【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

百花繚乱のロシア・アヴァンギャルド

2008-04-16 00:20:00 | 評論/評伝/自伝
亀山郁夫『ロシア・アヴァンギャルド』岩波新書、1996年

              ロシア・アヴァンギャルド (岩波新書)
 マヤコフスキー、プロコフィエフ、ストラヴィンスキー、メイエルホリド、カンディンスキー、ショスタコーヴィッチなど知っている名前がたくさん出てきました。

 それにしても、ロシア・アヴァンギャルドがロシア10月革命をはさむ約30年間にこれほどまでに詩、絵画、演劇、音楽、映画などの芸術ジャンルで百花繚乱であったとは・・・。「目から鱗が落ちる」とはこのことか。

 著者は「あとがき」で「本書での私の試みは、ロシア・アヴァンギャルド運動の軌跡をできるだけ幅広く概観することにあった。運動そのものの歴史は充分に書きこめたという自信がある」[p.245]と言っていますが、相当のボリュームと緻密さでロシア・アヴァンギャルドが解説されています。

 象徴主義、未来主義、スプレマティズム、構成主義など認識の乏しかった情報をたくさん得ました。

 フレーブニコフ([1885-1922]、詩人で未来派の創始者で生涯にわたり「時間の法則」を探求したとのこと)、マレーヴィチ([1878-1935]スプレマティズムの創始者。キュビスムと原始主義を脱した後、無対象画の道を歩み、革命後は空想建築にかかわったとのこと)は、おさえておくべき重要人物であるようです。 「ザーウミ(言語解体の実験)」の運動もユニークです。

 ロシア革命前夜、革命、戦時共産主義、ネップ、スターリン下の激動のロシア・ソ連のプロセスといった、
踏まえなければならない政治的背景へ目配りしながら、芸術家たちの夢と挫折、確執と対立とがしっかり描かれています。

 終章の末尾、「ソビエトの崩壊、冷戦の終結によってもたらされた事態とは、決して『歴史の終わり』ではなかった。共産主義の実験は、資本主義という『堕罪』の文化が必然的に背負わなければならなかった試練であり、資本主義文化の『もうひとつの自己』であった。その意味で、ロシア・アヴァンギャルドの運命を考えることは、まさに人類が失った鏡をもう一度取りもどし、もう一つの自己を見つめ直すことに他ならないのだ」(p.227)という著者のメッセージは、重く受けとめました。