中スーッと入ってくんだ。

チャリン♪て落ちた十円玉見ると……ほ、本当に小っさく縮んじまってんだぜ!?


――すっげェ~~~!!?


ガシガシ振ってみても全然仕掛解んねェ。

箱の後ろに、入れた金取り出せる引き出し付いてたんで、出してみるだろ?


したら、十円玉はまた、元の大きさ戻ってんだぜェ~~?


――やっぱ、謎だよな!?分解してみてェ~~~!!




「なァに~?あんた、ま~たそんなんで遊んでたの?」


風呂から上って、パジャマ姿のナミがリビング入って来た。


ほてったのか熱そーにして、手でパタパタあおいでる。


そば来ると、石けんとシャンプーの良いにおいがした。


「もうあんたも高校3年生、後もうちょっとで卒業しちゃうんだから、少しは頭の方もガキから卒業しないと!」


そんな風に言う声は、言葉とは違って、何故か優しく聞えた。



コーヒーを飲むかと聞かれたんで頼む。


テーブルの上にあっついコーヒーの入ったカップが2つ並ぶ。


リビングにコーヒーの湯気とにおいがフワフワ広がってった。


その内の1つをナミがハイとよこす、もう1つは自分の席の前に置く。


「寝る前だからね。お砂糖は控え目にしといたわ。」


カチャカチャとスプーンでかき混ぜ、イスをゆらしながらそれを飲んだ。


ミルク2つ入った熱いコーヒーは、飲むと腹ん中が温まって、まったりと眠くなった。


周り中静かで、TVの音しか聞えて来ねェから、なおさらだ。


窓からは前に在るコテージの明りが、カーテンのすき間から点のよーに見えた。




「出発は何時の御予定ですか?」


カップを手にしたまま、ナミが聞いて来る。


「そーだなーー……卒業式終わってそく直行!…ってトコか?…まァ、ノリしだいだ♪」


「それで、先ずは何処を目指すの?」


「んーー…そーだなーー……今、エースがカナダいるらしいから、まずそこ目指そーかと…その為には空港乗りついでかなきゃいけねーらしーから、ソウル……かん国か??」




エースってのは俺の兄貴だ。


俺と同い歳くれェに世界一周に出ちまって、今はカナダ居るらしい。


「居るらしい」ってのは、未だに1ヶ所に半年も居た事無ェような奴なんで、しかもいつでも行った後で連絡してくるよーな奴なんで、家でも現在位置が正確につかめらんねーんだ。


……まァ、1週間前にカナダから電話かけて来た時に、俺がそっち行ったら出迎えしてくれって頼んどいたから………多分、しばらくは、居てくれるだろう。




「実は未だよく決めてねーんだ~。卒業までは後4ヵ月近くも有んだし、それまでには決めるつもりだ!」


「……あんたねェェ~、海外旅行すんなら、早くからきちっと計画立てて、ちゃんと貯金もして、ちょっとは英語も覚えて、荷物も準備しとかないと、絶対泣きを見るんだからね!?」

「大丈夫だ!!パスポートさえ失くさなきゃ何とかなるだろってエースも言ってたしな♪」


「…その根拠無い自信に振り回される方はたまったもんじゃないんだから…!兎に角!計画はきちっと立てておいて!貯金もなるたけしとくようにしなさい!その貯金箱で!!………卒業したら、私はもう、世話してあげられないんだからね…!?」

「心配すんなって♪♪どっか着いたら必ずナミとゾロに手紙出すかんな!!」


「………当てになるもんですか…!」




何となくここで、会話が途切れちまった。




てもちブタさ…いや、手持ちぶさたになっちまったんで、また貯金箱いじって遊んだ。


チャリン♪と音立てて入った十円玉が、また小っさく化けちまう。




「…そんな繰り返す程、面白い物?」


何でか、ふきげんな声してナミが言う。


「面白ェ!!すっげ面白ェよ!!外では普通のサイズなのに、中の小っせェ箱に入ったとたん、一回り縮んじまうんだぜ!?まるでこの箱の中は、こっちとは別の世界になってるみてーじゃねェか!?」

「別の世界ィ~??」

「そう!!全部ミニチュアになっちまってる、パラ…パラ……パラパラワールド??」

「『パラレルワールド』って言いたいの?」
「それだ!!!『パラレルワールド』!!!――自分達の居る世界とは別の、けど近くに重なって在る似たような世界!!前にナミが話してくれたろ!?」

「『並行世界』。同一の次元に並行して在ると言われてる、別の世界……そこでは私達の世界に在る事物が、同様に、しかし微妙に変化して存在している……まるでSF的発想ね。」




「実はさ……俺、さっきその『パラレルワールド』行って、見て来ちまったんだ…!!」




「…………はァァ???」




「広場で花火観ただろ!?あの時に………どうやら入り込んじまってたらしいんだよ!!!」




ワケが解んねェって顔したナミに、俺はさっき見て来たその世界について話した。




その世界では俺は、『海賊王』を目指して、『ゴーイングメリー号』って名前の、羊の顔が付いた船に乗っていたって事を。



船には、ゾロやナミやウソップやサンジやチョッパーやロビン先生まで、一緒の仲間んなって航海していたって事を。




「ゾロは最強の剣士!

 ナミは世界地図!

 ウソップはゆうかんなる海の戦士!

 サンジはオールブルー!

 チョッパーは万能薬!

 ロビン先生はリオポーネ・グリフ!

 ――皆、それぞれの夢追っかけて、色んな島旅して回ってた!!

