kotoba日記                     小久保圭介

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山をゆく人

2020年01月14日 | 生活詩
君は歩いてゆく
一人で山の奥へ
道を進み
岩を登り
裸木の橋を渡り
川の音を耳に留め
写真を撮る

君は胸に心を持って
背後に残してきた人たちを思い
時の記念を作るため
もっと奥へと
もっと高くと
歩いてゆく

自分にはいったい
何ができて
何ができないのか
可能性という科学用語ではなく
得体の知れぬ混沌の道を
ただ真面目にコツコツと歩いてゆく

空を見る
そこは青であったり
グレーであったり
真っ暗だったりするのだけれど
常に君の上にあり
常に君を見ている
見守っているのは
空だけじゃない
前世を生きた人々の目が力が
君を守る

越えたい
君は泣きながら
笑いながら
越えたいと思うのだ
何を
と問う
自分を
まさか
彼を
違う

君は気づく
越えたいと思っている時は
越えられないことを
ぬるぬるした岩に手を付き
慎重に前に前にと進んでゆく
この努力を誰が知ろう
誰が見よう
誰も知らず
誰も見ず
ただ
君の魂が
一歩の重さを
知り
見ている
それを空の上から
誰かが見ている

夜になったら
君はテントを張って
眠る
けれど
獣の気配に怯え
君はなかなか寝つかれない
君はあの人を思う
あの人の笑顔と
短い言葉を思い出す

朝は来る
誰のためではなく
もちろん
君のためでもない
光はあまねく照らし
木も石も川も
風もぜんぶぜんぶ
照らしている

世界の中の山奥の一点に
君は立ち
小便をする
そしてまた歩き出す

帰りたい
思う
帰りたい
思う

頑張れ
君は自分の名前を発する
その時
自分がまるでアホウなことをしている
と笑いもするけれど
同時に
自分はこの世の中で
たった一人しかいない
かけがえのない「存在だ」
と思い
「存在」なんて
どこで覚えたばかやろう
と笑っては
重い荷物を背負って
君は
歩く
振り向きながら
確実に前に進む
2センチでも前へ

答えはいつ出るだろう
君は問う
けれど
答えはないことを
君はずっとあとになって
知るのだ

君は歩いてゆく
一人でも
命知らずの青春を
ちゃんとそれなりに生きたことだけ
ずっとあとになって知る

その煌めきに
気づくことなく
光となって
歩いてゆく

      = 宮島蓮氏の誕生日に捧げる






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