見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

よみがえる国芳の色/錦絵はいかにつくられたか(歴博)

2009-04-10 00:10:58 | 行ったもの(美術館・見仏)
国立歴史民俗博物館 企画展示『錦絵はいかにつくられたか』(2009年2月24日~5月6日)

 江戸のメディア・出版文化を考える上で外せない「錦絵」の企画展。「錦絵の鑑賞に重きをおく美術展ではなく、"流通"と"世相"さらに"技術"に焦点を当てて」考えるというテーマ設定が、歴博らしくていい。

 冒頭では、三代歌川豊国の『今様見立士農工商 商人』に描かれた絵双紙屋の店先に並べられた錦絵を、これは役者絵、これは名所絵、という具合に分類・分析し、さらに、よく似た実在の作品を提示している。錦絵に残された情報量って馬鹿にならない、と木下直之先生もおっしゃっていたっけ。『藤岡屋日記』など、江戸の日記・随筆に見る、錦絵出版の記事も面白かった。よく売れたものもあれば、作り手がねらったほどには売れなかったものもあるんだなあ。

 いちばん興味深かったのは、同館が昨年度入手したという、大量の版木である(→北日本新聞:2009年02月24日)。錦絵の版木は消耗品として使い捨てられるため、こんなふうに残ることは珍しいそうだ。私の大好きな国芳の版木が大半を占めているのも嬉しい。そして、驚くべきは、版木に残った絵具の化学成分を分析し、刷り上った当時の色彩を再現したデジタル画像。どんなに「保存良好」といわれる錦絵でも見たことのない美しさに、言葉を失う。しかも作者が国芳ってところが…。あらゆる技法を試し、錦絵の可能性を探った国芳が、この技術を知ったら、大いに喜んだろう。

 以上。小規模な企画展示なので、これだけを目当てに東京から行くと不満が残ると思う。私は、久しぶりに常設展示を見てまわった。歴博って、こっそり(?)常設展示に国宝の『宋版史記』とか駿河版(古活字版)の『群書治要』、嵯峨本(木活字版)の『源氏物語』とかを展示しているのね。知らなかった。

 第3展示室「近世」が、最新の研究成果を取り入れて、2008年3月にリニューアルされたという話は、ロナルド・トビさんの『「鎖国」という外交』で読んだが、ようやくその成果を実見することができた。うーん、でも「国際社会のなかの近世日本」は期待ほどではなかったかな。先日、長崎歴史文化博物館を見ちゃったので。むしろ、洛中洛外図屏風(歴博甲本)をもとに、京の町を立体に起こしたパノラマが楽しかった。

 夏の企画展示は、東アジアの建築がテーマだそうで、これも楽しみである。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする