議論 de 廃棄物

環境・廃棄物問題の個別課題から問題の深層に至るまで、新進気鋭の廃棄物コンサルタントが解説、持論を展開する。

ビーフカツ横流し業者を環境省が優良認定していた???

2016年01月27日 17時05分48秒 | 廃棄物事件簿
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■ダイコーに優良認定??
三重県から行政指導を受けていたのに、国(環境省・農水省)が
ダイコーに「優良」認定を与えていたという記事が出ています。

<廃棄カツ転売>国がダイコー「優良」認定 県行政指導直後
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160122-00000010-mai-soci

まず誤解があります。
「優良」も「認定」も与えていません。ダイコーが受けていたのは、
食品リサイクル法の再生利用事業者の登録でしかありません。
記事のほうが恣意的な表現にしています。

【登録再生利用事業者一覧表】
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syokuhin/pdf/ichiran.pdf

確かに、ダイコーが登録されています。
環境省は、あわてて?立ち入りをして、取り消しをしようとしていますので、
そのうちこの一覧表から削除されるでしょう。

■経緯としては・・・

まず、ダイコーは三重県で2008年6月に指導を受けました。無許可で堆肥
を製造していたということで、指導を受けて結局やめたそうです。

その2か月後に愛知県の施設で食品リサイクルの登録を受けています。

個人的には、「登録しちゃったのは仕方がないでしょ」と思います。
行政処分でもないですし、別の県であったことです。これをいちいち
三重県が環境省に報告するはずもないですし。

国は登録したら、管轄の自治体(この場合愛知県)に通知することに
なっていますが、愛知県が三重県の指導まで把握していなくても、
仕方ないでしょう。

ということで、記事のように本件について国・環境省を批判する
のは、かわいそうです。

それに、「優良」かどうかは問われていないのです。

参考までに、再生利用者の登録に関する条文です。面倒な方は飛ばしてください。
***************
食品リサイクル法

第十一条  
1 食品循環資源を原材料とする肥料、飼料その他
  第二条第五項第一号の政令で定める製品(以下「特定肥飼料等」
  という。)の製造を業として行う者は、その事業場について、
  主務大臣の登録を受けることができる。

2  前項の登録の申請をしようとする者は、主務省令で定める
  ところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を主務大臣に
  提出しなければならない。

 一  氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
 二  再生利用事業(特定肥飼料等の製造の事業をいう。以下同じ。)の内容
 三  再生利用事業を行う事業場の名称及び所在地
 四  特定肥飼料等の製造の用に供する施設の種類及び規模
 五  特定肥飼料等を保管する施設及びこれを販売する事業場の所在地
 六  その他主務省令で定める事項

3  主務大臣は、第一項の登録の申請が次の各号のいずれにも適合
  していると認めるときは、その登録をしなければならない。

 一  再生利用事業の内容が、生活環境の保全上支障のないものとして
    主務省令で定める基準に適合するものであること。
 二  前項第四号に掲げる事項が、再生利用事業を効率的に実施するに
    足りるものとして主務省令で定める基準に適合するものであること。
 三  当該申請をした者が、再生利用事業を適確かつ円滑に実施するのに
    十分な経理的基礎を有するものであること。

4~5 省略
6  主務大臣は、第一項の登録をしたとき、又は前項の届出を受理した
   ときは、遅滞なく、その旨を第二項第三号の事業場の所在地を管轄する
   都道府県知事に通知しなければならない。
***************

つまり、再生利用できる施設、事業内容、財務基盤があれば登録しなければ
ならないのです。優良だとか言ってませんし、認定でもないのです。
更新は5年に一回で、毎年現地確認するわけでもないのでしょうから
横流しを見抜けなくても仕方ないのです。

という制度なので、ちょっとあの記事はいただけません。
とはいえ、環境省としても当然放置するわけにも行かないので立入することに
なりました、ということですね。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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■電子マニフェストの評価が下がった?

実は、今回の事件で、電子マニフェストの信頼性が傷ついたという
ポイントを忘れてはいけません。
なにしろ、壱番屋はダイコーから電子マニフェストで「堆肥化終了」
という報告を受けていたのですから。

環境省は、ことあるごとに電子マニフェストで不法投棄を防止すると
言って来ましたが、今回の事件でそのお題目を唱えにくくなりました。

電子化で不法投棄防止ができるなんて、そんなわけないことは、
業界関係者、実務担当者は分かっていたのですが、お役所、ISO審査員
あたりは勘違いしている方が多いのかもしれません。

ということで、
「電子マニフェストでは順法も適正処理も確保できるとは限らない」
のです。

電子マニフェストを導入している排出事業者さん、電子化したからと
言って安心しないでくださいね。

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