黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『あの日にかえりたい』乾ルカ(実業之日本社)

2010-07-02 | 読了本(小説、エッセイ等)
日々、同級生の大林と小林にいじめられている少年・遠藤正。
夏休みを迎え、成績の良くない彼は両親からH塾に通うようにといわれるが、二人がその塾の夏期講習に参加する話を聞いていた為、拒否。
八月の最初の金曜。再び父に怒られ、塾に行くように迫られた彼は、夜中に家を抜け出し、動物園にやってきた。そこで出会った飼育員のおじさんから、動物たちを見せてもらい、魅了されるが……『真夜中の動物園』、
“ぼくのお母さん”というタイトルで作文を書いた少年・西田元。本当の母はすでに亡く、父は新しい母をを迎えた。
料理や将棋…新旧の母を比較する内容ばかり書いてしまい、父に怒られていた。
ある日、突然大きな地震に見舞われた元。両親は何故かそばにおらず、あるオバサンに出会うが……『翔る少年』、
特別養護老人ホーム・皆楽園でボランティアとして働くことになった、専門学校生の石橋佳代。
そこで出会った石橋老人は、偏屈だという評判だったが、亡き妻に名前が似ていることから、佳代と親しくなる。
そんな彼が語るこれまでの人生は、うまくいかないことばかりの連続。迷惑ばかりかけた末、病を苦にして湖で自殺したという彼の妻・佳代子。
「あの日に帰りたい」という彼の真意は……『あの日にかえりたい』、
三十三歳になった小林由紀恵。
新設される別の営業所への転属が決まり、引っ越すことになった彼女は、荷物の中にへび玉を見つける。それは、高校時代の友人との思い出の品…おりしも引っ越しの日は、十五年前に再び会う約束をした日だった。
H高校に通っていた五人…由紀恵、素子、万里、和恵、亜由美は仲良しで、それぞれに未来への夢を語り合ったが、由紀恵だけは、何のビジョンも持てずにいた。
引っ越しを終え、約束の地へと出かけた由紀恵は、そこでかつての友人たちに再会するが……『へび玉』、
日本人アルペン選手の大黒鉄平は、オーストリアのソールデンで行なわれていた大会で滑走中、バランスを崩し事故に遭う。瀕死で生死を彷徨う彼は、それまでの人生を振り返る。
彼は、スキーを選んだのは、幼い頃知らないおじさんから「チャンピオンになる」のだと言われたことを信じていたからだったが、後悔していた。そんな彼は、幼い日の自分に出会い……『did not finish』、
原口亜希子は札幌に赴任したのを機に、夕食の腹ごなしも兼ねて賃貸マンションの周囲を歩き始めた。
そんなある冬の日、ハクモクレンの咲く中学校を通りかかった亜希子は、顔に傷跡の残る七十前後の老婦人・寺田に出会う。何故か冬にだけ歩くという彼女に、理由を訊ねると、人を探しているのだというが……『夜、あるく』の6編収録の短編集。

それぞれに単独のお話ですが、どれも舞台が北海道で、時を遡る(あるいは幻影?)のが共通した感じ。ちょっとファンタジック。
残酷な運命の中で、人々に起こるささやかな奇跡がほのかな温かさを感じる作品たちでした。

<10/7/2>