見もの・読みもの日記

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お伽草子絵巻の楽しさ/物語をえがく(根津美術館)

2015-12-06 21:53:06 | 行ったもの(美術館・見仏)
根津美術館 コレクション展『物語をえがく 王朝文学からお伽草子まで』(2015年11月14日~12月23日)

 王朝文学からお伽草子まで、さまざまな物語を描いた多彩な形式の絵画作品を集めた展覧会。物語好きの私には、とても楽しくうれしい展覧会だった。王朝文学は、やっぱり源氏より伊勢が好き。でも『源氏物語浮舟図屏風』は変な作品だなあ。巨大な笹の葉のような細長い金の船に貴公子と姫君(匂宮と浮舟)が乗っている。SFか童話の一場面のようだ。物語を知っているせいか、両者の寄り添い方が艶っぽくて、赤裸々な春画よりずっとドキドキする。初見ではないと思ったが、以前見たのは箱根の岡田美術館が所蔵する類品だった。ほぼ同じ絵柄の屏風が伝わっているみたい。

 平家物語画帖の展示箇所は、源氏の活躍シーンが多めだった。鵺がかわいくて微笑ましかった。『曽我物語図屏風』があったが、私は日本の古典作品では、曽我物語だけは未だにちゃんと読んでいない。少年少女向け文学全集に入っていたにもかかわらず、「仇討ち」の美学がよく分からなくて、つまらなかったことに起因していると思う。

 展示室2に進むと、文学作品としてはやや格落ち(?)のお伽草子に取材した絵巻が並ぶ。『玉藻前物語絵巻』は、先月、大阪で見た文楽『玉藻前曦袂』を思い出したが、絵がかなり稚拙。巻1と巻2は違う絵師の手かもしれない。巻1は宮中が舞台なので、たぶん先行作品の引用で形になっているのだが、巻2の那須野は武士(衛士)たちの動きが全く描けていない。とくさしつつ、こういう素朴絵タッチは決して嫌いではない。キツネが九尾でなく二股の尾なのもしょぼいと思ったが、これは本文にも二尾とあった。いつから九尾になったんだろう?

 それから『賢学草紙絵巻』。「道成寺縁起」あるいは「日高川草紙」とも呼ばれる物語。私は、京都国立博物館所蔵本(酒井家旧蔵)のイメージが強かったが、「文化財オンライン」によると根津美術館本は別系統だそうだ。同じ物語でも微妙に描きぶりが違うのが面白かった。ほかに『酒吞童子絵巻』(伝・狩野山楽筆)と『蛙草紙絵巻』(伝・土佐光信筆)。伝本作者ではあるけれど、これらはいかにもプロの作品だと思う。

 展示室5は、修理後、初公開となる『扇面歌意画巻』(江戸時代)を展示。和歌百首と各歌を連想させる扇面画を百図描いたもの。解説に伊勢物語の和歌が取られているとあったので探してみると、それらしい絵が見つかる。あわせて出ていた光悦の和歌色紙はやっぱり美しく、扇型の焼きもの(織部、肥前染付)も面白かった。

 展示室6は「炉開きの茶会」。この季節の茶道具の取り合わせが、私はいちばん好きかもしれない。抑えた中に華やかさが隠れていて。炭火や湯気が恋しくなるこの季節。
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