CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】光圀伝

2020-10-19 20:54:49 | 読書感想文とか読み物レビウー
光圀伝  作:冲方丁

すげぇ分厚い小説だった
でもとても楽しかった

あの水戸の御老公がどういう人であったか、その一代記を描いた作品であります
どこまで、いや、おそらく真実というか、史実なんでしょう
かなり破天荒な人物で、どうして天下の副将軍と呼ばれるようになったかまでが
よくよくわかる内容で非常に面白かったのでありました
これで光圀を語るのは、にわかだろうけども、
それを赦されたいほど、光圀の一生が語りつくされていて面白かった

一番衝撃だったのは、光圀の圀の字が則天文字だったということでありまして、
そうなのか、そして、その方が軽やかなのかと
なんか新鮮な気持ちで受け入れられたのでありました
文人としても素晴らしい実績と才能を持った人であった光圀が
この字を使ったというのも、なんというか、かっこいい
ただ、そう思えてならないのでありました

出生の秘密やら、その後の行き方、いわゆる水戸学に通じていくのであろう
勤皇の萌芽というものがよくよくこめられていて、
史学を突き詰めていく姿、義を標榜する姿、いずれもが
凄くかっこいいというか、男の一生を賭けるそれだと思わされる内容で
それでいて、苦悩と煩悶も多く、何よりも、師や友人と思われた
かけがえのない仲間たちとの別れが、
もう、次々出てくるのが凄い悲しいというか、
そういう人生を送ったのかと、憐憫みたいなのを覚えるのでありました

江戸初期の時勢というのもよくわかるし、
水戸という御三家筆頭のあり方もよくよく理解できて
非常に面白い内容でありました
特に、家光の時代だったんだなと、今更ながらに知ったりして、
その頃、義直とか、秀忠の兄弟が健在でとか、
そうやって考えると面白い時代だなと
思い知らされたのでありました

林家と儒教の話とか、凄い興味深いし
文人であるということの高みなんかも描写されていて
水戸光圀その人の魅力もさることながら、
その時代の楽しさも伝わる、よい小説だったと思うのであります