はぁい♪ミス・メリーよ♪
いよいよ大晦日ね!貴方の家では新年を迎える準備は整ったかしら?
今夜放送される紅白歌合戦、久し振りにサブちゃんがトリを飾ると聞いて、メリー楽しみにしてるの♪
やっぱり平成最後の紅白は、サブちゃんの歌で〆て欲しいわよね!
「日本の少女漫画に登場するクリスマス・エピソード」、第十一夜目の今夜は、白泉社が発行する「花とゆめ」にて、1986年~1991年迄連載された、那州雪絵女史著作「ここはグリーン・ウッド」6巻収録分より――「蓮川家の一族」を紹介!
「ここはグリーン・ウッド」は、名門男子高私立緑都学園の緑林寮、人呼んで「グリーン・ウッド」を舞台に、男子高校生の青春の悩みや男子寮での日常的ドタバタを描いて、伝説級のヒットを飛ばした作品よ。
いまいち影が薄い純情主人公「蓮川一也」、どう見ても可愛い女子なルームメイト「如月瞬」、江戸っ子気質のイケメン寮長「池田光流」、神様みたいな生徒会長「手塚忍」、この四人が主に軸となって、物語は展開して行くの。
さて「蓮川家の一族」がどんな話かというと――
蓮川一也にとって唯一の肉親である兄、「蓮川一弘」25歳。
病死した父親と、事故死した母親に代わり、まだ幼かった弟を、自分の母校である名門男子高、私立緑都学園に入学するまで育ててくれた、出来た御兄様だったけど、現在、遅い反抗期を迎えた弟の一也から、一方的に距離を置かれていた。
嫌われた原因の1つは、一弘が緑都学園の保険医に就いた事…男子校の保険医と言う職業の何が気に食わないのか、メリーにはちっとも理解出来ないけど、弟を育てる傍ら、自身も苦学生で優秀な成績を修めた御兄様が、世間からは奇異な目で見られる職を選んだ事に、一也はガッカリして裏切られた気持ちになったみたい。
嫌われた原因2つ目は、一也の初恋の女性である「すみれちゃん」を、一弘がお嫁さんにした事。
一也が実家を出て、緑林寮に入る事を決めたのも、愛するすみれちゃんと兄貴の熱々新婚生活を目前にするのは、居たたまれなかったから…その気持ちはメリーにも良く解るわ~。
そういう訳で、高校で日常的に会うにも関わらず、一也は一弘を極力無視するようにしてたの。
冬休みを前に、緑都学園で或る噂が流れた。
「一弘が保健室で特定の男子生徒と逢い引きをしている」…今までも男子校の保険医と言う奇特な職業柄、ホモ疑惑が囁かれていた一弘だったけど、今回は実際にその現場を見た生徒が数人居て、その内の一人が寮長の池田光流だった為に、一也の耳に入るまで噂が表面化。
最近、何者かに階段から落とされる等の嫌がらせを受け続け、苛々していた一也は、余計に一弘に対して邪険に当たった。
何時もに増してギスギスする兄弟関係…保険医と男子生徒の逢い引き…執拗に狙われる一也…これら事象の断片を、生徒会長である手塚忍の証言が1つに繋ぐ。
「石灰用スコップを蓮川目掛けて上階から投げた者の顔を見たが、ウチの男子生徒ではなかった」
全校生徒の顔を覚えてるなんて、流石は周囲からの信頼厚い生徒会長さんね!
一也が狙われる所を、ただ見てただけで、止めはしなかったけど…。
でも手塚生徒会長の証言のお陰で、一也に嫌がらせをする犯人は、校外からやって来る事が解ったわ。
しかも、わざわざ緑都学園の制服を、オーダーしてまで侵入する熱意…並々ならないわ。
ここで立てられる仮説…一也に嫌がらせし続ける犯人は、近頃保健室で一弘と逢い引きしている若い男ではないか?
一弘が弟を溺愛している為、嫉妬に駆られた恋人の男が、一也を執拗に狙っているのでは?
