黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『らいほうさんの場所』東直子(文藝春秋)

2010-07-14 | 読了本(小説、エッセイ等)
インターネットの人気占い“シスリー姉さんの生まれ月別運勢占い”で生計を立てている占い師の長女・志津、市民センターにつとめる出戻りの次女・真奈美、知り合い・稲森の紹介で肉体労働の仕事をしている末弟・俊の八木三姉弟は、両親の遺したマンションに一緒に暮らしている。
そのマンションには、彼ら専用の庭があり、その片隅を“らいほうさんの場所”と呼び、聖域のように、絶えずその場所を気にしていた…殊に、志津が。
俊は身体は大人に成長しても、中身は小さな子供のままのような不安定さを抱えており、志津はそんな弟を甘やかし、真奈美はそんな態度に不満を抱えている。
そんなある日、スーパーに買物に出かけた志津は、以前彼女が街角で占っていた折の客だったという若い女に出会う。
やがて女は志津の家をつきとめて、押しかけてきた。さらに自分の三歳の娘・うららを置いて、突然姿をくらませたりと不穏な動きをする女の存在に心を乱される志津。それをきっかけとして、彼らの生活に綻びができ始め……

“らいほうさんの場所”という場所を大切にする、マンションに暮らす三人の姉弟たちのお話。
“らいほうさんの場所”とは何か?何が隠されているのか?という謎が、ずっと漂っていて、どこか不穏な感じが不気味さをかもし出しています。ある意味ちょっとホラーっぽい(笑)。

<10/7/13,14>

『東京・自然農園物語』山田健(草思社)

2010-07-12 | 読了本(小説、エッセイ等)
一九八九年秋。
都心では破格の安アパートに暮らしていた、しがないコピーライターの山川健は、他の住人たち…ヤクザの渡辺仁、駅前の店『毒』でホステスをしている寺林まさみ、浪人留年しまくりの大学生・大関直也らと共に、思いがけない話を持ちかけられる。
それは亡くなったばかりの、アパートの家主である偏屈な土肥老人の所有する四千坪もの農地の相続人となること。
しかし顧問弁護士の竹下氏曰く、それを相続するには、四人が一人も欠けることなく、これまで老人が続けてきた有機農業を五年間引き継ぐことが条件。
それぞれの思惑を胸に農業に取り組むことになった彼らは、下肥づくりや、慣れない農作業に四苦八苦する。野菜の虫食い被害に悩まされたり、農産物の販売方法を模索したりしつつも、自然の豊かさに次第に魅了されてゆく……

時代はバブル真っ只中。東京の広大な土地を相続する条件に、有機農業をすることになった四人の素人たちの奮闘を描くお話。
だいぶご都合主義的にうまくいき過ぎてる部分はあるし、それぞれの人物の掘り下げ方が足りないかなぁという気もしますが、農業についてのあれこれはいろいろ興味深かったです。

<10/7/12>

『善人長屋』西條奈加(新潮社)

