千の天使がバスケットボールする

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『オオカミの誘惑』

2006-01-02 14:36:09 | Movie
雨の降る昼下がり、下校途中に遭遇した高校生のたわいないケンカにおびえていたら、突然ひとりの見知らぬ男子高校生が傘の中に入ってきた。もしもその男の子が水もしたたるような美青年(少年)だったら、この映画の内気な主人公ハンギョン(イ・チョンア)でなくても、そいつを無情に雨の中に蹴飛ばすことはしないだろう。その初対面の彼から、突然、君を好きだと告白されるということが現実にたとえありえなくても。

インターネットに書き込まれた女子高校生の物語を映画化した「オオカミの誘惑」は、ひとことで言って少女漫画をさだまさし風に演出した映画である。
ミステリアスで線の細い孤独なお姉さまキラーのテソン(カン・ドンウォン)、かたや粗雑だけれど素朴でけっこういい奴、ヘウォン(チョ・ハンソン)。対立するお隣同士の高校のそれぞれのトップをはり、しかもタイプの違うイケ面!たちがそろいもそろって恋こがれるのが平凡な女の子ハンギョン。
そんなソウルの彼らの三角模様が、荒々しい格闘技の見せ場(濡れ場)とともに瑞々しく疾走していく。ラストまであきない演出とストーリー運びには、さすがによく練られている韓国映画と全く敬意を表したい。



けれども、ここからは永遠の16歳としての辛口批評。なんといっても、ハンギョンにあまり魅力が感じられないのが実におしい・・・。けっして美人で”猟奇的な彼女”のようにスタイルがよい必要はない。そんなありきたりのわかりやすい外面に、彼らが惹かれたのではないのはわかりきっている。とにもかくにも彼女の表情と姿勢、ものごしに年齢にふさわしい若さが不足していると感じたのは、イイ男♪ふたりにもてもての彼女への嫉妬からだろうか。いやいや、だってやっぱりハンギョンは、、、すでに”おばさん”化しているぞ。恋人ととしてのお互いの意志を確認してから月日は流れ、”付き合っている”ハンギョンとヘウォンは、食材の買出しに行く。そこで果物の品定めをするハンギョンの真剣な表情と背中に、堅実でしっかりした娘というよりも、生活にくたびれた中年女性のたくましさが宿っている。こどもを2~3人産んだら、きっとくたびれたユニクロを着て、スーパーでこどもたちを叱り付けるようなタイプだ。夫をしりにしいてね。
それに、ハンギョンがヘウォンを早い段階で、恋愛の対象に選ぶのも説明不足。確かに、私だってこういう単純で野郎くさいおばかな男の方が好みだ。(ま、往々にしてこういうタイプの男は、独占欲が強く、嫉妬深いからやっかいな点もあるのだが)でも、もう少しハンギョンに同化して、映画を楽しむ女の子の立場(けっしてもてないわけではないが・・)になって、キュンとなる場面を提供して欲しかった。
だいたいヘウォンは、高校生にしては老けすぎている。いったい何年留年したのだろうか。テソンをかばって、血だらけになっている姿は、この映画でも重要なシーンだが、なんだか学生といよりも、渋谷の新人ちんぴらの風情だ。雰囲気のある俳優なだけに、ミスマッチな感じがして残念だ。
文句なくよかったのは、テソン役のカン・ドンウォン。映画の中で、先輩男子学生からも寵愛されたという中性的でナイーブな面立ち、それに反比例するかのような長身。おまけにバイクを猛スピードで飛ばすサングラス姿には、表面からうかがいしれない野性味がある。その昔、ある事情からハンギョンと出会った幼い頃からの初恋を、大切に胸に秘めていたというのも、彼ならありえそうだ。この男の子は、”買い”といってもいいかもしれない。ただ、彼が中年になった姿を想像できないところに、リスクもありそうだな。一気にはげておじさんになってしまう可能性もあり。

すっかり小言を並べてしまったが、だからといってこの作品がC級というわけではない。しばし遠くなった高校時代の雰囲気をノスタルジックに懐かしみ、充分楽しめ、ほろりとさせられる映画である。
監督:キム・テギュン

”オオカミの誘惑”とはいうものの、こんな牙のないオオカミだったら誘惑されてもいい。
   -迷える子羊より