千の天使がバスケットボールする

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「ニート」 -フリーターでもなく失業者でもなく

2005-03-06 22:57:08 | Book
地元の市立図書館の予約してから数ヶ月あまり、ようやく借りることができた。それほど読者が多く、社会の関心も高い今や身近な話題なのだろう。

ニートとは何か。すなわち

Not in
Education,
Employment,or
Trading

ルーツはイギリスと聞くとなんとなくうなづけるではないか。
求職活動中、もしくは独立・開業の準備をしている者は失業者であってニートではない。ニートとは、進学準備(浪人)もしておらず、病気や怪我で療養・休養中でもなく、専業主婦でもなく、特になにもしていない人たちのことである。現在15歳以上25歳未満の若者で89万人いると推定されている。(2003年第1四半期『労働力調査』)

甘えているのじゃないか、我慢が足りないのでは、というお怒りになるかもしれない良識ある大人たちへに求める理解と、ニートを防ぐ提案、そして実際働いていない若者たちへの応援をこめた労働経済学を専門とする玄田有史さんと、フリーライターの曲沼美恵さんの共著である。

誰もがなりたくてニートになっているわけではない。怠けたくて、遊びたくて無業というわけではない、そんな彼らのインタビューが並んでいる。しかし読んでも結局のところ、私には何故という応えが最後までみあたらなかった、そんなとらえどころがないのもニートなのだ。

何故ニートが増えているのかという理由には3つの仮説がある。

1.労働市場説
近年、若者の就業環境は厳しさを増している。一流大学に進学できないという時点で、自分のやりたい仕事に就くという意味での働くことの夢や希望が、きえてしまうような日本の労働市場。もしもここに原因があるのなら、著者は少子化で人手不足になれば解消すると言っているがどうであろうか。外国人労働者が市場に参入にすることによって、さして変わらないのではというのが私の考えだ。

2.教育問題説
学校教育の中で自ら学ぶ意欲のあるものないもの、継続して努力できるものとあきらめるものとの2極化。努力するよりもとりあえず今の生活を楽しみたい、しかし社会ではそれは許されない。

3.家庭環境説
他者との交流の学びの場である家庭で、コミュニケーション能力が育たなかった。

しかし原因が社会であろうと、学校、家庭にあろうとも今の「教育」にニートを産む土壌があるのではないだろうか。玄田氏は解決策のひとつの方法として兵庫県や富山県で実践している14歳で1週間就労体験をする「トライやる・ウィーク」を提案している。勉学やクラブ活動のように努力の成果がなかなか現れないことよりも、たった5日間でも社会で働くことによって学ぶことは、たとえ小さくてもこどもたちには達成感がある。そして教室で居場所のなかったこどもも案外、広い社会の片隅にだったら自分の確かな存在を感じられる場があるものなのだ。

健康な若者が働かないというのは考えられない。そんなさめた自分でもニートを批判することよりも、一緒に社会全体でこの問題を考えていかなければならない、それがこの本を読んでいきついた結論だ。そして最後の著者のニートへのメッセージを読んで欲しい。

高校中退して水商売をしているN君のことばには、ちょっと感動した。
「働こうとしない人って、どんな仕事をしたいかがわからないんじゃなくて、何をして遊びたいかがわからないのじゃないかな。・・・なんか欲求があったら、それをするためには仕事せんとできないでしょ」
そうなのである。働くことは遊ぶためなのだよ。