 楽しかったぜェェ~~♪♪」



「…おーるぶるー……?りおぽーねぐりふ……?何、それ…??」


「『オールブルー』ってのは、東西南北全種類の魚が生息してる、伝説の海だ!!サンジはその海を見つけて色んな魚料理い~っぱい作るのが夢なんだ!!『リオポーネ・グリフ』ってのは真の歴史を語る石…これは今一俺もよく解んなかったけどな!」



「…ちょっぱーってのは誰の事よ…?」


「ヒトヒトの実を食っちまって、半分人になっちまった青っ鼻のトナカイだ!!どんな病気も治しちまう名医に、『万能薬』になるのが夢だっていう面白ェー奴だ♪♪七段変形しちまうんだぜ!?」



「………ふーーん……」


「あっちの世界でも皆、らしいだろ!?…あっちでも皆一緒にいるって、何か嬉しくて、楽しいよな♪♪」



「……そうね……楽しい『お話』だわね……。」
「『お話』じゃねえって!!!俺ちゃんと実際に見て来たんだ!!!」
『お話』よ!!!!―――ルフィ…それ、あんたの『夢』なんじゃないの…!?」



「夢なんかじゃねェよ………皆して、船乗って、そんであっちの世界でも、こことおんなじ島に着いて、皆して花火観てたんだ…!!」



「『夢診断』したげるわ、ルフィ。………乗ってた船は、恐らく今、私達が通ってる『学校』をイメージした物。…その夢はきっと、あんたの置かれた現状、深層に潜んだ願望を映したものだわ。どう?納得出来るでしょ?」



「………俺の……『現状』…?『願望』……??」



「…あんたでも、卒業して、皆バラバラになっちゃうのが、嫌なのね…。」




少しだけ笑いながら、ナミが言う。




「………バラバラになるのが嫌…??――何でだよ?皆一緒に航海してるってので!?…大体ちっともバラバラになんかなってねェじゃねーか!!?」



「……あっちでも皆、それぞれの夢を追っ駆けてたんでしょ?――だったら何時かバラバラになるわ!!だって、皆違う夢追ってるのに、どうやったら一緒の道行けるって言うのよ…!!?」




「…………ナミ?」




「………唯の夢にムキになってゴメン…言い過ぎたわ…!私ももう寝ちゃうから……お風呂入って出たら、ちゃんと1階の電気全部切ってから寝てよね!」



残ってたコーヒーを一気に飲み切ってナミが立ち上がる。



そのまま振り返らずに、リビングを早足で出て、2階に上っちまった。




コーヒーはもうすっかり冷めちまってた。



飲み終わっても、俺はしばらく風呂に入らず、リビングでTVを観ていた。




TVには、向うで毎週観てる番組が映ってた。




長崎のTV番組も、東京とはそんな変んねェ事を知って、がっかりもしたけど何だか安心もした。





その17に続】





…第一部、『ルフィ編』完結~……何かよく解らない話になっちゃってすんません。(汗)

次回からは予告通り『ゾロ編』となります。



写真の説明~、フォレストヴィラの1階リビングの様子を写した物。

左後に有るのが『ルフィ椅子』(笑)…確かに根性有ったけど、調子に乗って揺らし過ぎて頭ゴンってぶつけないように。(笑)

テーブル上右には、ルフィが食っちまった『カスタマーズクラブ会員、ラッキーデーサービス』の、フルーツが置いてあるって事で。(笑)
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『何度も廻り合う』その15

2006年01月15日 21時57分42秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
――昨日は親戚の子が泊りに来て、ブログ書けませんでした。

…毎日連載するってのは、やっぱり色々無理有るな~と思いつつ、前回の続きです。







15ヵ所目の『ゴッホ橋』を渡る。


橋の上からは、真っ暗で真っ黒な夜の海が見渡せた。


耳を澄ませば、ザザーンとかチャプンチャポンとかキィン…キィン…とか、色んな音が聞えて来る。

側にマリーナが在る、キィン…キィン…と鳴ってる音は、そこにつながれたヨットが、風にあおられて出してる音じゃないか、とナミが言った。


「本当だ!ヨットが何そうも並んでるぞ!かっけーな~~♪…アレにも乗れんのか!?」
「あそこに並んだヨットから選んで乗れるかは知らないけど…ヨットクルーズは頼めば出来るみたいよ?勿論お金は取られるけど。」
「え~~?金取られんのか~~~??」
「当り前でしょ!元々ヨットクルーズはブルジョアの優雅な趣味だもの!」

「…にしても不思議だな。」
「何がだ?ゾロ?」
「ちょっと見上げてみろよ、2人共。」


顔を上に向けたまま、ゾロが言う。

言われた通り、俺とナミも上を向いてみた。



そこには、夜空いっぱいに星がまたたいていた。



「…な?満天の星だろ?」

「……本当だ…正に吸込まれそうな星空ね…!」
「すっげェ~~~~~~!!!まるで田舎の夜空みてーだ!!!」


晴れてて雲が見えなくて、月も出てなかったせいか、星がきれいに良く観えた。


あの、ひときわでっかく輝いてる星は、きっと金星だ。


『?』の形に似てんのは北斗七星、『W』の形してんのがカシオペア座。


冬の大三角形まではっきりと、前にナミに教えてもらった通りに皆観える!!


「…な?不思議に思わねェか?」
「何が不思議なの?ゾロ。」
「いや、こんだけ街中明るくイルミネーション点いてんのに、邪魔されず良く星が観えるもんだなと思ってよ。」

「良ーい所に気が付いてくれたわゾロ!!…ハウステンボスの照明はね、星明りを邪魔しないよう全て設計されてんだって!!」
「へェ…それでか!」
「そんな事出来んのか!?すっげーー!!!」

「更に!!女性の美しさが際立つようにも設計されてんのよ!!」
「それは良く意味解んねーけどすっげーー!!」
「つか、そっちはどうでもいい感じだよな。」

「このオレンジ色した街灯にも秘密が有ってね、『ナトリウム灯』って言って、虫はこの光の波長を嫌うらしいのよ。場内の照明の多くに、このナトリウム灯を使用する事によって、出来得る限り殺虫剤撒かずに済むように考えられてるって訳!」
「へェ、虫はこの色の光を嫌うのかァ。成る程なァァ。」
「……何、人の髪見ながら感心してんのよゾロ?」
「いや、何か納得しちまって…。」


――ゴィン!!!!


