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見もの・読みもの日記

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三色紙並ぶ!/三井家伝来 茶の湯の名品(三井記念美術館)

2009-04-19 23:37:25 | 行ったもの(美術館・見仏)
三井記念美術館 『三井家伝来 茶の湯の名品』(2009年4月15日~6月28日)

 三井記念美術館の「得意技」とも言うべき、茶の湯の名品展である。2005年の開館記念展以来、何度も足を運んでいるので、出品リストを見なくても、国宝・志野茶碗『銘・卯花墻(うのはながき)』とか、黒楽茶碗『銘・俊寛』とか、当然あれは出てるよね、これは見られるよね?という名品の数々が頭に浮かぶ。

 新しい発見もあった。道入の赤楽茶碗『銘・鵺(ぬえ)』。赤釉に囲まれた黒釉のカタマリの"景色"(見どころ)を鵺に見立てている。見込みの内側の、赤釉に茶の斑が散ったような色合いもいい。ノンコウ(道入)七種と呼ばれる名品のひとつだそうだ。あと、青磁らしからぬ青磁の碗が2点あって、ひとつはグレーに近い色合いの珠光茶碗『銘・波瀾』(南宋~元時代)。福建の産。もうひとつは黄土色に近い『人形手茶碗』(明代)。よく見ると浅い見込みの内側に、ひっかいたような素朴なタッチで、4つの人面が表されている。西洋絵画に出てくる顔だけの天使みたいで、かわいい。今回の展示で、私がいちばん「欲しい」と思ったお道具である。茶碗にするには小ぶりで浅めなので、わらび餅とか盛ってみたい(怒られるかな)。

 茶碗以外では『備前火襷水指』(桃山時代)の斬新さに唸った。むかしは全然違いの分からなかった茶入にもひとつずつ興奮するようになってしまった。備前肩衝茶入『銘・塩竃』は、小さくても"備前"の迫力を備えているし、薩摩耳付茶入は小さくても"薩摩(黒もん)"の気品に溢れている。余談だが、観客は意外と男性が多くて、私の前でおじさん二人が「すごいな」「すごいやろ~」と熱くささやきあっていた。

 もっとすごいのは茶掛けの書画。「三色紙」と呼ばれる『継色紙』『寸松庵色紙』『升色紙』が並んだ壁は、天下の絶景である。この展示室は、書画の説明を全て展示ケースの床(視野の外)に置いているので、無心で作品に正対することができる。この心遣いは、とてもありがたい。作品とともに見逃せないのは、表具の素晴らしさ。私のいちばんのお気に入りは『継色紙』である。書かれているのが「くるるかとみればあけぬるなつのよを/あかずとやなく山ほととぎす」(古今157・壬生忠岑)というホトトギスの歌で、これを、初夏の奥山を思わせる深緑の裂地でぐるりと囲んでいるのだ(一般的な三段表装でなく、丸表装)。あ、色紙と深緑の裂地の間に挟まれた、白っぽい紗(しゃ)の筋廻し(?)が、夏歌らしく涼を添えている(→軸装の名称)。それにしても「~あかずとや」までを折目の左に、「なく山/ほととぎ/す」を3行に切って右に散らし書きする『継色紙』の美学(バランス感覚)は、ほんとに面白いなあ…。「三色紙」の展示は前期(~5/17)まで。

 展示室の「仕掛け」としては、いつも茶道具フルバージョンの取り合わせが楽しめる茶室・如庵の復元展示室に、今回は、一山一寧の一行書と志野茶碗『卯花墻』だけを配した試みも面白かった。実際に人も入れるほどの空間に志野茶碗ひとつという、簡素で贅沢な展示法は、茶の湯の精神の粋のように感じられた。
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