【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

加賀乙彦『雲の都(4)・幸福の森』新潮社、2012年

2013-05-13 23:18:29 | 小説

           

  『雲の都』の第4部、「幸福の森」。


  この巻では主人公悠太自身、そしてその周囲の人々の流転が激しい。時代は三島由紀夫が自衛隊の東部方面総監の部屋に押し入り、バルコニーから隊員に向けて決起の演説をした後に切腹自殺した事件、赤軍過激派グループの浅間山荘事件を経て、中国での天安門事件、ベルリンの壁の崩壊、東欧社会主義国の解体と激動の20世紀後半。

  悠太は念願だった国際的バイオリニスト千束と結婚。一男一女を設ける(夏香、悠助)。自身は大学を辞め、小説家として一本立ち、執筆活動にのめりこんでいく。家庭生活は可もなく、不可もないが、千束は悠太の母親とはそりがあわず、家事はお手伝いさんにまかせっきり。音楽活動は頭打ちの状況。

  父悠次、母初江が亡くなり、千束の母も逝く。悠太と千束はそれぞれ別々に軽井沢に仕事場をもち、そこを拠点に追分村芸術村が建設されていく。

  間島五郎美術館の移転、付属の絵画学校、千束の芸術劇場、付属の富士音楽学校などなど。桜子は美術館建設で夢を実現するも、息子の武太郎をみまった不幸の連続(そして自殺)に直面し、加齢もあって急速に老けていく。最期は、鬱病となり、台風が近づくなかクルーズに乗船し、自ら命を絶つ。

  火之子は安智星と離婚し、韓国・釜山に渡っていた。夏江、悠太は火之子の招きで、釜山を訪れる。そこで火之子は、自死した夭折の画家で、父親だった五郎による人生に対する絶望の感情を綴った手紙を読み、真実を知って号泣。慰める悠太は、一時の不実の感情で、火之子と結ばれる。


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