瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

インターバル1

2010年09月10日 23時19分46秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
「ゾロナミ編を始める前に後書きめいた物を~」とか何とか前回書いといて、気が付いたら1週間近く経ってしまいました。(汗)
しかしただ休んでいた訳でなく、話の所々を修正したりしてたのですよ。
長く書いてると辻褄の合わない箇所がちょこちょこ在るんで。(汗)
10月下旬には完全版がお目見えする予定なので、宜しければまたその頃1からお読み直し頂きたい。

お礼が遅れてしまいましたが(御免なさい)、連載について感想メールを下さった方々、有難う御座います。
返事は9/14迄に必ず!
それと連載とは無関係ですが、フォトチャンネルにニコちゃんマーク??を付けて下さった方、有難う御座います。
てか何時の間にマークが付けられるようになったんだフォトチャンネル
どうせならデジブックみたく、ウィンドゥサイズで観られるようになって欲しい…。


さてこっからは連載の後書きを、連載用にリストアップしつつも、上げられなかった写真と共に。



↑パレス・ハウステンボス前庭の紅葉、見頃は11月。
緑の芝生と赤い葉っぱのコントラストが芸術的です。


振り返ればほぼ1年を費やした、長い長い連載で御座いました。
「こんなに長く書く必要有ったの?」という御意見も有るに違いない。
そしてそれは非常に正しい。
ぶっちゃけテンポ良く起承転結纏めるなら、6話位で終えられた話ですよ。
つまり13話分無駄って事で、しかしその無駄な部分こそ、最重要だったりするから仕方ない。




↑運河を滑るカナルクルーザー、背景は紅葉に彩られた高級別荘地区ワッセナー。


例えば「湯煙混浴露天風呂殺人事件」における、混浴風呂での美人が胸ポロリシーン。
推理サスペンス的見方からなら全くの無駄、作品のレベルを下げてしかいない。
だが番組のプロデューサーが最も見せたいのはそこなのである!
無駄じゃないのである!

観光地が舞台の推理サスペンスドラマって、半分は無駄なシーンで出来てると思う。
例えば長崎を舞台に連続殺人事件が勃発、なのに刑事は訊き込みの途中で、呑気にカステラ食べてお茶してたり。
番組のプロデューサー(とスポンサー)的には、クライマックスと同等、もしくはそれ以上に注目させたいシーンなのだと思うよ。(笑)




↑只今休業中(ひょっとしたら復活有るかも?)ホテル・デンハーグ館内ティーラウンジの「ティークリッパー」。
08年クリスマスシーズンに撮影した物かと思われ。
サンルームの様に硝子張りの店内からは海を見渡す。


このシリーズもそんな感じで、無駄こそ楽しんで頂きたい。
という訳で続くゾロナミ編でも、何やかやとパークの場所や物が登場する予定~。




↑ヨットマリーナ近くに在る見晴らし場所、ウォーターゲート「スネーク」。
夕方からはオレンジの照明が灯され、更にロマンチックv


それとこのルナミ編では、人間臭いルフィを目指し、書いてみた。
原作でウソップと喧嘩した時のルフィの表情は衝撃的で、「ルフィも人の子だったか…」と失礼にも見方を改めたのです。(汗)
作品中でルフィは確かに太陽。
けどそんな奴だって、大事な人が離れてくと、弱さを見せるのだなと。
10巻でのルフィの台詞で、「おれは助けてもらわねェと生きていけねェ自信が有る!!」っつうのが在るんだけど、自分これが彼の台詞中で2番目に好きなのです。
ちなみに1番はドラム王国編で出て来た、「おまえなんかがヘラヘラ笑って、へし折っていい旗じゃねェんだぞ!!!!」。




↑晩秋のフォレストガーデン、湖に夕陽が落ちる頃。



↑かつては夜毎花火が打ち上げられてたオレンジ広場。


終了までに約1年費やしたもんで、話の中で出したパークの風景に、大分フィクションが含まれてしまっている。(汗)
多分ゾロナミ編も1年間位連載してるかと。(汗)
かつて連載してた異界百物語よろしく、全て完成するまで4年の歳月をかけるかもしれない…。
気の遠くなるよな連載で、読んで下さる方には申し訳無く、しかし最後までお付き合い頂ければ嬉しいです。