その説を裏付けるように、後を尾けて犯人の顔を確認した池田寮長は、「自分が保健室で見た逢い引き男に間違い無い」と証言したの。
「すみれちゃんと言う女性が居ながら、なんてふしだらな兄貴だ!!」、仲間の無責任な仮説を真に受けた一也は、一弘と犯人の男が保健室で逢い引き中の現場に押し入ったの。
そこで知った真相…兄の一弘はホモではなく(当たり前)、犯人の男もホモじゃなかった。
犯人の真の目的は、すみれちゃんを蓮川兄弟から引き離し、我が物にする事だったの。
男の正体は、すみれちゃんの従兄弟の「神田利幸」、高校出て直ぐアメリカの大学に入学した彼だけど、すみれちゃんが結婚した話を聞いて、休学を申請し、日本に帰って来たんですって。
「愛しのすーちゃんを、おまえら兄弟から奪い返す!!!」と、横恋慕の自覚無く恋心メラメラな神田。
神田が言うには、「すーちゃんと自分は8歳の時に将来を誓い合った仲」なんですって。
それなのにちょっと目を離した隙に、悪い男の毒牙にかかってしまったと…御父様の様に弁護士を目指してる神田君は、育ちの良さが自慢のエリート、たかが保険医に負けた事で、プライドが大いに傷付いたのね。
その場は神田君が出直す事で、騒ぎが収束したものの、一也は怒りが収まらなかった。
現在仲違いしてるとはいえ、尊敬する兄貴を貶されたんだもの。
「あんな奴にすみれちゃんの指一本触れさせるな!!」と、一弘に檄を飛ばす一也だったけど、肝心の兄貴はヘラヘラ暢気に笑ってるだけ。
グングン上昇してく一也の苛々メーター。
「あんな奴をあてにしちゃ駄目だ!終業式終わったら、家に戻って、すみれちゃんを守ってやる!!」と、自室に戻っても熱血している一也の傍ら、同室の瞬は素知らぬ顔で蜜柑の皮を剥いていたわ。(笑)
それから数日後、授業を終え、寮に帰る道の途中、一也を待ち伏せる神田の姿が――友人の栃沢と共に、偶然その場に出くわした瞬は、「敵が懐柔策に出た」と推理し、栃沢に光流先輩と忍先輩と保険医を呼んで来るよう頼んだの。
カフェ「詩本」で神田と対面する一也、敵の狙いは瞬が推理する通り、懐柔して手を組む事だった。
将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、つまりこの場合、馬は一也に当たるわけね。
神田は一也も、すみれちゃんに横恋慕している情報を入手し、自分と手を組んで、彼女と君の兄を別れさせないかと持ち掛けた。
「すーちゃんを自由の身にすれば、君にも平等に権利が回って来る筈だ」ってね、将来弁護士目指してるだけあって、強かに策を講じるわねェ。
でも一也は「あんたが嫌いだから」とキッパリ断った。
「肝心のすみれちゃんの気持ちはどうなる?」…そうそう、すみれちゃんは一也のお兄さんが好きで、結婚したんだもの。
好き合ってる二人を別れさせようなんて、馬に蹴られてしまいなさい!
ところが敵さんも簡単には退かず、もう1つ仕入れた情報で、一也を揺さぶって来た。
「君ら兄弟には身寄りが無いんだってね。いざという時頼れる親類も居ない、たかが保険医の男の元に嫁に行ったんじゃ苦労する。すみれちゃんの事を思うなら、僕みたいな相応しい相手に譲るべきだ」
彼の言葉を聞いた一也は、テーブルを力いっぱい叩き付け、椅子から立ち上がった。
その剣幕に思わずたじろぐ神田。
――おまえなんかに解ってたまるか!!!
