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夜の高速道路

 日曜日、京都までは私が一人で運転していった。新しい車になってほぼ半年経ち、かなり自分の足として動かせるようになった。前の車よりも車体は一回り小さく、しかも2ドアクーペなので車高も低い。乗り降りには少しばかり苦労するが、その分小回りが利いて運転はしやすい。しかも、排気量は前よりも大きくてしかもツインターボが付いているため、圧倒的な馬力で瞬時にスピードが出る。街中ではアクセルを踏み込んだことはなく、アクセルペダルに足を乗せておくだけで勝手に走っていく。一度だけ高速道路でぐっと踏み込んだことがあったが、その加速感は恐ろしいほどで、とても私の運転技術では御すことはできないと体感した。だが、足回りはしっかりしていて、ハンドルをぐっと握ってさえいれば思い通りに動いてくれる。まだまだその性能を十分生かして切れていないが、走っていて楽しい車であることは確かだ。
 そんなことを感じながら、行きは渋滞に巻き込まれたことをのぞけば、気持ちのいいドライブができた。だが、問題は帰りだった。
 昨年の夏休みに、黒部ダムを見学した帰りに、日没後の暗い中央道を走っていたら、何故だか怖くて仕方なかった。普段毎日真っ暗な道をバスで走っている私にしては、どうして高速だとあたふたしてしまったのか、ずっと不思議に思っていたのだが、今回また夜の名神を走ってみて、今の私には夜の高速の運転はもう無理だな、と痛感した。
 京都東から名神に入ったのが6時半ごろ。夕闇せまる時間であったが、最初のうちは何ともなく、普通に運転していた。ところがやがて闇に覆われ、目の前に見えるのは前を行く車のテールライトばかりになった頃から、なんだか首が重くなり始めた。ぐるぐる回してコリをほぐしてみようとしたが、次第に首全体が硬くなってきて、頭の奥がしびれるような感覚に襲われた。まっすぐ前を見て、何とかやり過ごそうとしてみたが、そんな類のものではなかった。頼りのハンドルはしっかり握っているものの、前の車のテールランプ目がけて走っていくようで、このまま運転を続けたら、そのうち前の車に突っ込んで行ってしまいそうな危険を感じ、冷や汗が出始めた・・。。
「ちょっと運転変わってくれないかな。なんか変な感じがするんだ」
「いいけど、どうしたの?」
「頭の芯が固まったような気がして・・。首がカッチカッチに固まったような感じがして・・」
 運転を妻と代わるため、次のサービスエリアに入って、少しの間休憩した。自分で首を揉み解してみたが、固くなった首筋は急には戻らない。念のために妻から頭痛薬をもらって飲んでみた。しばらくしたら少し頭にかかった霞が消えかかったような気がしてきたので、妻の運転で再び高速を走り始めた。
 妻の運転は決して無理をしない。ずっと走行車線を走っているだけだが、途中目立った渋滞もなく、思いの外、すいすい走ることができた。妻も今の車が気に入っているようで、以前だったら運転しようなどとは言わなかった高速道路での運転も積極的に申し出てくる。もちろん妻だって私と同い年だから、夜の高速運転が楽なわけではないだろうが、この車だとそんなことも忘れてしまうのかもしれない。
 助手席に乗って、首のコリを解していたら、ゆっくりと回復していった。その間、ずっと考えていたのは、遠出をして行きも帰りも私一人で運転し続けるのはもう無理だな、ということだ。京都までの往復を一人で運転し続けるには、前を見つめ続ける状態を何時間も続けなければならない。京都までの片道だったら何とかやり遂げることはできるだろう。だが、それが一日で往復するとなると、心理的・肉体的な疲労は片道の何倍にもなるだろうし、さには夜の高速運転も加わるとなると、そのプレッシャーは極限にまで達してしまうのかもしれない。

「エコノミー症候群てそんな感じじゃないの?」
妻が言うので調べてみたら、私の状態がそれに当てはまるかどうか・・。

 『静脈血の鬱帯や血液凝固の亢進が原因となる。血流鬱滞の原因としては長時間同じ姿勢で居続けることや鬱血性心不全、下肢静脈瘤の存在が挙げられる。
 特に湿度が20%以下になって乾燥している飛行機、とりわけ座席の狭いエコノミークラス席で発病する確率が高いと思われているためにエコノミークラス症候群と呼ばれるがファーストクラスやビジネスクラス、さらに列車やバスなどでも発生の可能性はある。タクシー運転手や長距離トラック運転手の発症も報告されている。長時間同じ体勢でいることが問題といわれる』(Wikipedia より抜粋)

 う~~ん、そう言えなくもないが・・。


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