小説の孵化場

鏡川伊一郎の歴史と小説に関するエッセイ

謎の人 サヤカ  5

2006-03-08 05:40:16 | 小説
 雑賀衆の活動した期間は短かった。戦国時代後期の数十年といったところだ。秀吉の紀州攻めによって、壊滅状態となったからである。敗者は歴史を語らないから、雑賀衆そのものが謎に満ちているのはしかたがないが、来日していた宣教師フロイスが「大いなる共和国的存在」と形容した雑賀集団は、たしかに秀吉によって、ばらばらにされたのである。
 天正13年(1585年)秀吉は10余万の大軍をもって、雑賀を制圧している。おそらく雑賀の軍勢は数千、いかに鉄砲集団とはいえ、多勢に無勢だった。さらに内紛があって秀吉側についたグループもあったから、なおさらである。かって信長が二度攻撃し二度失敗した雑賀制圧を秀吉は成功させたのである。残党たちは全国各地に散らばって傭兵となった。
 ここで記憶しておく必要がある。雑賀にとって秀吉は仇敵であるということだ。
 するとこんなふうに考えられる。サヤカが雑賀であるならば、秀吉の朝鮮出兵に参加し、秀吉を裏切ったというよりも、もともと秀吉にひとあわ吹かせてやろうという意図を秘めていたのではないだろうか、と。


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