言葉が上手く声にならず、泣きながら相手を睨む一也、そこへ保険医の一弘が、光流、忍、瞬を伴って、一也と神田の前に登場したの。
一弘は「君がどうしても僕らの結婚に納得がいかないと言うなら、当人のすみれを交えてキチンと話をしよう」と持ち掛けた。
一弘の申し出に、神田も「すーちゃんが幸せな生活をしてるか見極めてやる!」と意気込む。
勝負は再び持ち越しとなり、緑都学園の面々は店を出て行った…神田が座る席のテーブルに、自分達が注文した分のレシートを置いて。(ちょっと可哀想…)
しがない男子校の保険医でも、初恋の女性を奪われても、一也にとって一弘は、自分を私立校に入学させるまで育ててくれた、自慢の兄貴。
そんな兄貴の努力を知らず馬鹿にした神田を、一也は絶対に許す事が出来なかったのね。
一方の一弘も神田に対して静かに怒ってた。
彼の使命は弟の一也を泣かさない事、ブラコン兄貴として神田の事を許すわけにはいかなかったのよ。
終業式を終えるや、急いで自宅に帰ろうとする一也を、寮仲間達は適当な激励で送り出した。
蓮川家に電話した所、今晩あの神田が来るらしい、決戦はクリスマス…「俺達のすみれちゃんを、あんな奴に渡してたまるか!!」
勇んで帰宅した一也を、すみれちゃんの桜満開スマイルが出迎える。
長期休みに入っても、なかなか帰宅しない一也が、クリスマスに合わせて帰って来てくれた事で、すみれちゃんは超御機嫌。
一也より先に迎えられた神田は、一弘と対面する形で炬燵に入り、うんともすんとも言わない。
彼、すみれちゃんの全身から発される幸せオーラに当てられて、すっかり毒気が抜け落ちちゃったみたい。
神田の表情から敗北を感じ取り、痛快な気分を味わう一也だったけど、その彼をも奈落に突き落とす衝撃の発言が、すみれちゃんの口から飛び出したの。
「この間、病院に行って来たんだけど、私、夏には、お母さんになるんだってーv」
明くる日、一也はルームメイトである瞬の実家に電話して、冬休み中、彼の家にお世話になる事にした。
ちなみに瞬の実家は静岡の有名ホテル、成る程、部屋には困らなそうね。
それからまた数日経った頃、一弘から事情を聴いた寮長の光流が、一也の様子を心配して、瞬の家に電話して来たの。
光流の話では、神田君は、すみれちゃんオメデタのニュースに絶望し、アメリカに帰ったんですって…不憫ね。
瞬は、一也を自分の部屋に泊めて、今は大掃除を手伝わせてる事を、光流に報告。
不憫がる光流に、瞬は「すかちゃん(一也)が、何かしてた方が気が紛れるからって、進んでやってるんだよ」と説明。
瞬の話では、駅で迎えた時から、一也は暗い顔で、何を訊かれても答えないで居るらしいの。
すみれちゃんオメデタのショックは、周りが想像する以上に深刻の様ね…。
とは言え瞬からすれば、自分の所に来て、ずーーーっとクヨクヨされてたんじゃ、いいかげんウザったいわよねェ~。
見た目乙女な割に竹を割った様な性格の瞬は、一也の女々しい態度が我慢出来ず、ズバンと斬り込んだの。
「すかちゃん、すみれさんに一度でも意思表示した事有るわけ!?