↑冬季のイルミネーションスポットの1つ、光の教会。



↑港街近くの深夜スポット、アムステルフェーン。
…なんかこの写真、前にも上げた気がする。(汗)


ところで話書く為に浅くヨットについての本を読んだり、ネットで検索してみたりしたんすが、ヨットが歴史に初めて登場するのは14世紀のオランダとされていて、当初は海賊を追跡したり、偵察等に用いられてたそうな。(ウィキ情報より)

それと「ヨットマン」っつうのは、ヨット乗りを単純に指して呼んでんじゃない。
「誇り高きヨット乗り」こそ、そう呼ばれるんだそうな。
ワンピース的に言うなら、「ピースメイン」に当たる存在ですかね~。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

君と一緒に(ルナミ編-その19-)

2010年09月04日 15時23分40秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】





オレンジ広場には1~2分もかからず到着した。
おっさんにお礼を言って降りたそこには、すでにものすごい数の人が集まっていた。
昼間はどこもガランとして見えたのに…いつこんなに増えたんだろう?
集まった客はクルクル色が変わる三角ツリーの前で写真を撮ったり、フードスタンドであったかい食いもんや飲み物を買ったりしてた。

腹がグーグー鳴る、夕メシ食ってねーもんな。
20時過ぎても食わずにいるなんて、人生初めての経験だ。
とりあえずハンバーガー売ってるスタンド見つけたんで、テリヤキパインバーガーってのを注文したら、マクドのハンバーガーの3倍は有るんじゃないかってボリュームでビックリした。
その分高ェけど味もなかなか、ハンバーグとパイナップルが意外と合う事を初めて知った。
3口で食い切り、ソースの付いた指をベロベロなめる。
まだ腹一分目にも満たない、もう2~3個食おうかな?

「…落ちこんでても腹は減るんだなー」

しみじみ思う、食ってる間はナミの事を忘れてられた。
着いた最初こそ集まってる奴らの顔を、かたっぱしからのぞいて廻ったけど、嫌な顔されるし、疲れたんで止めた。

俺ばっかり何でこんなさがし廻らなきゃなんねーんだ!
もう知らねー!ナミなんか独りで勝手に遊んでろ!
やけ食いだ!土産分つぎこんで食ってやる!
特にゾロ!サンジ!おまえらにはキーホルダー1個だって買って来てやんねー!

ムカムカしてる俺の隣で、女3人組が冬なのにソフトクリームを注文する。
渡されたソフトクリームは、ハンバーガー同様、普通より2倍はビッグなサイズだった。
よーし、俺も買うぞ!何にすっかな?バニラじゃありきたりだし…

――その時、風に乗ってミカンのにおいがした。

「そーだミカンが良い!ミカン味のソフトくれ!!」
「みかん??…済みません、みかんソフトってのはメニューに無くて…」
「え??でも今においがしたぞ…?」

店員の男が困った顔を見せる。

風に運ばれて来るミカンのにおい。

においを辿って後ろを振り向いた。

「――ナミ…!!」


広場の在る港街、目の前には海が広がってる。
木造船の甲板に似た板じきのデッキの正面には、赤くライトアップされた帆船がけーりゅうされている。
帆船の周りに集まった大勢の人達、どうやら花火は帆船後ろの海から打ち上げるらしい。
花火を待つ人ごみの中に、ナミは独りで立っていた。





ナミの体からは甘酸っぱいミカンのにおいがする。
子供のころから食い物のにおいに敏感な俺は、はぐれた時このにおいを頼りにさがし出した。





「ルフィ…!!」
「…やっと見つけた!!」

後ろから肩をつかんだ瞬間、ナミはビクッと体を震わせた。
目を真ん丸にして驚くナミに、俺は得意満面の笑顔を返す。




――真っ暗な海の向うに光が幾つも瞬いてる。


――なのに船乗りは灯台の光を見分けられる。


――それは灯台が船乗りの方を向いて、光ってるからさ。




「光じゃなくて匂いを辿って来たんでしょ?方向オンチのクセに、鼻は頗る利くんだから…」
「大勢の中から見つけ出した事には違いねェだろ?やっぱナミは俺の灯台だ!俺がヨットマンになるために絶対必要なんだ!」
「悪いけど他を当たって。私程度に地図が読める人間なら、世の中にごまんと居るわ」
「俺は、ナミじゃなくっちゃ嫌なんだ!!!」

