黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『スリープ』乾くるみ(角川春樹事務所)

2010-07-29 | 読了本(小説、エッセイ等)
2006年、IQの高い中学生たちをレポーターとして起用し、人気を得ていた科学情報番組『科学のちから』。
<天才発明家>戸松鋭二、<浪速のメカマニア>山下勇樹、<美少女プログラマー>鷲尾まりんらが順に担当するが、そんな中で一番の人気者は、<ひらめきの天使>と呼ばれる美少女・羽鳥亜里沙。
2月21日。アモルファス氷の新発見をし、冷凍睡眠装置TSC-7を研究しているという研究機関<未来科学研究所>を特別に許された亜里沙は、科学雑誌の編集長・井草渉とともに赴いた。。
その合間に、無断で歩き回っていた彼女は、所長の八田誠一に誘われ、MFT高解像度スキャナー…物体を分子レベルまで解析できるという、高性能非破壊型断層撮影装置…の中に入り、意識を失う。
そして目覚めた亜里沙の前に現れたのは、白衣の男。話している内に、男の顔に既視感を感じた亜里沙は、やがて彼が戸松だということに気づく。彼曰く、スキャナーの中で強い光を浴びたことにより、心肺停止状態に陥った彼女を、八田がTSC-7の中に入れてしまい、その後30年間眠り続け、その間に彼女の両親は震災で亡くなり、身内は兄・賢治とその娘だけになってしまったという。
対外的には、研究所にはある重要人物が眠っていることから、政治的配慮が働き、事件は内密に処理され、番組は打切。亜里沙は井草と不適切な関係を持ち、雑誌にスクープされた為に渡米した、ということで処理されていた。
冷凍状態の人間を解凍することは、この時代では犯罪だという戸松。ところが現所長の山根に見つかってしまったことから、彼を代わりに装置に押し込め、亜里沙は戸松と共に逃亡することに……。
一方、陸軍情報部の一尉となったまりんは、部下で恋人の貫井要美とともに、ノーベル賞受賞者である戸松の行方不明を調べるべく研究所へとやってきたが……

目を覚ましたら、30年後です、と言われてしまった美少女が、かつてのレポーター仲間の少年の、後の姿である男性(ノーベル賞受賞者)と逃亡することに…というお話。SFミステリ。ハイラインの『夏への扉』のオマージュだそうですが、ちょっとアリス的でもあるような…。
乾さんらしく一筋縄ではいかないどんでん返しもあるところで楽しめましたが(期待ほどではないけれど)、イマイチ心理描写というか、なぜそこまで戸松が亜里沙を思っていたのか、というあたりが抜けている気が;

<10/7/29>