言ってないなら後でグズグズ言う権利無いし、繊細ぶって友達に迷惑をかける権利も無い!!」
瞬から直球で正論をぶつけられ、言い返せずに蹲る一也…耳に届く除夜の鐘の音が、彼女との懐かしい記憶を呼び起こしたの。
――すみれちゃんに出会ったのは、中学三年になったばかりの、春の日曜だった。
英語が苦手な一也の為、兄貴が大学の後輩で英文科四年の彼女に、家庭教師を頼んだのだ。
週に一度、家に来てくれた彼女は、年上で美人なのに全く気取った所が無く、中学生の一也にも対等に接してくれた。
「二人で頑張りましょう!!」
何時しか受験の目的は、「兄貴と同じ学校へ」ではなく、「すみれちゃんと二人で頑張って合格する」事に変わって行った。
夏休みに入れば、水泳部の合宿に参加して居ない兄貴に代わり、ご飯を作って一緒に食べてくれたすみれちゃん。
鈍い子供だった一也は、すみれちゃんと兄貴の関係に、全く思いが至らなかった。
二人の関係に気付いたのは、冬が近付き、本格的な受験シーズンに入った頃――受験が終われば、家庭教師である、すみれちゃんの役目も終る…その事に気付いた一也は、思い切って告白しようか悩んでいた。
そんな時、すみれちゃんの方から告白してくれた。
「一也君…私の事…どう思ってる?」
「好き?ねっ、どうなの?」
「一也君、私…一也君のお家に、お嫁に来ても良い?」
でも、すみれちゃんが好きなのは、自分じゃなかったんだ。
兄貴が腹を決めた様に、二人の関係を話してくれた。
すみれちゃんが大学を卒業し、一也の受験が終わったら、結婚する積もりで居ると……家族として受け入れてくれるか、必死で見詰めるすみれちゃんの顔を見たら、一也は黙って頷くしかなかった。
除夜の鐘の音をBGMに、すみれちゃんの満開の笑顔が目蓋に浮かぶ――
年が明けて一月一日、一也は瞬に連れられ、海から昇る初日の出を拝みに来てた。
「それじゃ本当に、これで諦めるんだね?
もう家に帰りたくないなんて言わないね?
お兄さん達の間に赤ちゃんが産まれても喜べるね?」
矢継ぎ早に念押しして来る瞬に、しっかり頷く一也。
「まあ…良い機会だよね、区切りも良いし、これで良かったんだよ。これからは、すかちゃんも、もっと前向きに生きなきゃね!」、そう言って一也の肩を叩いた瞬は、その手を真っ直ぐ前方に伸ばし、波間を金色に染める朝日を指差した。
「さあ!今までの全ての蟠りを捨てるんだ!あの朝日に向かって!!」
「ばかやろーーーーっっ!!!」
旧年までの蟠りは叫びに籠めてサヨウナラ、1989年元旦、蓮川一也、新しい夜明けであった――
…失恋が少年を成長させる、まるで青春ドラマの様なラスト・シーンに、メリー目頭がじんわり熱くなったわ!
大晦日に紹介するのにピッタリなエピソードでしょう!
メリーも一也に倣って、蟠りを初日の出にぶつけに行こうかしら?
それじゃあここで第11曲目のクリスマス・ソングを紹介、元はスコットランド民謡だけど、欧米では年末恒例の歌ね――「蛍の光(Auld Lang Syne)」♪
日本でも紅白歌合戦の〆に歌われるわ
誰もが知る有名な歌でしょうけど、どんな歌か知りたい人は、こちらを参考にね。
それじゃあまた、お正月も楽しくクリスマス・ソングを歌いましょう♪
蛍の光♪ 窓の雪♪
書(ふみ)読む月日♪ 重ねつつ♪
何時しか年も♪ すぎの戸を♪
開けてぞ今朝は♪ 別れ行く♪
止まるも行くも♪ 限りとて♪
互(かたみ)に思ふ♪ 千万(ちよろづ)の♪
心の端を♪ 一言に♪
幸(さき)くと許(ばか)り♪ 歌ふなり♪
…こんばんは、びょりです。
何とか年が明ける前に更新出来ました。
グリーンウッドは友人が嵌まってて、全巻揃えてたなあ。
当時、瞬が本当の女の子なら良かったのに…と残念に思ったもんだ。
今夜の写真は東京丸の内に飾られたクリスマス・ツリー。
今年は北欧をイメージしたそうです。
↑新丸ビルのクリスマスツリー。
↑丸ビルのクリスマスツリーは、ユーミンの「恋人はサンタクロース」の歌に乗せて、光の雪がクルクル舞う。
巨大な毛糸玉で編んだツリーをイメージしてるもよう。
↑丸の内ブリックスクエアのクリスマスツリーは北欧の御守りをイメージしてるとか…クリスマス・ツリー?
↑一番クリスマス・ツリーらしかった、丸の内オアゾのクリスマス・ツリー。
そして記事一番上の写真は今年の9月に撮影したハウステンボスでの朝日…初日の出じゃなくって済みません。
それでは皆様、良いお年をお迎えください。
いよいよ大晦日ね!貴方の家では新年を迎える準備は整ったかしら?