「いっ…てェェ~~…………目から星出るかと思ったぜ、今………。」
うっさい!!!…っとに、一言余計な奴なんだからっっ!!!」
「そうかー?俺はナミの髪の色、大好きだぞ??ミカンに似て見えて美味そうだ♪」
「……あんたはあんたで、よくそんなナチュラルに恥しくなる台詞言えるわよね……」
「何照れてんだ??ナミ???」
「照れてなんかないわよ!!!!」
「まァしかし、クラシックに見えて、案外進んでる街なんだなっつうか…。」

「建設当時から、最先端の技術を駆使して造り上げたみたいよ。電気・ガス・水道といった全てのライフラインを地下に潜り込ませたり。だから電柱なんか、1本も見えないでしょ?」

「言われてみれば無ェな~~!」
「道理ですっきりして見えると思ったぜ。」


「元々のこの土地は、1970年代に市が工業用地として埋め立てたは良いけど、工場誘致に失敗して以来、長く放っぽらかしにされてた場所で、ハウステンボス建設前なんて、表面の土少し剥ぐと黒いヘドロが噴出したりした、草木も育たない酷い荒地だったみたいよ。」


「へェ?此処がか??…今じゃ全然そうだった風に見えねェけどな。」





……………………。





「耕して耕して、耕すだけでも1年半………長い時間をかけて、造られた街なんだって。」





――アア、ヤッパリ、アレハ夢ジャナカッタンダ…………。





「……どうしたのルフィ?マジな顔して黙っちゃって。」





「いや、別に……」





「何でんな手間暇かけてまで、こんなトコに、こんな街造ったのかねェ…。」




「……『人』を、集めたかったんじゃないかな?」



「人を?」



「最初に来た時言ったでしょ?ゾロ。
 
 『周囲から浮いてる』って。


 周辺産業も開発されずに、云わば行政から捨てられた区域。
 
 住民はどんどん出て行き、過疎化の一途。


 だから……魅力的な街を造って、人を集めようとしたんだと思う。

 別荘地区を置いたのも、恐らくその為。
 
 
 新しく、人に訪れて貰えるように。

 出て行った人も、年を取ってからでも、戻って来て貰えるように。


 『京都の様に、千年も続く街を造りたい』――それが、この街の目指すテーマなんだって。」






近くから、鐘の音が聞えた。



16ヵ所目の『ビネンスタッド橋』を渡ると、さっきライティング・ショーを観に来た広場に出た。


『アレキサンダー広場』っつったっけ??


鐘の音は、その広場に建ってた、光る教会から聞えて来た。



教会の窓が鐘の音に合せて、赤に青に緑に黄色にと、どんどん色が変ってく。



この鐘の音は………―――そうだ!!


「『サンタが街にやって来る』だ!!!」


「綺麗……こんなのやってるなんて、全然知らなかった…」
「観られて得したな。」



あっなたっから♪

メッリークリッスマス♪


わったしーかーら♪

メリークリッスマス♪


サンタクロース・イズ・カッミィン・トゥー・ターウン…♪




教会の横には、木の実いっぱい生ったような、背ェ高ェクリスマス・ツリー。


教会の後ろには、ウェディング・ケーキみてェな、でっけーとう。


重なって3つ、どれもピカピカピカピカ、暗い夜を明るく照らすみてェに光ってた。



鐘が鳴っていたのはちょっとの間。


窓の色はまたすぐに、元の紫1色に戻っちまった。



けどゾロの言った通り、観れて得した気分になった。



散歩して良かったなと思う。





『アレキサンダー広場』を出て、17ヵ所目の『スワン橋』を渡る。


目の前にはクリスマス・ツリー……スタートした時に観た、青・緑・金と色が変ってくツリーだった。


「この色が変化してくクリスマス・ツリーの名前は『ギャザリング・ツリー』。そして此処はスタート地点の花火会場、『オレンジ広場』。…無事場内ほぼ1周、これにて夜のツアー終了、お疲れ様~♪」

「……………能天気に言いやがって………マジ疲れたぞ俺はァ………今夜ぜってェ夢も見ずに爆睡しちまうよ………」

「でもきれーなもん沢山観れて、俺は楽しかったぞ♪♪」

「……まァ、楽しかったかもしんねェけどよ…。」

「未だパレスとフォレストパーク付近は周ってないから……なんならついでに周っとく?」
「冗談じゃねェよ!!!……頼むからもう帰ろうぜナミィ~~~。」


泣きそうな声でうずくまりながらゾロが言った。


俺は別に周っても構わなかったけど、何かゾロが可哀想に見えたんで、そうは言わずにだまっといた。


「冗談よv夜遅くまで付き合せてゴメン!コテージ帰ったらお詫びにキウイ剥いたげるから、機嫌直して、ゾロv」
「本当かナミィィ!!?んじゃ早く帰って食おうぜェ~~~♪♪」
「あんたは駄目よルフィ!!……1人であんだけフルーツ食べちゃった人にまで上げる義理は御座いません!!」
「ええ!!?えええ!!!?えええええ~~~!!!!?そりゃねーよナァミィィィ~~~!!!!!」
「お前、未だ根に持ってたのかよ…食い物の恨みは恐ろしいっつうが、根に持つ女は醜いぜ?」
「そうだナミ!!!根に持つ女はブスになっちまうんだぞ!!!」
「誰がブスだ!!!!??」
「って俺じゃねェ!!!ゾロが言ったんだ!!!!」
「言ってねェ!!」

「なァ~~~許してくれよナミィィィ~~~!!バナナマフィン半カケやっからさァァ~~~!!」
「駄目ったら駄目!!!」
「じゃ2/3!なァァァ~~~~!!」
「……つまりもう、1ヶしか残ってねェんだな、それ。」