突然広場中のイルミネーションが消えた。
集まってた奴らがザワザワ騒ぐ。
英語で開始のアナウンスが流れ、重々しい鐘の音が響いた。
音楽が始まる、海から何本ものレーザー光線が走った。

「俺はナミが言うような『太陽』じゃねェ。独りじゃ輝けねェんだ」
「輝く為には他の人の力が要るって言いたいの?だったら探せばいいわ。私は駄目。ヨットに乗ってるあんたを待ち続けるなんて出来ない。かと言って一緒に乗る事も出来ない…!」
「けど俺にとっての灯台はナミだけだ。ナミが俺の方を向いて、光って導いてくれなきゃ、俺はどこにも行けない…!」
「灯台になんかなれない…!!あんたを一生導いていけるほど私は強くない…!!目の前に居た母さんも助けられなかった!!」
「でも俺の事を助けてくれた!!!」

――パパパパパンッ…!!!!と、夜空に連続して花火が開いてく。
暗い空からキラキラ光って舞い落ちる。
泣いてるナミの目が、鏡になって光を反射した。


「……太陽じゃないって言うなら……ルフィ、あんたは花火よ!パーン!と飛び出して、華々しく散って…」
「…あのな、えんぎの悪い例えすんなよ」
「だって……」
「俺は太陽でも花火でもねェ!ちゃんと陸に戻って来て、おまえと一緒に生活する!海上でずっと暮らしてくつもりはねェんだ!」

次々と打ち上がる花火、雲とけむりがレーザーを反射する。
まるで夜空いっぱいにスクリーンが広がってるみたいだった。

「花火は打ち上げたら空で開く…けど人間を打ち上げたら、元の姿のまま帰って来るんだ!――こんな風にな!!」
「ちょっ!?何する積り!?止め――キャアア…!!!」

腕に抱きしめたナミを、空に向かい放り投げる。
悲鳴を上げるナミの後ろで、花火がドーン!!と打ち上がった。
落ちて来たナミをキャッチしては、また放り投げる。
何べんも何べんもくり返した。

「実験してみろ!俺だって打ち上げたら必ずおまえの元に帰って来るから!!
 太陽じゃねェ!!花火でもねェ!!俺はおまえと同じだ!!」

「ご…ごめん!!もう言わないから…!!恥ずかしいから止めて!!お願い――キャアアアア…!!!」

「だったらプロポーズ受けるか!?受けるって約束したら止めてやる!!」

「そ…それは…!!――アアア…もう許してェェ~~!!!」

ナミが泣きながら止めてと叫んでも、俺はタカイタカイをし続けた。
花火と一緒にポーン!ポーン!とナミが打ち上がる。
光る雪を浴びて落ちて来るナミはきれーだと見とれた。


「ナミ!!俺…1人で廻ってて思い知ったんだ!!
 独りの俺はすっげー弱いって!!
 ナミが居なくなっただけで、自信も何かも失くしちまった!!
 だからナミ……俺を助けてくれ…!!!」


腕にキャッチしたナミをしっかり抱きしめる。
ナミが俺の首に腕を回した。

「……私が……あんたを…?」

「…おまえがピンチの時は必ず俺が助ける!!
 だからナミ…俺がヨットマンになるのを助けてくれ…!!」

ほほに、涙でぬれたほほが、ぴっとりと触れる。

「…解った……あんたを助けてあげる…!」

いっそう強く首に巻きついた腕。
俺も腕に力をこめてナミを抱いた。


ワアァァ…!!と大きな歓声が上がる。
驚いて空を見たら、ちょうど花火が終わったトコで、金色の光がゆっくりと落ちながら、かき消えてく。
なぜか周りの観客数人が、俺達の方を向いて、はく手をしていた。







