JF4CADの運用日誌2.5

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第四の焼酎・黒糖焼酎とは?

2015-10-22 | グルメ
焼酎といえば芋・麦・米が有名です。ところが「黒糖焼酎」をご存じの方は非常に少ないようです。知られざる第四の焼酎である黒糖焼酎を取り上げてみたいと思います。


[黒糖焼酎とは]
奄美群島で造られている焼酎で、黒糖と米麹を原料としています。タイ米で米麹を作り黒糖を水に溶かして発酵させます。できあがったもろみは単式蒸留器により蒸留され、1年前後貯蔵されたのち出荷されます。中には長期貯蔵でまろやかに仕上げた銘柄もあります。

現在は鹿児島本土の芋焼酎と同じく白麹・黒麹、常圧蒸留・減圧蒸留が使い分けられ味のバリエーションが広がっています。

奄美大島・喜界島・徳之島・沖永良部島・与論島の5島に蔵元があります。詳しくはこちらの酒造組合のホームページをご覧ください。


[黒糖焼酎は甘いの?]
蒸留酒ですので香りはあっても甘さはありません。黒糖だから甘いと誤解されているようで、この数年「糖分0.00%」と書かれたシールを瓶に貼ったりする蔵元も出てきています。


[黒糖焼酎の略史]
戦前奄美群島では沖縄から技術を移入し主に米を使用した泡盛が造られてきました。ところが終戦後に沖縄同様日本から施政権が切り離されアメリカに占領されてしまいます。

奄美に対してはアメリカの復興支援が十分に回らなかった上に主産品の黒糖は関税がかかるようになって本土に売れなくなり奄美の経済は破綻状態となってしまいます。主食の米すら満足に手に入らないため酒造りができなくなり、やむなく売れ残っていた黒糖を使って黒糖焼酎造りが始まりました。経済が疲弊した当時の奄美群島政府にとっては酒税が一番の収入になっていたようです。

経済支援が行われないまま放置された奄美の人たちは集落単位でのハンストや血判状の提出などを繰り返し、1953年12月25日に非暴力での本土復帰を勝ち取りました。黒糖は本来焼酎に使うことのできる原料ではないため復帰後に焼酎と認められない可能性がありましたが、歴史的事情を考慮し米麹を使うことを条件に特例で焼酎として認められることとなりました。苦境の中からやむなく始まった黒糖焼酎はこうして復帰後も引き続き造られ現在に至っています。


[奄美群島でしか造れない?]
黒糖焼酎は奄美群島でしか造ることができません。歴史でご紹介した通り本土復帰前に製法が確立していたため特例で奄美群島(大島税務署管内)でのみ焼酎としての醸造が認められています。

もし鹿児島本土や沖縄本島で同じ製法で造ったとしてもラム酒同様税率の高い「スピリッツ」となります。


[黒糖焼酎は泡盛だった?]
奄美群島では沖縄の泡盛の蔵元から技術が移入されたため米を使用した黒麹の泡盛が造られていた時代がありました。ところが米が安定して確保できなかったためソテツなど様々なデンプン類や黒糖を使用して作られることありました。これらも「泡盛」として売られるなど焼酎類全般を「泡盛」と呼んでいたようで、戦後に黒糖焼酎も「泡盛」として売られていました。一部の蔵元には「泡盛」と書かれた当時のラベルが残されています。

ところが米と黒麹を使わない「泡盛」に対して沖縄からクレームがあり泡盛という呼び方はされなくなりました。


[共同瓶詰会社]
奄美群島の蔵元は零細なところが多く、中には家族2人だけという蔵元もあります。当然ながら酒造りだけで手一杯で営業が困難です。このため国税当局の指導のもと島単位で共同瓶詰め会社を組織し、各社の原酒をブレンドして出荷する体制が作られました。蔵元は自社の銘柄を捨てるデメリットがある一方、酒造りに専念でき原酒を買い上げてもらうことで安定した収入を得ることができます。ブレンドによって酒質が安定する、島内での過当競争を防止できる、瓶詰め会社に営業担当を置くことで島外の拡販もできるといったメリットもあります。

現在は徳之島の奄美酒類と沖永良部島の沖永良部酒造が共同瓶詰め会社として活動しています。構成会社は以下の通りです。
奄美酒類:高岡醸造、中村酒造、天川酒造、亀澤酒造場、松永酒造場
沖永良部酒造:徳田酒造、竿田酒造、神崎産業、沖酒造

奄美大島にもかつて共同瓶詰め会社として奄美第一酒類がありましたが構成各社の意見が合わなくなり1989年に解散しています。

鹿児島県では芋焼酎の「さつま島美人」で知られる長島研醸(出水郡長島町)も共同瓶詰め会社です。


[飲み方]
芋焼酎や麦焼酎と同じくロック・水割り・お湯割りが一般的です。芋や麦に比べアルコールの刺激を感じやすい酒のようで、ロックや水割りにされるのでしたら焼酎もあらかじめ瓶ごと冷やした方がアルコールの刺激を抑えることができておいしく飲めると思います。