『オレンジ広場』のクリスマス・ツリーをバックにして、俺達は写真をとった。


その側、広場の前の真っ暗な海に浮んでた、光る海賊船(←ナミから、これは海賊船ではないって言われたけど)をバックにしても写真をとった。



コテージに向う頃には、辺りには誰も居なくて街は静かになっていた。




さびしー気もしたけど、何だかこのピカピカ光ってる街を独占したよーで、ちょっとだけ良い気分になれた。






その16に続】





写真の説明~、ハウステンボス、スパーケンブルグ地区の夜景、『ユトレヒト地区のカナルステーション』から写した物。

迎賓館前に架る『ハーフェン橋』辺りね。


連載その13で話に出した『かんころもち』について、ふくちゃんのブログで詳しく採り上げて有ったのでリンク貼って紹介させて頂きます。

ふくちゃん、勝手に貼って紹介しちゃって御免なさい。(汗)


あ、それと…前回『シティゲート、デルフト』出て直ぐに架る、『ミステリアス・エッシャー』前の橋の事をすっかり忘れてました――『エッシャー橋』と言うんだそうな。(街入って直ぐに架ってる橋だから、見逃し易いんですよと言い訳してみる…)(汗)

したがって――

「辿り着く街、ニュースタッド
 『エッシャー』の迷路に迷って
 飲む『チョコラーテ』で一休み」

――と、覚えてみるとか…。(苦笑)


第一部『ルフィ編』も後1回で最終回、の予定!(←第一部って…)


よぉし!頑張~るぞ~~。(苦笑)


…あ、そうだ…ハウステンボスに架る橋の数、地図で数えてみたんすが(←暇人)…35、在るような……どうなんでしょうね??
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『何度も廻り合う』その14

2006年01月13日 23時23分44秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです】




花火が終り、集まってた観客がいっせいに動き出す。


そしてそれぞれ、泊ってるホテルへと帰って行った。




「さてと…一先ずこれで本日のショーは終了だけど…花火を観た余韻も残ってる事だし、場内軽く1周しない?」
「するか!!!ってかいいかげんにしやがれよてめェ!!!俺は疲れて眠いんだっての!!!行きてェんならてめェ1人で行きやがれ!!!!」

「行きたくないなら無理には誘わないけどさ…良いの?鍵、私が持ってんだよ?」
「……ぐっっ……!!」

「夜のテーマパークを散歩するなんて滅多に経験出来ないんだし、一緒に行こうよ、ゾロもv」
「……こっちの足許見やがって…魔女がっっ…!!」




ガイド役のナミを先頭に、俺達は夜の街の散歩にくり出した。



花火会場の『オレンジ広場』をスタートして、1ヵ所目の橋の真ん中で、ナミが足を止めた。


目の前には紫色のイルミが点った建物、左には昼間お茶飲んだホテルがオレンジ色に輝いてる。

前に流れる河の水面に、2つの建物のライトが反射してて、とてもきれーだった。


「今私達の居るこの橋が『ハーフェン橋』。そして目の前の建物が――昼間クルーザーの上で紹介したけど――VIP御用達ホテル『迎賓館』。その左が『ホテル・ヨーロッパ』、私達がお茶飲んでチェックインした所ね。」
「…って名前付いてんのかよ?この橋?」
「勿論!この橋だけでなく、街に在る橋や通りや運河まで全てにね!」
「へー、全部に名前付けられてんのか!?すっげーなー!」
「確かに凄いが、付ける意味有んのか?」
「あら!私達が住んでる街の橋や通りにだって名前が付いてるでしょ!?此処ハウステンボスは街だもの、おんなじよ!」




1ヵ所目の橋を渡り、2ヵ所目の橋のトコまで歩く…またナミが足を止めた。

正面にはでっけーウェディングケーキみてーな光るとう。


「この橋の名前は『シンゲル橋』。正面に聳える光の塔は『ドム・トールン』。…そして橋の下を見て。両端の護岸にまでライトが点って素晴しく美しいでしょう?…さっきの迎賓館~ニュースタッドに架る『ジョーカー橋』までの護岸や橋にイルミネーションを点して輝かせるイベント、『光の運河』は今年から始められたものなんだって。」


「すげー!!!河が光ってるみてーだ!!!橋の光が水面映ってメガネみてーに見えるぞ!!!」
「本当だ。眼鏡橋とは長崎らしいな。」
「『シンゲル橋』の前に在る橋の事ね?あれは『トールン橋』、ゾロが言ったように、如何にも長崎名所っぽい写真が写せるって事で、撮る人多いらしいわ。」


下がトンネル2つにになってるその橋は、水面反射してる影まで合せて観ると、まるっきしメガネのように観えた。


面白かったんで写真をとっとく。




2ヵ所目のシングル…あ、シンゲルか!…を横切り、3か所目の『トールン橋』を渡る。



光の河に沿ってテクテク歩いてく。


道の左っかわには、やたらだだっ広いさびしー草っ原が在ったけど、ナミが言うにはここは『フリースラント』って言って、春~秋にはきれーな花いっぱい咲くらしかった…そーいや、そんな話も船の上で聞いたような??