2そうのカヌーが光る水面をすべってく。
メガネ橋の下をくぐり、遠ざかってく様子を、橋の上で並んで眺めてた。

「あれが『ナイトカヌー』…観てるとロマンチックそうで、乗りたくなるわね」
「だったら明日乗ろう!俺も乗りてェ!」

河岸にたれ下ってるイルミネーションが、水面に映って瞬いてる。
「光の運河」って名の通り、まるで金色の河が流れてるみたいだった。

「それよりも先ずヨットに乗るんでしょ?私も乗るからフォローお願いね!」
「え?ナミも?乗ってくれんのか!?」
「恐いけど…待つより一緒に乗りたいもの。勇気出して踏み出すわ!」

にっこり笑って俺の両肩につかまる。
顔が近づいて来た。
唇に唇が触れる――やわらかい…甘い息が吹きこんだ。
味わってたのはわずかな時間で、すぐに離れる。


「………キスしてあげたってのに、どうしてそんな不満そうな顔してるの?」

暗くてもナミのほほが赤くなってるのが良く判る。

「だって…彼女からキスされるのって…男のメンツ丸つぶれじゃん!」

最初こそあっけにとられてた俺も、ジワジワと顔が熱くなってくのを感じた。
ナミがけらけらと笑い声を立てる。
白い息をやかんの湯気みたくポッポッポッと吐き出した。

「…待っててもあんたからしてくれないんだもん。一緒に部屋に居ても、押し倒そうともしない。あれこれ不安を抱えて、それでも覚悟を決めて来たってのに…肩透かし食らった気分よ」
「俺だって不安だった…抱きたくても、ナミがどう思ってるのか解らない内は出来なかった」

嫌われて、逃げられるのが恐かった。


「……不安なのはお互い様か」

手袋をはめてない手が、ナミの手袋をはめた手の中に包まれる。
ゆっくりもみほぐされると、温かくて気持ち良い。
のぞいた瞳の中に、金色の光でふちどられた俺が立っている。
肩をゆっくり抱き寄せ、今度こそ俺の方からキスをした。


「…初めて同士、今夜は頑張ろう♪」

唇を離したナミが明るく笑う。
その言葉を聞いた俺は、重要な事を思い出した。

「あ~~~~~~~~~~~~!!!!!」

「…!!――い…いいきなり何よ急に耳元で大声出して…!!!」
「コンドーム!!――買うの忘れた…!!」

ショックで足から力が抜ける。
がっくりとその場にくずれた。

「ば…馬鹿ッ!!阿呆ッ!!どうしてそんな重要な物…の前に、そんな事大声で言って、誰かに聞かれたら恥ずかしいでしょーが…!!!」
「…ナミ、どうすりゃいい?」

我ながら情けない声でたずねた。
ナミがちんつーな表情で「ハァーー……」とため息を吐く。

「…此処、薬局が有るから買えると思う」
「本当か!?やったー!!すぐ買って来る!!」
「…でも、今日はもう営業終ってると思う」
「マジかよ!??チクショー!!!」

いっきいちゆーする俺の正面にナミがかがむ。
ニヤリと意地悪な笑みを浮かべて言った。

「しょーがないから初Hは明日ねv」
「えええ!!?そりゃねーよナミ!!しよーぜ!!」
「駄目ェー♪させてあげなーい♪」
「いーじゃん付けなくても!!どーせ結婚すんなら出来てもOKだろ!?」
「駄目ったら駄目ェー♪根無し草な男相手に、無謀な真似出来るか!」
「せっかく一緒に泊まるってのに、何もしないなんてつまんねーじゃんか!!」
「うっさい私だってがっかりしてるんだから!!用意しなかったあんたが全部悪いんでしょー…!!」





次の日の早朝5時、ウソップから「セイコーしたか!?」と、メールが届いた。
それを読んだ俺は、「昨夜は予行!今夜が本番!」と返信した。






【終わり】



…ほぼ1年間連載にお付き合い下さった方、有難う御座いました。
お陰様で漸く書き終わる事が出来ました。

ダラダラ書いてた間に、ハウステンボスは大分変わりましたが(汗)、風景は変わらず美しいままです。
是非何時か遊びに来て下さい。

日を改めて連載の後書き的な物をUPする予定、その後ゾロナミ編を性懲りも無く始めようと考えてます。
ルナミ編の後に読むのは複雑かと思いますが、何となく世界が重なってますんで、続けてお楽しみ頂ければ嬉しく思います。
折角なんで(何がだ)ゾロナミ編は、ルナミ編の始まった9/16~開始する予定です。
出来なかったら御免なさい。(汗)

