○万城目学『プリンセス・トヨトミ』 文藝春秋 2009.3
読んでしまいました、万城目学。第1作『鴨川ホルモー』は表紙だけ見て、レトロな青春モノかな?と思って素通りしていた(違う、ということは、最近、映画の宣伝を見て分かった)。第2作『鹿男あをによし』は、ドラマが面白すぎたもので、いまだに原作を読む気になれない。そして、第3作、とうとう読んでしまいました。
以下、ネタバレ。物語は、会計検査院の調査官3人が大阪府に向かうところから始まる。鬼の調査官、松平元。ハーフの才媛、旭・ゲーンズブール。見た目は中学生の鳥居忠。年間5億円に及ぶ補助金の使途を求めて、行き着いたのは、謎の社団法人OJO。その実態は、400年にわたって受け継がれ、200万人の大阪人の男たちが構成する「大阪国」の存在だった。目的はただひとつ――太閤秀吉の末裔である"王女"を守ること。"王女"の身に何かあったときは立ち上がること。
"王女"橋場茶子を守る特別な存在、「真田の男」として描かれるのは、お好み焼き屋の店主、真田幸一と、その息子(なのにセーラー服が着られるようになりたいと願っている)大輔。というわけで、この小説、登場人物には、戦国武将の名前が意識的に配されている(→詳細:宣和堂遺事)。もちろん、名前だけのお遊びもあるのだが、真田親子に関しては、どうしても『真田太平記』の真田幸村(信繁)・幸昌のイメージがかぶる。
それにしても、日本の小説って、いつからこんなに面白くなったんだろう、と感心した。死を覚悟した父から息子へと、男たちの間で伝えられていく真実という設定に、思わず落涙してしまったし、最後の小さな、でも重要などんでん返しとして、女たちは、その見て見ぬフリをちゃんと伝えていく、というフォローもいい。このフォローによって、女になりたい大輔の存在も落ち着きどころを得て、ハッピーエンドが深まるように思う。
「三島由紀夫を連想する」という松平元に、私はずっと頭の中で阿部寛をキャスティングしていた。松平元は、松平元康=徳川家康であるが、そういえば、松平元同様、家康も早くに父親を亡くした孤児だったんだなあ、とさっき、気づいた。
コストカッターの大阪府知事の感想を聞いてみたい1冊でもある。

以下、ネタバレ。物語は、会計検査院の調査官3人が大阪府に向かうところから始まる。鬼の調査官、松平元。ハーフの才媛、旭・ゲーンズブール。見た目は中学生の鳥居忠。年間5億円に及ぶ補助金の使途を求めて、行き着いたのは、謎の社団法人OJO。その実態は、400年にわたって受け継がれ、200万人の大阪人の男たちが構成する「大阪国」の存在だった。目的はただひとつ――太閤秀吉の末裔である"王女"を守ること。"王女"の身に何かあったときは立ち上がること。
"王女"橋場茶子を守る特別な存在、「真田の男」として描かれるのは、お好み焼き屋の店主、真田幸一と、その息子(なのにセーラー服が着られるようになりたいと願っている)大輔。というわけで、この小説、登場人物には、戦国武将の名前が意識的に配されている(→詳細:宣和堂遺事)。もちろん、名前だけのお遊びもあるのだが、真田親子に関しては、どうしても『真田太平記』の真田幸村(信繁)・幸昌のイメージがかぶる。
それにしても、日本の小説って、いつからこんなに面白くなったんだろう、と感心した。死を覚悟した父から息子へと、男たちの間で伝えられていく真実という設定に、思わず落涙してしまったし、最後の小さな、でも重要などんでん返しとして、女たちは、その見て見ぬフリをちゃんと伝えていく、というフォローもいい。このフォローによって、女になりたい大輔の存在も落ち着きどころを得て、ハッピーエンドが深まるように思う。
「三島由紀夫を連想する」という松平元に、私はずっと頭の中で阿部寛をキャスティングしていた。松平元は、松平元康=徳川家康であるが、そういえば、松平元同様、家康も早くに父親を亡くした孤児だったんだなあ、とさっき、気づいた。
コストカッターの大阪府知事の感想を聞いてみたい1冊でもある。