途中、4ヵ所目の橋を横切る、『ハウスプリンカー橋』って名前だと教えられた。


「『ハンスブリンカー橋』だってば!!!」


『ハンスブリンカー橋』って名前だと教えられた。




5ヶ所目の橋まで来た、『ジョーカー橋』って名前で、ここもメガネ橋になっていた。


そして光の河はここで終っていた。



下をのぞくとドーナツみてーな形した橋が見える、良く見ると右の方にも同じ形した橋が見える、そんでその前には普通の形した橋が見えた。


「あの丸いドーナツみてーな2つの橋は何て名前なんだ?ナミ??」
「見たまんま、『ドーナツ橋』って、2つ共呼ばれてるみたいよ。」
「じゃこれが『ドーナツ1号橋』で、あっちは『ドーナツ2号橋』だな!」
「いきなり情緒無ェ呼名になったな…。」



6ヵ所目の『ドーナツ1号橋』を横切り、7ヵ所目の『ドーナツ2号橋』、8ヵ所目の普通の形した『アカデミー橋(←そー呼ぶんだそうだ)』を見送り、9ヵ所目の橋まで来た。


「此処は『チョコラーテ橋』。右に見える街が『ニュースタッド』よ。」
「チョコ!?何か美味そーな名前だな♪」
「橋の近くに、チョコ専門店の『チョコレートハウス』が在る事が由来みたい。」
「チョコ専門店!!?――行こう!!!すぐに行こう!!!!」
「もう今日は営業終ってるわよ…」
「じゃ明日行こう!!!ぜってー行くぞ!!!!」
「此処らの橋や護岸はライト点灯してねェんだな。どうせなら全部ライトアップさせりゃあ良いのに……予算不足か?」
「るっさい!!!あんたは一言多いのよゾロ!!!」
「なァ!何か河にいっぱい円盤みてーなの浮んでっけど、あれ何だ!?」
「あれは『バンパーボート』って言って、ちっさい子供用のボートよ。」
「へー!楽しそうだな♪明日乗ってみよーぜ!!」
「だからちっさい子供用だってば!!」




10ヵ所目の橋を渡ると、右っかわに3台の光る風車が見えた。


確か……船に乗りに来た所だっけ??


それにしてもすげーなー、風車まで光ってるなんて。


「この橋の名前は『バスチオン橋』、この先の通り行くと出国口に出るわ。」
「出国口に向ってんのか。………道理で人がゾロゾロ歩いてるなと思ったぜ。」


スタートした時からだったけど、俺達の前に後ろに右に左に、ずーーっと大勢の人がズラズラと歩いてた。


最初は俺達と同じく散歩してんのかなーと思ってたけど、流れがほぼ一方向にだけだったから、不思議には感じてたんだ。


「こんな遅くに皆、家帰んのかー。大変だろなー。」
「車で近隣から来た人も居るだろうけど、多分、場外ホテルに宿泊してるお客さんが多いと思うわよ。」
「え!?場内の以外にもホテルって在ったのか!!?」
「当り前でしょ?出国して直ぐ隣に2つ、大きなホテルが在るし、他にも在るわよ、そりゃ。」
「テーマパーク内に在るホテルのが珍しいよな、普通は。」




人の流れに乗ってそのまま、出国口まで来ちまった。

出国口前には鳥カゴ入ったクマみてーな形したクリスマス……ツリー??が、置いてあった。


「『フェアウェルツリー』って言うんだって!赤いマフラー巻いた熊さんが結構可愛綺麗でしょ!?これが主に観たくて此処まで来たのよねー実は♪」
「………お前……こんなん観るが為に、人連れて此処まで来たってのかよ…!?」


ゾロは何となく怒ってたけど、確かにピカピカ光ってて結構可愛かったんで、帰り客ん中の1人つかまえてカメラ渡して、このツリーをバックに3人写真をとってもらった。(この場合の真ん中はクマ)


「んじゃメインの目的果した事だし、後約半周、頑張って歩こーー!!」
「おーーし!!頑張るぞォ~~~!!!」
「………ルフィ……おめェはタフだなァ………。」




くるっとUターンして、風車の並ぶ島へとかかる11ヵ所目の橋を渡った。


『モーレン橋』って名前だとナミが教えてくれた。


風車や花畑がライトアップされて、夜でも明るく浮び上っていた。


「――あ…ゾロ!ルフィ!後ろ振り返って見て!」
「…あ?後ろって…」
「後ろに何か――おおおおお!!?」


振り返って見ると、前に在る城のかべに、緑のレーザー光線で、絵が映してあんのが見えた。


「へーー!!おっもしれーーー♪♪」
「出国者を送るサービスってトコだな。」
「ちょい地味ながらも、結構嬉しいサービスじゃない?」


クリスマスツリーからサンタから星へと、映像が繰り返し変ってく。

『シティゲート デルフト』って所から、レーザーが出てるんじゃないか?ってナミが言った。




花畑の続く道を歩き、12ヵ所目の『デルフト橋』を渡り、『ニュースタッド』って街に入る。


街の中心の広場には、はだかの女の彫刻像が何体も乗った、オレンジ色にぼんやり光ってる噴水が在った。


「誰だァ??このはだかの女達は???」
「下品な言い方すな!!!ギリシャ神話の美の女神『アフロディテ』が、自分の息子の恋人で人間の女『プシュケー』に、祝福を与えてる場面をイメージして造った像なの!!これは!!!」
「……アフロ…?????」
「『アフロディテ』!!…ほら!『ビーナス誕生』って絵を観た事有るでしょ!?あの『ビーナス』の事よ!!」
「あーー!!!あの絵に描かれてた女神か!!――何でいつもはだかなんだ?こいつ???」
「露出狂なんだろ、きっと。」

「……………あんたらの傍だと、全ての芸術が色褪せて見えるわ……」



クリスマスツリーなんかできれーに飾ってあったりはしたけど、全体的にさびしー街をぬけて(だって店全部閉ってたし、人1人もいなかったし…)、13ヵ所目の橋、『クリスタル橋』を渡った。




さらに先へ進むと14ヵ所目の橋に当った。


その前方にも橋が見えた……これで15ヵ所目か。


「この橋は『カロヨン橋』。で、その前に在んのが『ヴィンセント・ファン・ゴッホ橋』、名前の通りゴッホの描いた跳ね橋に似てるでしょ?」

「本~~っ当~に橋だらけの街だな~~~!!!」
「運河を張巡らした街だもの。必然的にそうなるわよ。」
「ってかナミ!よくそんなに橋の名前覚えてんなー!?全部覚えたのかァ!!?」
「俺もさっきからそれを聞こうと思ってた。」