最後に…この回に登場するハンバーガースタンドは「ビッケン・ビッケン」、詳しくはまったりさんのブログを御参考にされて下さい。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

君と一緒に(ルナミ編-その18-)

2010年09月03日 20時44分08秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】





宮殿と庭に気を取られてるすきに、ナミとゾロの行方を見失っていた。
立ち止まって途方に暮れてた俺を、後から来たカップルが追い越してく。
カップルは門から続く道をまっすぐ進み、宮殿の中へと消えてった。

反射的に後を追っていた。

入口らしい扉を開けると他にも人が居て、どいつも中は素通り、外へ出て行こうとする。
入ったのに、もう出ちまうのか?
不思議そうに眺めてたら、スーツ姿の女が笑顔でそばに寄って来た。

「庭園は20時半まで入場を受け付けています。どうぞ御覧下さい♪」

ここの案内係らしい、すすめられた通り、2重になってる扉を開けて、外へ出る。

驚いた――庭中いっぱい、イルミネーションでキラキラだ!

奥には神殿なんかで見る円柱が建ってて、中心から緑のライトが立ち昇ってる。
その前にはライトアップされた噴水に花だん、ツリーやちょーこく像が点々と置いてある。
庭全体をグルッと囲んでる青白い光のアーチ。

すすめるだけあるなあと感心した。
門から入って最初に見た星くずの庭以上に、模様が複雑できれーだ。
奥まで行ってみようと階段を下りかけた所で、しゃべり声が耳に入り振り返った。

宮殿2階のテラスに人がいっぱい立ってて、庭園を見下ろしてる。
テラスに続く階段を探して駆け上った、けど集まった人の中に2人は居なかった。
がっかりして下りようとした瞬間、庭園のイルミネーションがパッと消えた。
ビックリして足が止まる、集まってた奴らがますますざわめいた。
カメラを構えて何かを待っている。
何が始まるんだろうと、テラスから身を乗り出した時だ。
音楽がドーンと鳴り響き、庭中のイルミネーションがいっぺんに瞬いた。

まるで姿の見えないオーケストラがそこに居て、生で演奏を聴いてるような迫力だ。
音楽に合せて庭のイルミネーションが、どんどん変わってく。
ウェーブでもしてるみてーに、点いたり消えたり。
集まってた奴らが歓声を上げる。
俺もナミに写メを送ってやろうと、ケータイを取り出した。
知らせてやれば飛んで来るかもしれない、並んで一緒に観たかった。

シャッターボタンを押す寸前、指が止まる。

――送った写メを、ゾロと一緒に観るナミが、頭の中に浮かんだ。

ためらってる内に音楽は鳴り止み、イルミネーションは元の止まった状態に戻っちまった。






『どうした?ハネムーン中に電話よこしやがって…のろけでも聞かせようってのか?なら切るぞ』
「ゾロ…帰ったら何も言わずに殴らせろ」
『はあ??何でだよ!??』
「いいから殴らせろ」
『馬鹿野郎!!!せめて訳を話せ!!聞いても殴らせる積りは更々無ェが!!』
「わけなんか話したくねェ。…けど俺は今、おまえを殴りたくてしかたねェんだ!」

電話の向こうでゾロが『はぁーーーー…』と、長いため息を吐いた。
そのまま黙る、こっちもケータイを耳に当てたまま、無言で待った。

『……プロポーズはしたのか?』
「した」
『で…失敗したわけか』

それについては認めたくなくて、口をつぐんだ。

『あのな…八つ当たりだったら他の奴に当たれよ。眉毛巻いてる奴なんか、打たれ強さからいって適任だと思うが?』
「サンジじゃなくて、俺はゾロを殴りてェんだ」
『だから何故俺なのか、訳を言え!!!』
「だからわけは言いたくねェ!!!…ただ、間接的でも、おまえは俺に殴られても文句を言えねェ事したんだ!!」
『間接的にも直接的にも、てめェの失恋に俺は一切関わっちゃいねェ!!!』

