kotoba日記                     小久保圭介

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武者小路君はモヒカンにした

2020年03月22日 | 生活
湯屋に行くと
疲れがとれる

ただし
流行病には注意する
浴場は湿度が高いので
鼻の粘膜が湿ることこの上なし
対面は避ける
距離を取る
武者小路君がしゃべる時
わたしは顔をあらぬ方に向け
話だけは聞く
そしてあらぬ方を向き
答えては笑う

問題はバスと脱衣所
ところが
もう客足が薄い
間隔をあけて
武者小路君とも
距離を取って
バスの席に座る
勿論
マスク着用
脱衣所も極力マスクを最後までして
服を脱ぐ
着る時もマスクを最初の方にする

湯屋で寄ってはいけない場所は
飲食店と休憩所のスペース
もちろん
わたしも武者小路君も
素通り

岩風呂から湧き出る
天然温泉を背中から浴び
武者小路君は言う
「気持ちいいっすね。最高っす」
最近
髪型を奇抜この上なくした武者小路君に理由を訊いた時だった

「ネイティブアメリカンのスピリットでいこうと思って。髪型からですけど」
と言って
モヒカンにした武者小路君

湯船に入ると
トサカが折れるというか
ワカメが頭に乗っているようになるのだけれど
男前だから
どんなふうでもサマになるから不思議だ
「もうすぐスカーレット終わっちゃうんですよ、スカーレットロスになりますわ」
「はあ?」
と訊く
どうやら朝ドラの話である

そういえば以前
陶撃ェ好きで云々と言っていたので
思い出した
「ああ、連ドラね」
「熱いっすね」
「え」
「もう熱いっす」
あっ、湯船の話ね

武者小路君は主語が欠落していて
話が途中から他に変わっているので
内容がわからなくなる時は多々
確かに岩風呂から湧き出る天然の湯は
温度が高い
そんで
いつものぬるい炭酸の湯へ移動
わたしは言った

「スカーレットっていうと、なんか宝塚みたいなイメージしかないんだけど」
「小久保さん、違います。スカーレットっつーのは、色です。橙色っていうか赤っていうか」
「緋色(ひいろ)?」
「あ、それ! それっすわ! 緋色! ヒーローじゃねえっすよ!」
「あはは」

一応笑っておいた

武者小路君は声が大きいので
近くのお客さんに丸聞こえだ
けれど
みな聞いて聞こえぬふりをするのが常
武者小路君は湯気でモヒカンが唐黷トいるにも関わらず
ほぼスキンヘッズなので
『ヤバイやつ』的に見られることが常

「武者小路君、声が大きいよ」
「あ、すいません」
と小声になって
ゆったり湯に浸かって
「はあー」とか言って
唸っている

いつだったか
湯屋で
武者小路君が大声で
「コロナなんて正露丸飲めばなおるんじゃねえんですかねえ。殺菌作用あるし」
と半分冗談半分本気で言ったものだから
さすがにその時は
本気で
たしなめた

まあ兎にも角にも
空は青いな
ねえ
武者小路君



コメント
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