「あはは♪…実はガイドブックで観て覚えて来たんだーv」


照れたようにナミが笑う。


「つっても俺だったら聞いても覚えらんねーよ!!ゾロは聞いてて覚えられたか!?」
「覚えられっこ無ェだろ普通!!」

「1ヶ1ヶ、個別に覚えようとするから駄目なんだってば!『歴史と同様、全ての事物を連続したものと捉え記憶する』――これ、ロビン先生が教えてくれた記憶術なんだけどね。覚え切れないだろうからって1つ2つ3つだけしか覚えないようにしようってやり方は、却って中々覚えられないんだって!」
「……何言ってんだか解んねェよ。」

「例えば詩にして覚えんの、こうやって――


 熊と面会、リンダ『リダー』

 『モーレン』渡れば風車の小島

 『デルフト』越えて、街へ出よう

 辿り着く街、ニュースタッド

 飲む『チョコラーテ』で一休み

 運河の煌きは『クリスタル』

 響き渡る『カロヨン』の音色

 『ゴッホ』が描く、静かの海原


 ――ね?こんな感じにすれば、覚えられるでしょ??」



「「覚えられる訳無ェだろっっ!!!!!」」



「…あ、あらら??……やっぱりv」



「……ま、1つだけ理解出来たのは……ナミ!!てめェには詩人としての才能が無ェェ!!!」(きっぱり)
「なんですってェェーーー!!?」
「うははははは♪♪いーじゃねーかナミ!!『シジン』にはなれなくても、誰でもいつか『シニン』にはなれんだか―――」



――ガゴォォォン……!!!!!



「………ブラックなジョークかましてんじゃないわよ、ルフィ。」


「…お、死んだ。」






その15に続】




写真の説明~、ハウステンボスのVIP御用達超高級ホテル『迎賓館』の『ロイヤルイルミネーション』。

映画『笑うミカエル』のロケも行われた場所です。

人生の内1度は宿泊してみたいねv(笑)


…で、宜しければ公式サイトの場内マップを御覧下さいませ。(苦笑)


橋の名前ね~、こんな感じで自分覚えてて、全部書こうかと思ってたんだけど……………やっぱ恥しいから止めときます。(汗)
それと前回、長崎カステラの老舗店舗『松翁軒』を、『松扇軒』と間違えて書いてしまいました。(汗)
誠に失礼致しました。(御指摘下さったちばさん、どうも有難う御座いました!)(礼)
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『何度も廻り合う』その13

2006年01月12日 23時36分09秒 | 桜トンネル(ワンピ長編)
前回の続きです】




歌い終ったミュージシャン達が、最後に1人づつ、ヴォーカルに名前呼ばれてあいさつしていく。

1人1人前に出てく度、集まった大勢の観客が、拍手と歓声で応えた。

もちろん俺もしてやった、口笛まで吹いて。


全員があいさつし終えて、手を振りながら、ステージ裏に去って行く。

最後は演奏してたメンバーも、手を振って去って行った。



「すっげ楽しかったなァ~♪♪」
「皆本当にすっごく歌上手だったよねェ~!」
「ちょー盛り上ったよな!!最後は皆でバカノリしちまってよォ!!」
「あんたはノリ過ぎよルフィ!!こっちまで引き摺られて恥しかったのなんの…ま、楽しかったけどさ。」
「…………俺は疲れた……早く風呂入って寝ちまいてェよ…もう、ショーは全て終了したんだろ?いいかげん帰ろうぜェ?」
「未だよ!最後の花火が残ってる!」
「未だ有んのかよ~~~!?……いいかげん帰りてェよ俺は…。」
「花火ってアレか!?ドーンと鳴って打ち上がるちょー特大のヤツか!?なら観る!!ぜってー観るぞ俺!!!」
「どうせ会場は此処みたいだし、やっぱ1日の終りは花火で〆ないと♪……後25分、間が有るみたいだから、どっか開いてるお土産屋入って暖まってよ!」




花火がやる時刻まで、俺達はてきとーに土産屋選んで、入って待ってる事にした。

…つってもたいがいの店が閉ってて、開いてるのは3けんくれェしか無かったけどな。


その内の1けん、酒をメインに売ってる店が在ったんで入る事にした――ゾロのたっての希望で。

しょーちゅーとかの日本酒が多く置いてある店だったけど、他にも明太子とかカマボコとかカステラとか…奥には焼物の器とかまで有った。

出てたししょくを片っぱしから食ってく、チョコレート味のカステラが甘くて美味かった。

しょーおーけんって名前の、長崎で有名なカステラ屋の物らしい。


俺の後ろでは、ゾロがかつて見た事無ェほどマジな顔して、1本1本酒ビン見つめながら考えてる。

そのゾロの後ろから、ナミがギャイギャイ騒いで注意してる…ようで、ナミ自身もゾロと一緒になって酒見てた。


何か長くかかりそうなんで、1人でとっとと店を出た。


店の出入口前には『かんころもち』って書かれた屋台が在って――実を言うと店入る前から興味持ってたんだけど――まんじゅうみてーな大福みてーな変ったもんふかして売っていた。

ふかしてるトコから白い湯気がホコホコ出てて、外寒かったんで余計に美味そーに見えた。

誘惑に負けてつい1個買っちまった。

手に持ったそれは、アツアツで紫色した大福みてーな形してた。

包まってたラップはがして、フーフー言いながら一口かじる。


「ってあんたは目を離した隙にまた食ってるし!」
「ブッッ!!…ファ、ファヒ!!?――アヂッッ!!!アヂアヂアヂィッッ!!!
「買い食いも程々にしとかないと、お小遣いあっという間に無くなっちゃうから!!……って何?その紫色の食べ物…。」
「『かんころもち』って名前の食いもんだ。餅っつうけど、今食ってみたら、これ餅じゃねェぞ?芋だ!」