そう怒鳴った後、またしばらく沈黙が続いた。

『………悪ィ…失恋なんて身も蓋も無くはっきりと…傷口に塩塗っちまったな…』

間を開けて聞えて来た声は、さっきよりじゃっかん優しめだった。

「いーよ。ゾロに方向感覚とデリカシーを求めるのは、無駄な無い物ねだりだって解ってるし」
『…どうやら塩じゃ足りねェな。ワサビ塗るか?――ってのはさて置き、今こうして俺と電話してるって事は、彼女は傍に居ねェんだな。喧嘩して別れたのか?』
「ケンカじゃねーけど……泣いてどっか行っちまった」
『…居なくなったのは今か?前か?ホテルには行ってみたか?部屋に荷物置いたままなら、まだ希望は有る』
「部屋には帰れねェよ。カードキーは向うが持ってるんだ」
『フロントに頼めば良いだろ』
「けど…もしも荷物が消えてたらと思うと……恐くて確認出来ねェ」

ケータイも鳴らしてみた、あんのじょう電源が切られてた。
このまま2度と会えない事を想像したら、全身からスーッと血が抜け出てくように感じた。

『場内に呼出アナウンス流して貰うってのは?』
「それやって出て来ると思うか?」
『自分から行方くらましたんじゃ、望み薄だろうな……』
「ゾロ…俺…どうしたら良い……?」

また、『はぁーーーーーーーーー……』って長いため息が聞えた。
今度のは倍長い。

正面の噴水が一際高く立ち昇る、奥には黄金色の宮殿が建っている。
後ろにはさっき奥に見た、神殿に建ってるような円柱が6本。
反対側から眺める庭園もきれーだった。

見とれてたら明りが消えた。
再び音楽が始まる。
庭園のイルミネーションが、それに合せて波打つ。

『何だ?この音楽…まさかオーケストラでも聴いてんのか?』
「違う。…よく解んねーけど、ショーみてーだ」
『同じだ!観てる場合か!!休んでねェで捜せよ!別れたくねェんだろ!?』
「解ってるけど…どこさがせば良いのか……」
『知るか!てめェの恋路に俺を巻き込むな!!殴られるのも御免だ!!とにかく自力で捜せ!もう2度とかけて来んなよ!!』

言いたいだけ言って、ゾロはブチッと電話を切った。
いつの間にかカップルが数組、隣で観ている。
はしゃいで写真を撮り合ってるのを見てたら、気分がムカムカ悪くなった。

庭園をU字に囲む光のアーチ、近づいたらそれは木がからまって出来てるトンネルだった。
枝に電飾を編みこんでるみたいで、庭園に下りた俺は中を通り、反対側まで来たわけだ。
円柱が建ってる所で、トンネルはいったんとぎれる。
そしてまた始まって、宮殿の前まで続いてる。
つまりトンネルをくぐってけば、自然と庭園を1周する。
周りを気にせずいちゃついてるカップルを残し、俺は来た道と同じ様に、トンネルをくぐって宮殿に戻る事にした。

間かく空けて開いた窓から庭園がのぞける。
音楽が鳴り止み、イルミネーションも静止した。

天井から星がこぼれ落ちる、そう見える。
トンネルの果てまで続く光、吸いこまれて宇宙にでも出るんじゃないかと恐くなった。


俺が見たナミもゾロも、俺の知ってるナミとゾロとは違う。
暗かったけど『ナミ』のカッコは違って見えた。
半そでのシャツを着ていた。
けど…ナミなんだと思う。

俺が知らない世界のナミだ。
そして俺が知らない世界で、『ナミ』は『ゾロ』や『サンジ』と付き合ってる。
違う世界の同じ場所でデートしてるんだ。
考えたらしっとで体が爆発しそうだった。

目の前をナミとゾロが並んで歩いてるイメージが浮かぶ。
吸いこまれるみたいに消えてく2人――わめきながらトンネルを駆け抜けた俺の前には、見知らぬカップルが顔を引きつらせて立っていた。