このほか度数の高いものは梅酒にしても面白いでしょう。もちろん氷砂糖ではなく黒糖や赤ザラメの方が合うでしょうね。奄美大島にしかわ酒造から「燦々梅酒」という黒糖焼酎の梅酒も発売されています。


[ラム酒との違い]
同じようにサトウキビを原料とした蒸留酒としてラム酒があります。黒糖焼酎とラム酒はよく似てはいますが主に以下の点で違いがあります。

・黒糖焼酎は麹を使用することが義務づけられている。ラム酒は麹を使用しなくてよい。
・黒糖焼酎は黒糖を使用することが義務づけられている。ラム酒は廃糖蜜(製糖の際に出る副産物)や精製糖を使っても構わない。
・黒糖焼酎は樽貯蔵も可能であるが色の濃さには上限があり、色の濃いダークラムのようなものは造ることができない。


違いがあるとはいえ黒糖焼酎の蔵元がラム酒を造ろうと思えば難しくはないとされています。実際に奄美酒類を構成している高岡醸造が「ルリカケス」の銘柄でラム酒を造っています。


[本土での販売]
比較的手に入りやすいのは「奄美」「朝日」「れんと」「里の曙」あたりでしょうか。これら一部の銘柄を除けば鹿児島県以外の本土で黒糖焼酎を扱っているケースは少ないのが現状です。中にはほとんどが島で消費され鹿児島市内でも出回りにくい銘柄もあります。

鹿児島市内中心部で比較的品揃えがよいのは以下の販売店です。

コセド酒店 天文館店(天文館)
焼酎維新館(鹿児島中央駅 アミュプラザ地下)
薩摩酒蔵(ドルフィンポート)

いずれも自分で選んで発送できますし、通販も対応してくれます(薩摩酒蔵は経営する山形屋百貨店のサイトで通販対応)。

鹿児島県以外ですとこの辺を探してみてはいかがでしょうか。
[東京]さつまいもの館(有楽町:鹿児島県の物産館)、吉池(御徒町)
[大阪]さつまいもの館 大阪店(本町 鹿児島銀行大阪ビル)
[福岡]薩摩焼酎蔵 匠(福岡市:渡辺通1丁目)
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ちょっとだけウイスキーの話

2015-03-25 | グルメ
ドラマ「マッサン」のフィナーレが近づいてきました。これまで見向きもされなかったウイスキーへの注目が集まっているタイミングですので、ウイスキーについて簡単にご紹介したいと思います。

※ウイスキーは世界で作られており、例えばアメリカのバーボンもウイスキーの一種です。全部を説明すると非常に長くなるため、スコッチを手本とした日本のウイスキー事情に合わせてご紹介します。


[ウイスキーって何ですか?]
一番簡単に言ってしまえば「穀物を使い、樽で寝かせた蒸留酒」となります。

穀物としては大麦麦芽やトウモロコシ、ライ麦などが使用され、樽はオークやミズナラなどが使われています。長期間樽で熟成させることで樽の成分がしみ出し、独特の色合いや風味を作り上げてゆきます。

例えば麦(穀物)を使う蒸留酒という点では麦焼酎も同じですが主にステンレスタンクで寝かせており樽で寝かせる場合にも色が付きすぎないように制約が付けられています(光量規制)。また樽で寝かせるという点ではラム酒なども同じですが糖蜜を使うので区別されることになります。


[ウイスキーの種類は?]
原材料や製造地などで様々に分類さますが、「麦芽を使っているかどうか」が大きな分け方となります。

モルトウイスキー 麦芽を使用したもの
グレーンウイスキー 麦芽以外を使用したもの
ブレンデッド モルトとグレーンをブレンドしたもの

またモルトウイスキーについてはこのような分類もされます。
シングルカスク 単一の樽のモルト原酒のみを使用したもの
シングルモルト 単一の蒸留所のモルト原酒のみを使用したもの
ピュアモルト  モルト原酒のみを使用したもの

日本ではスコッチを模範としてきたためモルトもしくはブレンデッドが国産の大半を占めています。このうちニッカなら「余市」、サントリーなら「山崎」など蒸留所の名前を冠した製品がシングルモルトになります。


[日本におけるウイスキーの歴史]
ウイスキーは幕末に日本に入ってきたとされています。この当時は外国人が飲む程度であったようです。その後イギリス海軍を模範とする日本海軍が士官用の酒としてウイスキーを採用し日本人にも徐々に広まりました。しかしながら高い輸入品かアルコールに香料や色素を加えた粗悪な模造ウイスキーしかありませんでした。

国産ウイスキーを作る動きは大阪の摂津酒造(戦後宝酒造に吸収)が竹鶴政孝をスコットランドに派遣し製法を学ばせたことを起源としています。しかしながら摂津酒造は不況で国産ウイスキーの製造を断念、代わりにサントリーの前身である壽屋が竹鶴を招き1923年に山崎に日本初の蒸留所を建設して国産化にこぎ着けました。