食ってみたら、紫色の餅みてーな外側部分は芋だった、芋きんとんの味だ。

中味は白アン…不味くはねェっつか、まァまァ美味ェし甘ェ。


「なひゃひゃひはおもひへーもん売っへんひゃな~~。」
「成る程ねー、紫芋を餅みたいに練って、中に白餡包んで大福みたいにしたお菓子…なのかしら?変ってる~。」
「おー、悪ィ!待たせたかァ?」


ゾロがニコニコしながら戻って来た。


「……ゾロ…あんた、未成年のクセして焼酎一升瓶で買ったわね…?」
「家への土産だ。何も問題無ェだろが?」
「有るわよ!!!人がちょォっと目を離した隙にあんたはあんたはあんたはあんたは!!!私が大人しく我慢してんだからあんたも我慢すんのが気配りってもんでしょォォォ!!?」
「痛っっ!!痛痛痛痛痛痛ェェ!!!バッッ!!止めっ!!抓るな引掻くな!!…別に我慢しなきゃ良いだろっって――痛ェェェェェ!!!!
「おい!!これから花火やるって放送してるぞ!?」
「え!?ああ!!大変!!!早く会場戻らなきゃ!!!」
「会場って、さっきの海賊船の前か!?」
「オレンジ広場だって!より人だかり有る方目指せば良いわ!!」




店を出て、何か美味そーな名前の広場に急いで向う。


でっけークリスマスツリーの前が、1番人が多くて混雑してた。

来て初めて観たクリスマスツリーだ、青・緑・金色と、どんどん色が変ってってきれーだった。

後でこれをバックにして写真をとろうと思った。


「…凄ェ。此処、こんなに人が入ってたのか。初めて知ったぜ。」
「今までで1番活気づいてんなー!!」
「どうやら前に広がる海で上げるみたいね。」



開始を知らせる英語アナウンスがかかった。


曲に合せて空いっぱいにレーザーの光が反射される。


ドン!!!ドォン!!!とものすげー音させて花火が打ち上がる。


レーザーの光と重なって、空にぱぁっと広がる。


花火って名前の通り、本当に花みてーだ!!


散ってキラキラと、雪みてーになって降って来る。



また打ち上がる、ぱぁっと広がる。


色とりどりの空の花。


キラキラキラキラ、雪のよーに、星のよーに、降って来る…




「……きれーだなー……」


「綺麗でしょ?この島の花火は、グランドラインでも有名な美しさなんだって。」

「ふーーーん…。」




……………………ぐらんどらいん???




「ぐらんどらいんって、何言ってんだ?ナミ??」
「はァ??あんたこそ何言ってんのよルフィ!?『偉大なる航路』、私達が今、航海してる海じゃないの!!」

「いだい???こうかい????…何の事だそりゃ??????」

「おいルフィ…食あたりでもしたか?医者呼ぶか?」



「――ゾロォォ!??おま何だァ!?そのカッコ!??腹巻!!?刀!??いつ着替えたんだァァァ!!??」



目の前に立ってたゾロのカッコは、さっきまで着てたジーンズに緑のジャケットではなくて、半そでおやじシャツに緑の腹巻うでには黒バンダナしばってってな風に変ってた――しかも刀3本も差してるぞコイツゥゥゥ!!??



「ゾ!ゾロ!!何だよその刀!!?何処の店で買ったんだよカッコ良いじゃねーか!!!でもじゅーとーほーいはんだぞ良いのか!!?なァァァ!!??」


「……おい、クソコック。おめェ、ひょっとしてこいつに一服盛ったんじゃ…?」
「クソざけんなよ、マリモンチッチ。幾ら連日食料強奪しやがってるからって、コックのプライド捨ててまでそんな真似するかよ。」
「けどさっき、コックさんの強烈な蹴りが脳天に直撃してたでしょ?…それが原因で彼、一時的な記憶喪失になってしまったんじゃないかしら?」


「サ、サンジィィ!!??おまえいつここに来たっっ――ってかロビン先生まで居るしっっ!!??」


振り返ったそこには、黒スーツ着てタバコぷかぷかふかしてるサンジ、そしてなぜか俺達のクラスの担任のロビン先生まで居た!


「っておいサンジ!!!ロビン先生の前でタバコはヤベェだろ!!?いやそんな事よりいつここ来たんだよ!!?受験勉強は大丈夫なのかよ!?来てたんなら早く教えててくれよォーーー!!!!」

「…あ~~あ、そーとー打ち所、いや、蹴り所悪かったみてェだぞ。ま、何だ!此処はやっぱ医者の出番だろ!おゥい!チョッパー!!仕事だぜ!!」

「お、おう…!!!」

「――ウソップゥゥ!!??おめェも来てたのかァァァ!!??……っておまえは誰だァァァァ!!???



サンジの後ろにはウソップがいた!!

あの長い鼻は間違い無くウソップだ!!!

しかもさらにその後ろから、チョコチョコと奇妙な生物まで出て来やがった!!


ピンクのぼうしをかぶり、ツノを生やした青っ鼻の、見た事も無ェ動物。


…シカか??…タヌキか???


「解った!!シカとタヌキのキマイラだ!!!」
「トナカイだ俺はっっっ!!!」
「相当、重症ね。」
「まったく酷いわねー!!あんた、ウチの大事なドクターまで忘れちゃったってーの!!?」
「ナミ!?おまえまでいつの間にそんなうすいワンピースに着替えたんだ!!?風邪引くぞ!!!?」
「……あんたに言われたくないわよ…。」
「――え!!?あああ!!??俺ビーサンそで無しいつの間にィィィ!!???」


俺の服はいつの間にか夏服に、はいてるくつなんかビーサンに変ってた!!!




何だ何だ!??


どういう事だこれ!!???


いつの間にか全員集合、しかも妖怪まで混じって!!???


いったいぜんたいどーなっちまったんだよ!!!??


誰か説明してくれよ!!!!



訳解んねーよォ~~~~!!!!!!