今夜放送される紅白歌合戦、久し振りにサブちゃんがトリを飾ると聞いて、メリー楽しみにしてるの♪
やっぱり平成最後の紅白は、サブちゃんの歌で〆て欲しいわよね!
「日本の少女漫画に登場するクリスマス・エピソード」、第十一夜目の今夜は、白泉社が発行する「花とゆめ」にて、1986年~1991年迄連載された、那州雪絵女史著作「ここはグリーン・ウッド」6巻収録分より――「蓮川家の一族」を紹介!
「ここはグリーン・ウッド」は、名門男子高私立緑都学園の緑林寮、人呼んで「グリーン・ウッド」を舞台に、男子高校生の青春の悩みや男子寮での日常的ドタバタを描いて、伝説級のヒットを飛ばした作品よ。
いまいち影が薄い純情主人公「蓮川一也」、どう見ても可愛い女子なルームメイト「如月瞬」、江戸っ子気質のイケメン寮長「池田光流」、神様みたいな生徒会長「手塚忍」、この四人が主に軸となって、物語は展開して行くの。
さて「蓮川家の一族」がどんな話かというと――
蓮川一也にとって唯一の肉親である兄、「蓮川一弘」25歳。
病死した父親と、事故死した母親に代わり、まだ幼かった弟を、自分の母校である名門男子高、私立緑都学園に入学するまで育ててくれた、出来た御兄様だったけど、現在、遅い反抗期を迎えた弟の一也から、一方的に距離を置かれていた。
嫌われた原因の1つは、一弘が緑都学園の保険医に就いた事…男子校の保険医と言う職業の何が気に食わないのか、メリーにはちっとも理解出来ないけど、弟を育てる傍ら、自身も苦学生で優秀な成績を修めた御兄様が、世間からは奇異な目で見られる職を選んだ事に、一也はガッカリして裏切られた気持ちになったみたい。
嫌われた原因2つ目は、一也の初恋の女性である「すみれちゃん」を、一弘がお嫁さんにした事。
一也が実家を出て、緑林寮に入る事を決めたのも、愛するすみれちゃんと兄貴の熱々新婚生活を目前にするのは、居たたまれなかったから…その気持ちはメリーにも良く解るわ~。
そういう訳で、高校で日常的に会うにも関わらず、一也は一弘を極力無視するようにしてたの。
冬休みを前に、緑都学園で或る噂が流れた。
「一弘が保健室で特定の男子生徒と逢い引きをしている」…今までも男子校の保険医と言う奇特な職業柄、ホモ疑惑が囁かれていた一弘だったけど、今回は実際にその現場を見た生徒が数人居て、その内の一人が寮長の池田光流だった為に、一也の耳に入るまで噂が表面化。
最近、何者かに階段から落とされる等の嫌がらせを受け続け、苛々していた一也は、余計に一弘に対して邪険に当たった。
何時もに増してギスギスする兄弟関係…保険医と男子生徒の逢い引き…執拗に狙われる一也…これら事象の断片を、生徒会長である手塚忍の証言が1つに繋ぐ。
「石灰用スコップを蓮川目掛けて上階から投げた者の顔を見たが、ウチの男子生徒ではなかった」
全校生徒の顔を覚えてるなんて、流石は周囲からの信頼厚い生徒会長さんね!
一也が狙われる所を、ただ見てただけで、止めはしなかったけど…。
でも手塚生徒会長の証言のお陰で、一也に嫌がらせをする犯人は、校外からやって来る事が解ったわ。
しかも、わざわざ緑都学園の制服を、オーダーしてまで侵入する熱意…並々ならないわ。
ここで立てられる仮説…一也に嫌がらせし続ける犯人は、近頃保健室で一弘と逢い引きしている若い男ではないか?
一弘が弟を溺愛している為、嫉妬に駆られた恋人の男が、一也を執拗に狙っているのでは?
