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君が教えてくれたこと

 昨夜京都から雪の中戻ってきた妻に話を聞きに自宅へ戻ったところ、スカパーで録画したというTVドラマを見ていた。たずねるつもりだった娘のこともそこそこに、思わずそのTV番組に見入ってしまった。「君が教えてくれたこと」という全12話のドラマだった。9話の途中から見始めたのだが、藤原竜也が出演しているため、彼が出る場面では下手に妻に話しかけたりはできない。そんなときに何を聞いても上の空で、まともな答えなど帰って来ない。で、黙って見ていると、ともさかりえの演じる高機能自閉症の女性が、カウンセリングを受けていた医師役の上川隆也と愛し合うという内容のドラマだということが分かった。藤原竜也はともさかりえの弟役だったが、発声といい、演技といい、まったく他の出演者とは違う領域にいるような感じを受けるほど、素晴らしい演技者であることを再認識した。2000年のドラマだから、当時彼は18歳だった。それでこれだけの演技ができたのだから、妻が今年彼の舞台に走り回ったのも納得できた気がした。妻は、来年の市村正親との舞台も楽しみにしていて、早くもチケットを何枚か手に入れたようだ。まったく抜かりがない。
 私がこのドラマに見入ったのは、藤原竜也のせいだけではない。ともさかりえの役柄が自閉症の女性だというのにとても興味が引かれたからである。実は、我が家のごく近くに自閉症の女性がいて、そういう発達障害を持つ女性がどういった行動をとるかもある程度理解しているので、ドラマの中でどのように描かれていくのかに注目して、思わず見入ってしまった。ともさかの演技は、私の近所の女性をところどころ髣髴とさせるもので、なかなか研究しているなと思った。勿論、日常生活をともにしている家族からみれば違和感を感じる面も多々あっただろうが、私はいい演技だと思った。
 番組のHPを開いてみたら、自閉症についての説明が載っていた。

「3歳までに、人とのやりとりの関係がうまく形成されないような対人関係の相互交渉の質的な障害(社会性の障害)、コミュニケーションの障害やことばの遅れ、こだわり行動、以上、3つの領域での障害がある場合に診断されます。現在、自閉症は脳の何らかの機能不全によって生じる発達障害であると考えられています。自閉症の症状は、他者との関係性やコミュニケーションがうまくとれないこと、特徴的なくりかえし的な行動やこだわり行動などによって特徴づけられます」

 家の近所のその女性は現在37歳、私の弟と同年である。生まれたときから知っているため、私は彼女に何の違和感も持っていない。折り紙を折るのが好きで、私の子供が幼い時にはよく折ったものを持ってきてくれた。近所の人たちも、誰もが会えば「~ちゃん、こんにちは」などと、声をかけるようにしている。彼女も恥ずかしそうにしながらも、返事をしてくれる。
 しかし、彼女には困ったことが1つある。平日はちょっと離れた町で、住み込みの仕事をしているのだが、週末金曜日になると自宅に戻ってくる。すると、その夜から、自室(家族とは別の離れ)で大音量で音楽を流しながらドンドンと足を踏み鳴らして踊りまわる。それだけならどうってことはないが、音楽を切ると今度は外に出て来て、近所の家の玄関口まで走って言って、なんとも表現できぬ奇声を発しながら、玄関を足で何度も蹴る。それが終ると、違う場所に移動してまた大声でわめきまくる。それを2度ほど繰り返した後で、また自室に戻って踊りだす。もうかれこれ20年近くも続けているから、私たちも慣れたと言えなくもないが、それでも日によっては早朝に始めることもあるし、深夜に叫びだすこともある。なんともいえない声だけに、何度聞いても驚いてしまう。以前はそれだけでなく、石を投げて我が家の瓦を割ったことが何度もある。いくらなんでも、と本人をつかまえて注意したら石を投げるのはやめてくれたが、奇声を発することだけはどうしてもやめられないようだ。仕事場でストレスをためてきて自宅に戻るとそれを解消していくのだろうが、時間構わずやるのだけは勘弁して欲しい。
 自閉症そのものは治るというようなものではないようだが、幼児期からの養育や教育が適切になされた場合、その人なりの社会適応は可能らしい。「早朝と深夜だけはやっちゃダメだよと、気長に注意していくことが大切なんだな」と、ドラマを見た後で妻と話した。


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