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FUKUSHIMA

 広瀬隆著「福島原発メルトダウン」(「朝日新書」)を読んだ。福島原発の動向については、常に注意してきたし、その間聞きかじりながらも少しは原発について学んできたつもりであったが、震災発生から3ヶ月過ぎても、一向に先が見えてこない原発問題をもう少し掘り下げた視点で語ってくれるような本を一冊読むべきだと思うようになった。そんな折、書店に行ったら、原発問題を扱った書物がいくつも平積みされていたので、1冊選ぶことにした。その中でも、いかにもセンセーショナルな題名の本書を選ぶには少々勇気が要った。なにせ、著者が広瀬隆だ。筋金入りの反原発論者だ。きっと読めば背筋の寒くなることばかりだろうな、と思いながらも、今の時期起こりうる可能性はたとえどんなに怪しいものでも知っておくべきだな、という気持ちが勝って、読んでみることに決めた。

 予想通り背筋の寒くなる内容で、このまま日本に住み続けるのがイヤになってしまったほどだ。福島原発からまき散らされた大量の放射性物質、特にプルトニウムを体外被曝、体内被曝した場合の危険の大きさが、繰り返し述べられているため、
「30歳以下の人、とくに若い世代、幼児、妊婦や若い女性は、約250キロメートルを最低限の待避圏として、できるだけ福島第一原発から遠いところへ恒久的な移住を考えて逃げる。避難地は西日本の方が、年間の風向きから考えて長期的な安全性は高いであろう」
という提案にも説得力があって、思わず東京にいる息子をこちらに呼び戻さねば!と思ってしまった。本当かなあ・・、と思う気持ちもなくはないが、福島原発の3ヶ月間の経過が、筆者の悪い予想通りに進んできたのと考え合わせてしまうと、かなりの真実が含まれているようで、どうしたらいいものか、思わず考え込んでしまう・・。 

 と言うのも、空から見た現在の福島原発はまるで無残なものであり、しかも、公開された4号機の室内の荒涼とした写真を見れば、今なお大量の放射線物質が飛散し、放射能で汚染された水が漏れ出していると考えるのもさほど無理な話ではないだろうから・・。

 

 もちろん彼の説がすべて正しいわけではないだろうし、
「『内部被曝』が新たな懸念になっているようです。でも経口摂取した場合はその大部分は体外に排出されます。私は事態を楽観はしていません。でも関東地区にいる子供や孫たちを今避難させようとも思っていません。前に記したように避難という判断を否定はしませんが』という北村正晴東北大学名誉教授の反論もネット上で見かけた。広瀬隆という人物が少々エキセントリックな人であるが故に、「煽っている」と見なす人も少なくないようだ。

 だが、「地震激動期」に突入したと思われる日本に54基もの原発がある危険性は筆者の指摘を待つまでもない。巨大地震が襲い、いったん制御不能に陥ったら、もう人間の力では止めることのできなくなる「竜」のような原発(玄侑氏の言葉)をこのまま抱えていくならば、福島の悲劇から何も学ばないことになってしまう。そんな愚かなことはあってはならない。
 
「絶望的になってはいけません。原発を全廃すれば、私たちに、初めて新しい未来の日が輝き始めます。
私たちは、原発と生きる不安で暗鬱な社会を、これからも選択しますか?
それより、もっと楽に生きられる時代に向けて、心身ともに解放された生活を、ともに求めませんか?
停電も、放射能の危険性もない生活は、とても簡単なことだと、首をかけてみなさんにお約束します」

と筆者が最後に語る言葉を真摯に検討しなければならない時期であることだけは確かだろう。


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