○東京大学総合研究博物館 日仏交流150周年記念特別展示『維新とフランス-日仏学術交流の黎明』(2009年3月28日~5月31日)
「幕末から明治初期にかけての日仏交流の歩みを紹介する特別展示」という、茫洋とした概要だけ頭に入れて見に行ったので、何があるのか、よく分かっていなかった。
行ってみたら、ミイラがある。古写真がある。生物標本がある。という具合だった。オシャレな空間を演出するためか、展示キャプションが非常に小さい。短い説明にいろんな固有名詞が出てくるので、幕末史の知識を呼び覚ますのに骨が折れて(東大生はこんな説明で平気なのか?)、はじめはひどくフラストレーションを感じた。けれども、だんだん慣れてくると、迷宮を彷徨うような面白さを感じるようになった。以下は、心覚えのために整理したかたちで書いておくが、先入観なしに行ってみるのも一興だと思う。
展示品は、いずれもその由来や旧蔵・現蔵者を表す「○○コレクション」という名称が冠されている。それらは、大きく3つに分類できるようだ。
(1)東京大学が学内に有するコレクション。たとえば、
-三宅コレクション…江戸期以来の医学一家である三宅家に伝わった歴史資料。医学系研究科・医学図書館から総合研究博物館に移管されたらしい。
-田中コレクション…博物学・博覧会の振興に努めた田中芳男男爵の旧蔵文献資料。総合図書館蔵。
(2)フランスからの招来コレクション。博物館蔵と、関係者の個人蔵とが混じっている。
-デシャルム・コレクション(アンペリ博物館蔵)…明治政府の軍事顧問レオン・デシャルムの遺品。「ほとんど手つかず」で「驚くほど状態がいい」って書いてあったけど、要するに博物館で引き取ったものの、幕末日本のことなど分かる人がいなくて、整理できなかったんだろうなあ、と推測される。
-ビュラン・コレクション(個人蔵)。日本で初めてフランス語を教えたシャルル・ビュランの遺品。
-サヴァティエ・コレクション(個人蔵)。海軍医にして日本近代植物学の父、リュドヴィク・サヴァティエの遺品。
-サヴァティエ標本(パリ国立自然史博物館蔵)。リュドヴィク・サヴァティエが日本滞在中に採取した植物標本。
-徳川幕府パリ万博出品標本(パリ国立自然史博物館蔵)。これはびっくりだった。徳川幕府は1867年のパリ万博に参加するにあたり、美術工芸品だけでなく、さまざまな自然史標本も持ち込んだ。うち643点は、そのままパリ国立自然史博物館の所蔵に帰した。今回、同館の自然史標本コレクションを調査した結果、甲殻類と昆虫類の多数の標本を発見し、初の「里帰り」展示となったという。小さく区切られた木枠の中に、綿を詰めた丸いガラスケースが並び、カニや昆虫の標本が1種類ずつ入っている。ところどころの木枠に、和紙に漢字の付箋が貼ってある。文献資料と違って、いつ誰から入手したかは本質的な情報ではないから、探すの大変だったろうなあ、と思う。自然史資料が、同時に人文歴史資料でもあり得るという点が面白い。採取に当たったのは田中芳男である。
(3)クリスティアン・ポラック・コレクション。クリスティアン・ポラック氏はフランス人の日本研究者。同氏の個人コレクションには、
-シャノワーヌ・コレクション。徳川慶喜の側近だったシャルル・シャノワーヌ遺品。
-日仏交流関係資料一揃い(書簡、写真、書籍等)。などが含まれる。
このほか、誰だか分からないが、
-某日本人収集家コレクション。というのもあった。近代初期に翻訳されたフランス文学書多数。図書館の本と違って、無粋なラベルや蔵書印で汚されていなくてきれいである。
展示カタログは立派すぎるので、博物館ニュース「Ouroboros. Vol.13/No.3」を貰って帰ろう。
「幕末から明治初期にかけての日仏交流の歩みを紹介する特別展示」という、茫洋とした概要だけ頭に入れて見に行ったので、何があるのか、よく分かっていなかった。
行ってみたら、ミイラがある。古写真がある。生物標本がある。という具合だった。オシャレな空間を演出するためか、展示キャプションが非常に小さい。短い説明にいろんな固有名詞が出てくるので、幕末史の知識を呼び覚ますのに骨が折れて(東大生はこんな説明で平気なのか?)、はじめはひどくフラストレーションを感じた。けれども、だんだん慣れてくると、迷宮を彷徨うような面白さを感じるようになった。以下は、心覚えのために整理したかたちで書いておくが、先入観なしに行ってみるのも一興だと思う。
展示品は、いずれもその由来や旧蔵・現蔵者を表す「○○コレクション」という名称が冠されている。それらは、大きく3つに分類できるようだ。
(1)東京大学が学内に有するコレクション。たとえば、
-三宅コレクション…江戸期以来の医学一家である三宅家に伝わった歴史資料。医学系研究科・医学図書館から総合研究博物館に移管されたらしい。
-田中コレクション…博物学・博覧会の振興に努めた田中芳男男爵の旧蔵文献資料。総合図書館蔵。
(2)フランスからの招来コレクション。博物館蔵と、関係者の個人蔵とが混じっている。
-デシャルム・コレクション(アンペリ博物館蔵)…明治政府の軍事顧問レオン・デシャルムの遺品。「ほとんど手つかず」で「驚くほど状態がいい」って書いてあったけど、要するに博物館で引き取ったものの、幕末日本のことなど分かる人がいなくて、整理できなかったんだろうなあ、と推測される。
-ビュラン・コレクション(個人蔵)。日本で初めてフランス語を教えたシャルル・ビュランの遺品。
-サヴァティエ・コレクション(個人蔵)。海軍医にして日本近代植物学の父、リュドヴィク・サヴァティエの遺品。
-サヴァティエ標本(パリ国立自然史博物館蔵)。リュドヴィク・サヴァティエが日本滞在中に採取した植物標本。
-徳川幕府パリ万博出品標本(パリ国立自然史博物館蔵)。これはびっくりだった。徳川幕府は1867年のパリ万博に参加するにあたり、美術工芸品だけでなく、さまざまな自然史標本も持ち込んだ。うち643点は、そのままパリ国立自然史博物館の所蔵に帰した。今回、同館の自然史標本コレクションを調査した結果、甲殻類と昆虫類の多数の標本を発見し、初の「里帰り」展示となったという。小さく区切られた木枠の中に、綿を詰めた丸いガラスケースが並び、カニや昆虫の標本が1種類ずつ入っている。ところどころの木枠に、和紙に漢字の付箋が貼ってある。文献資料と違って、いつ誰から入手したかは本質的な情報ではないから、探すの大変だったろうなあ、と思う。自然史資料が、同時に人文歴史資料でもあり得るという点が面白い。採取に当たったのは田中芳男である。
(3)クリスティアン・ポラック・コレクション。クリスティアン・ポラック氏はフランス人の日本研究者。同氏の個人コレクションには、
-シャノワーヌ・コレクション。徳川慶喜の側近だったシャルル・シャノワーヌ遺品。
-日仏交流関係資料一揃い(書簡、写真、書籍等)。などが含まれる。
このほか、誰だか分からないが、
-某日本人収集家コレクション。というのもあった。近代初期に翻訳されたフランス文学書多数。図書館の本と違って、無粋なラベルや蔵書印で汚されていなくてきれいである。
展示カタログは立派すぎるので、博物館ニュース「Ouroboros. Vol.13/No.3」を貰って帰ろう。