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サンタさん

 ひまちゃんとあーちゃんは双子の姉弟です。生まれたときは二人とも本当に小さかったのですが、お父さんとお母さんが一生けんめい育ててくれたので、来年には幼稚園に通えるほど大きくなりました。二人とも毎日元気に遊んでいます。
 ひまちゃんは恥ずかしがりやさんで、あーちゃんがそばにいないと元気が出ません。あーちゃんは元気いっぱいの男の子なので、そんなひまちゃんにかまってなどいられません。どんどん自分のしたいことを活発にしています。性格はすごく違うのですが、二人はとても仲がいい姉弟です。

 そんな二人におじちゃんがクリスマスプレゼントを贈ろうとしています。今年のプレゼントは可愛らしい洋服です。本当はおもちゃにしようとしたのですが、どんなおもちゃがいいのか二人にきいてしまっては面白くないので、服を贈ろうと勝手に決めたそうです。
 おじちゃんは買ってきた服を二人の家にもっていってくれるよう、サンタさんに頼みました。サンタさんは、子供たちが欲しいと願うものをプレゼントする以外に、子供たちを大切にしている大人たちからのプレゼントも運んでいく、宅配便のような仕事もしてくれるのです。おじちゃんからプレゼントを受け取ったサンタさんは二人の住所を見て、「ふっ・・」とため息をつきました。「マンションの6階か・・」。昔のように、煙突から家の中に入って、子供たちのベッドにプレゼントを置いていく、そんなことができる家はもうほとんどありません。プレゼントがいっぱい乗ったトナカイのそりを玄関脇に停めて、そっと窓から入っていくことが多いです。サンタさんは、クリスマスの夜だけどんな窓でも開けることのできる鍵を持っているのです。
 でも、最近はマンションに住む子供たちが多くなってきて、トナカイのそりで階上まで飛んでいって、ベランダの近くに停めておくことが増えてきました。特に都会の子供たちにプレゼントを運ぶサンタさんは大変です。空中に浮いているトナカイのそりからベランダに跳び移るのはけっこう難しいです。勇気を出して、思い切りよく跳ばないと危ないです。二人にプレゼントを運ぶことになったサンタさんは、そうしたことにかなり慣れていますが、それでも、気を抜いて足を滑らせてしまったら、まっさかさまに地面に落ちてしまいます。どれだけ慣れていても心配です。

 
 クリスマスイブの夜、街の灯りがだんだんと消えていくころ、サンタさんはトナカイのそりに乗り込みました。「しゅっぱ~つ!!」トナカイが元気よく走り出します。「ひまちゃんとあーちゃんちから行こう」。サンタさんは二人の住むマンション目指して手綱を握りしめました。
 天気のいい夜でした。空には月と星が輝いていました。マンションのベランダに着いたサンタさんは月明かりで二人へのプレゼントをすぐに見つけられました。さあ、注意してベランダへ。サンタさんはゆっくりと足を伸ばしました。何度味わっても緊張します。トンッと軽い音を立てて見事ベランダに降り立ったサンタさんは、ほっと一息ついて、赤い上着のポケットから鍵を取り出しました。それで窓を触ると、魔法にかかったように窓がスーッと開きました。
 ひまちゃんとあーちゃんはどこに寝てるんでしょう?サンタさんはじっと目を凝らしました。「ああ、あの部屋だ」。お父さんとお母さんの寝室で、ひーちゃんはお父さんとあーちゃんはお母さんと一緒のベッドで眠っていました。サンタさんはそーっと近づいていって、二人の枕元におじちゃんからのプレゼントを置きました。「かわいい顔をして眠っているなあ・・」、サンタさんは子供たちの寝顔が大好きです。小さな寝息を立てて眠る子供たちを見るだけで、寒い夜苦労してプレゼントを運んできた疲れもあっという間に吹き飛んでしまいます。
「メリー・クリスマス!」、そう呟いてサンタさんは扉を閉めて、次の家に向かいました。

 次の朝、「わあ、ボクのところにサンタさんが来た!プレゼントがある!」「ワタシにもある!」あーちゃんとひまちゃんは目を覚ますとびっくりして叫びました。「なんだい?」、大きな声で起こされたお父さんは眠そうに言いました。「サンタさんが来たの!!」と二人は声を合わせて叫びました。ベッドから飛び降りて、プレゼントの包み紙をビリビリと破り始めました。中からはかわいい服とおじちゃんが描いた二人の顔の絵が出てきました。

 

 だけど、ぜんぜん似てません・・。お父さんは眼を覚ましたお母さんと苦笑いをするしかありませんでした。
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