【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

「格差社会」に関する問題の平易な解説

2008-04-19 00:29:25 | 政治/社会

橘木俊詔『格差社会ー何が問題なのか』岩波新書、2006年
            格差社会―何が問題なのか (岩波新書)  
 格差の現状把握、要因分析、今後の展望、処方箋を非常に平易に解説しています。

 現状把握ではジニ係数で「所得再分配調査」(厚生労働省)で絶対的貧困率の高さ、生活保護需給人数の増加、ホームレスの人数の拡大などから格差の存在と拡大を確認しています。

 要因分析では長期不況、非正規雇用、規制緩和、賃金決定方式の変化(成果主義など)、構造改革という政策とその背景にあるもの(市場原理主義+新自由主義)を列挙しています。

 くわえて格差が進行するなかで、若年層、女性、高齢者が低賃金層に滞留し始めていることを指摘する一方で、富裕層(政治家、医者など)の固定化が顕著になっていると述べています。

 それでは何が格差是正に必要なのか? 著者は効率性と公平性とを二律背反でとらえず両方実現すべきと主張しています。具体的処方箋として挙げられているのは、職務給制度の導入、最低賃金制の改善、地方での企業誘致、生活保護制度の見直し、「基礎年金全学税方式」のための消費税のUP、所得税の最高税率のUP(現在37%なのを50%くらいにする)などです。

 「格差は見かけにすぎない」「格差社会の何が悪いのか」「格差が拡大してもいいではないか」といった論調に疑義を示し、この問題の全貌を明快に解明しています。