その後大衆化で普及を進めようとする壽屋の鳥井信次郎とスコッチに負けない本格的な製品を送り出したい竹鶴との間で意見の相違があり、竹鶴は契約満了とともに壽屋を退社し1934年に大日本果汁(後のニッカ)を立ち上げました。これが「マッサン」の後半で登場する余市の蒸留所です。

戦後もサントリーとニッカを中心に発展し現在に至っています。

スコットランドでは原酒の蒸留とブレンドは別のメーカーが行い、原酒の樽単位でのやり取りも行われていますが、日本では自社で蒸留からブレンドまで完結させるモデルを取っています。このため両社とも何種類かの蒸留器を持っており、貯蔵する樽も様々な物を使用して風味の幅を持たせています。

ちなみにドラマ「マッサン」では
摂津酒造→住吉酒造
竹鶴政孝→亀山政春
サントリー(当時は壽屋)→鴨居商店
鳥井信次郎→鴨居欣二郎
ニッカ→ドウカ
と実在の人物や会社を少しひねって登場させています。


[サントリーとニッカ]
上で説明の通りこの両社は真逆のスタンスを取ってきました。

サントリーは大衆への普及を重視し価格の安い商品のラインナップを充実させるとともに大量の宣伝広告を出しています。一方のニッカは高品質を売りにする一方で宣伝は少なめで同じランクであればサントリーより安く出してきています。

互いに創業者の名前を冠した銘柄(サントリーはトリス、ニッカが竹鶴)を出していますが、サントリーは最安値の商品、ニッカは会社の顔と言うべき高級品であるところにスタンスの違いがよく現れています。


[国産ウイスキーってどうなの?]
つい先日も「竹鶴17年」がWWAの2015年世界最高賞を獲得するなど2社とも世界的なアワードを何度も獲得しており、少なくとも高級品に関しては世界トップレベルです。ただ海外での販売量はまだまだ少なく、高い評価に販売実績が追いついていないのが現状です。

このほか小規模メーカーもいくつかあります。ベンチャーウイスキーの「イチローズモルト」が海外で高い評価を受けるなど頑張っているメーカーがある一方、技術力や原酒のバリエーション、販売力が不十分で安いだけが取り柄のメーカーも少なからずあります。


[値段の差は何なの?]
ウイスキーの売り場に行けば下は数百円から上は数十万円まで値段の差が大きいことに気がつくと思います。

値段の差は以下のような違いから生まれています。

・熟成年数 長い方が高くなります。10年と15年では約2倍の差というのが相場のようです。
・モルト配合率 コストの高いモルト原酒の配合率を下げてグレーンを増やすと安くなります。
・原酒配合率 原酒の代わりに安いスピリッツ(醸造アルコール)を混ぜる。

例えばニッカではシングルモルト余市に「20年」「15年」「12年」「10年」と年数表記のないものがあります。お値段はもちろん20年>15年>12年>10年>年数表記なしです。

一方サントリーでは値段順に角>レッド>ホワイト>トリスとなります。若いグレーン原酒の配合率を引き上げたり、さらに原酒配合率を引き下げることで差を付けていると推測されます(配合は非公表なので当方推定)。

スピリッツは熟成されていないためアルコール臭さや刺激があり、混ぜると風味が乏しくトゲトゲしい質の低いウイスキーになります。酒の安売り店などで見かける安い4Lのペットボトル入りウイスキーはこうして作られます。


[初心者は何を選べばいいの?]
嗜好品なので個人個人の好みに合う銘柄が一番、となります。

それでは初心者には難しいですから、最初はそれなり良いウイスキーを少量買ってみるのがよいと思います。「ピュアモルト」「シングルモルト」と表記のあるもの、あるいはブレンデッドを含め年数表記のあるものが良質なウイスキーです。

ただ世界的な樽不足や高級品への需要増加、朝ドラの影響もあり高級品が入手困難になっています。現在の環境で言うならニッカが出しているピュアモルトの「竹鶴」で年数表記なし(商品名が金文字のもの)、180mlサイズがお勧めです。これならば飲みやすく比較的入手しやすいと思います。

個人的にはニッカの方がコスパがよいのでニッカをお勧めしています。例えば同じ年数の「響(サントリー)」と「竹鶴(ニッカ)」を比べて頂ければ両社引けを取らない仕上がりですが、値段の差は明らかです。たとえば「響17年 700ml」が価格.comの最安値で8,878円に対し、「竹鶴17年」はアサヒビールの直販でも5,583円なんです。


[どうやって飲めばいいの?]
一般的なのが水割り・ロック・ソーダ割り(ハイボール)です。できれば氷はお店で売っている締まったロックアイスを使ってください。家庭の冷蔵庫で作った氷は溶けやすく風味を崩しやすいです。

「飲みにくいなぁ」と思ったときはレモンスライスを浮かべたハイボールにすると飲みやすくなりますし、蜂蜜や甘味のある酒(梅酒など)をほんの少し加えてやっても飲みやすくなります。

アルコール度数の高い酒ですので、ロックでは水(チェイサー)を用意しておけばベターです。おつまみはご自由に。チョコ・ナッツなどが一般的でしょうか。
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