【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

サブプライム問題とは何か?

2008-04-15 00:09:23 | 経済/経営

春山昇華『サブプライム問題とは何かーアメリカ帝国の終焉』宝島新書、2007年
             サブプライム問題とは何か アメリカ帝国の終焉 / 春山昇華/著
 2007年6月から8月にかけアメリカでサブプライムローンの焦げ付きに端を発して株価の暴落、アメリカドルの対円レートの急落が発生し、国際的金融不安に火がつきました。金融市場は今なおくすぶりつづけ、いつ何時そこに激震が走るかわからない状態です。

 本書はこのサブプライム問題を平易に解説した本です。「プロローグ」に始まって、「第1章:住宅バブルを生んだ社会的な背景、時代的理由」「第2章:サブプライムが略奪的貸付に変質した理由」「第3章:サブプライム問題の露呈」「第4章:サブプライム問題への対策と現実」「第5章:サブプライム問題の今後」「第6章:終わりの始まり」「あとがき」からなっています。

 そもそも「サブプライム」とは「プライム」が「優良顧客」であるのに対し、アメリカで下層のマイノリティへの貸付を予定した住宅ローンのことです。日本にはこれに類似のローンはありません。

 アメリカでは普通の国民にとってはもちろん移民などのマイノリティにとっても「住宅」の保有は夢です。下層移民のこの夢を実現させるための制度的保証がサブプライムローンです。この住宅ローンの金利は通常のローンより3%ほど高いのですが、最初の2-3年のローンを低く設定し、その後金利を上乗せするという制度があります(変形タイプのローン)。

 典型的なのが2005年に始まったNINJYA(No Income, No Job & Asset) ローンというものです。これは「住宅ローンを借りるさいに必要な収入、職業、資産状況という条件を無視してお金を貸します」というものです。

 問題はこのローンの貸手がもともと銀行であるにもかかわらず、その斡旋をブローカーが行っていることにあります。ブローカーは契約数をこなすことで斡旋手数料などで莫大な利益を獲得し、さらに悪質になものになると略奪的貸付という前倒し返済、一括返済を認めないという
方法をとってローンの借り手を意図的に窮地に追い込むこともあります(モラルハザード)。

 サブプライム・ローン問題は、さらに①国内的、国際的背景から生じた余剰資金(遊休貨幣資本)、②住宅価格の急上昇と雇用リストラを生む景気の動向、③金融技術の進化による債権の「証券化」(仕組み債などを含む)の進展、④「資産担保債権」流動化の進行、⑤金融機関・年金基金・ファンドの格付け、⑥銀行からファンドへの流動性供給の主役交替など、いろいろな要因を視野にいれて考察しなければなりません。本書ではそれが試みられています。

 いまアメリカ帝国は、この問題で土俵際まで追い詰められています。国際的金融恐慌がいつ起こるかわからない状態です。事態は対岸の火事ではないことを痛感しました。