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警備員の思い出

ふと警備員をしていた時のことを思い出したので、
以前、大学の警備員だった時のちょっといい話を書きます。

僕は気象予報士試験の勉強が出来て、収入もある程度得られるので
大学の警備員をしていたことがありました。
そこでは朝から翌朝まで24時間警備をして、24時間が明けの休みで、
また24時間警備をするシフトでした。

夜は大学の学生は夕方帰って、先生方も夜9時ぐらいには帰られて、
その後、熱心な大学院生が残って0時ぐらい迄研究していました。
熱心な女子院生はいつも最後まで残っていて、翌朝も8時には来ました。
その院生は熱心過ぎてか顔もやつれて顔色が悪くて、朝になり大学に来るのを見かけるとふらふらしていました。
僕が朝、正門で警備で立っていると、何かカタッと小さな乾いた音がしたので、
音のした方を見ると、その院生が正門の扉のレールに足をひっかけてよろめいていました。

そんな研究熱心な大学院生でしたが、
結局卒業後の就職は研究職には採用にならないで、営業職でしか採用にならなかったと聞きました。
僕はあんなに一生懸命に研究していたのにと残念に思いました。

卒業する少し前に0時過ぎに研究室の鍵を返しに来た女子院生に話をしました。
研究職には就けなくても、自分で研究を続けていけたらと僕が話したら、
研究するには設備が必要で、自分独自には出来ないと話していました。
僕は何も言えませんでした。
でもその院生が
「やるだけやったからもういい」
と言って帰っていきました。
その言葉が僕に強く残りました。
彼女だからそう言えた。僕もそれを分かった。
警備員をしていてよかったと思いました。

それから数日後、卒業する何日か前、夜に僕が館内を巡回して研究室の横を通ったら、
その院生が顕微鏡を楽しそうにジッと見ているのが廊下から見えました。
その楽しそうに顕微鏡を覗いている彼女の表情を今でも覚えています。

その2年後、僕は気象予報士の試験に合格しました。
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