2010-07-11 | 読了本(小説、エッセイ等)
質屋千鳥屋を営む儀右衛門が差配をつとめる、千七長屋。昨今では“善人長屋”というふたつ名を貰っているが、住んでいるのは、皆、裏稼業を持つ悪党ばかり。
三州赤坂の錠前破りが江戸にやってくることになり、ここに住むことになっていたのだが、儀右衛門の娘・お縫の勘違いから、赤坂で錠前屋をしていたという加助が住むことに。しかもこの加助が、堅気の人間な上に、普通の人間以上におせっかいで“善人”だった。
そんな中、長屋の店子・安太郎がお縫たちの元へ相談にやってきた。彼の娘・お小夜には、乾物問屋玄海屋の若旦那との縁談が持ち上がっていたのだが、その矢先泣く泣く別れた仏具職人との間に赤子ができていることが判明。このまま祝言をあげることもできないが、お小夜に熱を上げている若旦那が簡単あきらめるとも思えず、また破談になったらいろいろとただではすまないことになるという。そこで美人局をしている唐吉と文吉兄弟の手を借りて、策を高じることに……『善人長屋』、
加助が、橋の上で困っていた娘を長屋に連れてきた。簪を盗まれたという彼女は、日本橋室町の大きな酒問屋の女中で、お貞。奉公先のお嬢さんの持っている簪を、つい黙って持ち出したのだが、それを盗まれてしまったのだという。
しかも今は遠くへ出かけているお嬢さんが帰ってくるのは五日後で、その簪を使って出かけるつもりとのことで万事休す。
お貞から、盗んだ相手に赤い波の入墨があったと聞いた情報屋の半造は、下手人は緋鯉の伝八だと断じる。何とか取り戻そうと画策するお縫たちは……『泥棒簪』、
代書屋をしている女たらしの浪人・梶新九郎が、本所緑町の料理屋桂井の娘・おみちを殺めた下手人としてつかまった。
しかし新九郎が彼女からの付け文で呼び出された時には、既に死んでおり、無実。
彼を助けるべく、話を聞きにもぐりこんだお縫は、彼女は逆袈裟がけで斬られており、落ちていた櫛に視線を向けていたらしい。
半造が調べたところでは、そのおみちは、男出入りの激しい娘だったという……『抜けずの刀』、
加助が、困っていた紅売りの彦次という男を連れてきた。仕入先の相屋という紅屋に騙され、三両二分の借金が十二両二分にまで膨れ上がっていたという。
儀右衛門はその話を断るが、後からその話を聞いた店子の菊松とお竹の夫妻は、かつての自分たち同様に騙された彦次に同情。二人とお縫、文吉の四人で、儀右衛門には内緒でその話を引き受けることに……『嘘つき紅』、
田舎にひっこんだはずのかつての長屋の住人・源平が江戸に舞い戻った。彼が長い間世話をしていた女性の娘・お恵が金沢町の杉屋という紙問屋に嫁に行っていたのだが、彼女が店に出入りしていたという浪人・横手礼四郎と無理心中をし、亡くなったためだ。
以前杉屋にいたという女中・お牧に話を訊くと、お恵は旦那さんと大内儀に殺されたのだという……『源平蛍』、
加助が拾ってきた怪我人は、文吉が以前陰間茶屋で働かされていた時に一緒だった、犀香だった。
怪我はたいしたことはないが、それまでの生活で内臓をやられており、彼の身体はぼろぼろらしい。それを自分の身代わりになった所為だと気に病む文吉。
そんな犀香には、大事な人がいるというのだが、その人物とは彼が昔小姓として仕えていた、井筒藩の藩主・刈田直矩らしい。その直矩が今は重い病に臥せっているらしく、彼が怪我をしたのは何とか会わせて欲しいと掛け合った門番に、痛めつけられたせからだった。。
ひと目だけでも会わせてあげたいと願うお縫たちは……『犀の子守歌』、
加助がことあるごとに、人助けという名の悶着を長屋に持ち込むことにいらだつ半造。それはいつかそれが儀右衛門にとんでもない禍が降りかかることを恐れているからだった。昔から儀右衛門に対する態度は特別で、忠義立てしているかのような半造。それは、半造が儀右衛門を悪党の道に引きずり込んでしまったという、借りがあるからだという。
今から二十五年ほど前。同心に仲間を売ったと濡れ衣を着せられた半造。窮地に陥った彼を救ってくれたのが、当時はまだ堅気だった儀一、後の儀右衛門だったという……『冬の蝉』、
師走十四日。深川富岡八幡宮の歳の市にやってきた、お縫、文吉、加助。
ところがその人ごみの中に、火事で亡くなったはずの女房・お多津がいたと騒ぐ加助。文吉が逃げた女の後を追い、見失うが、加助の名に反応していたことから、確かに本人であるらしいという。しかも文吉が見たところ彼女は堅気ではない様子。彼女を追う中で二人組の男に邪魔されたが、その男たちを追うと祐稔寺という小さな寺へ行き着いた。そこへ探りを入れたお縫たちは、住職の覚雲に会う。一見良い人そうに見えるが悪人だと見抜いたお縫。どうやら彼は、夜叉坊主の代之吉という盗人らしい。
さらにそこには加助の娘・おたまが預けられていた。やがてお多津は、日本橋大伝馬町の太物問屋・野州屋に女中として入り込んでいるらしいと判明。
その野州屋は、主人の喜八朗以外開けることのできない、からくり錠が蔵にかかっていると、盗人の間でも評判の店で、蔵を開けると祟りがあるという噂が流れていた……『夜叉坊主の代之吉』『野州屋の蔵』の9編収録の連作短編集。

