岩波新書のなかでも古典的名著といわれている本です。戦前1939年初版で、改訂版が1956年、再改訂版が1979年。わたしの手元にあるのは1994年に刊行されたもので、79刷(通算)とあります。
内容は本の表題にあるとおりですが、実は2つの話が盛り込まれています。ひとつは文字通り数字の零(ゼロ)がいつ、いかなる形で発見されたのかということ。もうひとつは、連続という問題をどのように考えるかと言うことです。
まず前者(「零の発見-アラビア数字の由来-」)について。
数字の零(ゼロ)はインドで発見され(6世紀頃)、計算数字と記録数字に分類可能な記数法がその淵源としてあるという話です。インド記数法を使えば10個の数字だけで、あらゆる自然数を自由に書き表すことができ、加減乗除の計算もすこぶる簡単にできます。わたしたちにとっては当たり前になって、とくに疑問も感じないインド記数法はソロバンや桁の取り方などで、古代から試みられたさまざまな工夫のなかから残った遺産です。人類の文化史上の巨大な一歩でした。
関連して、有理数と無理数、無限級数の和、対数の問題にも言及があります。
後半(「直線を切る-連続の問題-」)では、ギリシャに始まった数学の歴史が平易に論じられています。無理数の問題、時間と連続などの概念、点と線、微分と積分の考え方、また古代ギリシャ人の関心にあった幾何学の難問のひとつ、与えられた円と等しい面積をもつ正方形をるくることができるか、定規とコンパスで作図可能かといった問題が興味深く説明されています(与えられた円と等しい面積をもつ正方形は存在するが、定規とコンパスだけでは作図は既に不可能であることが証明されています)。
数学を学ぶことの面白さが伝わってくるいい本です。
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