コンガラガッちまった頭の上で、またドォン!!!とでっかい音が響いた。


見上げた夜空に、ひときわでっけー花が咲いた。



そしてまた雪みてーなって、キラキラ光りながら降って来る。



観ている皆の笑顔が、明るく浮き上がった。






「…ほら、あんたの大事な帽子が落ちてる!」





ナミが、俺の頭の上に、ポスッと何かをかぶせた。




手に持って見ると、それは古びた麦わらぼうし。





「………これ…俺の、か……?」


「そうよ!大事な誓いの帽子でしょ?……しっかりしてよ、船長!」



ナミがにっこりと笑う、その後ろには光る雪。





――ああ、そうだった!!



俺の名前はモンキー・D・ルフィ。



海賊王になる為に、船に乗って海へ出た。




そうして見つけた仲間達。




三刀流のすごうで剣士、ロロノア・ゾロ。


天才航海士で、怒ると鬼より恐ェナミ。


ウソが上手くて鼻の長ェウソップ。


グルグルまゆ毛の一流コック、サンジ。


医者で七段変型面白トナカイのトニー・トニー・チョッパー。


考古学者でものすごく頭の良いニコ・ロビン。





そうだそうだ!!


何で忘れちまってたんだ俺!?


…ゴメンな、チョッパー!シカとかタヌキとかキマイラとか妖怪とか言っちまって…



けど思い出した!全部思い出したぞ!!




海賊王、最強の剣士、世界地図、

勇かんなる海の戦士、オール・ブルー、

万能薬、リオ・ポーネ・グリフ……



皆一緒に、夢を叶える為に、俺達はグランド・ラインに入って、航海して来たんじゃねェか…!!





ドォン!!!と響いて花火が打ち上がる。


空に幾つもきれーな花が咲いてく。



「……きれーだ……。」

「綺麗でしょ?

 この島の花火は、グランド・ラインでも有名なんだって!

 毎日沢山の旅行客が、これを目当てに訪れてる。


 でもね、元々の此処は、草木も育たない、捨てられた荒地だったんだって。

 信じられる?こんなに緑豊かで、美しい花が咲き乱れてる街がよ?


 1年半、耕して耕して耕し続けて、気の遠くなる程の歳月をかけて、

 島は生まれ変り、そしてこんなに大きな街が造られた…」




ドドドォォン…!!!と連続で花火が打ち上がる。


今までで1番でっけー花火だった。


空に映ったレーザーの波の中、いっぺんに沢山の花が咲く。


広がっていっせいに散って、そうして空ん中だんだんと、溶けて流れてった……



今のが最後の花火だったらしい。


一気に歓声と拍手が上がった。




「……すげェ……すげェェェェェ~~!!!!」





「ね!?観て良かったでしょ!?ルフィ!…ゾロ!!」

「まァな、やっぱ花火はショーの華だな!」


「ウソップ!!サンジ!!チョッパー!!ロビン!!おめェらも…!!!」





――って、あ、あ、あれ!!!??





振り返ったそこに、ウソップやサンジやチョッパーやロビンの姿は無くて、知らねー観光客達が、びっくりした顔して立ってるだけだった――




「ああれあれ!!???おおゥい!!!ウソップ!!サーンジ!!チョッパー!!ロビーン!!!…皆どこ行っちまったんだァーーーーー!!!!??」

「…ウソップ?サンジ君?ロビン先生???……あんた、さっきから何言ってんの???」
「っつかおめェ、ロビンって…教師の名前呼び捨てっつうのは失礼じゃねェか?」

「なァおまえらもウソップやサンジやチョッパーやロビンを探してって――またいつの間に着替えたんだよおめーらァァァ!!?


目の前に立ってたゾロとナミは、また冬服に戻って居た!




――どどどどーなってんだ!!??こりゃーーー!!!???



「ウソーーップ!!!サーーンジ!!!チョッパーー!!!ロビーーン!!!おゥゥゥいーーーー!!!!!」


「…だから何てめェはウソップやグル眉毛やロビン先生の名前呼んでんだよ!??」
「居たじゃねーかさっきまで!!!!ウソップやサンジやチョッパーロビン全員!!!!」
「居る訳無ェだろウソップや眉毛が!!!最初っから此処に来てなかっただろが!!!!」



「……最初っから……?何で………?」
「…だから、2人とも受験が有るから、勉強しなきゃいけねェって……そもそも担任の教師が何で俺達と一緒に此処来るっつうんだよ…??」


「……受験…?勉強……??」


「ねェ…『チョッパー』って何よ???」

「わ…忘れちまったのかよナミィ!!?医者でトナカイで七段変形して、一緒に航海して来た俺達の仲間じゃねェかーーーー!!!!!」


「……………何で、トナカイが医者で、私達の仲間んならなきゃいけないのよ……??」

「後悔…??航海か???……何時俺達が航海したってんだよ……??」




ゾロとナミが、変な顔して俺の事見ている。




――そんな…だって…確かに、さっきまでいたんだ!!全員!!!!




「…夢でも見たんじゃねェか…?」

「立って夢見るなんて、ゾロより酷い寝惚けね!おっかし~!!」
「どうしてそこで俺が出るんだよ!!?」
「あら!?だって寝惚けはあんたの必殺技、酔拳ならぬ『睡剣』じゃない!」
「んだとっ!?てめェ!!!」




――夢じゃねェ、夢なんかじゃねェ!!





けど確かに今此処には、ウソップもサンジもチョッパーもロビンも、居なくなっていた……







その14に続】






…この話読んで「お前の企みは全て解った!!」と思った方も多かろうな~。(苦笑)

すんません、そんな妙な事企んでおりました。(汗)

付いて行けなかったらすんません。(汗々)


写真の説明~、ハウステンボス、スパーケンブルグ地区に在る、海賊船ではなく『デ・リーフデ号』にイルミを点灯させた『光の船』。


文中出て来たお酒の店は、スパーケンブルグ地区に在る『ぜーランド』って店の事です。

カステラの美味しい、長崎の老舗店は『松翁軒』ね。
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