千の天使がバスケットボールする

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「イツァーク・パールマン」ヴァイオリン・リサイタル

2006-01-17 23:20:06 | Classic
イツァーク・パールマンは、現存するヴァオリニストの中で間違いなく世界最高峰である。(せちがらい話で恐縮だが、チケット代も最高峰・・・)
更に付け加えるなら、最高のエンターティナーでもある。そういう意味では典型的なユダヤ人の風貌であるが、典型的なアメリカ人でもある。クラシック音楽に対する世間の一種の思い込みのはるか高みで、パールマンは極上の音楽を奏でている。昨夜のサントリーホールは、期待どおりにクラシック音楽という芸術の枠をこえた至福の時間を過ごす指定席になった。

パールマンに個性は、必要ない。それはベルリン・フィルに長い間君臨していたヘルボルト・フォン・カラヤンに、個性を求める必要がないことに近い。私がCDを最も多く所有しているヴァイオリニストが、気がつけばパールマンだったことからも、オール・マイティにすべての作曲家のどの曲に対しても、彼のアプローチと演奏は満足度が高いのである。どのCDを買っても後悔しないヴァイオリニストとも断言できる。どこまでも美麗で豊潤な音、どんな難曲もやすやすと弾きこなす巧みな技巧、そしてすぐれた人間性を包む音楽性。それはモーツァルトのような天上の音楽、ブラームスの深遠さ、ベートーベンの哲学にも表現されているのである。時に深刻な楽想や哀しい旋律でも、パールマンの魔法の手にかかるとなんともいえない”音楽する幸福感”が漂う。

そんな幸福感のオーラーに満ちた音楽家としては、最も聴きたいのがやはりクライスラーであろう。今年のジャパン・ツアーでは、後半を当日ステージ上で発表するクライスラー名曲集をプログラムに組んでいた。今回は、席がLブロックだったので演奏中のパールマンの表情がわからなかったが、背中ごしに何回もビデオで観た様子が想像つく。彼の手にのると、ヴァイオリンがまるでおもちゃのように見える。クライスラーの名曲を、次々と愛らしく、情感たっぷりに、ドラマチックに、ウィットをつけて、またあるときはチャーミングなユーモラスをふくらませて、楽しい時間があっというまに流れていく。聴いている人々も、次第にその幸福感のオーラに包まれていく。
すっかり白髪になり、眼鏡をかけた60歳になったパールマンを見守りながら、チケット代が多少高くてもいい、アンコールなしでもいい、健康で長く音楽活動して欲しいとつくづく願った。

ピアニストは、スリランカ出身のロハン・デ・シルヴァ。彼のピアノは、理知的というよりも叙情的である。パールマンとは、息もぴったりだったが、音楽性もあっていて優れた伴奏者である。

プログラム(1000円)は、CDつきである。後援は、富士ゼロックス。18日は非公開の演奏会が催されるが、その時の招待者のために、プログラムにCDがついていると思われる。

-------------------- 2006年1月16日 サンオリーホール-----------------------

J.S.バッハ:ヴァイオリン・ソナタ第4番 ハ短調 BWV1017
フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調 op.13
フォス:3アメリカン・ピース

≪当日発表で演奏された曲目≫
クライスラー:クープランの様式によるルイ13世の歌とパヴァーヌ
チャイコフスキー/クライスラー:ユーモレスク
クライスラー:美しきロスマリン op.55-4
チャイコフスキー/クライスラー:アンダンテ・カンタービレ
クライスラー:愛の喜び
アルベニス/クライスラー:タンゴ op.165-2
ヴィエニャフスキ/クライスラー:カプリース イ短調