千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  TB&コメントにも☆

大学管弦楽団卒業記念演奏会

2005-03-20 20:54:57 | Classic
大学時代とは、人生の中で特別な輝きをもつ季節である。そんな感傷は、今を生きるポシティブ派の方には失笑ものなのだろう。けれどもおおかた親の庇護にありながらその干渉からうまいこと逃れ、また社会の厳しい競争と理不屈な論理にさらされていない純で熱い魂をもちえる4年間は人生の贈り物のような時間といったら過言だろうか。

そんな大学生活を勉学のみならず、クラシック音楽の演奏活動に若さか”ばかさ”か?ありあまるエネルギーと”リビドー”をそそいだ、彼らの学生生活をしめくくる卒業演奏会を聴いた。地方とはいえ、海外の一流アーティストの演奏会もあるコンサート専用ホールを使い、ベテランの域に達するプロの指揮者をお招きした演奏会なのに、無料である。そこにこの演奏会の目的をみる。今まで応援してくれた友人、仲間、そして不良債権(扶養家族であるこども)をきれずに、経済的な援助(学費&仕送り)をしてきたスポンサーである親への感謝の気持ちをこめた演奏会のつもりなのだろう。

特筆すべきは2曲め「オーボエと弦楽合奏のための協奏曲」でソロを吹いたT君の演奏である。彼の演奏は入学したときからぬきんでていた。そのため定演以外の演奏会ですでに協奏曲のソロをつとめたことがある。オーボエという楽器のもつ特性ゆえか、彼の演奏を聴いていると、弦楽器奏者にみる音楽と対峙してひとつひとつの音をつくりあげていくというスタイルとは別の、まるで自分の中にある”音楽”にただ翼をつけて空間に飛ばしているという自由な印象をもつ。きちんとプロの方のレッスンを継続して受けているという音づくりではないが、音楽性を生まれながらにしてもっているという幸福な人を見るのは嬉しいものである。そんな宝をもちつつも、彼はオーボエよりもピアノが好き、更に地理が大好きだと聞く。記号と線の地図から、彼には旋律が見えるのだろうか。
ただ協奏曲をもっとほりさげたうえでの演奏ではなくバランス性に欠けていたのは、自己流のアマチュアレベルとしてはしかたがないが、T君の演奏がよかっただけに残念である。

最後のメイン曲、指揮者小田野宏之氏が振ったチャイコフスキーの交響曲第3番「ポーランド」

この大学オケのよくも悪くも、元気よくフレッシュでノリの良い、まあいつもの泥臭い演奏ではあるが、日頃の演奏にはないひとつひとつ丁寧に音をつくっている印象があった。卒業と同時に様々な別れを惜しむ感情が表れているのだろうか。この一瞬は永遠にかえらない。だからこそ、音楽は美しいのである。
大学生活最後のコンサートミストレスをつとめたまめ吉は、大学院受験の面接の時、教官から「君は随分成績が悪いんだね。」と驚かれた噴飯モノのエピソードに、指揮者の方から渡された春らしい花束で答えるつもりか。その花束は雄弁に君の4年間を物語っている。

-------------2005年3月18日ノバホールにて、指揮:小田野宏之(チャイコフスキーのみ)------
1.Three More Cats(もう三匹の猫) Chris Hazell

2.オーボエと弦楽合奏のための協奏曲 Ralph Vaughan Williams

3.弦楽六重奏曲第1番 変ロ長調 Op。18より第1楽章

4.交響曲第3番二長調OP29「ポーランド」 Peter Ilyich Tchaikovsky