その説を裏付けるように、後を尾けて犯人の顔を確認した池田寮長は、「自分が保健室で見た逢い引き男に間違い無い」と証言したの。
「すみれちゃんと言う女性が居ながら、なんてふしだらな兄貴だ!!」、仲間の無責任な仮説を真に受けた一也は、一弘と犯人の男が保健室で逢い引き中の現場に押し入ったの。
そこで知った真相…兄の一弘はホモではなく(当たり前)、犯人の男もホモじゃなかった。
犯人の真の目的は、すみれちゃんを蓮川兄弟から引き離し、我が物にする事だったの。
男の正体は、すみれちゃんの従兄弟の「神田利幸」、高校出て直ぐアメリカの大学に入学した彼だけど、すみれちゃんが結婚した話を聞いて、休学を申請し、日本に帰って来たんですって。
「愛しのすーちゃんを、おまえら兄弟から奪い返す!!!」と、横恋慕の自覚無く恋心メラメラな神田。
神田が言うには、「すーちゃんと自分は8歳の時に将来を誓い合った仲」なんですって。
それなのにちょっと目を離した隙に、悪い男の毒牙にかかってしまったと…御父様の様に弁護士を目指してる神田君は、育ちの良さが自慢のエリート、たかが保険医に負けた事で、プライドが大いに傷付いたのね。
その場は神田君が出直す事で、騒ぎが収束したものの、一也は怒りが収まらなかった。
現在仲違いしてるとはいえ、尊敬する兄貴を貶されたんだもの。
「あんな奴にすみれちゃんの指一本触れさせるな!!」と、一弘に檄を飛ばす一也だったけど、肝心の兄貴はヘラヘラ暢気に笑ってるだけ。
グングン上昇してく一也の苛々メーター。
「あんな奴をあてにしちゃ駄目だ!終業式終わったら、家に戻って、すみれちゃんを守ってやる!!」と、自室に戻っても熱血している一也の傍ら、同室の瞬は素知らぬ顔で蜜柑の皮を剥いていたわ。(笑)
それから数日後、授業を終え、寮に帰る道の途中、一也を待ち伏せる神田の姿が――友人の栃沢と共に、偶然その場に出くわした瞬は、「敵が懐柔策に出た」と推理し、栃沢に光流先輩と忍先輩と保険医を呼んで来るよう頼んだの。
カフェ「詩本」で神田と対面する一也、敵の狙いは瞬が推理する通り、懐柔して手を組む事だった。
将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、つまりこの場合、馬は一也に当たるわけね。
神田は一也も、すみれちゃんに横恋慕している情報を入手し、自分と手を組んで、彼女と君の兄を別れさせないかと持ち掛けた。
「すーちゃんを自由の身にすれば、君にも平等に権利が回って来る筈だ」ってね、将来弁護士目指してるだけあって、強かに策を講じるわねェ。
でも一也は「あんたが嫌いだから」とキッパリ断った。
「肝心のすみれちゃんの気持ちはどうなる?」…そうそう、すみれちゃんは一也のお兄さんが好きで、結婚したんだもの。
好き合ってる二人を別れさせようなんて、馬に蹴られてしまいなさい!
ところが敵さんも簡単には退かず、もう1つ仕入れた情報で、一也を揺さぶって来た。
「君ら兄弟には身寄りが無いんだってね。いざという時頼れる親類も居ない、たかが保険医の男の元に嫁に行ったんじゃ苦労する。すみれちゃんの事を思うなら、僕みたいな相応しい相手に譲るべきだ」
彼の言葉を聞いた一也は、テーブルを力いっぱい叩き付け、椅子から立ち上がった。
その剣幕に思わずたじろぐ神田。
――おまえなんかに解ってたまるか!!!