脛に傷を持つ悪党たちばかりが住む『善人長屋』に、本当の善人が加わることになって、てんやわんや、というお話。
悪党といっても生業の方ばかりで、性格は何げにみんな良い人な気が(笑)。
彼らのその後も気になるので、続編希望♪

<10/7/11>


『バイバイ、ブラックバード』伊坂幸太郎(双葉社)

2010-07-10 | 読了本(小説、エッセイ等)
苺狩りに出かけた折に知り合った恋人・廣瀬あかりに、別れを切り出した星野一彦。その理由は、同行している巨漢で口の悪い女性・繭美と結婚するからだという……しかしそれは嘘。
<あのバス>でどこかへ連れて行かれることになった星野。その前に、付き合っていた五人の女性たちに別れを言いたい、という主張が通り、バスに乗るまでの二週間逃げないように監視するのが繭美の役目なのだった。
別れることをなかなか承知しないあかりに、繭美は、近くのラーメン屋でやっている、ジャンボラーメンを星野が完食することができたら別れるようにいう。かくして、それに挑戦することになった星野。その側では、別のカップルが……“バイバイ、ブラックバード Ⅰ”、
映画のように、突然現れた刑事が、星野が乗っていた車を呼び止め、乗って行ってしまった折に、知り合った恋人・霜月りさ子。彼女は、夫と離婚後、息子の海斗を一人で育てており、星野も海斗を可愛がっていた。
そんな彼女から車を当て逃げされた、という話を聞いた星野は、その犯人を捕まえようと、事故のあったコンビニに聞き込みに行く……“バイバイ、ブラックバード Ⅱ”、
ファッションビルのバーゲンで並びたくないばかりに、ロープを使って怪盗さながらに建物に侵入しようとしていた如月ユミ。そんな彼女と、その無鉄砲を思いとどまるように説得した縁で知り合った星野。
そんな彼女に別れを告げたが、繭美がいろいろと盗み見て、ある十階建てのマンションの九階の部屋に忍び込もうと計画していることを知る。何とか止めようと現場に向かうことに……“バイバイ、ブラックバード Ⅲ”、
耳鼻科医院で知り合った、数字大好きな神田那美子。何でも数字に置き換え、語呂合わせで考えたりする。
そんな彼女には気がかりなことがあるという…乳がんかもしれないというのだ。しこりが見つかり再検査になったというのだが、その結果が気になる星野。
たまたま立ち寄ったバッグ屋の女性店員に彼女の替え玉を頼み、病院に潜入してもらうが……“バイバイ、ブラックバード Ⅳ”、
見学に行ったCM撮影の現場で知り合った女優の有須睦子。そんな彼女は先頃、写真週刊誌に映画で共演している俳優との食事をスクープされ、不倫だと騒がれていた。
別れを告げに行った星野たちは、彼女を狙う記者たちを撃退。成り行きでそのまま映画の撮影現場に同行する……“バイバイ、ブラックバード Ⅴ”、
五人の恋人たちに別れを告げた星野。いよいよ<あのバス>が迎えにやって来ることに。
この二週間、行動を共にした繭美に別れを告げる星野。
そんな中、繭美がその直前の仮定の言葉通りに何者かに連れ去られてしまい、助けに向かうことに……“バイバイ、ブラックバード Ⅵ”の6編収録の連作短編集。

五股をかけていた男が、<あのバス>(正体は最後まで不明)に乗ることになり、恋人たちに別れを告げるお話。太宰の未完の断筆『グッドバイ』をモチーフにしているそうで、抽選50名に毎月郵便で届けられたという作品(Ⅵのみ書き下ろし)。
さり気に出会いと別れが、対になるような形になっているのが素敵です。
五人も恋人を作りながらも、生々しさがなくさらりとした感じの星野が、伊坂さんらしいキャラ造形だなぁと思いましたが、何といっても、繭美がかなり強烈(ビジュアルイメージは、マツコ・デラックス/爆笑)。
『グッドバイ』は未読ですが、ちょっと読んでみたいです~。

