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見えぬけれどもあるんだよ

      星とたんぽぽ
               金子みすゞ

    青いお空のそこふかく、
    海の小石のそのように、
    夜がくるまでしずんでる、
    昼のお星はめにみえぬ。
      見えぬけれどもあるんだよ、
      見えぬものでもあるんだよ。

    ちってすがれたたんぽぽの、
    かわらのすきに、だァまって、
    春のくるまでかくれてる、
    つよいその根はめにみえぬ。
      見えぬけれどもあるんだよ、
      見えぬものでもあるんだよ。

 
 金子みすゞについては、ずっと以前に記事にした。それ以来折に触れて彼女の詩を引用してきたが、その詩を読むたびに心の片隅がホッと暖かくなる。小学校の国語の教科書には彼女の詩がいくつか取り上げられているが、上の詩も学校図書「小学校 国語 三年上」に載せられている。「見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ」と印象深いフレーズが繰り返されていて、童謡詩の範疇にはおさまりきらぬ哲学的な意味をも含んだ奥深い詩であるように思う。したがって、小学校三年生の子どもたちにこの詩を味あわせるには、やはり何らかの補助がいるように思う。もちろん何度も暗唱してリズムを捉え、そこから滲み出てくるエキスを吸収できれば十分だとは思うが、こういう解釈もあるんだよ、と子供を手引きするのも大切な大人の役割ではないかと思う。大人の読み方を強制するのではなく、作者のみすゞさんはきっとこういう気持ちでこの詩を書いたんだよ、と示唆する程度ならば、子供たちが想像の翼を広げる妨げにはならないであろう。
 そういう意味で、現在塾で三年生のまとめ教材として使っている問題集の中の設問は、なかなか含蓄に富んだ良問であると思うので以下に写してみようと思う。

①.4行目の「海」「小石」は、それぞれ何の様子を表しますか。詩の中の四字の言葉で答えましょう。
②.5行目の「しずんでいる」は、何のどのような様子を言いかえた言葉ですか。次の中からえらび、○をつけましょう。
 ア.小石がじっと動かない様子。
 イ.昼の星が空が明るくて見えない様子。
 ウ.夜になって星がかがやく様子。 
③.二連目(9~14行目)で、たんぽぽの根を人間のように表したところに―――を引きましょう。
④.この詩から、作者のどのような気持ちが読み取れますか。(  )にあてはまることばをそれぞれ二字で書きましょう。
 (    )ないけれど(    )、というものが、たくさんあることに、気づいてほしい。 

 ①から、青い海の底に沈んでいる小石のように、目には見えないけれど、青い空の奥には星があるんだよ、ということがはっきり理解できる。
 ②によって、「海の小石」という言葉の縁語として、星が青い空の奥に「しずんでいる」情景が子供たちの心にくっきりと浮かび上がるのではないだろうか。
 ③では「擬人法」を意識させることで、星もたんぽぽも人間のように生きているんだ、と身近に感じさせ、より深く詩の世界に入り込むことを可能にする。
 最後に④を答えさせることで、何か妨げがあって見えなくても、目には見えないだけで大切なものは必ずそこにあるのだから、それを感じ取れるようになってほしい、というみすゞさんの願いが子供たちの心に響き渡る・・。

 などと設問の意図を勝手に解釈してしまったが、こういう解釈ができるからこそ、これらの問題は情緒的に優れていると思う。小学校3年生の子供が上の通りに感じるとは思えないが、そう感じてくれてもいいんじゃないかな、と己の恣意的解釈を顧みずに思ったりしている。
 ただ、最後に次のような設問を加えてなかったのは画竜点睛を欠く印象がある・・。

 ⑤.④で答えたようなものにはどんなものがあると思いますか。あなたの考えを答えなさい。

 私の答えは、コメント欄に。
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