言葉が上手く声にならず、泣きながら相手を睨む一也、そこへ保険医の一弘が、光流、忍、瞬を伴って、一也と神田の前に登場したの。
一弘は「君がどうしても僕らの結婚に納得がいかないと言うなら、当人のすみれを交えてキチンと話をしよう」と持ち掛けた。
一弘の申し出に、神田も「すーちゃんが幸せな生活をしてるか見極めてやる!」と意気込む。
勝負は再び持ち越しとなり、緑都学園の面々は店を出て行った…神田が座る席のテーブルに、自分達が注文した分のレシートを置いて。(ちょっと可哀想…)
しがない男子校の保険医でも、初恋の女性を奪われても、一也にとって一弘は、自分を私立校に入学させるまで育ててくれた、自慢の兄貴。
そんな兄貴の努力を知らず馬鹿にした神田を、一也は絶対に許す事が出来なかったのね。
一方の一弘も神田に対して静かに怒ってた。
彼の使命は弟の一也を泣かさない事、ブラコン兄貴として神田の事を許すわけにはいかなかったのよ。
終業式を終えるや、急いで自宅に帰ろうとする一也を、寮仲間達は適当な激励で送り出した。
蓮川家に電話した所、今晩あの神田が来るらしい、決戦はクリスマス…「俺達のすみれちゃんを、あんな奴に渡してたまるか!!」
勇んで帰宅した一也を、すみれちゃんの桜満開スマイルが出迎える。
長期休みに入っても、なかなか帰宅しない一也が、クリスマスに合わせて帰って来てくれた事で、すみれちゃんは超御機嫌。
一也より先に迎えられた神田は、一弘と対面する形で炬燵に入り、うんともすんとも言わない。
彼、すみれちゃんの全身から発される幸せオーラに当てられて、すっかり毒気が抜け落ちちゃったみたい。
神田の表情から敗北を感じ取り、痛快な気分を味わう一也だったけど、その彼をも奈落に突き落とす衝撃の発言が、すみれちゃんの口から飛び出したの。
「この間、病院に行って来たんだけど、私、夏には、お母さんになるんだってーv」
明くる日、一也はルームメイトである瞬の実家に電話して、冬休み中、彼の家にお世話になる事にした。
ちなみに瞬の実家は静岡の有名ホテル、成る程、部屋には困らなそうね。
それからまた数日経った頃、一弘から事情を聴いた寮長の光流が、一也の様子を心配して、瞬の家に電話して来たの。
光流の話では、神田君は、すみれちゃんオメデタのニュースに絶望し、アメリカに帰ったんですって…不憫ね。
瞬は、一也を自分の部屋に泊めて、今は大掃除を手伝わせてる事を、光流に報告。
不憫がる光流に、瞬は「すかちゃん(一也)が、何かしてた方が気が紛れるからって、進んでやってるんだよ」と説明。
瞬の話では、駅で迎えた時から、一也は暗い顔で、何を訊かれても答えないで居るらしいの。
すみれちゃんオメデタのショックは、周りが想像する以上に深刻の様ね…。
とは言え瞬からすれば、自分の所に来て、ずーーーっとクヨクヨされてたんじゃ、いいかげんウザったいわよねェ~。
見た目乙女な割に竹を割った様な性格の瞬は、一也の女々しい態度が我慢出来ず、ズバンと斬り込んだの。
「すかちゃん、すみれさんに一度でも意思表示した事有るわけ!?
言ってないなら後でグズグズ言う権利無いし、繊細ぶって友達に迷惑をかける権利も無い!!」
瞬から直球で正論をぶつけられ、言い返せずに蹲る一也…耳に届く除夜の鐘の音が、彼女との懐かしい記憶を呼び起こしたの。
――すみれちゃんに出会ったのは、中学三年になったばかりの、春の日曜だった。
英語が苦手な一也の為、兄貴が大学の後輩で英文科四年の彼女に、家庭教師を頼んだのだ。
週に一度、家に来てくれた彼女は、年上で美人なのに全く気取った所が無く、中学生の一也にも対等に接してくれた。
「二人で頑張りましょう!!」
何時しか受験の目的は、「兄貴と同じ学校へ」ではなく、「すみれちゃんと二人で頑張って合格する」事に変わって行った。
夏休みに入れば、水泳部の合宿に参加して居ない兄貴に代わり、ご飯を作って一緒に食べてくれたすみれちゃん。
鈍い子供だった一也は、すみれちゃんと兄貴の関係に、全く思いが至らなかった。
二人の関係に気付いたのは、冬が近付き、本格的な受験シーズンに入った頃――受験が終われば、家庭教師である、すみれちゃんの役目も終る…その事に気付いた一也は、思い切って告白しようか悩んでいた。
そんな時、すみれちゃんの方から告白してくれた。
「一也君…私の事…どう思ってる?」
「好き?ねっ、どうなの?」
「一也君、私…一也君のお家に、お嫁に来ても良い?」
でも、すみれちゃんが好きなのは、自分じゃなかったんだ。
兄貴が腹を決めた様に、二人の関係を話してくれた。
すみれちゃんが大学を卒業し、一也の受験が終わったら、結婚する積もりで居ると……家族として受け入れてくれるか、必死で見詰めるすみれちゃんの顔を見たら、一也は黙って頷くしかなかった。
除夜の鐘の音をBGMに、すみれちゃんの満開の笑顔が目蓋に浮かぶ――
年が明けて一月一日、一也は瞬に連れられ、海から昇る初日の出を拝みに来てた。
「それじゃ本当に、これで諦めるんだね?
