【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

松本清張『砂漠の塩』新潮社、1982年

2012-04-03 00:12:27 | 小説

             

  ヨーロッパへ観光ツアーで向かった野木泰子はパリで一行と別れカイロへ。会社の出張、香港で辞表を書いた谷口真吉。ふたりにはそれぞれ夫と妻がいたが、出発前からの計画でカイロで落ち合う約束をしていた。
   もちろん、家族には内緒で。妻を捨てた夫と夫を捨てた妻、不倫の旅路である。真吉と泰子は砂漠に死に場所をもとめていた。カイロからベイルートへ、ベイルートからダマスカスへ、さらにバグダットをめざす。しかし、途中でルトバまでバスで来て、真吉は高熱に襲われた。
   日本で留守をあずかるそれぞれの夫と妻は異変に気づく。旅先からの便りがないのである。不信に思った野木保雄は妻を捜しにヨーロッパに飛んだ。会社から長期の休暇をとっての決断だった。そして保雄の追跡が二人の追跡が始まった。
   盛り上がりを見せるのは、泰子による真吉の救済、保雄の追走と自動車事故、そして泰子、真吉の砂漠での情死までである。最終章はイラン・イラク地質調査隊員森本誠の手記。ふたりの遺体はこの調査隊によって発見された。神を裏切ったものは、神のおきてにしたがわなければならない。それがイスラム教の掟である。
  イスラムの地でふたりの逃避行の結末としての死は、まさに贖罪を完結させる行為に他ならなかった。


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