議論 de 廃棄物

環境・廃棄物問題の個別課題から問題の深層に至るまで、新進気鋭の廃棄物コンサルタントが解説、持論を展開する。

排出事業者が複数いてもいい

2017年11月30日 12時45分19秒 | コンサル日誌
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こんにちは

今回は、排出事業者が複数いてもいい、という話です。

以前、JVの排出事業者について話題にしたことがあり、なかなか盛り上がりました。
http://blog.goo.ne.jp/jizokukanou/e/69e05f547840bb045965a1441882acb9

JVとは、複数の建設会社が共同企業体(ジョイントベンチャー、JV)として
建設工事を受注、施工していることを言います。関係する会社が出資して
法人を設立しているのではなく、建設工事の都度結成、解散される組織体です。

他にも、複数の会社が費用も人員も折半で展示会に出展し、会場で廃棄物が
排出された場合はどうなるでしょうか。処理費も折半しているのであれば、
どちらか片方の会社を排出事業者だと決める根拠が見つかりません。


実は、過去の判例では「仕事を重畳的に支配、管理している」場合は、複数の
会社が並んで排出事業者になるべきであると結論づけています。

「東京高裁 5.10.28 判決」
 また、そもそも、被控訴人の立論の前提である廃棄物を排出する事業者が
 複数であってはならないとする点もその根拠は疑わしく、元請け、下請けの
 関係に立って仕事がされる場合であっても、その実態によっては、下請業者も
 独立の主体として当該仕事を施工しているとみられるのと同時に、元請業者も
 下請業者を履行補助者として当該仕事を施工している(当該仕事を重畳的に
 支配、管理している)と評価する余地があるのであり、その場合は、
 元請業者も下請業者と並んで廃棄物を排出した事業者に当たることになる
 というべきである。
※:重畳(ちょうじょう)的とは、「幾重にも重なっているさま」を指し、
並んで、連帯してという意味です。

前述の展示会や建設JVの例では、両者が共同で一つの仕事をしています。
その意味では両者が並んで排出事業者になると考えることができるはずです。

(この裁判は、元請けと下請けのどちらが排出事業者になるかで争われた
ものです。法改正により「元請けが排出事業者となる」と規定されましたが、
判決の判断根拠となった考え方は有効です。)

排出事業者が複数いるとすると、契約書とマニフェストの記載方法が
問題として浮上してくるでしょう。おそらく、1社が代表して排出事業者
となる方法と、各社連名にする方法があるでしょう。まず、代表者が
他の排出事業者を代理して契約するというのであれば、他の排出事業者も
契約をしたことになるので問題ないでしょう。その場合は、代表の
対象となる排出事業者の範囲を別紙などで明示する必要があります。
各社連名とする場合は、全ての会社が直接契約の主体となりますので
問題ありません。
マニフェストの排出事業者欄には、備考欄も活用して複数の会社名を記載するか、
代表者だけを書いて備考欄に「排出事業者については契約書記載の通り」
などと書けばよいでしょう。
ただ、マニフェスト交付等状況報告書は代表者だけが提出するのか、各社が
提出するのか、多量排出事業者の報告の数量は案分するのかなど、
悩ましい問題が残ります。基本的には自治体に提出する書類ですので、
自治体と相談して記載方法を決めることになるでしょう。

なお、代表者が代理人になる場合の方法については、大阪府のこちら
ページでも紹介されています。実際には民法の規定を踏まえて法務の方と
相談して実施してください。

一方で、いずれかの会社が排出事業者となることを事前に当事者間で
決めている場合もあります。当事者の契約で排出事業者責任を自由に
変更できるというものではありませんが、判断に迷うケースにおいては
有効な方法でしょう。責任の所在がはっきりしないと不適正処理に
つながるリスクが高まりますので、適正処理を目的とした廃棄物処理法の
運用としては合理的です。この場合のマニフェストは、排出事業者
となる会社名義でよいでしょう。

複数の会社が関与する事業形態は無数に存在します。したがって
排出事業者が誰であるかの判断は都度解釈するしかありません。
契約書やマニフェストの書き方についても、推奨される方法が公式に
提示されているわけではありませんが、ある方法が違反であるとして
大きな問題になったという話も聞いたことはありません。法律で
想定していない状況ですし、行政としても個別具体的に検討するという
スタンスになると思いますので、判断に迷う場合は都度相談されると
よいでしょう。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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4月施行の法改正でも、親子会社が一体的に、共同して排出事業者
になるケースについて「当該認定グループが共同して、委託を行う
とともに、マニフェストを交付すること。」と書いてあります。
http://www.env.go.jp/press/files/jp/107506.pdf
この場合の契約書とマニフェストの記載方法がどうなるのか、上記方法で
よいとされるのか不明ですが、法人が違うからと言って杓子定規に
別人扱いしなくてもいいよね、という流れができているのかもしれません。

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