宮殿を通り抜けて星くずの庭に出る。
門の方へ歩き出した所で、左から潮のにおいが風に運ばれて来た。

振り向いてにおいを辿る、もう1つ門を発見した。
くぐって下へと続く道を下りてく。

目の前には真っ黒な海。
月は雲にかくされ、空には星だけが瞬いてる。
他は水平線近くに漁火が点々と見えるだけ。
ズズズズ…!!と波が音を立てて岸に近づく。
ザパァァン…!!!とぶち当たって、またズズズズ…!!と近づいて来る。
暗い中に生き物がうごめいてるみたいで不気味だった。


――航海は独りじゃ絶対に出来ない事なんだ。


シャンクスが言った通りだ。
ナミの母ちゃんをのみこんだ、黒い壁みてェな波。
今ヨットを浮かべて海へ出たら2度と戻って来れねェ。
恐くて体がガタガタと震えた。






「けどシャンクスは独りで航海して、世界一周に成功したんだろ?」
「独りじゃねェよ!衛星電話を使って、沢山の人達に支えて貰ったから、成し得た記録だ!俺1人だったら出港3日目に出くわした嵐に打ちのめされ、即お陀仏だったろうさ!」
「へー、海の上でも電話は通じんのか!出前頼んだら届けてくれっかな?」
「蕎麦やラーメンは無理だが、ピザは届けてくれるぜ!注文後30分で届いた時には感動したもんだ!」
「早ェー!!ヘリで届けてくれたのか!?」
「ダハハハハ…!!信じやがって馬鹿が!!無理に決まってんだろ♪」
「てめこの大人のクセに子供だましやがって!!ガッカリしただろー!!」
「…しかしま、海に出た後陸に戻ると、所詮は人間も足の付いた動物、地面から離れて生きてはいけねェもんだと思い知るぜ。
 出前は届くし、枕は落ちねェ…芯からホッとするのさ!
 だからなァ、ルフィ……」
「ん?」
「灯台を見付けろよ!」
「灯台?どこのだ?」
「比喩だ!必ず陸に戻る為に、何時でもてめェに顔を向けて、光ってる女を見付けろって事さ!」
「シャンクスには居るのか?」






照れ笑ったシャンクスの顔が、岸にぶち当たる波の音で、はじけて消えた。
海岸に沿って続く細い道に、俺は独りで立っていた。

道の先にベンチが見える、夕方『ナミ』が『サンジ』にひざまくらしてやってたトコだ。
また現れたら…と思うと、見るのが恐くて、目をつぶり走り抜けた。


人が多くて明るい港に出ていた。
その向うにキラキラ輝く高い塔がそびえてる。

バスん中で案内してくれたおっさん、展望台が有るって言ってたな。
高い所からならナミを見つけられるだろうか?
頭に浮かんだ名案を頼りに、橋を渡って塔を目指した。





「――って見つかるわけねェか!」

5階展望台の窓から見下ろした街並は、まるでブロックで組み立てたオモチャみてーだ。
建物より小せェ人なんて、識別出来るわけがない。
昇って実際に見るまで気づかなかった俺はバカだ。
せめて明るい昼間だったら、望遠鏡使って発見出来たかもしんねェけど。
高いビルの屋上にたいてい置いてある望遠鏡、1回200円のそれは、すでにしめ切られた後だった。

「使ったって見つかりゃしないわよ!」

ペカン!!ってナミに頭を叩かれた気がして後ろを振り向く――エレベーター横で立ってる案内係のおっさんしか居なかった。

俺とそのおっさん以外、マジで誰も居ない。
いくら最終入館ギリだからって、もちっと居てくれよ!
さびしーじゃねェか!

