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「不幸な王子」(上)

 先ほど、私のヤフーブログを閉鎖した。何で2つもブログを持っていたのか自分でもよく分からないが、始めは倉庫代わりにするつもりだった。しかし、ここ最近の状況ではとても2つも管理する気力がわかないので、思い切って閉鎖した。大した記事はないから惜しくもないが、ただ、何回かに分けて掲載した「不幸の王子」というのは、学生時代に私が妻のために書いた物語を焼きなおしたもので、特別な思い入れがあるものだから、コピーしてきて今日と明日の2回に分けて載せようと思う。


      (1)
昔、昔、ある国にとても立派な王様がいました。
国の人たちのことを愛し、人々のために一生懸命尽くしたので、国の人々も王様を自分たちの父のように慕っておりました。

王様には、年を取ってやっと恵まれた1人の王子がいました。
王様は王子を目に入れても痛くないほど、大事に大事に育てました。
外に出して病気になっては大変だと、決してお城からは出さずに、大事に大事に育てました。

ですから、国の人々は誰も王子を見たことがありませんでした。
ただ、誰よりも聡明で、誰よりも凛々しくも美しいお姿でいらっしゃると、国の人々は信じておりました。
それは、王様が立派な方であったため当たり前だと誰もが信じておりました。


       (2)
 王子は16歳になりました。
お城をあげてお祝いをしているさなか、王様がたおれてしまいました。
長い間、平和で豊かな国を守り続けるために働いてきたのです。
もうそれにずいぶん年を取ってしまいました。
王様は位を王子に譲ることに決めました。

「さあ、王子、これからは私に代わってこの国を治めておくれ」
「分かりました。見事ご期待にこたえて見せます」

王様は何も心配していませんでした。
王子は生まれつき聡明な上に、この時に備え幼い時から王の道を学ばせていたからです。

「頑張ってくれよ」
王様は国の人々に、1ヵ月後に戴冠式を行うことを宣言しました。


       (3)
国の人々は口々に心配しました。
王様に代わって16歳の王子がこの国を治めることなど、果たしてできるのでしょうか。
ある者はこの国の行く末を心配し、ある者は明日のことを心配しました。

「王様がいなくなったらわしらの国どうなるんじゃろう」
「王様があってこそのこの国だ、いったいどうなるんじゃろう」
そんな声が国中に満ち満ちていました。

王様は、こんな時に王子に跡を継がせても上手くいかないと思い、あれこれ頭を悩ましましたが、それにつれて病状もますます悪化してしまいました。

「私はもう長くない」
王様は、近従たちを呼び寄せ、一計を案じました。
「皆で、王子が優秀なことを国中にふれてまいれ」

王の命を受けた者達が一斉に国中に散らばっていきました。


       (4)
3日もすると国中の人々は王子の素晴らしさを讃え始めました。
会ったこともないのに、「まばゆいばかりに美しい方だ」とか、
聞いたこともないのに、「遠い国の言葉をいくつも話せるお方だ」とか、
話したこともないのに、「どんな昔のことでも、どんな難しいことでもご存知のお方だ」と噂し始めました。

王様はその様子を見聞きするにつけ、国の人々の不安が期待へと高まっていく様子に満足しました。
「国中で、もっと王子の評判が高まれば、私も心置きなく王位を譲れる、うれしいぞ」と近習たちと喜び合いました。

戴冠日まであと半月となったときには、国中が新しい王のことしか話さなくなっていました。
2人寄れば必ず王子の話となりました。

しかし、この頃からでした、王子の体に異変が生じ始めたのは・・・
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