もう家に帰りたくないなんて言わないね?
お兄さん達の間に赤ちゃんが産まれても喜べるね?」
矢継ぎ早に念押しして来る瞬に、しっかり頷く一也。
「まあ…良い機会だよね、区切りも良いし、これで良かったんだよ。これからは、すかちゃんも、もっと前向きに生きなきゃね!」、そう言って一也の肩を叩いた瞬は、その手を真っ直ぐ前方に伸ばし、波間を金色に染める朝日を指差した。
「さあ!今までの全ての蟠りを捨てるんだ!あの朝日に向かって!!」
「ばかやろーーーーっっ!!!」
旧年までの蟠りは叫びに籠めてサヨウナラ、1989年元旦、蓮川一也、新しい夜明けであった――
…失恋が少年を成長させる、まるで青春ドラマの様なラスト・シーンに、メリー目頭がじんわり熱くなったわ!
大晦日に紹介するのにピッタリなエピソードでしょう!
メリーも一也に倣って、蟠りを初日の出にぶつけに行こうかしら?
それじゃあここで第11曲目のクリスマス・ソングを紹介、元はスコットランド民謡だけど、欧米では年末恒例の歌ね――「蛍の光(Auld Lang Syne)」♪
日本でも紅白歌合戦の〆に歌われるわ
誰もが知る有名な歌でしょうけど、どんな歌か知りたい人は、こちらを参考にね。
それじゃあまた、お正月も楽しくクリスマス・ソングを歌いましょう♪
【蛍の光(Auld Lang Syne)】
蛍の光♪ 窓の雪♪
書(ふみ)読む月日♪ 重ねつつ♪
何時しか年も♪ すぎの戸を♪
開けてぞ今朝は♪ 別れ行く♪
止まるも行くも♪ 限りとて♪
互(かたみ)に思ふ♪ 千万(ちよろづ)の♪
心の端を♪ 一言に♪
幸(さき)くと許(ばか)り♪ 歌ふなり♪
…こんばんは、びょりです。
何とか年が明ける前に更新出来ました。
グリーンウッドは友人が嵌まってて、全巻揃えてたなあ。
当時、瞬が本当の女の子なら良かったのに…と残念に思ったもんだ。
今夜の写真は東京丸の内に飾られたクリスマス・ツリー。
今年は北欧をイメージしたそうです。
↑新丸ビルのクリスマスツリー。
↑丸ビルのクリスマスツリーは、ユーミンの「恋人はサンタクロース」の歌に乗せて、光の雪がクルクル舞う。
巨大な毛糸玉で編んだツリーをイメージしてるもよう。
↑丸の内ブリックスクエアのクリスマスツリーは北欧の御守りをイメージしてるとか…クリスマス・ツリー?
↑一番クリスマス・ツリーらしかった、丸の内オアゾのクリスマス・ツリー。
そして記事一番上の写真は今年の9月に撮影したハウステンボスでの朝日…初日の出じゃなくって済みません。
それでは皆様、良いお年をお迎えください。