見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

博物館に初詣+常設展(東京国立博物館)

2008-01-13 22:43:24 | 行ったもの(美術館・見仏)
○東京国立博物館 新春企画『博物館に初もうで』

http://www.tnm.go.jp/

■本館特別1室・特別2室 新春特別展示『子年に長寿を祝う』

 恒例の干支づくし、今年はネズミである。あ、サントリー美術館で有名な『鼠草紙』って東博にもあるんだ。工芸品は、根付、水滴など小物が多い。新趣向だと思ったのは、明治初年に編纂された『博物館獣譜』。第2帖の原稿用紙(外枠線だけ)は版心に「大学南校」とあるのが注目である。先行文献から転用した動植物の図もあるが、ネズミは、近所で実際に捕獲したものを写したようだ。驚いたのは、福岡藩主・黒田家に伝わった唐絵手鑑『筆耕園』の「鼠瓜図」が出ていたこと。『中国書画精華』で見た記憶がある。ええ~こんなところにさりげなく南宋絵画が…。

■本館16室(歴史資料) 特集陳列『文化財-調査と保護-』

 草創期の文化財調査、とりわけ「壬申検査」と呼ばれる明治5年(1872)の調査を特集。当時の『壬申検査社寺宝物図集』や『古器物目録』の図版は、一部、木炭を使っているようだ(筆墨も併用)。奈良の正倉院は、これ以前、慶長・寛文・元禄・天保にも開封されて、文書・文物の整理と修復が行われている。元禄6年の『宝物出入図』(明治年間の模写)など、興味深かった。

 このほかでは、やはり国宝室の『松林図屏風』が見逃せない。もはや新春恒例になったのかしら。博物館は、何度行っても新発見があるもので、今回は近代工芸の『白熊置物』『鷺置物』が気に入った。つるんとしたブロンズの滑らかさが愛らしい。近代絵画は、今村紫紅の『熱国之巻』が、12月の「朝之巻」から「夕之巻」に入れ替え。夕暮れが近づくとともに、画面がまぶしい金沙で満たされていく様子に、ただただ、うっとりする。陶磁器は新春らしく華やかな作品が多い。でも最近は、伊万里や京焼だけでなく、唐津や美濃焼の魅力も分かるようになってきた。『銹絵草花文大鉢』いいなあ。『鼠志野鶺鴒文鉢』もむちゃくちゃいいなあ~。

 2階では、たぶん初見の『月次風俗図屏風』(室町時代)が面白かった。8曲1隻の小さな屏風で、季節折々の年中行事の様子を描いているのだが、後世のように固定化した年中行事でなく、そう来たか!と感じさせる新鮮な発見がある。12月の男女&僧俗入り混じっての雪遊びの様子なんて、ブリューゲルの農民画みたいだ。

 安土桃山・江戸絵画のでは、探幽の『う草葺不合尊降誕図』(この表記、なんとかならないのか?)に一目でひかれた。日本神話を題材にした小品。いま、記憶で書いているのだが、縦長の画面の上方に、たどたどしいデッサンの草葺き小屋と、心配そうに中を覗き込む束帯姿の男が小さく描かれている。あとは打ち寄せる波の列。なんとも肩の力の抜けた作品である。実はいま、東博のホームページで「書画の展開-安土桃山・江戸(本館8室)」の小さなアイコンに使われているのがこの絵だと思うが、他はどこにも画像がないようだ。紹介できないのが残念。この作品、私は初見ではないと思うのだが、どこで見たのだったか、思い出せない。それにしても、狩野探幽もかなり不思議な画家だなあ。
コメント
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