<10/7/10>

『聖石の使徒 狩人の覚悟』前田珠子(集英社)

2010-07-08 | 読了本(小説、エッセイ等)
大陸最大の大国・芭蕉の地神神殿の秘蔵っ子で、黒珊瑚を抱いて生まれた聖石の子供・伽羅。
あまりに篤い水の加護を受け、性が未分化だった伽羅は、2年前女性化しないことを条件に、血赤珊瑚の使徒・セイタマール(セイ)とコンビを組んでいたのだが、願いも虚しくとうとう女性として、性が固まってしまった。
おまけにそれがあっという間にセイに露見してしまい、ぎくしゃくとした関係に。
そんな中、兄と慕っていたサンネイドが行方不明になり、その消息を案ずる少年・イーダルトは、何とかしてもらおうとセイに付きまとっていた。折りしも多発しているらしい聖石の子供たちの失踪事件に絡み、調査をすることになったセイたちは、イーダルトの祖国である響波にやってきたのだが……『聖石の使徒 狩人の覚悟』、
就職浪人中の松宮一子は、イラストレーターの叔父・圭介から紹介され、ギフトショップ・ハセガワでバイトすることに。張り切る一子だったが、出かけてみるとそこはどうみても酒屋そのもので落胆。
そこへやってきたお客は、ハンプティ・ダンプティ。彼女に小箱を渡した彼は、訳のわからぬ彼女を“登録宅配人”だと認定して去ってゆく。
その店は、長谷川姉弟…麻里子と聡の営む<α次元間宅配便株式会社>…いろんな場所や次元に荷物を送る会社だった。ハンプティ・ダンプティに登録されてしまった一子は、預かった荷物…婚約指輪を、エルマ=スティという姫君の元へ届けることに……短編『次元間宅急便騒動』の2編収録。

シリーズ本編の主人公の師匠たちの過去編。
番外編なのに、完結してないって、なんて非道っぷり…(しかも本編が停滞しっぱなしなのに/笑)。
もう一編、何故か収録されているのは(ページ合わせ?)、デビュー当初の作品だとか……ということは、もう20~30年前(笑)。前田さんのキャラクタで、日本人名がついてるのって、かなり珍しいなぁと、しみじみしたり(笑)。

<10/7/8>

『全力でスローボールを投げる』北尾トロ(文藝春秋)

2010-07-07 | 読了本(小説、エッセイ等)
富士登山、中高年向けお見合いパーティ、座禅カフェ、人間ドック、宝塚観劇に、エッセイ教室……等々、気になるあれこれに、戸惑ったり、挫折したりしつつも果敢にチャレンジする“ガラスの50代”の心情を綴るエッセイ集。

50代男性の北尾さんが、いろんなことに挑戦し、その体験を語るエッセイ。
某店でスイーツを頼んで、他の女性客たちに奇異の目で見られてないかと気にされてますが、これはかなり自意識過剰な気が(笑)。
表紙に使われている、インパクト絶大なアンリ・ルソーの絵が、妙にハマっていて、笑いを誘います。

<10/7/7>

マカロン@イブ

2010-07-06 | スイーツ
 フランボワーズ、オレンジ、抹茶、レモン、ショコラキャラメルの5種。
 大きさはちょっと大きめの6cm。
 フランボワーズ、抹茶、レモンはそれぞれの風味のマカロン生地に、それぞれの風味のバタークリームが挟まれていて、ざっくりとした、クッキー寄りの食感。
 オレンジだけバタークリームじゃなくて、マーマレードか何か水分多めなものが挟まれているのか(マカロン生地と融合しすぎていて、判別できず)、しっとりした食感になってます。
 ショコラキャラメルは、チョコのマカロン生地に、キャラメル風味のバタークリーム。
 
 手づくりお菓子の家 イブ:新潟(長岡)