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きた産業のスローなブログ

会社のトピックスや出来事を、「スロー」に記録・発信するブログ。文章は、当社の各部門のスタッフが書きます。

(欧州ワイン醸造設備・見聞録、その1) モンタルチーノの「バンフィ」

2011年01月12日 08時36分09秒 | Weblog

昨年末、イタリアのトスカーナと、フランスのボルドーに出張したのに合わせて、いくつかワイナリーを見てきました。今回から3回連続ブログで、ワイン銘醸地から最新のワイン設備事情をご紹介します。



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<世界でここだけ?!>x2 +<注目!>x3 +
<これは何?>x2



「トスカーナでアイドル日が1日とれるんだけど、ワイン醸造設備で参考になるところはないかな?」とイタリアのワイン機械取引先に尋ねたところ、「遠いけど、モンタルチーノのバンフィ」、と奨められました。モンタルチーノは、キアンティ、モンテプルチアーノと並ぶ、「トスカーナDOCG」御三家の一つ。(DOCG=イタリアワインの統制保証原産地呼称)



地図で見ると鉄道で
バンフィに行くのはちょっと難しそう。フィレンツェから車で向かう。2時間くらい南に走るとモンタルチーノ、という丘の上の小さな町に着く。これはその町にあった(赤い点)。「DOCGの数はこれ以上増えない」ルールだそう。

「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノDOCG」の分布図


<世界でここだけ?!(その1)>

モンタルチーノの町からさらに15分ほど走ったところに、目的地「バンフィ(Castello Banfi)」があった。醸造所でまず驚かされたのは、オリジナルで作らせたというこんな変わり種タンクは世界でここだけではないか。「両者のいいところを活かした」とのことで、中間部分がオークバット(オーク製のタンクのこと)、上下が温度調整機能付きステンレス・ジャケット・タンク。オークバット内に蛇管を通したり、ステンタンク内にオーク板を沈めるよりは良いと思うけれど、実際に作ってしまうか?!と驚きました。天井部には、タンクの移動やメンテを行うためのクレーンが設置されているのに注意。オークバット部分はボルト止めで、ある年限で交換を予定しているそうです。

木製(オーク)とステンレスの混成(!)タンク


<注目!(その1)>

ずらりと並ぶ「オーク&ステンレス・タンク」は床に設置されているように見えますが実はプラットホーム。実はその下には「もう1個のステンレス・タンク」があって(すなわち、「ステンレス・タンク」の上に「オーク&ステンレス・タンク」が乗っている2階建て)、醗酵が終わったワインはポンプを使わず「重力式(gravity)」で下のタンクに移す。いまや、「重力式は、新規ワイナリー設計の前提条件」であるのを再確認。


<注目!(その2)>

そして、その下部のタンクの間にレールが設置してあって、「DIEMME(ディエメ)」のメンブランプレスが列車のように移動できるよう設置されています。バンフィのプレスはこのほか、DIMME45台、ブーハーが1台という比率。DIEMMEの信頼度の高さを物語ります。

DIEMMEメンブランプレス


パイプの向こうに、ズラリと並ぶDIMMECMになりますが、
当社が日本代理店をしているDIEMMEは、ブーハー・ヴァスランに次ぎメンブランプレスで世界2位のシェア。イタリア、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど、いくつかの主要ワイン生産国ではトップシェアです。

DIEMME


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<世界でここだけ?!(その2)> 

世界でここだけ?!、と驚いたのは「オーク&ステンレス・タンク」ばかりではありません。もっと驚いたのは、「自動選果システム」主要3機種を2010年に一気に導入(!)して、比較しながら使っていたこと。どれも非常に高価だし、短い収穫期間に同時に3つを使いこなす人材と人数も必要。「3機種一気導入」、なんてことをしている(できる)ワイナリーは、世界でここだけではないか?



まず1つ目は、「ペレンク(Pellenc)」の画像処理・自動選果システム。写真からわかる通り、「房の状態」で人手による選果を行った後、除梗機を通して、粒がペレンクの機械に入る。

ペレンクの画像処理・自動選果システム

ペレンクの画像処理・自動選果システム


2
つ目は、「ブーハー・ヴァスラン」の画像処理・自動選果システム。ペレンクも同じだけれど、縦長の板のような部分の下で、粒を空中に放出し、カメラで認識した不良果実をエアで吹き飛ばす。

ブーハー・ヴァスラン画像処理・自動選果システム

ブーハー・ヴァスラン画像処理・自動選果システム


3
つ目は、「アモス」の自動選果システム。液に浮かせて比重で選果を行う、という独特のシステム。

アモス自動選果システム

アモス自動選果システム


<注目!(その3)>

で、3機種のどれが一番いいのか? 案内してくれたコンサルタント氏とワインメーカー氏によれば、「ペレンクがいい」とのこと。日本には、ペレンクのワイン機器は果樹用カッター以外はほとんど入っていないと思いますが、なかなかポテンシャルのある機械のように見えました。(ペレンクの設備にご興味のある方は、ご照会ください。資料やDVDがあります。)



非常にオープンなワイナリーで端から端まで見せてもらいました。以上で紹介したタンクや自動選果の他にも、興味深い醸造設備がいくつかありましたが、ここではあと一つだけ、写真で紹介しておきます。



<これは何?(その1)>

これは何か想像できますか?除梗破砕機の近くに設置してありました。

20110112-12


いままでイタリアで見たワイナリーでは、フランチャコルタの「カデルボスコ」の設備が飛びぬけて凄かったけれど、バンフィはカデルボスコに勝るとも劣らない設備でした。



バンフィでは、高級ワインの品質もさることながら、高価ではない価格帯のものの品質がとても高いことに感銘を受けました。ワイン設備がワイン品質に果たしている役割は極めて大きいと思います。



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<これは何?(その2)>

バンフィとは違う場所なのですが、最後に、トスカーナからの珍しい写真をもう1枚。これは何かわかりますか? 「カステッロ・ディ・ポミーノ(Castello di Pomino)」というワイナリーで撮影したもの。(Frescobaldiという大手の傘下。フィレンツェの東、30分ほどにある。ポミーノは、トスカーナ最小のDOC。) 

サンジョヴェーゼ、ピノ・ネロ、シャルドネを、屋内で陰干ししている


正解:「サンジョヴェーゼ、ピノ・ネロ、シャルドネを、屋内で陰干ししている」、の図。甘みを凝縮して、Vinsanto(ヴィンサント)という、トスカーナ名物の甘いワインを作る。しばしば、ビスケットを浸して食べるのだけれど、ワイン好きで甘党には、これがなかなかいける。



代表取締役 喜多常夫


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