千の天使がバスケットボールする

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「将棋の子」瀬川晶司さんプロ編入

2005-11-07 22:38:40 | Nonsense
瀬川さんプロ編入

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念願がかない「瀬川晶司プロ」が誕生した。将棋のアマ強豪瀬川晶司さん(35)のプロ編入試験6番勝負第5局、対高野秀行五段戦が6日、東京・千駄ケ谷の将棋会館で行われ、瀬川さんが通算3勝の合格条件をクリア。サラリーマンからプロ棋士への転身を成し遂げた。61年ぶりの快挙で、戦後では初めて。フリークラス「新四段」の資格が付与されプロの仲間入りをした。
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瀬川さんは、14歳でプロ棋士をめざして養成機関である「奨励会」に入会。26歳の時に、年齢制限の壁を破れずに三段で退会を余儀なくされた。奨励会では、現在のところ23才までに初段・26才までに四段という規制を設けている。この所謂年齢制限を設けているのは、この枠がなくていくつになってもなかなかプロになれない者が出現した場合のことを考え、本人の将来のためにやり直しができる年齢のうちに、別の道へすすませるための配慮である。実際瀬川さんも、退会した後は大学に進学して、NECの関連会社に就職した。
また、将棋連盟でもプロ棋士の棋譜をスポンサーに売って、そのお金を棋士たちの給料や組織の運営費に充てているという事情から、プロの棋士の一定の人数制限を設けて、プロとしての資質というバーをクリアーできないものは去っていくようにしている。

しかし「奨励会」というところは、現代でもまれな特殊な世界である。中学生ぐらいの年齢から、多くは親元を離れ、師事する棋士の自宅に下宿して、家事を手伝いながら、24時間将棋のことを考える生活を送るのである。奨励会に在籍している間は、一般的な学生生活を楽しむこともなく、高校へ進学しないで将棋を勉強する者も多い。厳しい勝負の世界にもまれて、破れてプロになれないという残酷な現実がくる日まで、他の生き方の選択肢はない。彼らはみな、同世代の少年や青年たちのような仲間と群れ集い、恋愛をして快楽と遊びで楽しく暮らす生活を知らない。すべてを将棋に捧げて、青春のすべてをかけて、わきめもふらずに日々邁進しているのが奨励会の会員なのだ。
その残酷で厳しく過酷なレースと、ほんの一手でプロに及ばす前途を断たれ、将棋以外の世間もろくに知らず、学歴も身につける暇もなく、人との付き合い方もよくわからずに、社会に放逐されてしまった棋士の卵たち。その後彼らはどんな人生を歩んだか。元「将棋」の編集長だった大崎善生氏の著書「将棋の子」は、世に流行る”勝ち組”や”マネーゲーム”という言葉のカルさと薄さとは反対に、おおいなる挫折をしたにも関わらず、彼らのしたたかで生きるたくましさ、世間を知らなかったために逆に保たれた純粋な精神のつよさ、そして最後まで将棋と関わり続けるその後の人生を語っている。それは圧倒されるような人生である。胸がふるえるような生き方である。
そしてなによりも彼らは将棋に翻弄され、将棋に斬られ、けれどもやはり将棋に育てられた、まさに”将棋の子”なのである。そんな彼らを見つめる著者のまなざしにも、そっと寄り添いたくなるようなノンフィクションである。

瀬川さんの今回の快挙を、作家の大崎善生さんはどのような感想をもたれたのか、是非聞いたみたいところである。

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2 コメント

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Unknown (あるアーキビスト)
2005-11-08 07:03:09
TBさせていただきました。

勝負の世界は厳しいとはいえ、奨励会は特殊ですね。

ボクも大崎さんのコメント、聞いてみたいです。
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「将棋の子」 (樹衣子)
2005-11-08 22:19:40
コメントとTBありがとうございました。



瀬川さんの快挙を、日経新聞と読売新聞の編集手帳でとりあげていました。話題性があるのでしょう。

活字に踊る”中年の星”、”サラリーマン二足のわらじ”、どれも私には響いてきません。やはり「将棋の子」を読んでいなければ、対局後に瀬川さんが目を真っ赤に潤ませたという万感せまる想いを、受けとめることはできないと思います。

「聖の青春」とあわせて大崎善生さんの「将棋の子」は、本当に優れたノンフィクションでした。



ところで、アーキビストというのは難しいお仕事なのですね。

でも営利追求ばかりが求められる世の中で、社会的意義と価値のあるお仕事だということも貴殿のブログで理解しました。
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