新潟県巻町(現在は新潟市に編入されている)の原発運動のルポルタージュのような小説です。
それは30数年の紆余曲折の歴史でした。北東電力が巻町に原発設置を計画、町議会が受け入れました。北東電力は原発による町の振興、雇用の創出などの幻想をばらまき、宣伝のための資金投入、漁業への補償など、着々と布石をうちます。巻町は、推進派と反対派との間で政争に巻き込まれます。
受け入れをもくろむ側、絶対反対の町民たち。割烹「珊瑚家」の家族、親戚のなかでも、賛成するものと反対するものとの確執があらわになります。
国の政権はこの間ころころ変わり、原発関係の事故も、スリーマイル島の事故、チェルノヴイリの事故をはじめ、国内でもあいついで事故が起こります(柏崎刈羽原発事故など)。そのたびに、それが追い風となって、巻町では原発反対派に起き風がふくが、時間がたつとまた保守的気分が支配的になり、反対運動が下火になっていきます。
著者はこの巻町の運動を細かく、人間臭く、描写し(「折り鶴」「ハンカチの木」「条例にもとづく住民投票」「ハンスト」)、当時の町長が職権で建設予定地を地主同盟加入者と売買契約、登記手続きの強硬手段の措置をとり、裁判にも勝利しました。その結果、北東電力がついに電発設置断念するまでに至った経緯が見事に物語化されています。
映画も製作されています。
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