「こんなにきれーな夜景が観られるのに…」

建物全部がキラキラだ、街並を区切ってる運河まで輝いてる。
真っ暗なのは森と海が広がってる部分くらいだ。
ここからなら街全体が見下ろせる、想像以上の広さだった。
どこをさがせば良いのか見当もつかねェ、ヘナヘナと床に座りこんじまった。

「つまんねーー……」

何をしても…観ても…つまんねェ。
独りで居るのがこんなにつらいなんて知らなかった。
ヨットマンになれる自信も失くしてた。

「…何が『太陽』で…何が『引きつける』だ…!
 誰も寄って来ねェじゃんか…!」

ナミが居なくなっただけで、こんなに弱っちくなっちまう俺だぞ。
おまえが思ってるように無敵じゃねェんだ。
弱点だらけの人間なんだからな。

「…あの…あの…お客様…!御気分でも悪くされましたか…?救護室へお連れ致しましょうか?」

案内係のおっさんが心配そーな顔で近寄って来た。
気分は悪いけど、体が悪いわけじゃない。
めんどーかけるのは悪ィんで、あきらめて降りる事にした。

こうなったらゾロの言った通り、ホテルに戻ってみよう。
部屋に荷物が有ったら、そこで待つ。
無かったら…その時は……




エレベーターを降り、運河にかかる橋を渡った所で、目の前をオレンジ色のバスが横切った。

「おい!!そこのバス停まれ!!乗ります!!乗りまーす…!!!」

手を挙げて追い駆ける、バスは港街へとかかる橋の手前で停まった。
扉を開けて、中から運転手のおっさんが顔を出す。

「このバスは終点スパーケンブルグ行きですが、宜しいですか?」
「終点?俺、ホテルに戻りてェんだ!ホテルアム…アム・・・アム何とか??」
「ホテル・アムステルダム?」
「そーそれ!!そこまで乗せてってくれ!!」

返事を聞くより前に乗りこむ、運転手のおっさんが困った顔を見せた。

「…済みませんがホテル・アムステルダムには、このバスは停まらないんですよ。それにホテル・アムステルダムへは、今このバスが走って来た通りを歩けば3分もかからずに…」
「あれ?おっさん、もしかして昼間乗った――」

メガネをかけ、苦笑ったその顔には見覚えが有った。
来て最初に乗ったバスの運転手をしてたおっさんだ。
俺の顔をじっと見て、おっさんも思い出したのか、にっこり笑った。

「ああ、今日入国されたお客さんですね!…お連れさんは?」

俺が黙って目をふせちまった事から、触れるべきじゃないと覚ったらしい。
おっさんまで気まずそうに黙り、他に誰も乗っていない車内に、エンジン音だけが響いた。

「………居なくなっちまった」
「居なくなった?…逸れてしまったんですか?」
「どうやってさがしたら良いか解んねェんだ…」
「携帯はお持ちでないんですか?」
「持ってるけど、向うが電源切っちまってる…」

また会話がとぎれた、エンジン音で体が振動する。
窓に映るイルミネーション、教会の鐘が「サンタが街にやって来る」を演奏した。

「…オレンジ広場で待ってみたら、どうでしょう?」
「オレンジ広場??」

首をかしげる俺に、おっさんはにっこり笑って教えてくれた。

「港前の広場の名前ですよ。お客さんが言った、乗れない用無しの帆船が繋留されてる」

思い出した!何とか号をけーりゅうしてる広場だ!
セグウェイに乗って廻った。
今日何度も通ったのに、名前はすっかり忘れちまってた。

「後30分もすれば、そこで花火が始まります。この街に来た人は、殆ど観に集まりますよ!」

そうだ、1日の最後に花火を打ち上げるって言ってたっけ!
ナミも観に来るかもしれない!
名案に何度もうなずくと、おっさんはハンドルに向き直り、扉を閉めた後、バスを発車させた。









…パレス後庭のイルミネーションについてはこちらの記事を。
15分毎に5分間と短いですが、1度観たら忘れられないショーです。
ちなみにハウステンボスでは迷子アナウンスはかけません。
理由はTDRを始め他のテーマパークと同じで、雰囲気を損なうから。
勿論係員に頼めば、ちゃんと捜してくれますよ。

昼間アレキサンダー広場辺りを歩いていたら、ドムトールン展望台からでも人を識別出来る。
感動したのは運河の底に走るまで見えた事、なんて澄んだ河の流れ!

残念だけど、現在ハウステンボスでは花火を毎夜打ち上げていない。
ただ近く花火師競技会が開催される。(→http://www.huistenbosch.co.jp/event/summer2010/festival/index.html)
久々の海上花火大会、観られる人はラッキー♪

そして次回(漸く)連載最終回!明日必ずUPしますんで~!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする