最近FT-817NDを担いで移動運用しています。同じように移動されている局とつながるとその方もFT-817だったというケースは結構多いですね。アマチュア局が少なくなってCQを出しても呼ばれることが減りましたから、ロングで情報交換をすることもあります。そういった中で出てくることが多いのがアンテナの話題とバッテリの話題。ということで、何回かに分けてFT-817の移動用バッテリについてお届けしたいと思います。
私が使っているバッテリについてはこちらに書きましたが、その選定の過程で検討したこと、情報交換で得た情報などを総合して書いてゆきます。
なお、ネット上でも同種の情報が飛び交っていますが、「5W」「2.5W」の表現が真値(電力計で計測した値)としての「5W」なのかFT-817のHIモードを意味する「5W」なのか明らかでなかったり、混同されているケースが多いようです。混乱を避けるため一連の書き込みでは「HI」「L3」という表現を使わせていただきます。
[FT-817のバッテリ 概論中の概論]
現在販売されているFT-817NDには標準で「FNB-85」という9.6V,1400mAHのバッテリが添付されています。このバッテリはオプションとして別途購入することもできます。実はこのFNB-85こそがFT-817用を謳う恐らく唯一のバッテリなのです(恐らくというのは海外で存在する可能性が否定できないからです)。FT-817用の各種オプションを販売するサードパーティのアサップシステムもバッテリを販売していないのが実情です。
従ってFNB-85以外のバッテリを使用するなら自力調達もしくは自作するしかありません。それは充電器も自分で調達するしかないということも意味します。従って、ハンダ付けや電流計測のための工具類を揃えるべきです。「ハンダ付けは一度もやったことがない」という方もおられるでしょうが(ハムとしてハンダ付けはできて当然、と言われるOMさんもいますが、現実できない方も結構おられます)、そういう方は少々選択肢が限られると思います。できればハンダ付けを習得して頂きたいと思います。
[意外に難しいHIモード]
純正バッテリのFNB-85はその性能上、HIモードでの運用はできません。もちろん、強制的にHIモードに設定してやれば動作はしますが、すぐに容量を使い果たしてしまいます。電圧も低いため、HIモードとはいえ電力計で計測すると5Wは出ないことが分かります。容量・電圧とも不十分なのです。
ではHIモードでの運用にはどの程度必要なのか、ということですが、
電圧 12V以上(自動でHIモードとなる電圧は11.5V以上といわれています)
容量 希望する運用時間(H)×1000mAH
がひとつの目安になります。これはSSBモード・送信:受信を1:2程度にした場合です。FMモードでQSOする場合やロングでチャットをするような場合にはさらに大きな容量が必要です。なお、真値で5Wを出すには13.8Vが必要なようです(リグの個体差で変動します)。私の作った13.2Vのバッテリでは真値での5Wが出ていない可能性がありますが、実用上全く影響のない範囲内です。
自動車で大型バッテリを運び上げるのならあまり問題になりませんが、人力で担ぎ上げできるようなバッテリでこの条件を満たそうとすれば結構高いハードルだと思います。
ということですので、L3モードでの使用にとどめるという選択肢も当然出てくると思います。「5Wの方が飛ぶ」とばかりにHIモードにこだわる方も多いのですが、現実にHIモードが必要かな、と思うのはHFのローバンドでの運用時であり、HFでもハイバンドやV/UHFの場合は効率のいいアンテナを使えばL3モードでも実用になると思います。実のところ私もある程度呼ばれるとこっそりHIモードからL3モードに落としています。これでも全然影響はないです。呼ばれなくなったらまたHIモードに戻せばいいのです。
パワー信仰の根強い世界ですが、アンテナを含めた総合的な通信設備の中でパワーを考えるべきだと思います。
[具体的な方法は?]
ではどのようなバッテリを揃えればよいのか、ということになりますが、現実的な案は以下の3つだと思います。
①鉛シールドバッテリ
②ニッケル水素電池
③リチウムイオン電池
④乾電池(充電できない一次電池)
この順番にアーティクルを分けて以降ご紹介してゆきたいと思います。
余談になりますが、標準添付のFNB-85は予備バッテリとして使えます。QSOに夢中になってバッテリを使い果たしてしまった時などに力になってくれるでしょう。ちゃんと充電して移動に出かけるのがいいと思います。
あ、外付けバッテリを作る場合は万一のショート時のためヒューズなどの保安装置を付けるようにしてください。「予備のヒューズをストックするのが面倒」などと言われる方がいますが、ショートしたときは火災や爆発等の危険があります。特に大容量バッテリの場合は保安装置が必須だと思ってください。